神様、俺を異世界へ。   作:Watapon-

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今回新キャラが登場します。
ポジションは…何だろう?


第35話 嗤う吸血鬼

「どうか、御武運を。彼等に神の加護あれ。」

 

王様がそう言った言葉を最後に、目の前の景色が歪み始める。

そして、再び視界がはっきりした頃には王城の正門の前に俺たちは立っていた。

 

「…!?これは一体…。」

 

同伴している騎士の人が声を上げる。

急いで皆が視線を向けたとき、にわかに信じがたい光景がそこにはあった。

 

「…おや、やっと来たのか、待ちくたびれたぞ?下等な人間共よ。」

 

「「「…!」」」

 

その場にいる誰もが信じられないという表情でその者の姿を見る。

…狂気に塗れた怪物の姿を。

背中からは悪魔族を彷彿とさせる様な漆黒の翼が生え、血のように赤い目と長く鋭い爪、そしてこちらを見下ろす赤い瞳。

 

「これから死にゆく貴様等にする意味などないだろうが一応な。まずは自己紹介からか?…我が名はウヴィアル。高潔なるアンデットの王、ヴァンパイアなり!」

 

名乗りを上げたヴァンパイア、ウヴィアルは恐怖を覚えさせるような赤い瞳を不気味に輝かせると、背中の羽を大きく広げて高笑いを上げた。

 

俺を含めその場にいる全員が恐怖で足が動かなくなる。

…本物の恐怖の前では逃げることすらできないようだ。

 

「…お、お終いだ。よりによってこんな大物が相手だとは…!」

 

「ま、待て!何かまだ手立てがあるはずだ!騎士たるもの、最後まで誇りを捨てるな!」

 

「馬鹿なのか、お前は!あんな大物相手に攻撃を仕掛けるなんざ、死にに行くのと同じだぞ!…死んでたまるか、俺には家族が…!」

 

騎士達が言い争いを始める中、ウヴィアルは何故か俺の方を向いて訝しげな表情を浮かべていた。

 

「…神気…?何故だ、微かに貴様から我が天敵の気配がする。」

 

そういえばシーヴィルもそんな事を言っていたな。

 

『おん?ヒロトよ、起きてみれば中々どうして大変な事になっておるではないか。』

 

(遅いよ!…ったく。)

 

「じ、神気が強く…!?き、貴様、本当に何者なのだ!?」

 

会話をするときに神気が強くなる。

そんな事を言っていたが、心なしかウヴィアルが怯えているように見える。

 

(…話は後にしよう。今はこいつを倒す為の策を練りたい。)

 

『のぉ、ヒロトよ。お主がヤツに近づけば動かんのではないのか?』

 

(は?そんな訳…、いや。案外あるかも。)

 

ビビってるのか警戒して動かないのか、どちらかは分からないが、威嚇ぐらいならできるだろうか。

 

(じゃ、このまま連絡してる状態で…)

 

「お、おい。貴様、何を…!やめろ!こっちに来るなぁ!」

 

俺がウヴィアルの方へ一歩ずつ進むたびに、ウヴィアルの青白い顔が更に青くなって行き、だんだん後ろへと後ずさって行く。

…ビビってんな、こいつ。

 

「…どこ行くんだよ、俺を殺すんだろ?」

 

「い、いや、あれは何というか…、挨拶というか場の雰囲気を盛り上げるためというか…。」

 

問い詰めれば、訳のわからない言い訳を言い始めたウヴィアルを後ろの面々が「何だコイツ」と言ったような表情で見つめている。

 

「み、見逃してくれ!俺にはまだやる事が…!!」

 

…何だろうか、俺の方が悪者みたいな気分になってきた。

 

「じゃあ一つ聞かせてくれ、この質問の返答次第ではお前を見逃してやるよ。」

 

「は、本当か…、いや、本当ですか?」

 

最初のあのヴァンパイアらしい奴はどこに行ってしまったのか、遂には敬語を使い始めやがった。

 

「あの、質問というのは…?」

 

「お前、『影』って組織を知ってるか?てか、そこから仕向けられた刺客なのか?」

 

俺がしたその質問を聞いて、キョトンとした表情を浮かべるウヴィアル。

 

「…おい、答えろ。」

 

「ひ、ひぃ!い、いや、俺はこの街が燃えているのを見て、あわよくば高貴な血を吸えないかなぁ…と。ほ、本当ですから!」

 

「いや、それでも大問題だよ。」

 

混乱してるところに更に混乱を起こすとか、コイツは迷惑というものを考え…、いや、こいつら吸血鬼からしたら大チャンスか。

 

「…本当に野良なんだな?何なら今から嘘を見抜く魔法を使ってもいいんだぞ?」

 

まぁ、そんな魔法は知らないのだが、ハッタリでもコイツにはかなり響くだろう。

 

「ほ、本当ですから!…お願いですから、殺さないで…!」

 

本当に何なんだこいつは、本格的に俺が悪者じゃないかよ!

何だか、後ろから向けられる視線が痛い。

…ああ、もう。すぐに終わらせるか。

 

「それじゃ、一つ条件を飲んでくれれば見逃してやるよ。それでどうだ?」

 

すると今度は希望を得たような表情になり、俺の顔を見つめてくる。

…魔物のくせに、中々味のある表情をしやがるな、コイツ。

 

「本来ならお前は人を襲おうとした訳だから、殺されてもおかしくないんだけどさ、お前が人間を救ったってなると、それはそれで人間にも貸しが作れるんじゃないか?」

 

俺のその提案が気に入らなかったのか、バッと立ち上がると、

 

「な!?こ、この俺に貴様ら人間と協力しろというのか!?」

 

本来のヴァンパイアらしく高圧的な口調で反論してきた。

 

「…!」

 

「!?な、異論はありません!」

 

だが、俺が睨むとウヴィアルはシュンとしてその場に縮こまる。

…怒ったり、怯えたり、忙しい奴だな、こいつは。

 

「よし、それじゃあ早速城を救うぞ!」

 

「こ、こんなはずでは…!」

 

「…何か言ったか?」

 

「い、いえ!何も言っておりません!!」

 

結局、ウヴィアルは『影』のことも知らない様子だったし、暫く協力してもらうことにした。

 

「…そういえば、他のみんなは?」

 

後ろを振り返ると、そこにはもう既にみんなの姿がない。

 

「あ、あの…。後ろの皆様なら俺たちが色々やってる間に行ってしまわれたのですが…。」

 

「な!?やばい、早く追いかけるぞ!」

 

「え。あ!はいぃ!」

 

結局、こいつの姿で敬語を使われると俺が悪者みたいなので、普通に話してもらう事にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王城内部

 

「…あ、ヒロトさん!遅いですよ!」

 

「ったく、って!その吸血鬼連れて来たのかよ!」

 

サーチの反応を頼りに、崩れた瓦礫が散乱している城内を進んで行くと、扉の前で立ち往生している2人を見つけた。

 

「色々あって協力する事になった。…それで、騎士団の人達は?」

 

後ろでウヴィアルが何か言いたそうだが、今は構ってられないのでそのまま無視する事にした。

 

「地下の避難ルートの確保へ向かうと言って居ました。それで、私達で皆さんを探す事にしたんですが…。」

 

「その扉が開かないんだな?」

 

 

「うん。押しても引いても殴っても開かないんだ。」

 

「いや、殴る必要はないよな。」

 

そんな俺達の会話を後ろで聞いて居たウヴィアルが懐から何かを取り出す。

ダイヤルのような物がついた…魔道具だろうか?

 

「…これを使うといい。俺が内側から強固な鍵が掛けられた部屋へ入るときに使用して居た魔道具だ。形としては協力体制なのだろう?」

 

そう言って懐から取り出した魔道具を渡してくる。

 

「早速使わせてもらうよ。…意外と乗り気なのか?」

 

「ち、違うわ!こうせねば俺の命が危ないからという理由でだ!」

 

「はいはい。ツンデレいただきました。」

 

ウヴィアルが「つ、んでれ?」と言葉の意味を理解出来ずにキョトンとしているが、そんな事は構わず、ドアにその魔道具を取り付ける。

すると、勝手にダイヤルが回り始め、扉の表面に魔力の鎖が浮かび上がる。

そして、ダイヤルが一周するごとに次々と鎖が断ち切られ、最後の一本を断ち切った所で魔道具が砂になった。

 

「よし、これで先へ進めるな。…ウヴィアル、ありがとな。」

 

「…ふん、これが終わったら俺は帰らせてもらうぞ。」

 

そんな皮肉じみた事を口にしているわりには少し嬉しそうな表情をしている。

…分かりやすいやつだな、コイツ。

 

「ヒロトさん!ちょっと!」

 

先に扉を開けて、イリアと共に中で皆を探していたエストから声が掛けられる。

…何かを見つけたらしい。

そこへ向かってみると、崩れた城壁の瓦礫の中に埋められた小さな木の扉が。

避難所…か何かだろうか。

 

「…行ってみよう。もしかしたら此処に皆が隠れているかも。」

 

俺の提案にウヴィアルを除く2人は頷くと、すぐに周りの瓦礫を退け始める。

 

「おい、お前も手伝えよ。」

 

瓦礫の撤去作業を黙々と行なう俺たちを横目に、ウヴィアルは一点を見つめてその場から動こうとしない。

 

「…来るぞ。敵襲だ。」

 

「…!何だこの数は!」

 

ウヴィアルが唐突に告げたその言葉に俺はすぐサーチを起動する。

すると、先程俺達が入って来た扉の方から大勢の反応が。

 

「…さっきまでは何も居なかったはずなのに…!」

 

「ヒロト!迎え撃つぞ!」

 

2人は急いで戦闘態勢を整えると、敵が迫って来る方向を向いて、警戒を強める。

俺もまた、右手で剣を抜き、魔法を発動させる準備を進める。

そして、ドアを木っ端微塵に吹き飛ばした大勢の敵が俺達に襲いかかる。

 

「『アイシクルレイン!』」

 

エストがドアを破壊した第一陣に魔法を叩き込み、半数を壊滅させる。

そして、怯んだ一部の敵をイリアが疾風の如く次々と切り裂いていく。

 

「おい、剣を貸せ。貴様は魔法で戦う方が良いだろう。」

 

ウヴィアルがそう言って俺の方に手を出してくる。

…確かに剣で斬るより魔法で全体を攻撃した方が、俺の場合効率がいい。

 

「使え!お前、ヴァンパイアならそれなりに戦えるんだろ?」

 

俺はウヴィアルに剣を投げると、それを受け取ったウヴィアルが狂気じみた高笑いを上げ血塗られた赤色をした目を輝かせながら魔物の群れに突撃していく。

 

「貴様等!アンデットの王である我に勝負を挑んだ事!地獄で百業の苦しみと共に悔いるが良いわ!ハハハハハ!!」

 

その時の魔物の群れに高笑いを上げ突撃していく奴の姿は、紛う事なき高貴なるアンデットの王 ヴァンパイアそのものだった。

 

「殺してやるぞ!!ハハハハハ!!」




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