追記:新しく話を書き換えました。
「…もう朝か。」
俺はベットの上で、そう呟いた。
ここにきて今日で5日目。こっちの言語もエストに教えてもらって少しではあるが、読めるようになってきた。
どうやら神様は記憶力なんかも強化してくれたらしく、大体のことは一発で覚えられた。
バルコニーに出ると、そこには白い小鳥が。
昨日の晩、俺が怪我しているコイツを見つけて手当てしたところ、懐いたらしく、朝はいつも俺のところへ来る。
「お、今日も来たのか?ちょっと待ってろよ…」
と言って俺はビスケットを持って来る。少し砕いてやると、嬉しそうに食べ始めた。
この世界はもしかしたら元の世界より平和なのかもしれない。
…何処かの国がミサイルを撃つなんてことも無いし。
「…あれ?もう食べたのか。」
小鳥はビスケットを食べ終えると、何処かへ飛んで行った。
「お、えらく早起きだな、エスト。」
部屋を片付けて、食堂に降り、いつものようにコーヒーを飲んでいるとエストが階段から降りて来た。
いつもならもう少し遅くに起きてくるのだが…。
「おはようございます、ヒロトさん。」
「おはよう。…あれ、その本何?」
席について頼んだジュースを飲んでいるエストの隣にはボロ…年季が入った分厚い本が置いてある。
「あ、これですか?この本は私の母がくれた古い魔道書です。ちょっとボロっちいですけど…基本的な魔法ならこの魔道書で習得出来ますよ。」
おお、じゃあ俺もこの本を読めば魔法が使えるんだな。
「それで…あ、あった。」
エストはその魔道書に挟んであった6枚の紙を取り出し、机の上に広げる。
その6枚の紙にはそれぞれ違う模様が描かれている。
「…これって魔法陣か?何に使うんだよ。」
「魔法の適性を調べるんです。魔法には火、水、風、土、光、闇の6属性があって、その属性に適性がないと魔法は使えないんです。」
じゃあ誰でも使えるって訳じゃないのか。
…俺、大丈夫かな。
「ヒロトさん、まずこの魔法陣に手を置いてくれますか?適性があれば魔法陣が輝くはずです。」
そう言って、エストはこちらに一枚の魔法陣を渡す。炎のような紋様が描かれてるって事は火属性の適性検査か。
「これで良いのか?」
俺はエストに言われた通りに魔法陣の上に手を置く。…少しすると手の裏が暖かくなってきて…
「あ、光ってますね。適性アリです。」
ふぅ、良かった。魔法の一つも使えない異世界生活はゴメンだ。
…まぁ、神様が色々いじったからなんだろうけれども。
「じゃあ、次はこっちですね。」
その後、水、風、土、闇と四つの属性とも使えることがわかったのだが…。
「はわわ…。」
俺が二枚目と三枚目まではエストともすごいなぁ、というような表情だったのだが、四枚目、五枚目、ともなると声が出せなくなってしまっていた。
「…これで最後か。えっと、エスト?大丈夫か?」
「え、あ、はい!大丈夫です!最後は光属性ですね。」
これが使えたら全属性マスターだ。…これだけ使えないなんて事は…無いよな?
俺は最後の魔法陣に手を置くと、静かに目を閉じて集中する。
少しするとまた手の裏があったかくなって…あれ、なんかさっきよりもあったかいような…?
「なぁ、エスト。なんか手のひらがさっきよりもあったかいんだけど。」
「えと、何だか光も少し強いです。適性はあるんですね。…というか、段々強くなっていっているような…」
そして検査を終えて手を離そうとしたその時。
ボンッ!
「ほわっ!」
突然爆散した魔法陣を前に呆然としていると爆発音を聞きつけたアルバーさんが走ってくる。
「なんだなんだ!…ん、ヒロトにエストじゃないか。一体何してんだ?」
「…事故…です。」
「…事故…だな。」
「?」
その後、飛び散った魔法陣のゴミを片付けた俺はエストに爆散した訳を聞いてみた。
「注がれた魔力が多すぎたのか…もしくはヒロトさんが光属性に共鳴する何か能力を持っているか…ですね。」
「光属性に共鳴する何かって…。」
そんなもの持ってたっけ。
『ワシの魔力じゃな。』
(うわっ!ビックリした…。)
『おお、すまん。』
(ったくいきなり話しかけてくるなよ。…それで、『ワシの魔力じゃな。』ってどういう事だ?)
神様の魔力と魔法陣の爆散に何の関係があるだろうか。
『お主のステータスを底上げした時に、ワシは魔力をお主に大量に注いだのじゃ。つまり、今のヒロトが持つ魔力は最高純度の魔力。光属性に共鳴するのはワシの力が働いてあるからじゃろう。』
(なるほど、じゃあ普通の光属性魔法よりも強力なものが撃てるんだな?)
『そういう事じゃ。』
「ヒロトさん?どうしましたか、ぼーっとして。…具合悪いんですか?」
「え、いや、大丈夫。…ゴメンな、魔法陣の紙壊しちまって。」
直せないものかとかき集めた破片を組み合わせようとしたのだが、散り散りになりすぎていてとてもではないが修復できるような状態ではなかった。
…替えとか売ってないだろうか。
「いえいえ、気にしないでください。それだけヒロトさんの魔力が凄いってことですし。…それにしても6属性の魔力を持ってる人ってそうそう居ないんですよ。」
「アハハ…。」
憧れの視線を向けてくるエストに何だか後ろめたさを感じてしまう。
…だって俺の力じゃないもんなぁ。
と、そんなことを考えながらふと本の方へ目をやると、紙切れが挟まっているのが見える。
「なぁエスト。その本になんか挟まってるぞ?」
「え?…あ、これのことですか?」
そう言って本の隙間から一枚の紙切れを引っ張り出す。
その紙にはさっきの魔法陣と同じ様な紋があしらわれていて。でも、さっきまでのものとは比べ物にならないくらい質素な感じがする。
「これは主に無属性魔法を創作する際。又は、その無属性魔法が使用できるかどうか試すために使われるものです。」
「魔法って作れるのか?」
「作れますよ。…まぁ、無属性魔法には6属性の魔力が使われていないので、直接的な威力のあるものは少ないですし、便利なものもあるにはありますが、便利になればなる程使える人は限られてきます。」
「どんな魔法があるんだ?…瞬間移動とか空中浮遊とかか?」
「えらく食い付きますね…。えっと…、瞬間移動魔法はありますよ。空中浮遊は聞いたことがありませんが。」
あるのか…!やっぱり瞬間移動もあるんだ!
「使ってみてもいいか?」
「え?良いですけど、瞬間移動魔法。『テレポート』は無属性魔法でも上位に位置する魔法ですよ?」
「そこら辺は大丈夫。補正がかかってるはずだ。」
そして、エストから受け取った本に書いてある通りに魔法を使ってみる。
なんかエストが不思議な顔をしながら「ホセイ?」と呟いていたが。
「えっと…。行ったことのある場所に瞬時に移動…か。よし!『テレポート!』」
すると目の前の景色が歪み、回転し始める。
そして、目を開けるとそこには数日前、白獣と激闘を繰り広げた森が広がっていた。
「おお!凄え!本当に一瞬だな!」
夢にまで見た、瞬間移動。人間誰しもが夢見て来た技を俺は今使ったのだ。
と、興奮するのもそこそこに宿屋へテレポートする事にした。
「『テレポート!』」
そしてまた視界が歪み、回転して始める。
「…お、戻って来た。」
「あ、ヒロトさん。お帰りなさい。…使えちゃいましたね、テレポート。」
「使えちゃったな。…いやー、魔法ってのはやっぱり凄いな。」
エストが魔法を使っているのを見たときも感動したが、実際に自分で使ってみるとまたその感動が大きい。
「なぁ、他にもまだ色々あるんだろ?もっと教えてくれないか?」
「勿論!私に教えられる事なら何でも教えますよ!」
「助かるよ、ありがとな。」
俺がそう言うと、エストはニコリと笑った。