神様、俺を異世界へ。   作:Watapon-

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第33話 死の恐怖

「…しかし、驚いた。まさか火属性の高等魔法を操るとは。話には聞いていたが、君は中々の手練れだな。」

 

「いえ、そんな。ご無事で何よりです。」

 

…あの後俺は、その場にいたゴブリン・ロードを全て倒し、こっちへと向かってくる奴らが追いつく前にその場を離れた。

召喚を行なっていた魔術師達が追ってくるかとも思ったのだが、召喚した魔物を一瞬で消されて怖気付いたのか、今の所サーチに反応はない。

 

幸い、ゴブリン・ロード戦で犠牲者は出なかったものの、負傷者は数名。

それでも、あの量の魔物を相手にして数名というのは基準がわからないが凄いのだと思う。

やはりそこは騎士団の精鋭というだけの事はあるのだろう。

 

そんな具合で先程よりペースを上げて王都へ向かっている訳だが、先程のようにならないように俺の『コネクト』を使って対策会議をしていた。

参加しているのはこの馬車に乗っている俺とエスト、イリア、国王様。

そして、外で団の指揮を執っているダラス将軍だ。

王城の方へも繋ごうとしたのだが、ザウロさんやガルフに繋がらなかったので断念。

一度掛けた相手なら魔力消費が大きくなるもののそれなりに距離があっても会話はできるとの話だったが、少し遠すぎたらしい。

 

「それで、さっきの襲撃のことだけどさ、外にいくつか召喚ほーじん?らしいのがあったんだろ?」

 

「ああ、其処から魔物が召喚されていた。それは間違い無いと思う。」

 

「でも、普通のサーチで見つからなかったのならやはりサイレントを使ってるんでしょうか?」

 

それが妙な点だ。

実は、サーチで召喚方陣の場所を把握した後召喚者も捉えようとしたのだが、サイレントに全く反応を示さなかったのだ。

 

『その、『サイレント』というのは隠密行動をしている敵を捕捉する魔法なのだろう?それが機能していないという事は、他に何かあるのではないか?』

 

他に何か?…俺が知ってる限りだと、召喚魔法は発動者が召喚方陣から一定距離離れると解除されるって事ぐらいか。

だから、離れた場所から複数の召喚方陣を発動させることなど、不可能に等しいと思うんだが。

 

「ヒロト君、今君が使っている『コネクト』の魔法でシーヴィルに会話を繫ぐ事は出来んのか?」

 

「試して見たんですけど、繋がらなかったです。…なあ、エスト。召喚方陣を魔法以外の方法で作り出すことって出来るのか?」

 

「…うっすらとしか覚えてないですけど、召喚魔法は元々、術式をその場で発動させるのではなく、スクロールに保存して使用するものだったとか。昔読んだ文献に書いてあったと思いますけど…。」

 

「それは何も、召喚魔法だけではない。今より遥か昔、まだ魔法について十分な理解のなかった頃。人々は己の魔力をスクロールに保存し、魔術の発動とともにその魔力を解放して戦っておったのだ。旧式の方法であれば、発動させた後どれだけ距離を取っても発動させ続けることができる。」

 

…じゃあ、その旧式の方法だからサーチに反応せず、方陣から出てきた魔物だけが反応したって事か。

 

「…なぁ、エスト、イリア。ちょっと頼みがあるんだけど。」

 

「「…?」」

 

「2人だけで王様の護衛できるか?俺ちょっと用事を思い出しちゃってさ。」

 

俺が唐突に放ったその言葉に2人は一度頷くと、びっくりしたように再びこっちを向く。

 

「ちょ、ヒロト?2人だけで護衛しろってどう言うことだよ?」

 

「いや、言葉通りの意味だよ。俺ある人に用事を頼まれてたのを思い出したんで急いで行かないといけないんだ。」

 

「…あの、王様の護衛とその用事。どちらが大事なんですか?」

 

「そりゃ勿論用事だよ。」

 

2人は固まったままだが、目の前に座っている王様の表情を見るに俺が何をしようとしているのか気づいているらしい。

 

「ではヒロト君。その用事とやらに行ってきたまえ、それは大事なことなのだろう?」

 

『へ、陛下!?』

 

将軍も驚きの声を上げているが、王様は優しい表情のままこう告げる。

 

「エスト君、イリア君。君達には引き続き私の護衛を頼んでもいいかな?」

 

「え、あ、はい!勿論です…けど…。」

 

「それでは行ってきます。…二人とも。頼んだぞ。」

 

2人はまだ納得がいっていないようだが、王様が許すというのもあって渋々了解してくれた。

…ちょっと悪いことをした気分だけれども、まぁ仕方ない。

 

俺は馬車から降りると、ゴブリンロード達と戦闘した場所へテレポートし、もう一度サーチをかけてみる。

すると、魔物達の反応は既に無くなっている。

 

「…流石に撤退したか?まあ、それなりに時間も経ってるわけだし…。」

 

もしかしたら方陣は既に回収されたのか。

それとも、ただ単に反応していないだけなのか。

確かめるために俺は『サイレント』を発動させ森の中へと入る。

そして、魔物が発生していたポイントへと急いで向かう。

と、その時。

俺が通り過ぎた直後、近くの木の幹に矢が突き立つ。

 

「こっちには構ってる暇がないからな。…当たりさえしなければ問題ないか。」

 

気にするのも程々に、反応のあった場所へと足を急がせる。

すると今度はサーチが頭上に反応する。

 

「…!?」

 

急いで飛び退き、体勢を立て直すと、目の前に人型の魔物の姿があった。

コボルト…にしては少し大きいか。

だが何にせよ、ここを通らない事には用事を済ます事が出来ない。

幸い、相手は奇襲攻撃を仕掛けようとしていたらしく一体しかいない。

 

「グルァァッ!」

 

「よっと。…はあっ!」

 

魔物が放つ横つなぎの斬撃を相手の頭上に跳んで躱し、怯んだところを背後から一閃。

…つい最近まで剣の存在を忘れていたものの、何とかなった。

剣についた血を魔法で作製した水で洗い流し、鞘にしまおうとしているとキラリと魔物の懐が一瞬光った。

 

「ん?…何だこれ。」

 

光るものの正体は魔法陣が描かれた小さなガラス玉のようなもの。

…そういえば、ゴブリンロードを倒した時にもガラスみたいなものが溶けた何かがあったな。

 

「召喚方陣と何か関係があるもの…か?」

 

しかし、いくら考えても魔法の知識に乏しい俺には分からないので取り敢えず方陣の場所へと向かう事にする。

暫く走ると目的地に到着した。

 

…特には変わった所のない場所だが、其処だけが何故か開けており、何より辺りの木々から微かに魔力を感じる。

ここで何かの魔法が発動されたのは間違いないとみていいだろう。

俺はこの場所ならと考えてもう一度、『サーチ』を発動させる。

 

すると先程までは反応がなかったが、この場所全体に微弱ではあるが何かの反応がある。

その反応は中心へと向かうほどにほんの少しづつ強くなり、丁度中心辺りの場所で1番強い反応を示した。

…どうやら、何かが地中に埋め込まれているらしい。

 

「でも、えらく深い場所に埋め込まれてるな…。あ、そうだ!」

 

穴を掘る道具がなくても、穴を開ける魔法ならある。

 

「『ホールグラウンド!』」

 

そう俺が唱えると、魔法陣が発生した場所に深い穴が開き、その底に何かが落ちているのが見えた。

魔法を解除し、底に乗ったまま上に登ってきた土塊の様なものを砕くと、明らかに自然のものではない魔道具の様なものが出てきた。

そしてそれには魔物の懐にあったガラス玉の魔法陣と同じ文様が。

…これでハッキリした。この魔道具は召喚方陣を作るためのもの。

サーチに反応しなかったのは地中深くに埋められ、届かなかったから。

 

「て事は、他の場所にも埋め込まれてるわけだな。」

 

そして、次の場所に回収へ向かおうと、足を踏み出したその時。

 

「地面が光って…ッ!?」

 

そして目を瞑った次の瞬間。

轟く轟音と共に爆発が起き、吹き飛ばされた。

 

砂煙に霞む視界の先には黒いローブを着た人型の何かの姿がある。

神様パワーのお陰で何とか耐えられたものの、いきなり吹き飛ばされ木々に激突したため、中々立ち上がることができない。

 

「…貴様が公爵の雇った護衛か?」

 

やがて視界が少しずつ晴れていき、目の前に立っているのが黒いローブを着た男だということが分かる。

そして同時に、ある事を思い出す。

 

『ガルフが襲われたのは黒装束の男』

 

「…お前が…!?」

 

「そうか、私の事を知っていたか。…まあ、知っていようがいまいが同じだがな。」

 

…間違いない。こいつがあの夜ガルフに重傷を負わせた男だ。

待てよ、て事は…!

 

「…覚悟は…いいな。」

 

そして、俺に向けその男は手を突き出す。

…くそっ!何か手は…!そうだ!

 

「『ロスト…』」

 

「『ショート・テレポート!!』」

 

「…ほう。」

 

…ヤバい、震えが止まらない。

あの魔法を唱えられた瞬間、心の底から死ぬ事への恐怖を感じた。

生まれてこのかた経験したことのない程の恐怖だった。

 

「…震え…か。」

 

目の前では恐怖の原因である男が、こちらをじっと見ている。

何だろうか、この威圧感は。

油断すれば押し潰されそうな、そんな強い威圧感を感じる。

 

俺は深呼吸をすると、未だに震えるで鞘から剣を抜く。

…ダメだ、剣先がブレて狙えない。

そして、震える剣を両手で抑え、臨戦態勢に入ったその時。

 

「…時間切れだ。」

 

「…?な、何を言って…?」

 

「次は必ず。…殺す。」

 

「…!!」

 

殺意を込めたその一言を残し、男はテレポートで何処かへ消えて行った。

そして、緊張から解放された俺はというと、その場に膝をつき震える体を必死に抑えていた。




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