「君たちが護衛をしてくれるのか?…こちらとしてはありがたいが、君達にも都合というものがあるだろう?」
と、公爵様が遠慮気味に言う。
だがイリアはさらに続ける。
「あたし達なら大丈夫ですよ!あたしは用心棒出身だし、エストは魔法凄いし、何よりヒロトは全属性使える上に、無属性魔法も全部使えるんです!」
雑な説明だけど、大体あってる。まぁ、別に予定も無いし、護衛する分には何の問題もないのだが…
「ぜ、全属性使いなのか!?…確かにそれは凄い。だが、この街では…」
「攻撃魔法の使用は禁止。…ですよね、公爵様。」
「そう、その通りだ。…ヒロト殿は武器を扱えるのか?」
「扱えますよ。元々剣使いですから。」
…俺の素人剣術で役に立てるとは思わないが。
「…でもエストは魔法しか使えないんじゃなかったか?」
「私は攻撃魔法しか使えないので、お役に立てないですね…」
「うーん、どうしようか…」
数分後、大体話はまとまった。
俺とイリアは武器を扱えるので、護衛隊に臨時で入隊する事になった。エストは戦えないのでアリエさんに魔法の手解きを受けるらしい。
…何もしないよりマシだろう、とアリエさんが考えてくれた。
そして俺とイリアは護衛隊に入隊するにあたって、護衛隊のリーダーに挨拶をすることになった。
…屋敷が広すぎて迷子になりそうだ、と言うことでリオナが案内してくれた。
「し、失礼します。」
「ん?ここは関係者以外立ち入り禁止だ。…おや、貴方はあの時の。」
そこに居たのは少し前に俺とエストが助けたリオナの護衛のリーダー。
あれ?前会った時より人数が少ないような気が…
「お久しぶりです。…人減ってません?」
「ええ、先日のリザードマン襲撃で数名負傷しまして。今ここに残っているのは私を含め4人だけです。」
なるほど、この広い公爵家を護衛するには少なすぎる人数だな。…じゃあ俺達が護衛を引き受けたのは正解だったのか。
「あ、そういえばまだ自己紹介もして居なかったですね。…王国騎士団所属。公爵家護衛騎士団長のザウロ・リングレナルです。」
うーん、目上の人に敬語を使ってもらうのはなぁ…
「あの、普通でいいですよ。今回は俺たちが教えてもらう側なので。」
「そ、そうですか?それでは…よろしく頼むぞ、ヒロト殿。」
あ、なんか雰囲気変わった。
「あたしはイリア・ミテラストだ。元用心棒で今はヒロト達と旅してるんだ。」
とイリアが、ザウロさんはイリアに礼をする。そして、俺の方へ向き直ると、
「…それでは本題に入ろう。既に公爵様よりお話は伺っている。」
屋敷は広いけど情報の伝達がありえないくらいに早い。…だって護衛を引き受けたのはほんの数分前だぞ?
まぁ話が伝わっているならそれでいいのだが。
「…そういえばヒロト殿と初めて会った時は魔法で戦って居たが…武器は扱えるのか?」
「一応剣使いですからね。…妨害魔法は使用しちゃダメですか?」
素人剣術だけだと厳しいかもしれないが、妨害魔法が使えるとなればかなり助かる。
「一応使用は許可されて居るが…なるべく控えた方が良いだろう。」
「分かりました、妨害魔法は緊急時以外は使わないようにします。」
「それと、イリア殿は用心棒出身だったな。その辺のところは大丈夫かい?」
とザウロさんが聞くと、イリアは無い胸を張って、
「勿論!」
「それでは他の団員を連れてくる。それから配置の説明などをしようか。」
そう言うと、ザウロさんは奥の部屋へ入って行った。
「なぁヒロト。さっきあたしの事可哀想な目で見なかったか?」
「い、いや、全然。」
成長差があるから頑張れ!と心の中で思っていたなんて言えない。
暫くして、ザウロさん数名の団員を連れて帰ってきた。
「それでは各々自己紹介を。」
ザウロさんがそう合図すると、大柄な男の人が前に出る。
「バラク・フルベルトだ。よろしくな。」
「こちらこそ。」
そう言って握手を交わす。
次は細身の女性。背中に槍を掛けている。
「ニヒル・ストリカでーす。よろしくね〜」
「うん!よろしくな、姉ちゃん。」
うーん、この人本当に騎士団所属?めちゃくちゃ緩いんだけど。
そして最後は鋭い目つきをした狼の獣人。あれ?こんな人居たっけ?てか、睨まれてるような気がする。
「…ガルフ・サヴァリスだ。団長、本当にこんな奴らで大丈夫なのですか?」
「な、こんな奴らって何だー!」
とガルフに飛びかかろうとするイリアを捕まえる。
「落ち着け!おい、暴れんな!」
イリアの奴、こんな小さな体のどこにこんな力が…
「ガルフはあの事を知らんのだったな。彼らこそがリオナ様を助け、白獣を倒した冒険者なのだよ。」
「こ、こいつらが!?…どこからどう見ても貧弱そうなのですが…」
あ、これは俺もイラっときたぞ。
貧弱なのは認めるが、そこまでハッキリ言われるとちょっとな…
でも俺は我慢できる。落ち着けー俺。
なんて暗示をかけていると、バラクさんが肩をポンポンと叩いて、
「…すまないな。ガルフは少し冷たい奴でな。まぁその分、団長や公爵様には誰よりも忠実な男なんだ。」
さすが狼の獣人。忠君精神が強いって事か。
「…さて、それでは配置について会議を始める。」
そして一時間後。それぞれの配置と役割が決定した。
イリアとニヒルさんが屋敷の東側。
ザウロさんは屋敷の裏口、バラクさんが屋敷の正門を。
ガルフが屋敷の西側で、ワイドセンスの使える俺は屋敷の屋根で待機になった。
「…まだ時間まで大分あるな。それでは各自、時間まで解散。訓練するもよし、休息を取るもよし、自由にせよ。」
「「「了解!」」」
会議が終わり、イリアがニヒルさんについて行ったので、俺は廊下をウロウロすることにした。
「ここは本当に広いなー…ん?あそこにはまだ行ってないな。」
護衛隊の会議室から少し行ったところにある部屋。他の部屋とはまるで違う扉で仕切られている。
と、後ろから声が。
「…そこは訓練場。俺たち護衛隊の特訓に使っている部屋だ。」
声を主はガルフだった。
「へぇー…随分と立派な扉だな。」
「先代の団長が訓練中に破壊してしまったらしい。それ以来、この部屋の扉だけが強化されている。」
先代の団長、半端ねぇな。
「ヒロト、と言ったか?1つお前に頼みたいことがあるのだ。」
「え?何だよ?」
「俺に…お前の実力を見せて欲しい。」