オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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第8話

 

 

地上本部の職員総動員で丸一日かけて行った倉庫の整理は、まあひどいものだった。

銃を投げて暴発したり、ふざけて人に向けてたら弾が出たり、足を滑らせて銃口が尻に刺さったり。死者こそ出なかったが、怪我人は非常に多かった。幸い、最初の暴発以降魔導師はデバイスを起動させ、バリアジャケットを展開したまま作業を行っていたので、重傷者は出なかった。そして事前に注意をしておいただけあって、責任は一切問われなかった。

 

 そしてそれだけの損害を出して得られた成果だが、携行できる殆どの銃が粗悪品。整備なしでまともに使えるような純正品は数える程度。整備すれば使えそうなのが、それなりの数。多分、地上本部の非魔導師の職員たちが武装するには十分な数があると思う。

 弾薬は意外なことに使用期限の切れてない物がそこそこあったので、しばらく弾に困るような事はないだろう。

 

 今度は対空砲などの大型の質量兵器。火砲だ。これは意外な事に、多くが純正品だった。大型の火砲はどれも地球の第二次世界大戦で使われていた旧型。対空機関砲には一部新型に近い物もあるが、きっとこんな物を使う予定はないだろう。

 

 次は同じく大型の兵器だが……まあなんというか、どこからどう見ても正規軍から盗んできたとしか思えない、ロケットポッドとドアガン、機首下に機銃を搭載した完品というか新品同様のヘリが一機だけあった。改造などは一切されておらず、燃料が石油なためミッドの空を飛ぶに少し手続きが必要ならしい。

 しかし、倉庫で眠らせておくにはもったいない兵器だ。予算さえあれば是非使いたいのだが、扱える人員も居ないし、整備代、燃料費とコストを考えれば……月に一度くらいならなんとかなるが、連続運用は難しい物がある。少し発想を変えてみよう。私の部隊だけで使う必要はあるのかと。陸の部隊で共有すればどうかと。

 

「というわけで、あのヘリを陸全体で共有する兵器にしたらいいと思うのですが、どうでしょう」

「質量兵器搭載の兵器を、許可を得ていない部隊が運用することはできない。許可を出すのは簡単だが、 その後を考えれば好ましくない」

 

 何事にも許可は必要か。全ての部隊に許可を出せば解決するが、陸のイメージが悪くなるから難しいか。質量兵器は悪党が使うものというのが、一般の認識だからな。それにしては前の取材は私をヒーローに仕立て上げようとする意志が見えたが……中将が差し向けたという線はないな。嫌がらせをした連中が私から恨みを買われないためにもてはやしたのか? 余計な事をする。

 

「ではヘリが運用できるよう予算の増額を……」

「却下だ。しつこいぞ准尉」

「それなら、私の部隊をそのままどこかへ合流させるのは」

「機動六課でいいか」

「……」

 

 あそこの性質はどちらかというと警察。対して私達の小隊は軍。彼女らは犯罪者を捕まえて牢屋に放り込むのが仕事。よって極力犯人の殺害は避けるべきである。私たちは敵を殺したり、根絶やしにするのが仕事になってくる。

 

「そういえば、お前宛てに六課へ出向するように、という要請が出されていたな。どうする?」

「今の部隊は作ったばかりなので、部隊ごとならともかく私一人出向というのはできません」

「厄介な事に部隊ごとだ。同時期に設立された六課と第1小隊。予算も規模も、設備も差がある。しかし六課よりも先に実戦で手柄を挙げた。その筋で私が嫌味を言ったから、目障りになったのだろう。嫌がらせがあるかもしれんな」

「それは構いませんが、第一小隊とは?」

 

 うちの部隊名は、ただの「質量兵器試験運用小隊」だったはず。どこの課にも属さない、独立した部隊というのは六課にも似ている。

 まあそんなことはどうでもいいとして、名前が変わるのは何故だ? 第一、ということは他に部隊が作られるのか?

 

「手柄を挙げたことで、正式に部隊として認めた。今日からは、質量兵器運用課第一小隊ということだ。返答次第では、機動六課質量兵器運用小隊になるが。まあ、流石に質量兵器を扱う部隊を簡単に認める訳にはいかなかったからな。第二はこれからお前の部隊が手柄を挙げ続ければ、作られるかもしれん。その前に併合を選べばそれは機動六課解散後になるが。どうする、行くか?」

 

 六課には多くの予算と設備がある。特に予算はほんの数パーセントでも、私の部隊の予算に匹敵する。人を見ず、単なる財布として見るならとても魅力的だ。しかし人を見れば、警察の中に軍人が紛れ込むような感じになり、人間関係で苦労することになるだろう。

 このまま単独で活動し、地道に手柄を上げ続けて予算の拡大を待つよりも、豊富な資金を使って思う存分手柄を立て、アクセルを踏みながら坂を駆け登るのがいいだろう。

 

「六課の予算の一部を割り振ってもらえるのでしょうか」

「併合されるわけだからな。当然だろう」

 

 予算が増え、活動範囲が広がれば活躍もしやすくなる。活動しやすくなれば、高官に会う機会もふえる。所謂コネクションを持てるだろう。そうなれば、あのクズどもを殺す機会にも恵まれる。

 迷うことはないな。

 

「その話、受けましょう」

「だろうな……ガジェットを狩るのには質量兵器が最適だ。AMFを使うガジェットはエースならともかく、新人には辛いだろうからな、精々手柄を横取りしてやれ」

 

 手柄を奪って嫌がらせをし、機動六課へ嫌味を言うための口実を作れと。わざわざ自分の金を使ってまでする価値があるのだろうか。何を考えているのかよくわからないな。

 

「それに、その方が貴様の目的への近道となるだろう」

「ご存知でしたか」

「ここしばらく見なかった変わり者だ、素性を調べないわけにもいくまい。オズワルドというのも偽名だろう?」

 

 当然偽名なのも知られていたのか。それなら全部知られているだろう、否定しても無駄だな。

 

「……どうします? 排除しますか?」

「ここに居るのは、時空管理局地上本部所属のオズワルド准尉。少し問題のある部下だ。その輩ではないのだから、排除する必要もないだろう。もちろん何か問題を起こせば、相応の処分を与えねばならんがな。では、六課での活躍を期待する。これは退院祝いと、栄転の餞別だ。受け取れ」

 

 ポンと投げ渡されたのは札束一つ。勿論、もらえる物は素直にもらって置く。所謂賄賂というものなのだろう、本来なら私が中将に渡すべきなのだが、使える物なら貰っておくべきだ。後でバレても別に何ともない。少しマスコミからバッシングを受けるだけだ。

 

「ご期待に応えられるよう、全力で職務に当たります」

 

 早く戻って、ヘリの移送の手配を……使えるように整備した火器弾薬もコンテナに詰め込んで、それも輸送するとなると業者からトラックを借りなければならない。それも大型のものを。ヘリも使いたいから、飛行許可をスムーズに出させるためのルート作りも必要だ……また忙しくなるな。

 


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