目の前にある光景に、俺は言葉を失う。
暗闇の中で紫色に淡く光る結晶。
その中にうずくまるようにして入っていたのは…
「し、シーヴィル…?」
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王城 玉座の間
「…おい貴様。正面の敵はどうなった?アークゴーレムで沈んだのか?」
先ほどの轟音。
…音を聞く限りはアークゴーレムが何者かに一撃を放ったのだろう。
「はっ。アークゴーレムは四名の敵と交戦。途中、軽装備をした少年に素手で吹き飛ばされたものの、その後敵が砂煙で視界を失った時に偶然振り下ろした拳が少年に命中。…大きな穴を開け、地下へと叩き落とした模様。」
「…そうか。他の者はどうなった?」
「他3名は…、その場に留まっています。」
そうか。やはり、奴があのパーティーの精神的支柱である事は確かなようだ。
…さて、これからどうなるか。
見ものだな。
「…そして、ゴーレムの状態なのですが…」
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王城 正面 二階フロア
目の前にポッカリと空いた大穴を覗き込み、彼の姿を探す。
でも、その穴はとても深い所まで続いていて、とても私達ではたどり着けない場所に彼は落とされてしまったみたいだ。
「ヒロトー!返事しろー!」
イリアちゃんが横で彼の名前を呼ぶ。
…けれど当然答えは帰ってくるわけもなく。
それでも彼女は呼び続け、その目にはうっすらと涙が煌めいていた。
最初は空を飛べるウヴィアルさんに彼を連れ帰って貰おうと思っていたけれど、彼の翼は魔力によって生成されたものらしくて、地下深くに張られて居る魔結界に触れれば最後。
翼が消えて、地帯へ真っ逆さまに落ちてしまうらしい。
「…しかし、このデカブツに叩き落とされる直前のあの一瞬で敵を串刺しにするとはな。」
ウヴィアルさんがそんな事を言いながら、先の尖った氷の結晶で胸元の黒い石を貫かれ、瓦礫に倒れ伏しているアークゴーレムを足蹴にする。
…あの時、ゴーレムの攻撃と同時にヒロトさんの突き出した右手が蒼く輝いたのをみた。
自分が落ちる事がもう分かっていたから、私達の安全を確保するために。
「…ヒロト…さん…。」
死んでなんていないですよね?
…また、私達の前で笑ってくれますよね?
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王城 ???
何故だ?
あいつは先に王城の最上部を目指して潜伏していたんじゃ…!
『封印術…か。なんと非道な真似を…!』
珍しく神様の口調から怒りの感情が感じられる。
それだけ、生身の人間に封印術を掛けるという事がとんでも無い事だという事だろう。
(なぁ、神様。…こいつは、シーヴィルは生きてるのか?)
『…封印術は主に危険とみなされた魔道具。兵器。そして魔物に使う術じゃ。そして、封印術を掛けるとこのような紫の結晶に包まれた状態になる。そして中の対象は封印される前の状態のまま保存され続ける。…無論、生物の場合は封印術を掛けられた状態でも生きているのだ。』
(…じゃあ、シーヴィルを此処から出せば、息を吹き返すんだな?)
『…そういう事じゃ。しかしその封印は掛けられてから一年程経過している。生きているとは言っても衰弱しているじゃろうな…。』
一年もこの中に閉じ込められてたってのか?
…じゃあ俺達と話していたシーヴィルは一体誰なんだ?
「…とにかく、助けてやらないとな。『ヴェールブレイク!!』」
封印の掛けられた結晶の表面に鎖が浮かび上がる。
…数え切れないほどの数の鎖が。
(随分と厳重に封印されてるな…!)
解いても解いても新たな鎖が浮かび上がってくる。
…これじゃ、キリがない!
『落ち着け、ヒロトよ。…どうやらこの封印には鍵があるようじゃ。…数本だけ、全く違う色で浮き上がっておる鎖が見えるか?』
神様にそう言われ、目の前に無数に浮かぶ鎖を見てみる。
すると、数本の鎖が他とは違う色をして表示されているのが見えた。
『その鎖は封印の鍵のような役割をしておる。それを切れば、他の鎖も簡単に外せるようになるはずじゃ。』
(分かった!)
俺はその数本の鎖に魔力を集中させる。
…少し視界が眩んだりしているのは多分、魔力を一度に使いすぎているからなのだと思う。
だけど、此処で止める理由はない。
注がれる魔力に反応して鎖がどんどん切れていき、最後の一本がピシッという音を立てて砕け散った。
「…よしっ!」
するとどうだろうか。
先程までは消滅してもすぐに復活していた鎖が段々と砕けて消えていく。
そして、30秒もしないうちに全ての鎖が解かれた。
『さあヒロト!その結晶を砕くのじゃ!』
「おりゃぁぁ!!」
神様の合図に合わせて、渾身の力を込めた拳で結晶に殴り掛かる。
するとガシャン!とガラスが割れるような嫌な音を立てて結晶が砕け散った。
…少し拳が痛い。
ガントレットか何かを買わないといけないな。
…いや、そんな事よりも。
(大丈夫…な訳ないよな。)
『すぐに治癒魔法をかけてやれ。一年も放置された状態ならいくら死なないとはいえ、すぐに体力が失われてしまうぞ。』
「よし、『エルヒール!!』」
倒れこみ、ほとんど息をしていない状態のシーヴィルが魔法陣から放たれる淡い光に包まれる。
…そして、その光が引いた頃にはしっかりと息をしているシーヴィルの姿があった。
『良くやった!良くやったぞヒロト!』
天界のあの部屋で神様が喜んでいる姿が見えるようだが、思いの外魔力の消費が激しかったようだ。
フラフラとする体を支えようと壁にもたれ掛かろうとしたのだが、膝に力が入らずにその場にへたり込んでしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ…。だ、大丈夫か?シーヴィル。」
目の前には未だに倒れこんだままのシーヴィルが。
…治ってはいるのだが、すぐには立ち上がれないらしい。
俺は持ち前の回復力ですぐに息を整えると、シーヴィルが起き上がれるように肩を貸してやる。
すると腕が少し震えてはいたが、なんとか俺の体にしがみつき、壁にもたれて座る事が出来た。
「…えっと、改めて聞くぞ。大丈夫か?シーヴィル。」
俺がもう一度その名をいうと、何故か不思議そうな顔をして
「…何故私の名を知っている?君は誰なんだ?」
と、前までのシーヴィルとはまるで別人のような口調で答えを返してきた。
…まぁ、これで大体の事はハッキリしたけどな。
そして同時に皆が危険だという事にも気がつく。
「俺はヒロト。霧島ヒロトだ。そして、お前の名前を俺が知ってる理由はこの上にある。」
俺はそう言って洞窟の天井を指差す。
…このシーヴィルは恐らく一年前に何らかの出来事によって敵が封印した本物のシーヴィルだ。
つまり、最上部に向かっている。
…いや、この展開だと多分、この城の最上部で待ち構えているシーヴィルは偽物。
影のボスだとかそういう奴である可能性が高い。
「今、ある人物がこの城を乗っ取ってる。
そして、王都はそいつ率いる敵の仕業によって焼け野原。何とかほとんどの住人たちの避難はできたが、恐らく犠牲になった人も少なからずいる筈だ。…そして、この城の最上部で待ち構えてる敵の親玉の名前がお前と同じ”シーヴィル”なんだよ。」
その言葉を聞いて何かを思い出したかのようにシーヴィルが表情を変える。
「…そうだ、今思い出した。私は奴らに此処で封印された。そして、何者かが私の姿に変身して…!」
…俺の考えは間違いなさそうだな。
「シーヴィル。…今、城の中には公爵様やリオナ。そして、沢山の住人達が隠れているんだ。皆、恐怖に怯えながら敵が倒されるのを待ってる。」
そして、その一言で彼の瞳に決意の色が浮かぶ。
「…ヒロト、と言ったな。頼む、私に力を貸してくれないか?今の私は封印の影響でまだ完全に魔力が回復しきっていない。見た所、君は桁外れの魔力を有しているようだ。…国家魔術師ともあろうものが後方支援しか出来んというのは恥ずかしい話だが、出来る限りのことはしたい。…頼む。君の力を私に貸してくれ。」
そう言って頭を下げるシーヴィル。
「頭上げろよ、シーヴィル。…俺はさ、公爵様から頼まれてるんだ。『私達を助けてくれ。』ってさ。だから、断る理由なんて無い。」
「…!」
そして、頭を上げたシーヴィルに少し微笑むと、
「よろしく。…これからこの国を救うぞ、シーヴィル。」
するとまた彼も同じように、
「ああ、宜しく頼む。…そして、ありがとう。」
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王城 最上部
…さて、そろそろ来る頃か。
「ま、待て!此処から先は通さな…!」
門を守る者の罵声が聞こえたと同時に、玉座の間の大扉が勢いよく吹き飛ぶ。
「…早かったな。」
そして砂煙が晴れ、そこに現れたのは一人の男。
この国の魔術師団のローブを羽織っていて、胸の部分には勲章がいくつもあしらわれている。
…今までの一年間。
私に最も忠誠を誓い、最も騙された者。
「…貴様…!」
周りに部下の姿が見えないところからして、俺の下僕共に殺されたか。
…俺をじっと睨むその目には激しい怒りと憎悪が滲み出ている。
俺に牙を剥いたのは、国家魔術師団 副団長
ジーマ・アルナスだった。
「殺してやる…。例え刺し違えたとしてもな…!」
すいません、次回の投稿が四日置きになるかもです。
(なるべくそうならないように頑張ります。)