神様が、ヒロトの今いる世界について教えてくれます。
「大きな部屋だなぁー…。」
「荷物はまた後ほど公爵家から届けてもらう事になってる。」
ジーマさんに案内された一室は広かった。
とてつもなく。そうとしか言いようがない。
自分で言うのも何だが、ここは俺たちが泊まっていい部屋ではないと思う。
「…一応確認しますけど、ここ本当に俺たち泊まっていいんですか?」
「ああ、もちろん。ゆっくりして行ってくれ。…それでは私はこの辺で失礼するよ。両隣に君の仲間の部屋を用意しておいたからね。」
「は、はぁ。ありがとうございます。」
ジーマさんは「それじゃ、」と言って何処かへ歩いて行った。
公爵様に部屋を貸して貰った時もそうだったけど…慣れないなぁ。
落ち着こうとしてベットに寝転ぶけど、公爵家のベットよりも更にフカフカ度が増して落ち着かない。
…魔法でも勉強するかなぁ。
まぁ勉強と言ってもただ本を読んで魔法の使い方や名前を暗記するだけなのだが。
『暇みたいじゃのぉ。…どれ、一つワシがこの世界のことについて話してやろうか?』
(この世界の事?…なんか、面白そうだな。)
実際、俺はまだこの世界のことについてほとんど知らない。
…この世界の常識にも少々疎いし。
『まず、今ヒロト達がいる世界は一つの大きな大陸で構成されとる。その大陸の名はヴェニアス。』
(たった一つの大陸の上にたくさんの国があるのか?)
えっと何だっけ。昔も地球はパンゲアだとか何だとかの大きな大陸だけだったんだよなぁ。…なんか親父が「超大陸パンゲアは男のロマンだ!」とか言ってたような言ってなかったような…。
『ヴェニアスはとんでもなく大きな大陸でな、その大陸の上には沢山の国があるのじゃ。…いくつあったかは忘れてしもうた。』
(…そこ1番肝心なとこじゃないか?)
『気にしては負けじゃ。…そして此処、アルカゼニア公国が位置するのは大陸の中心から西は少し逸れた場所じゃ。』
(アルカゼニアの周りにはどんな国があるんだ?)
『それは自分の目で確かめるとよい。全てをワシが教えてしまっては実際そこに着いた時に感動が薄れてしまうじゃろう?』
なるほど、それは一理ある。
(…アルカゼニアって結構大きな国なのか?)
『うーむ。他と比べるとそこそこ大きいのではないか?他にも大きな国は沢山あるがの。』
(他にも大きな国が沢山あるのかぁ。)
『…ワクワクしておるのか?』
(当たり前だろ。)
まだ見ぬ地への冒険とか凄く憧れる。
俺が求めてる異世界生活ってのは多分、冒険なんだろうな。
そこにはまだ見たこともないモノや人々が…。ん、待てよ。
(なぁ神様。この世界には幾つの種族が暮らしてるんだ?)
『ほぉ、やはりそこに興味持ったか。少し待っておれ、資料を持ってくる。』
(資料って。)
いくら神様といえど、歳をとれば物忘れがひどくなるものなのか?…いや、そもそも神って年取るのか?
そんなくだらない事を真剣になって考えていると資料を見つけた神様が種族について話し始めた。
『まず、このアルガゼニアを始めとして、多くの国や地域で生活をしておるのが一般的に人間として認識されるヒューマンじゃな。』
(この世界じゃ、ヒューマン族って言うのか?)
『まぁそんなところじゃな。…そして、ガルフのような獣人族。そして、獣人族の特徴とヒューマン族の特徴を併せ持つエルーン族。エルーンはお主の世界で言う『ケモミミ』みたいなもんじゃな。』
(エルーンかぁ。ゲームとかアニメの中でしか聞かなかったけど、やっぱりいるんだな。)
『他にも大人になっても小柄なハーヴィン族のや頭に角を持つドラフ族。背中の羽で空を飛ぶことができるエルフ族と魔物の血が流れた魔族がおるな。』
(色々居るなぁ。って、魔族も暮らしてるのか?)
『あ、そうじゃな。お主からすれば魔族は魔王とかそういう悪者が多いように思っておるのか。』
(魔族がいるってことはそれを統率する王がいるわけだろ?)
と言うことは必然的に魔王も存在しているという事になる訳であって…。
『確かに魔王は存在する。…じゃが、お主が思うような魔王とはかけ離れてると思うぞ?』
(へ?どういう事?)
『ま、そのうち会う機会もあるであろう。その時にでも本人と話してみるがよい。』
会う機会があるって…。
どんな経緯で会う事になるのか想像がつかない。
(…そういえば、リドルトで出会った人達の中にもいろんな種族の人がいたなぁ。)
素性の知れない俺たちを快く迎え入れてくれたリリーブの宿主、アルバーさんはドラフ族特有の角を持ってたし、服を揃える際にお世話になったアルベルトさんは背が小さかったからもしかしたらハーヴィン族だったのかもしれない。
…意外と近くにそういう人達が居たんだなぁ。
『どうした、ヒロトよ。』
(いや、何だかさ。リドルトは俺の故郷って訳でもないし、あの街に居たのはほんの数日のことだったけど、何だが懐かしいなぁって思ってさ。)
『…あの街がこの世界においてのお主の故郷、ということではないのか?』
(そうかも知れないな。…宿のベットでゆっくり眠りたい。)
『…なら、早くこの王都で起きとる事を解決せねばなぁ。』
(そうだな。…でも、一体誰が黒幕なんだろう。見た感じ全くわからないんだけど…。)
公爵様は護衛団の中にいるって言ってたけど…。
シーヴィルの話を聞いてから整理したほうがいいのかもな。
と、神様と会話をしながら思案にふけっていると部屋のドアがノックされた。
「ヒロトさん。私です、アリエです。シーヴィル様が部屋に来てくれ、と仰っております。」
「あ、今行きます。」
よし!とにかくこの問題を解決して、早く皆でリドルトへ戻る。それが俺の目標だ。
俺は扉を開けると、アリエさんの案内でシーヴィルの部屋へと向かった。