「陛下。公爵殿下が陛下の護衛を依頼した冒険者等をお連れしました。…くれぐれも粗相のないように。」
ダラス、と名乗った強面の将軍は俺達に釘をさすと「それでは」と一礼し、馬車から降りていった。
そして、そのまま馬車が出発する。
しかし…。俺も王城や公爵邸で色んな馬車を見てきたが、ここに王様はお付きの人と乗ってるのか。
なんというか、数人で乗るにしては広すぎる。
「君達が。リアナの命を救った冒険者達なのだな。…なるほど、エルトレアが認めるだけのことはある」
「きょ、恐縮です。…初めまして国王陛下。」
そして、優しげな表情で俺達を見つめながら、今回の依頼の最重要人物が口を開く。
なんだろうか、優しい感じではあるものの上に立つもののオーラ的なものがビリビリと感じられるかがする。
元の世界でもよく聞く『王者の資質』とかいうものだろうか。
俺の両隣に座っている2人に関しては、まるで石化の魔法をかけられたかのような具合で先程から全く動かない。
公爵様に綺麗な挨拶をしていたエストですら固まってしまうほど、この方は偉大なのだろう。
「初めまして。…君が霧島ヒロト君か。話は既に弟から聞いている。なんでも、リドルト東部の森林に現れた白獣を仕留めたそうではないか。」
「い、いえ。…なんといいますか、運が良かっただけというか。」
俺がそう答えると、王様は少し微笑み。
「謙虚なのだな。…それで、君がエスト・シルヴィア君だな。アリエが迷惑をかけたようで申し訳ない。」
「い、いえ!私は一人っ子だったものですから…。嬉しかったです。」
「そうか、それは良かった。…其方の君がイリア・ミテラスト君かな?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
イリアの奴、緊張してるところにいきなり話しかけられて…。
隣ではエストが肩を震わせて笑いをこらえている。もちろん俺も。
イリアが何か恨めがましい目でこちらを見てくるがこれは仕方ないと思う。
「君の話は聞いているよ。なんでも数々の村の用心棒を受け、受けた依頼は必ず成功させるんだとか?…この国は広いものでね、全てをカバーは仕切れないのだ。君の様な者が居てくれると助かる」
そんな事してたのか。
…というか、国王様が把握してるほど有名だったのか、イリアって。
「そ、そんな!あ、あたしは、当たり前の事をしてただけで…!」
「君の行なっていた事は賞賛に値することだ。国民を代表して礼を言わせてくれ。」
そう言われて、イリアが顔を赤くする。
そういえば初めて見たな、こいつが顔を赤くする所。
「…そういえば、まだ自己紹介も済まさて居なかったな。知ってはいるだろうが、私はアルカゼニア公国国王、ザヴェル・クレウス・アイギシュタだ。この度は弟からの依頼を受けてくれてありがとう。この国の騎士団には精鋭が多いのだが、念には念をという。宜しく頼むぞ。」
すると、左隣にいたエストが床に膝をつき忠誠のポーズになる。慌てて右を見ると、イリアも同じ格好をしていた。
急いで俺も同じ格好をすると、エストが彼に答える。
「はい、お任せ下さい。エルトレア様たってのご依頼です。必ず、お守り致します。」
「「い、致します。」」
こういうのって多分、俺が言うべきなんだろうけど、下手をするといけないのでエストに任せておいたほうが良いか。
「うむ、宜しく頼む。」
エストの答えに満足そうに微笑むと、従者達に飲み物とお菓子を出す様に指示する。
俺は急いで止めようとしたのだが、「君達は護衛であると同時に私の客人でもある。」と言われ、何も言えなくなってしまった。
…でも、こういう所は何だか公爵様に似てるな。やっぱ、そこは兄弟だからか。
と、そんな事を考えながら少しホッコリしていると隣で何か考え事をしていたエストが話しかけてきた。
「…あの、ヒロトさん。私達、護衛で来たんですよね?これで良いんでしょうか。」
「あたしも同意見なんだけど。」
「俺もそう思ってんだけど…。ご厚意を無駄にするわけにもいかないだろ?」
俺達からすれば護衛≠客人なのだが、国王様の考え方は護衛=客人らしい。
弟の客人は兄である自分の客人でもあるとか、そういう感じなのだろうか。
「とにかく、気は抜くなよ。今は何も起こってないから良いが、この先何も起こらないとは限らない。…彼から目を離さないでおこう。」
俺達はあくまで護衛としてここに来ているんだ。万が一の事があったらすぐにでも戦える準備をしなくちゃな。
…でも、なんか俺の想像してた異世界での冒険とは違うなぁ。
もっと冒険者ってのは自由に生きる職業だと思ってたんだけど…。
思えば、あの森でリザードマンを倒してからか。あの時は、もっと冒険者らしく生活してたんだけども、今じゃ公爵邸に滞在させてもらうだけじゃなく、いつの間にか王城に滞在してるし。
…早く、帰りたい。
そんな事を考えながら、ふと窓の外に目をやると騎士達が何やら慌てて…!?
「な、何だ!?」
「…どうやら魔物の襲撃にあった様だな。」
魔物の襲撃か。ここに来てやっと王道のイベントがやって来た訳なんだが、そんな呑気なことは言ってられないな。
「イリア!2人は此処で国王様を守っててくれ!」
この馬車の中に魔物が入って来て、そこでエストの魔法を放てば、周りにも被害が出るだろう。なら、体も小さくて、俊敏性に優れたイリアが中に残ったほうが良い。
「わ、分かった!」
「エスト、行くぞ!」
「は、はいっ!」
俺とエストが外に出ると、騎士団の者達がガチガチに鎧を着込んだ何かと戦っていた。
「『エネミー・サーチ!』…これは、相当な数だな。10はくだらないぞ。」
「おかしいです!あの魔物はゴブリン・ロード。ゴブリン達の上位互換存在なのですが、こうも群れて集まる様な魔物じゃないですよ!」
確かにな、ゴブリンが群れるのは分かるがその上の奴らってことは言うなればゴブリンの部長とかだろ?
…会社で部長が群れてるのはあまりイメージできないな。
「…となると、誰かが召喚してると見たほうが良いな。これだけ大掛かりにやってるんだから間違いない。急いで元凶を潰すぞ。」
「分かりました!…でも、こんな混乱状態でどうやって特定しましょうか?」
「索敵魔法を使う。エスト、俺がサーチしてる間、ゴブリン・ロードの相手は任せたぞ。」
「任せて下さい!アリエさんに教わった新しい魔法でギッタギタのメッタメタにしてやりますよ!」
あら、物騒。
「女の子がそういうこと言うもんじゃありません!…まぁ、任せたぞ。『エネミー・サーチ!』」
このゴブリン・ロード達が召喚された魔物なら何処かに発生源があるはず。
…あれ、何だこれ。
発生源がいくつもあるんだが。…集団だと厄介だな。一つ一つ回ってるうちに他の移動されたらお終いだ!
「『アイシクル・レイン!』『アイシクル・レイン!…ヒロトさん!ダメです、いくら倒してもキリがありません!」
今はまだエストも持ち堪えているが、そのうち魔力切れを起こして倒れてしまうだろう。
俺は索敵魔法を発動させたまま、エストの元へ駆け寄り、攻撃を開始する。
「『アイシクル・レイン!」…エスト、奴らが発生してる場所が複数にバラけてる。…複数人が同時に召喚してるとしたら、相当厄介だぞ。」
「…そうですね。というか、いつの間に私の魔法を覚えたんですか?」
「実はコッソリ練習してました。…と、そんな事を言ってる暇がなくなって来たな。爆発魔法で一掃するって手もあるが、それじゃ周りに被害が大きい。」
あの書庫で高威力の高等魔法もついでに探していたところ、そんな魔法もあったから覚えておいた。…使い所は限られるが。
「ヒロト殿、陛下はご無事か!」
遠くからダラス将軍が魔物を切り捨てながら此方に走ってくる。
「王様はご無事ですよ。今、イリアが守ってますから。」
「そうか。…召喚魔法だな、この魔物の急な襲撃は。」
彼も勘づいていたか。流石、一国の騎士団をまとめる騎士団長だ。状況判断能力に長けている。
「召喚方陣の場所は把握しているのか?早急に始末せねば、いくら我らとていつまでも持ち堪えていられる訳ではない。」
「召喚方陣の場所は把握していますが…、どうにも、複数人が同時に召喚魔法を発動させている様です。」
「…そうか。」
参った、これはもう打つ手なしなんじゃ…。
っと、そうだ!神様が居るじゃんか!
あの人なら何か解決できる方法を知ってるかもしれない。
(神様っ!神様っ!)
『…ぐー…ぐー』
寝てる…のか?
そ、そうだ!さっき『寝て良いか?』って言ってたじゃんか!
…自分の力でどうにかしないといけないって事か。
考えろ、考えろ俺!何かまだ打開策があるはずだ。
…遠くの方から、必死に戦う声が聞こえてくる。
「怯むなー!陛下をお守りするんだ!」
「ヒロトさん!もうすぐそこまで来てますよ!」
「総員、陛下に手出しをさせるなー!!何としてでも、陛下だけはお守りするのだっ!!」
…諦めてない人がいるのに、ここで俺が諦めるってのはおかしな話だな。
「『アルス・パルヴァライズ!』」
俺がそう唱えた瞬間、ゴブリン・ロード達の足元に魔法陣が発生する。
それに気づかず、そのまま俺たちに向かって攻撃を仕掛けようとして…。
「「「グギャァァ!!!!!」」」
その瞬間、彼等の足元の魔法陣から火柱が発生する。その業火に焼かれ、次々と焼け死んでいく。
俺の傍らでは、火柱に焼かれる彼等を見てエストと、総員に命令していたダラス将軍が固まっている。
周りにいた騎士達も魔物達も、皆が一斉に動きを止めた。
「さぁ、始めるぞ!」
次回からが、第2部の後編です。
急激にストーリーが加速していきますが、後々間にもストーリーを挟んでいくつもりです。
感想やご指摘の方、よろしくお願いします。