オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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第10話

 

模擬戦とは、実戦のように戦闘を行い、実際の戦闘における戦術や戦法の選択肢を広げる事が目的である。断じて殺し合いが目的ではない。

と車の中で二等空尉様からしつこく釘を刺されてしまったりしたので、八神二佐にルールの追加を求めた。そのルールとは、お互いに一撃当たった時点でリタイアとすること。話を戻そう、そのルールに関して二佐に意見を伺ったところ、怪我人が出ないなら大歓迎だと言われ承認された。で、相手にもそのルールを説明したら……

 

「オモチャで戦う? 一発もらったら撤退? ふざけるな」

 

というような反応が返って来た。階級が私より低かったので口には出さなかったものの、そういった雰囲気をガンガン出してきたのでそう思っていたのだろう。これで我々が勝ったら、彼女達はきっといい笑い話の種になる。

 

「今回は市街戦だ。建物の中や入り組んだ路地を活用し、敵を落とす。そして今回はお互いに一発当たればリタイア。相手は防御魔法を使ってもいいという設定なので、正面から行っても意味はない。不意を撃って死角から襲撃し、一回で潰せ」

『了解』

『了解』

『了解』

『了解』

 

 全員の返事が聞こえたところで、開始の合図にロケット花火を打ち上げる。この模擬戦場は無人の設定なので非常に静かなので、よく音が響く。

 

『開始の合図を確認。模擬戦を開始してください』

 

 街のあちこちに仕掛けられたスピーカーから聞きなれない声が響く。きっと歓迎の場に居なかった者が言ったのだろう。区画を一望できるビルの屋上で双眼鏡を構え、隅々を見渡す。すると、動く者の居ないはずの区域に移動する塊が二つ。それぞれ三人ずつ、計6人……と、小さい竜一匹。内二人は事前に通達されていた審判だろう。二手に別れて行動しているようだ。片方は通りのど真ん中を歩くあたり、警戒心が薄過ぎると言わざるを得ない。狙撃できればしていたのだが、実弾禁止でペイント弾しか撃てないのに当たる距離ではない。よってここは指示を出すだけにする。

 

「E3に三人。近接格闘と、銃持ち。あとは審判が一人。S1に三人と一匹。槍と、召喚師、竜。あとは同じく審判が一人。全員E3へ向かえ。S1はまっすぐこちらに向かってきているが、人数が少ないのでひとまず様子見にする」

『了解』

 

 私はこのまま観測を続けて、状況に応じて加勢するかもう片方を仕留めるかを決めよう。槍持ちの方は真っ直ぐこちらに向かっているようだし、放置すれば罠にかかると思う。罠にかかるほど間抜けなら、そっちを一人で仕留めに行く。

 床に置いた画像表示用端末に地図が表示され、四つの赤い点が青い点に向かって動く。青い点は私がスポットした物なので、自動的に表示されるわけではない。つまり不正はして居ない。

 五分ほど経つと、部下からの念話が入った。ちなみに部下の内魔導師は一人しか居ないので、当然ながら四号だ。私にも小さいながら一応リンカーコアはあるので念話は聞こえる。受信だけで送信の仕方はわからないが。

 

『目標との距離50mまで接近。気付かれてはいません。包囲します』

「網の真ん中に入ったら一斉に撃て。逃走経路は確保してあるな」

『はい』

 

 悪くない、優秀だ。もう片方はどうなってるだろうか。端末を表示画面を変え、カメラの映像を映す。

 

「……」

 

 展望台の入り口に仕掛けておいたワイヤートラップは既に壊された後。注意力はしっかりあるらしい。トラップの位置からして、そろそろこちらに着く頃か。後ろからは階段を登る足音もしっかり聞こえる。前からは何かが羽ばたく音。挟まれた。

 

 ロストロギアを大剣状態で起動し、階段の扉の蝶番を切る。そして身体強化でブーストされた筋力で扉を蹴り飛ばし、その扉を盾にして階段へと飛び込み、槍を持った少年に襲撃をかける。

 

「エリオ、退場」

 

 扉が直撃し、その下敷きになった少年に剣を振り下ろそうとした所で、隣に居た審判役の背の小さな少女からストップが入る。扉による攻撃でも、一発とみなすらしい。

 

「今のって攻撃扱いなんですか!?」

「実戦なら扉ごと叩き切られるか、撃ちぬかれてるぞ」

「そういうわけだ。次からは避けろ」

 

 階段を駆け下りて建物の中へ。あの竜の巨体なら建物の中へは入ってこれないだろう。殺してはいけないというルール上、建物ごと吹き飛ばすわけもない。少しだけ息をつく。

 そういえば、四号達はどうしているだろうか。勝てていればそれでいいが、負けていたら非常に不利になる。

 

「四号、聞こえるか」

『聞こえます』

「そっちはどうなった。結果を教えてくれ」

『ああ、一度で終わりました。簡単なものでしたよ』

 

 それは嬉しい知らせだ。しかし、こちらは非常にまずい状況。空を飛ぶ竜にペイント弾は当たらないし、そもそも竜に当てても術者に当てないと全く意味がない。がしかし、術者は竜の頭の上。当たるわけがない。

 

「こっちは少しまずい事になってる。竜が頭の上を飛んでて一歩も動けない」

『確かに飛んでますね、大きいのが。どうすればいいでしょう』

「術者が頭の上に乗ってるだろう。そいつにどうにかして攻撃を当てろ」

『オモチャじゃ届きません』

「……誘導弾は撃てないのか。魔導師なんだろう?」

『一応そうですが。全力だと殺傷設定しかできません』

「なら手加減しろ。あとはお前だけが頼りだ。ヘマするなよ」

『わかりました。少しだけ待ってください。あの糞竜の羽をもぎ取ってやりますから』

 

 そこまでしろとは言わんが、まあいい。結果が同じなら文句はない。楽ができるならそれに越した事はない。

 

「……大丈夫だろうか」

 

 E区画の方を見つめる。落としてもらえず、4号が落とされれば私達の敗北は決定する……わけでもないが、可能性は著しく低くなる。

 

 

 十秒ほど待つとE区画の方から何かが飛んできて、一瞬で空飛ぶ竜に突き刺さった。飛ばしたのは矢、ではなく大きく太い、槍のようなものだった。

 その槍を羽に受け、バランスを失った竜は地面へと緩やかに落下を始める。もちろん、その頭に乗った少女も共に落下する。かに見えたが、地面に落ちる寸前で持ち直し、その首を再び空へと向けた。このまま空に上がられれば、四号の所へ向かうのは確実。それは困るので、窓を破って空中へ飛び出し、落下中に竜の首に乗っている少女の頭を両手で掴んで竜から引きずり落とす。

 

「きゃっ!?」

 

 地面との距離は10メートルほど。このまま地面に叩きつければ気絶するか。と思ったら竜に腕を咥えられて落下が止まった。いかな少女の体重といえど、落下の速度も加われば片手で持っていられるはずもなく、手からすり抜けて落ちていった。

 

「実戦なら食われてるな。私の負けだ、下ろしてくれ」

「ウォォォォ……」

 

 ゆっくりと羽ばたいて降りていき、地面に足がついてから服を離される。人の言うことを理解できるとは、見た目よりも知能があるらしい。あと今気づいたことだが、咥えられた左腕は折れていた。

 

「審判、退場する」

 

 左腕をだらりと下げたまま審判に告げる。

 

「わかった、キャロ。お前は?」

「……はい、足をくじいちゃいました」

「模擬戦は終了だな。よし。あっちにも伝えとく」

 

 私の部隊の退場者は私一人。相手の部隊は全滅。文句なしに素晴らしい戦果だ。これで中将に胸を張って報告できる。

 まあ、報告したからといって褒美がもらえるわけではないだろうが。なんとなく褒められれば気分がいいだろう。


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