神様、俺を異世界へ。   作:Watapon-

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第25話 国家魔術師 シーヴィル

「やぁ、初めまして、ヒロト君。」

 

突如、俺の前に現れた人物が親しげにそう話しかけてくる。

…というか、何故俺の名前を?

 

「ふぅん。何故君の名前を僕が知っているのか?ねぇ…なるほど、どうやら少々警戒させてしまったようだねぇ。」

 

…!?今度は俺の心の中のことを読んだのか?今の事は全く口に出していなかったはずだ。

 

「…何者だ!」

 

俺は警戒をさらに強め、腰の剣に手を掛ける。それを見てイリアも突撃する態勢に入る。

 

「ちょ!ゴメンってば!心の中を読んだのは謝るからさぁ。自己紹介もしてなかったし!」

 

するとその奇妙な人物はコホンと咳払いをして、こちらへ向き直る。

 

「僕の名前はシーヴィル。このアルカゼニア公国の魔術師団を率いる国家魔術師さ。」

 

「シーヴィル…?あっ!」

 

この男が名乗った『シーヴィル』という名には聞き覚えがあった。それは今から少し前の事。

あれは確か、アリエさんが公爵様の命令で俺達の実力を測りに来た時のことだっただろうか?

アリエさんを捕縛して、話を聞いていた時に確かその名前が出て来た気がする。

 

『いかにも、私共は国家魔術師シーヴィル様より魔術の教えを乞うております。』

 

「…貴方が国家魔術師様…でいいんですか?」

 

「どうした!ヒロ…ト?」

 

あんなに憧れを抱いていたエストですらこの反応。隣の部屋から帰って来たんだろザウロさんにあたっては唖然としている。…この男。本当に国家魔術師なのだろうか?

 

 

「そうだよ。…てかさぁ〜いきなり敬語とか止めようよぉ。硬いのは嫌いだからさ、シーヴィルって呼んで。あとフツーに話してくれたらいいからさぁ。」

 

…なんか胡散臭いな。でも、テレポートを使ってこの部屋に来たって事は魔法が使える人なのは間違いないか。

 

すると先程まで唖然として動かなかったザウロさんが口を開く。…それもひどく緊張したような様子で。

 

「あ、貴方様は…。」

 

「ん?…あぁ、君は他の3人とは違って僕の事が分かるみたいだね。」

 

さらに黒曜の破片を解析班に渡しに行ったジーマさんとアリエさんの二人が帰って来てこの男の顔を見るなり、

 

「「し、シーヴィル様っ!?」」

 

とその場に膝まつくとそのままよくアニメとかで見る忠誠を捧げるポーズになった。

 

「ほら、マジでしょ?」

とその男、シーヴィルが軽く返して来たので思わず。

 

「「「マジだ。」」」

 

シーヴィルは頭を下げる二人にお茶を入れるよう頼むと、そのまま席へと着きそこに置いてある茶菓子を食べる。

 

「君たちも座りなよ。僕は君たち3人と話がしたくて本来の日程より早く帰って来たんだからさぁ。」

 

俺たち3人と話?

よく意味が分からなかったが、取り敢えず席に着いて話を聞くことにした。

 

「シーヴィル様、お茶にございます。」

 

「あ、サンキューね。…良い香りだねぇ、流石アリエ!お茶を淹れるのが上手いなぁ。」

 

シーヴィルはお茶を一口啜ると、俺たちに向かい直ると淡々と話し始めた。

 

「君だよね、ヒロト君。さっきこの部屋から出ていた瘴気を消したのって。」

 

「え、そうだけど…。やっぱり分かるのか、国家魔術師とかだと。」

 

「まぁね。一応6属性全てを扱える様にしてるしねぇ。」

 

「6属性!?それ、ヒロトと同じじゃん!」

 

「代々、国家魔術師の座につくものは、6属性の魔力を持ちそれに加えて魔術に長けた者だけが許されるんですよ。」

 

と、興奮している様子のイリアに諭す様な具合でエストが説明する。

…なんか姉妹みたいだな。

 

「そうだ、君も6属性使いだったねぇ。…けど、無属性を合わせると7つかぁ。やっぱり凄いね!」

 

「は、はぁ。…それで、話しってのはな何?話があって帰って来たんだろ?」

 

すると「そうでした!」と言う様なジェスチャーを取り、今度はあの軽い口調ではなく真剣と取れる口調で話し始める。

 

「少し真剣な話になるからねぇ。皆は少しの間だけ外へ出ていてくれないかなぁ?」

 

「は、承知しました。…皆、こっちに来てくれ。」

 

ジーマさんの案内で最後の一人が出ていくのを見送るとシーヴィルは魔法を詠唱し始める。

 

「…?一体何をするつもりだよ。」

 

「念には念をって言うでしょ?…『サウンドカット』」

 

…あれ?なんか変わったのか?

別段俺達2人にも部屋にも変化はない様に見えるんだが…。

 

「この部屋全体に見えない障壁を貼ったのさ。他に聞かれると少々マズイ話もあるからねぇ」

 

「…マズイ話?」

 

「それは後だよ。…それじゃあ話を始めようか。」

 

シーヴィルはまたお茶を一口啜ると、真剣な面持ちで話し始める。

 

「実は君が封印を解いた黒曜の破片の事なんだけど。…呪いの種類ってこと確認したのかい?」

 

「いや、してないけど…。もしかしてした方が良かったのか?」

 

「君、呪いの種類を知らないまま解除したのかい!?…凄いなぁ、普通は種類に応じた解呪魔法を使うんだけれど…。」

 

(おい神様、初耳なんだけど。…てか、それ教えてくれたらもっと早くに解けたんじゃないのか?)

 

『すまん、忘れておったわい。…でも解呪出来たのだから結果オーライではないのか?』

 

(んな、適当な。)

 

「…君、面白いもの持ってるねぇ。ちょっと見せてもらえるかい?」

 

「…!?」

 

シーヴィルの言う『面白いもの』って神様がくれた魔道具のことだろうか?

俺は上着のポケットに入っている宝石の様な魔道具を取り出す。

 

「…これの事?」

 

俺がそれを掌の上に出すとシーヴィルはまじまじとそれを見つめる。

 

「…あれ?さっきまでその石から神聖な魔力を感じたんだけど…。」

 

「神聖な魔力?」

 

「前に隣国の神国ハルガーディルに旅に出ていたんだけどねぇ、その時に大聖堂を訪ねたんだよ。その時、創世神の像を見た時にも同じ魔力を感じたんだよねぇ。」

 

神国ハルガーディル?…どこの国だそれ。

 

『創世神のお膝元じゃよ。…まぁ、この世界における創世神はワシなのじゃがな。』

 

(そうだったのか?…聞いてないぞ。)

 

「ん!?また魔力が強くなった!」

 

『…どうやらこのシーヴィルとやらはワシが同じと話す際に使う神気に反応しておる様じゃな。』

 

(神気?何それ。)

 

『簡単に言うと神の力が掛かった魔力じゃ。…そろそろ切るぞ、ワシの正体がバレでもしたらややこしい事になりそうじゃからのぉ。』

 

(分かった。)

 

そう言って神様との通信を切るとまたシーヴィルが不思議そうに俺を見る。

 

「…あれぇ…?また弱くなった。…でも完全には消えてないよなぁ。」

 

神様が通信をする時の神気を感じ取って反応してたのか、シーヴィルは。

他のみんながいるところで使っても誰も反応してなかったし、やっぱり凄いやつなんだな。

 

…そういえば、何か大事なことを忘れている様な。

 

「あ!シーヴィル、大事な話ってなんだよ!?」

 

その言葉を聞いてシーヴィルはハッとした様な顔をする。

 

「…もう大分時間とっちゃったねぇ。怪しまれるといけないからまた後でにしようよ。」

 

「それでいいのか…?」

 

「まぁね、大事な話だしもう少し落ち着いて話したいからねぇ。」

 

それだけ言うと、シーヴィルは魔法を解除し外で待機していた皆を部屋の中に入れる。

 

「ゴメンね、みんな。長い間外に出てもらっちゃっててさ。」

 

「いえいえ。…それで、遠征に出ている兵たちはいつ頃戻ってくるのですか?」

 

「そうだねぇ。…今日の夕方くらいには帰還するんじゃないかなぁ?」

 

「作用ですか。…ザウロ、後で俺が騎士団長に掛け合って護衛団に人員を送ってもらおう。」

 

「お気遣い感謝します。」

 

「君、ザウロくんだっけ?」

 

「え。あ、はい。ザウロ・リングレナルです。」

 

「君にお願いがあるんだけど、いいかなぁ?」

 

「は、何なりとお申し付けください。」

 

シーヴィルの奴、何を頼むつもりなのだろうか?

と、そんなことを考えているとエストが俺の服の袖を引く。

 

「どうした?」

 

俺が小声で返すと、エストが「さっきの話って何だったんですか?」と聞いてくる。

何だったんだろう。…正直、自分でも分からない。

 

「神様の話…かな?」

 

「…?」

 

俺がそう答えるとエストがはてな?と言った顔をする。…まぁそんな顔になっても仕方がないか。

 

すると、話を終えた様子のザウロさんが俺達の所へやって来る。

 

「ヒロト殿。これからの護衛任務の事なのだが、君達はしばらく王城に滞在していてはくれないか?」

 

「王城待機…ですか?それって…」

 

「言いたいことは分かる。だが、決して仕事が悪かったわけではない。…シーヴィル様が仰っているんだ。君達3人を王城で滞在させたい、とな。」

 

なるほど。…あの話の事でか。多分まだ他にもあるんだろうけれども。

 

「と言うわけですまないな。助けを請うておきながらこんなクビにした様な具合になってしまって。」

 

「いえ、僕たちは別に。」

 

「そーだな。また機会があったら呼んでくれよ。」

 

「ありがとう、2人共。…それでは私はこれで失礼するよ、公爵様に報告せねばならん。」

 

「そうですね。…それではまた明日の朝にでも。」

 

「…そうであったな。イリア殿もまた機会があればお願いします。」

 

「おう!」

 

ザウロさんは俺たち2人に別れを告げると公爵邸へと帰って行った。

…中途半端だったが仕方ない。

 

「よし、じゃあジーマ、アリエ。この3人に部屋を用意してあげてよ。まだ部屋が空いていたでしょ?」

 

「承知いたしました。…それじゃあこっちに来てくれ。」

 

こうして俺達は公爵邸から王城に移ったわけだが…。

まだこの時、俺たちは王都の裏で動き始めている影がある事を知る由もなかった。




*受験関係のことで更新が遅れる場合があります。

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