「どうだい?いい魔法は見つかったかい?」
遠くの方からシーヴィルの声が響いてくる。
「…『イルミネート』『パワー・ブースト』『マジックハンド』…よし、こんなもんだろ。」
しかし、無属性魔法ってのは凄く沢山あるんだな。効果とか表記が難しすぎて分からないし、とりあえず全部覚えといたけど。
「なぁー!それぞれの魔法の効果を教えてもらいたいんだけどー!」
「オーケー。少し待っててねぇー。」
と、だけ言うと、シーヴィルは天井まで飛び上がってこちらまで飛んできた。
なんか、某漫画の舞空術みたいで面白いな。
「それで、どの魔法のことを知りたいのかなぁ?」
「あ、コレなんだけどさ。『マジックハンド』自らの手では届かない範囲まで魔法で作った手を伸ばすことが出来る。って書いてるんだけど、範囲が書いてないんだよな。」
もしこれが魔力に比例するとかだったら俺的にはかなり有利な気がするんだが。
「あ、それは背中を掻く時に腕が届かないご老人。もしくは肥満の人が使う魔法だねぇ。結構いい感じに掻いてくれるから大人気だよ。」
「孫の手かよ!…はぁ。まぁ、でも他の魔法は使えそうなんだけどな。」
その他の魔法についてもシーヴィルに教えてもらう。
『パワー・ブースト』
その名の通り、筋力にブーストをかける魔法。『シフト・アクセル』とは違い魔力の調節やらなんやらが殆ど必要ないためお手軽ではあるものの効果時間がほんの数秒しかないのでトドメの一撃を放つ時ぐらいしか使い所がない。でも、連続で掛け続けることは出来るみたいだし何より魔力がすぐに回復する俺には効果時間のペナルティも関係ない。
他のステータスにもブースト魔法がないのか調べてみると、どうやら他のステータスにブーストをかける魔法も存在しているらしい。
一応全部覚えておいたから、使えそうなら使おうと思う。
『イルミネート』
昔は職人が精巧な技巧をどうにか簡潔に出来ないものかと開発したらしい。
基本的にどんな物質でも様々な形に変形させることが出来る。ただし、変形させる物質が硬ければ硬いほど多くの魔力を必要とし、繊細に作ろうとすればするほど魔力のコントロールが必要になってくる。
主に魔法使い職の人達が簡易的な武器を作るために使用する魔法だそう。
これはいろんな場面で便利そうなので覚えて置く。
「どうだい?いくつか役に立つものもあったかい?」
「ああ、バッチリだ。…そういえば、さっきから気になってたんだが。」
先程、無属性魔法の書物を探すためにサーチをかけたところ、ある一部分だけがサーチの魔力を遮った。
…何か、凄いものが保管されている気がする。
俺がその事をシーヴィルに話すと、少し間を置いたのち、物騒な単語が飛んできた。
「あのエリアには国が厳重に保管する禁忌魔術の書物が保管されているんだよ。…その書物から放たれる瘴気によって今までさな本に触れたものたちはその魔術に取り憑かれ、やがて理性を失う。」
「やっぱりあるんだな。そういう魔法が。」
しかし、どんなものがあるのだろうか。
俺が思う禁忌魔法っていうと死の呪いだとか自爆だとか…。
…ダメだって分かってはいるが何か気になるな。
「なぁシーヴィル。…流石に見るのはマズイよな。」
「…死にたくなければ手を出さない事だね。」
その通りだ。
と、そんな事を話していた時。部屋の中に声が響く。
『シーヴィル様。今、公爵様がお見えになられています。…何でも、昨日の爆破に関する事なのだそうですが…。』
公爵様が…?何か新しいことでも分かったのだろうか?
「分かった。用事も済んだしすぐそっちに戻るよ。公爵様は僕の部屋でおもてなししといて。」
『かしこまりました。』
そして、声がプツリと消える。
この部屋全体に声が響いていたが、何かに拡声器的な魔道具でもあるのだろうか。
「さて、急いで戻ろうかぁ。公爵様を待たせてしまっては申し訳ないからねぇ。」
「そうだな。」
「『テレポート!』」
そしてまた本棚だらけだった視界が歪み、回り始める。
「…帰ってきたか。シーヴィル、ヒロト殿。」
目を開けると目の前に居たのは公爵様、そしてゾルアさんに…ガルフ!?
「お前、目を覚ましたのか!?」
「ああ。…すまないな、迷惑を掛けてしまって。」
「助かってよかった。俺も出来る事はやったんだがどうにも心配でさ。…それで、何が報告があったみたいだけど。」
すると、公爵様が口を開く。
「昨日の件。ガルフから全てを聞いた。…どうやら、本格的に『影』が動き始めたようだ。」
『影』に本格的な動き。
それは要するに、その組織の首謀者がこの国の主導権を奪う。或いは王族を殺し、過去の恨みを晴らす。
何れにせよ、国全体が危機にさらされているということだ。
「ガルフ、あの夜の事を話してやってくれ。」
あの夜の事。それは恐らく、ガルフが何者かに瀕死の重傷を負わされた事。
未だに事件の全体像がつかめていない原因の一つがその出来事である。
そして、ガルフはゾルアさんに促され、あの夜に起きた出来事を全て話す。
「…黒装束の男…か。如何にも悪役というか、そいつは多分組織の幹部クラス以上だろうな。」
そして此処にきて禁忌魔術ときた。
そんなもの使えるとしたら組織のボスという可能性も大きい。
「『ロストエナジー』…確かに禁忌魔術の一種ですねぇ。相手の魂を青白い炎へと変え、跡形もなく焼き消す。」
なんと物騒な。やはり禁忌魔術というのは恐ろしいものだ。
と、其処へアリアさんとジーマさんが入って来た。
…何だか焦ったような表情だが…何かあったのだろうか。
「公爵様、シーヴィル様。…本隊に連絡を取ったのですが、未だに通信が繋がりません。…陛下の御身に大事が無ければ良いのですが…。」
「そうか…。そういえばシーヴィルよ。兄上がいつ戻られるか知らぬか?お前も共に遠征へ出ていたはずだが。」
「彼らの存在が気になりましてねぇ。陛下に許可を頂き、今こうして此処にいるのですよ。…しかし、到着は今日の夕刻頃と聞いていたのですが、遅いですねぇ。」
うむむ、なんか嫌な予感がするんだが。
…今、国の騎士団は街の復興とか避難者の手当てに追われている。
それに、まだ遠征に出た本隊が帰ってきていないときた。
ふと、隣を見るとガルフも険しい表情をしている。
…どうやら思っている事は同じらしい。
「あの、公爵様。」
「…分かっておる。兄上の事を案じておるのだろう?」
「はい。…俺、王様のところへ行って来ます。何か、嫌な予感がするんです。」
するとガルフも続く。
「私も同意見です。…公爵様、国王陛下に大事がないとも限らないのです。先日も王都で大規模な爆破もそうですが、此処までくると相手が陛下の経路を知っていてもおかしくないのでは?」
そう、相手は『影』。
王族の命を狙う殺しの集団。その奴らが騎士団の動向を把握していたという事は王様の移動経路を網羅していてもおかしい話ではない。
「本隊にはダラス将軍もおる。…だが、もし仮に兄上の動きを知っておるものがあるとすれば…。」
騎士団は多分、隊列を乱さずに行進しているんだろうが、一度その中心に魔法が撃ち込まれれば大勢が倒れ、王様の周りは手薄になってしまう。
…その将軍がいくら強くても奇襲攻撃にたった一人で対応して撃退するというのは厳しい気がする。
「ヒロト殿。たくさん頼んでしまってすまないが、兄上の元へ向かってくれないだろうか。…万が一ということもある。」
「分かりました。…あの、ガルフは?」
俺がそう問うと、公爵様とゾルアさんが少し考えた後、
「お前は此処で待機だ。まだ傷の痛みも残っているだろう。」
「…!?何故ですか、私はもう平気で…ッ!」
大声をあげた時の力みが傷に響いたのか、ガルフはその場に倒れこむ。
…いくら上位の回復魔法で治療したと言っても、其処まで魔法の心得がない俺が治療したからか、多少の痛みは残ってしまうらしい。
「…ガルフ。これは団長としての命令だ。来るべき敵を討つために、今は体を休めるんだ。」
「…分かりました。」
ガルフはそう言って引き下がるも、少し悔しそうだ。
「…それでは、ヒロト殿、兄上のことを頼む。…今、王を失えば、この国は再び混乱の渦に巻き込まれるだろう。それだけは何としても阻止せねばならん。」
「勿論です。…あ、でも。本隊の場所までどうやって行けばいいんでしょうか?」
助けに行くのはいいが、俺は王様が何処にいるのか知らない。
ただ、我武者羅に探しても見つからないだろうし。
と、頭を悩ませていると公爵様がある提案をしてくれた。
「シーヴィルよ。お前は兄上の動きを知っとるな。案内してやれんか?」
おっと、その手がありましたか。
確かにシーヴィルは王様と共に行動してたから、移動経路を知っている。
頭の回転が速いな、公爵様は。
「そ、そのことなんですが…。僕、実は調べることがありまして…。」
え、ダメなのか。参ったな。
「でも、経路を伝える方法はありますよ。ヒロト、そこの紙を取ってくれないかい?」
「ん?この山積みになってるやつか?」
俺がそう言って紙を手渡すと、シーヴィルは何かを唱え始める。
「『トレース!』」
そして紙の上に魔法陣が発生すると、白紙だった紙に凄いスピードで地図のようなものが描かれていく。
…記憶を物に転写する魔法か。
何か役に立つかもしれないし、覚えておこう。
「…よし。これでいいかなぁ。」
そう言ってシーヴィルは出来上がったばかりの即席の地図を俺に渡す。
…記憶を読み取ったからか、即席で作ったとは思えない出来だ。
「…それでは、ヒロト殿。兄上のことをくれぐれも頼む。」
「はいっ!」
内容で書くことはそんなにないので質問します。
ルビ振りとかってどうやってやるんでしょうか?
教えていただけると有難いです。