あの時、爆破の起きた街へと向かったガルフさんは何をしていたのか。
という訳で、今回はガルフさんメインです。
それは護衛任務の途中で起きた出来事だった。
大きな爆発音と共に黒煙が空高く立ち上る。
『何だテロか!?…ザウロさん、どうしましょう。』
ヒロトの焦る声が聞こえてくる。
『我々の任務は護衛だ。公国騎士団が対応するはずだが…。見過ごしては居られんな。』
『私が行きましょう。…帰ってくるまでは、頼みます。』
そして俺は屋根を飛び継ぎ、爆発した地点へと向かう。
人の肉が焼ける匂いが爆心地に近づくにつれて強くなり、鼻に刺さる。
…この爆発でたくさんの方が犠牲になったのか。
「…!?」
何かの気配を感じ、走って居た屋根から降りる。
するとつい先程まで移動して居た家が爆発した。
広場に出ると、目を閉じて意識を集中させ、相手の位置を探る。
これは代々うちの一族が使ってきた方法、風の動きを読み、熱を探る。
「……そこかっ!『シフト・アクセル!』」
走り出すと同時に剣撃を繰り出す。だが、相手は躱したのか、何かがかすったような手応えしか得られない。
「…っ!逃さん!」
もう一度体勢を立て直し、微かに感じる相手の気配を頼りに追う。
すると少しづつ相手の姿が見えてくる。…透過魔法は消費魔力が大きいのがデメリットだ。そう長くは続かない。
と、いきなり相手が動きを止める。
「…騎士団か。また厄介な相手を押し付けられたものだな。」
「貴様は何者だ?爆破を起こしたのは貴様なのか?」
俺が尋ねると、相手は背中に掛けている大剣を抜く。
「答える気は無い…か。ならば仕方ない。公国の誇り高き騎士として、貴様を始末する。」
そして俺も剣を抜く。
「細身剣…?どうやら相性が悪かったようだな。狼の騎士よ。」
「それは俺を負かしてからいくらでも言うがいい。…では、始めようか。」
…先程まで奴を追いかけて来た道の近くの家屋にはもう既に火の手が回っている。そのうち、ここも火の海になるだろう。
早めに勝負をつけなくてはな。
「…行くぞっ!『シフト・アクセル!』」
「『コロナボール!』」
奴は立て続けに炸裂魔法を撒き散らす。それを高速で回避し、どんどん間合いを詰めて行く。
…炸裂系の魔法は消費魔力が大きい、これだけ乱射すればそろそろ魔力切れを起こしそうなものだが…。
「…動きが速いだけか。『エッジ・グランド!』」
唱えた瞬間、地面が揺れ始め、俺に向かって尖った岩が飛び出してくる。
…何故だ?何故奴は魔力がきれない?
「おっと、躱しやがったか。」
その時、奴の大剣の根元が一瞬光った。
…なるほど、そういう事か。
先ほどの岩の複雑な動き、あれにも相当な魔力を使っているはず。魔力など、とっくに切れているはずだ。
「…貴様の攻撃のタネが分かった。」
「…?分かったところで何が変わるというんだ?」
「…あと、3分で沈黙させてやる。『シフト・アクセル!』」
何故奴は大剣を持ちながら一振りもしないのか。そして、何故魔法を連射し続けても魔力がきれないのか。
その二つの疑問がようやく繋がった。
速度強化に魔力をつぎ込み、一気に相手の背後へ。
「なっ!?」
「貴様のその大剣は…。」
そして剣を引き、腰を落とし、突撃の体勢をとる。
「魔晶石の結晶を媒体にするための…」
そして残りの魔力を剣先に集中させる。漏れ出した魔力の残片がスパークを起こす。
「只の器だっ!!『イゼアリュード・カーセラ!!』」
俺の周りでバチバチとスパークしていた魔力の残片の全てが剣へと集まり、鋭い光のヤイバが。そして次の瞬間。
「がっ…!?」
眩い閃光と共に大剣が砕け散る。
その衝撃で奴もまた吹き飛ばされた。
そして、今まで全身を覆っていた黒装束が引き千切れる。
「ハァ…ハァ…さ、流石に魔力を使いすぎると息苦しいか。」
アリエに聞いたのだが、人は魔力を使い果たすと、体力が残っていても動かなくなるらしい。
だから動けるだけの魔力は残しておいたのだ。
俺はフラフラと立ち上がると、奴が吹き飛んだ方へと歩き出す。
そして、衝突の衝撃によって崩れ去った家屋の瓦礫の中に至る所から血を流して倒れるある男の姿があった。
公国騎士団の騎士なら誰もが知っているであろう男。
「…ゼア。貴様が今回の騒動の首謀者か。」
ゼア・バナート
最近勢力をつけ始めた殺し屋集団『ヘルズキール』のリーダーである男。
…騎士団の中でも、もっと重要視されていた人物である。
「何故、貴様は街を破壊した。…襲撃事件に関係があるのか?」
「……」
「話す気力もない…か。まぁいい。そろそろ公国騎士団の本隊がこちらは来るだろう。」
俺がそう脅しをかけて、口を割らせようとしていると、ゼアは気が狂ったのか、静かに笑い始めた。
「……ハハハ。」
「…?何がおかしい?」
「…狼の騎士さんヨォ。お前の負けだぜ。」
そしてゼアの放ったこの言葉に疑問を感じたその時。
腹部に突き刺されたような激痛が走った。
「…ガハッ…!?」
「…遅いぜ…先生ヨォ。」
その場に倒れこんだ俺は、動揺を隠せない。
…一体、何が起こったんだ?
痛みを感じた場所を見ると、黒光りしたナイフの刃先に血が滴っているのが見える。
目の前には黒いコートのようなものを着た男が。
「…能無しが。」
「…!?あ、あぁぁぁ!!」
男が手を向けた先には体から出た青い炎で焼かれるゼアの姿が。
「な、何故だ…!?何故裏切る!?」
「…言っただろう。雑魚は要らんと。…消えろ。『ロストエナジー』」
「な、あぁぁぁ!!!!」
その男の手によってゼアは跡形もなく燃え尽きた。
そして俺の方へと向き直ると、
「…無様だな。それでも公国騎士団の騎士なのか?」
「な、何だ…と?」
俺は剣を杖にして、何とか立ち上がる。…だが、これではまともに戦うどころか、動く事すら出来ないだろう。
「『タクト』」
男がそう唱え腕を上に掲げると、俺の体が同じくして持ち上がる。
「な、何を…!?」
どうにか逃れようともがくが、そんなものを意味を成さなかった。
「…じゃあな。狼の騎士。」
そして次の瞬間、俺は公爵家の庭へと激突していた。
ゼアはモブです。リーダーだけどモブです。