神様、俺を異世界へ。   作:Watapon-

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王都編第3部の第1話です。
そろそろ黒幕の正体が明らかに…。


第37話 王城奪還戦、開幕!

「それでは総員散開!皆の武運を祈るぞ!」

 

「「「「おおおおお!!」」」」

 

遂に敵の手に落ちた王城を奪還するために、勇気ある者達が蜂起した。

そして、俺達は正面の階段を突破すべく、敵をなぎ払おうとしていた。

 

「…居たぞ!数名の敵が此方は向かってくる!皆、掛かれっ!!」

 

「「「おおおお!!」」」

 

目の前のいる敵が雄叫びを上げ、こちらに向かってくる。

相手は人間。出来ることなら殺したくはない。…気絶させて、そこら辺に転がしておくか。

 

「行くぞ、エスト!『グラウンドボトムス!!』」

 

「はいっ!『フローズン・ダスト!!』」

 

俺が放った魔法で敵が走ってくる地面が底なしの泥沼に変わる。

そして、敵を飲み込んだ沼をエストのフローズン・ダストが固めていく。

それにより敵の動きが完全に封じられた状態になった。

そして、動けない敵の急所をイリアが駆け回りながら双剣の持ち手で強打し、どんどん気絶させていく。

 

「な、バカな!!これだけの人数をたった数人で…!」

 

「よそ見をするでないぞ人間よ。貴様の敵は奴等だけではないだろうに。」

 

「なっ!グハッ。」

 

指示を出していた男が俺達の動きに狼狽えていた隙にどうやったのかは分からないが背後を一瞬で取ったウヴィアルが首に強い一撃を与えて気絶させる。

 

「…つまらん、この程度か。まぁ、所詮下等な人間の中でも更に下等な存在。暇潰しにもならん。」

 

倒した男を踏みつけて文句を言っているウヴィアルだが、やっぱりアンデットの王としてた実力は本物らしい。

 

「ヒロトさん、先を急ぎましょう!私達が此処を突破すれば、後から来る援軍の皆さんも通りやすくなります!」

 

「ああ、そうだな。…イリア、今の戦法でいけそうか?」

 

「大丈夫だぞ!私のスタミナは底なしなんだ!」

 

「なら、安心だ。…さて、次のフロアだ。気を引き締めていくぞ。」

 

そして俺達は気絶した敵達が倒れこむ階段を駆け上がり、次のフロアへと向かう。

…そういえば、他のみんなは大丈夫だろうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王城 東の塔 一階フロア

 

東の塔へ向かう回廊をひたすら俺達は走り続ける。

団長を筆頭に俺達公爵家の護衛団が、そしてその後ろに十数名の騎士達が控えている。

 

今の所敵の姿は見えてこないが、恐らく塔の周辺で待ち伏せでもして居るのだろう。

正面の大広間の方で誰かが戦って居る声が聞こえてくる。

…ヒロト達か。

あいつらなら、きっと。大丈夫だろう。

何故だか、そう思えて来る。

 

だからだろうか、不思議と不安を感じなかった。

 

そして塔の入り口まであと少しというところで団長から物陰に隠れるよう指示が出る。

…前方に敵が見える。恐らくは最終確認をするためだろう。

 

「皆、東の塔の入り口が見えてきた。…恐らく此処からは戦闘が長く続くだろう。今この瞬間、私達の他にもアリエ達魔術師団の者は勿論。冒険者であるヒロト殿一行も前線に出て戦っている。…我々はとうに覚悟して居たはずだ。この国に仕える忠騎士として命を投げ打って…いや、誰一人として死ぬな。総員揃って城の最上部を目指す。いいか?」

 

『『『『了解』』』』

 

お前の強さの秘訣とやらは結局分からなかった。

…いや、少し掴めたのかもな。

 

俺は護衛団に入った後も、単独で敵を倒すことが多かった。

それ故に、仲間の大事さに気づいて居なかった。

…いや、昔は知ってたはずなんだけどな。

 

「…!き、来たぞっ!迎え撃て!」

 

「総員、敵を一掃せよ!城を、民の平穏を取り戻すぞ!!」

 

俺はこの騎士団の、護衛団の一員として。

仲間と共に戦う!

 

「「「「おおおお!!!」」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王城 西の塔 回廊

 

「…やはり、敵は既に張っているみたいですね。」

 

「どうされますか?アリエ様。」

 

ジーマがシーヴィル様と一緒に最上部に潜入している今。

魔術師達の指揮を執れるのは私だけ。

そう、公爵様はおっしゃって居た。

 

確かに、私以外の魔術師達はまだ二級魔道士だけれども、私に彼らを統率するだけの力があるのだろうか。

 

「…アリエ様?どうなさいましたか?」

 

「え?…何でもないです。少し考え事をね。」

 

なんて、嘘をついてみるけれど私に自信がない理由なんて分かってる。

…自分の指示で仲間が死んでしまうのが怖い。

 

こんな時、アイツなら。

…ジーマならどうやって指示を出したんだろう。

 

「アリエ様?…どうされたのです、今日は少し体調がすぐれておられないのですか?」

 

…そうだ。ジーマならこう言ったはずだ。

『死ぬな。…命令は以上。』

アイツはいつだってそう言って居た。

 

「…ないで。」

 

「?」

 

「…死なないで。絶対に。これは命令、私と共に戦う者は、誰一人として死ぬことを許しません。…いいですか?」

 

「…!了解しました!」

 

無責任だな、私。

でも、これが私にできる精一杯の激励であり、命令だ。

 

「団の者全てに伝えて。後、忘れないで。…命令は絶対、よ。」

 

でも、私が命令したのだから、誰一人として死なせない。

…私が皆を守る!

 

「伝達、各戦闘員の配置が完了致しました。…始めますか?」

 

「ええ。…皆、行くよ!」

 

「「「「了解!!」」」

 

ジーマ。

アンタ抜きでも私がやれるってとこ。

しっかり見ててよ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王城 最上部 玉座の間

 

玉座に佇む黒装束の男。

その前には戦況を報告する偵察兵の姿があった。

 

「…様。城の地下に潜んで居た残党が行動を開始しました。」

 

…やはりそうか。

 

「…敵の数は?」

 

「報告によれば数十人との事です。…現在、正面、東の塔、西の塔の三つのエリアで侵攻が確認されて居ます。」

 

数十人…か。

数だけ聞けば、すぐに収める事が出来そうなものだが、そこに含まれる者によっては簡単にはいかないな。

 

「…戦況は?」

 

「それが、全てのエリアにおいて我々が劣勢だとか。…特に、正面から来る数名の敵がとてつもない強さだそうで…」

 

数名…。

なるほど、奴らか。

 

「正面の敵は下っ端を束ねたところで無駄だ。…アレを使え。」

 

「…!もう使われるのですか?しかし、まだ戦闘記録が不十分で…。」

 

「構わん。…奴等で録れば良い。正面に回した戦闘員は東と西に割り振れ。」

 

男に命令された兵士は少し間を置いてから

 

「…了解しました。」

 

と、一言だけと残して何処かへ駆けて行った。

 

(…奴等の力は未知数だ。特に俺の魔法を躱したあの少年。…あれが倒れない事には勝利の美酒に酔う事は叶わん。)

 

「…配備が完了致しました。」

 

「…そうか。準備に掛かれ。」

 

まぁ、流石の奴とてアレには苦戦するだろう。

…その間に東西の敵を一掃すれば、数で押す事も可能だ。

だが、見てみたいものだな。

見事アレを打ち倒し、俺の目の前に奴等が現れるところを。

…そして、俺がこの手で奴等を皆殺しにする様を。

 

「…ガッカリさせてくれるなよ。キリシマ。」

 

「…正面の敵は放棄。速やかにその場から退避して二陣に分かれ、東西の敵を集中的に攻撃。…これより、…の配備を行う。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

王城 正面 二階フロア

 

「…変だな。急に敵の数が減ってきた。」

 

先程まで俺たちを見るや雪崩れ込んできた敵の姿が今ではまばらになり…いや、完全に居なくなった。

敵の戦闘員がもう居なくなったのだろうか?

 

「…私達を倒すのを諦めたんでしょうか?それにしては何の前触れも無かったですけど…。」

 

そう。敵は急に居なくなった。

普通、諦めるだとかいう時にはリーダー格の者が合図を掛けて退散するものだと思って居たのだが、そんな事もなくただ何かから逃げるようにして去って行った。

 

「ヒロト。敵感知に何か反応あったか?」

 

「…いや、この近くには全く。サイレントサーチも掛けたけどこっちも反応がないな。」

 

「…おい。貴様にはこの気配が感じられんのか?」

 

敵感知の反応を確かめていると、後ろで俺に背を向けながら何かを考えていた様子のウヴィアルが言う。

…気配は全くしないのだが…。

 

「…いや。何だか嫌な気配がする。というか、俺はこの感じを知ってるぞ。」

 

あれは確か、俺がこの城に来てすぐの事。

 

「ひ、ヒロト。何かの足音が近づいて来てないか…?」

 

ジーマさんが持って来た封印の箱の中に入っていたあの黒い結晶。

 

「あ、ああ…!」

 

「…!影とやら、こんな物まで隠し持っていたか…!」

 

黒曜の欠片から感じたあの魔力と同じだ。

 

「グワングゥァァーッ!!」

 

正面の壁を突き破り、姿を現したのは、胸の部分に禍々しい瘴気を放つ結晶が埋め込まれた黒い巨人だった。

 

「…これは…アークゴーレムか…!?」




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