なんか味気ないなぁ、
「ど、どういう事だよ?俺とお前で決闘するって事か!?」
「その通りだ。お前は白獣を倒した男。それだけ強い者を前にすると戦いたいという衝動が抑えられなくてな。」
獣かよ!…いや、獣か。
「別に良いけど…俺、剣に関しては素人だぞ?」
現役の騎士であるガルフに敵うわけもない。…魔法を使うのであれば別だが。
「魔法は禁止だろ?」
「いや、攻撃魔法以外は使用してくれても大丈夫だ。俺も使うつもりだ。」
なら助かるが…ガルフも魔法を持ってるのか。気になるな。
「さて、入るぞ。」
「今回は木刀を使った模擬戦だ。幸い、ニヒルが回復魔法を使う事ができる。致命傷を負ってもまず大丈夫だ。」
いや、致命傷を負っちゃいけないだろ。…まぁ、そんな事にはならないだろうけど。
『あのガルフという者。王国騎士団の中でも腕の立つルーキーじゃぞ。…どう戦うつもりじゃ?』
(ガルフに単純な剣の腕で勝てないのは分かってる。妨害魔法で動きを鈍くしてから叩くしかない。)
『今の時点ではそれが最良の策じゃろうなぁ。万が一攻撃をまともに食らってもお主の耐久力なら肋数本で済むわい。』
…中々怖いこと言うな。それも肋数本ってのが現実味を帯びてる。
(…取り敢えず、やってみる。)
「…用意できたか?」
「ああ、バッチリだ。…多分。」
「そうか。じゃあフィールドに上がってこい。」
「ああ、分かった。…あれ?なんかギャラリーが集まってるぞ。」
「ん?…団長の仕業か。あの人らしい。…周りの視線が気になるか?」
「いや、別に。」
人の視線で緊張できるほど、俺には余裕がない。…こんな強そうな奴を前に他のことなんか考えてられないからだ。
「ガルフ!負けるんじゃねーぞ!」
「ヒロトー!頑張れー!」
俺とガルフはフィールドに上がる。
いつの間にか、バラクさんが審判台に立っている。…用意良すぎだろ。
「それでは両者前へ。」
今まで感じたことのないプレッシャーで、潰れてしまいそうだ。
「王国騎士団、ガルフ・サヴァリス。この決闘に全身全霊を掛ける!」
あれ?これって決め台詞とかあるのか?…なんかあったかな。
「…始め!」
あ!始まっちゃったよ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…変わった構えだな。何処で習った?」
「俺の国に伝わる剣術だ。サムライと言う名の剣士達のな。」
「サムライ?聞いた事が無いが…まぁ良い。行くぞ!!」
ガルフが高速で間合いを詰めてくる。
(速っ!…でも、目で追えないスピードじゃない。これならまだ躱せる!)
俺はガルフをギリギリまで惹きつけると、右へ飛んで躱す。
「…!?ガルフの攻撃が見えているのか?」
「ヒロトは動体視力までいいのか。…羨ましいなぁ。」
(思ったよりギリギリだな。…次は反撃だ。)
「まだまだッ!」
フィールドギリギリで急旋回して、さらに攻撃。…これを何度も繰り返す。
(…ダメだ、攻撃が速すぎて反撃出来ない。躱すのでやっとだ。)
「確かにヒロト殿はガルフの攻撃を躱せている。…だがあのままではいつか削り取られるな。」
(何かいい方法は…あ、そうだ、あれなら!)
「こっちだガルフ!」
「やっと反撃する気になったか?…それでは行くぞっ!」
「…そこだっ!『ウェーブグラウンド!!』」
そう唱えると、フィールドが波を打ち始める。そして…
「スピードが、維持できない!?」
「今だっ!」
波打つ地面の上で失速したガルフの背後に回り込むと背中に一撃。ガルフは少しよろめいたが、再び剣を持ち、構える。
「地面の環境を変えてスピードを殺す…か。面白い戦い方をするなではないか。…流石と言うべきか。」
…あれでも結構本気で殴ったつもりだったが…流石王国騎士団のルーキー。あの程度の攻撃ではほとんどダメージはないようだ。
「頭が良く回るようだな。…だが、2度も食らわんぞ。」
すると、ガルフはさっきと違う構えでこちらを睨む。…そして。
『シフト・アクセル!』
そう唱えた瞬間、とてつもない強風と共に俺の腹部に激痛が走った。
衝撃に耐えきれず、フィールドの端まで弾き飛ばされた。
「ヒロト!!!」
「ガルフのやつ、やり過ぎたな…」
「がっ…」
腹部を強打された俺は、人生で初めての吐血ととてつもない激痛を味わう。…内臓をやられてしまったのだろうか?片膝をつくと、そのまま動けなくなった。
そして顔を上げると、いつの間にか正面にガルフの姿があった。
「…肋を数本ほど負傷したか。骨が内臓に突き刺さったせいでもうまともに動けんだろう。」
(おい、神様。今俺の体はどうなってる?)
『うーむ、幸い肋も内臓も何もなっておらんな。…衝撃を耐えようとして舌を噛んでしまったのではないのか?』
あれ?そう言われてみるとそこまで腹も痛くない。…口の中は大変なことになっているが。
『この決闘の後、ヒールを掛けておくといい。その程度の傷ならすぐに治る。』
(そうさせてもらうよ。…さてと。)
俺は立ち上がると、落としてしまった木刀を拾い、もう一度構える。
「な!?立ち上がれるのか!?」
「…ゴメン。舌噛んじまっただけだったわ。」
あー、周りのみんなが「心配して損した。」みたいな目をしてる。
…無事だったんだからもうちょっと喜べよ!
渾身の一撃を舌噛んだの一言で済まされてしまったのが驚愕だったのか。唖然とした表情のガルフは、首をブンブン振って構え直すと。
「ま、まあいいか。これでまだ決闘を楽しめると言う訳だな。」
「いや、次で終わらせる。」
ガルフが使ったあの魔法。…多分無属性だろう。6属性魔力をどれも感じなかった。
だったら俺にも使いこなせるはずだ。
「お前の魔法。借りるぞ。『シフト・アクセル!!』」
おおっ速い速い。…でもコントロールが難しいな。一回止めるか。
「ふぅ…次は当てるぞ。」
「…面白い。なら俺も全力で行こうじゃないか!」
「何か熱い展開ですね。お父様。」
「うむ、若い者たちが真剣にぶつかり合うのを見ていると何か高ぶってくる。」
『『シフト・アクセル!!』』
唱えると同時に、両者の姿が消え、剣と剣がぶつかる音がフィールド上から聞こえてくる。最初は互角であった2人だったが、徐々に魔力の質と体力量でヒロトが押し始める。
そして遂にガルフのシフト・アクセルが解けてしまう。
「し、しまった…!」
そして俺はガルフの背後に回ると首元へ一撃!
「…何故剣を止めた。打たねばお前の勝利は無い。」
俺はガルフの首に当たる寸前で剣を止めた。
「首に剣を当てられそうになった時点で、お前の負けは決まってる。」
甘いと言われるかもしれないが、これが俺のやり方だ。
「…フッ。そうだな、俺の負けだ。素直に認めよう。」
そして俺はガルフに手を貸し、立ち上がらせると、固い握手を交わした。
すると観覧していた皆から、賞賛の拍手が与えられる。…何かこう言うのって熱いな。
「しかし不思議なことがあるものだな。俺の一族に代々伝わる秘伝の術を使えるものがいるなんて。」
秘伝だったのか。…とても便利な魔法を教えてもらえてラッキーだ。
「…ん?そろそろ広間へ向かうか。食事をとって作戦会議を開かねばならん。」
「そうだな。…さて、行くか。」
次回からはなるべく定期更新でいきたいと思うのですが、不定期連載になるかもです。
すいません。