オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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主人公、死す?

2013/08/05 誤字報告があったので、修正しました。


第15話

今日は、今生で最も良い日となり、同時に最悪に近い一日となるだろう。何せ、あの糞共の内の一人をようやく殺せる日になるのだから。しかし殺すにはあの糞の顔を拝まなければならない。それは非常に腹立たしいことだ。おまけにただ殺すだけではダメで、周りに気付かれないように殺る。若しくは正当な理由を持って殺害する必要がある。

 

「全員、装備の点検が済んでいるな。もしも不足の事態が起きた場合は先日の訓練を思い出し行動しろ。いいな」

「了解」

 

 四人の声が重なり、それぞれが決められた配置へと向かって行く。アグスタの警備は外を機動六課が担当、建物の周囲を武装局員が担当。地下や建物の中も六課が警備。オークション会場内の巡回警備を私達分隊が任された。いざという時に要人の盾として使うなら、非魔導師を使うのが一番理に叶っているという話だ。どうせ使い捨てにするならば、戦力として優れてない奴がいいというのは理にかなっている。

 

「隊長はどうされるのでしょう」

「私は要人の警護を行う。恩返しも兼ねた警護をな」

 

 受けた恩はきっちり返さないと気が済まない。両親の分、妹の分、俺の分。あっさり殺してしまうには大きすぎる恩だが、時間をかけてじっくりとはいかない。相手は腐っても魔導師。私は身体強化が使えるだけでバリアジャケットも纏えない、限りなく非魔導師に近い魔導師。

 

 プランは複数あり、ドリンクに利尿剤を仕込んでトイレへ連れて行き、サクっと殺る。トイレには爆弾が仕掛けられており、爆弾を設置しようとした奴と鉢合わせになり殺されたという事にもできる。警備が厳しく難しいなら、トイレに仕掛けた爆薬で騒ぎを起こして、その混乱に乗じて殺す。どちらも確実ではないが、トイレの確認は私の仕事ではない。何も言われることはないだろう。

 だが、不安要素が一つだけある。八神はやてだ。彼女は私の入局した理由を知っていると言ったが、それが果たして面接の時に話した「家族がテロリストに殺されたので、似たような人間を生み出さないために管理局で働きたい」という理由か、本当の理由である「家族を殺した糞野郎が管理局に居るので、そいつを殺す機会を持つために管理局で働く」なのか。

 もしも本当の理由を知っているなら、計画の邪魔をされるだろう。

 

「それぞれ持ち場につけ。任務を開始する」

 

 だが、一度決めたことだ。準備もしてあるのだし、殺るしか無い。この機を逃せば、次に機会が巡ってくるのはいつになるかわからない。

 

「了解!」

 

 オークションが始まるまでは、まだ時間がある。それまではまともに仕事をしていよう。変な行動をして怪しまれては計画は成せない。

 

「やる気は充分そうやな。感心感心」

「そういう八神二佐は警備も兼ねてのお楽しみでしょうか」

 

 ドレスを着た二佐は、仕事というよりも遊びに来たような雰囲気だ。それでもいざとなれば動くのだろうが。

 

「まあな」

 

 任せられる側からすれば、上司だけが仕事をせず自分たちはひたすら仕事をこなす、働きアリの気分だ。まぁ、仕事なら良い気も悪い気もしない。

 

「気に入らんか?」

「出張先で休日の仲間に会うようなものです。気に入るも気に入らないもありません」

「そっか、気に入らんなら付き合わせようかと思ったんやけどな」

 

 それだけは迷惑だ。なんでも無いときなら誘いに乗るのも悪くないが、今日ばかりは特別だ。あのクソ野郎に受けた恩を返さなければならない。

 

「そうそう、護衛する相手がもう着いとるで。会って来たらどうや?」

「一通り巡回を行い、その後会いに行きます」

 

 今すぐにでも感動の再開と行きたいところだが、それはまだ早い。オークションが始まって、注意がそちらへ集まるまで、目撃者なしに殺すのは難しい。リスクは最低限にするべきだろう。

 

「そか。ならがんばってな」

「義務は果たします」

 

 敬礼をして、離れる二佐を見送る。怪しまれる事も無く、何事も無くこのまま作戦を続けられればいいのだが。

 

「そうそう、なんかこの会場に怪しい人物が居ったらしいんやけど」

「……それは警戒しないといけませんね」

「もしも警戒が足りずに要人が……特に管理局の高官が殺されでもしたらまずいよなあ」

 

 こちらに振り返り、何か探るような目と声で話す。もしや、俺の計画がばれているのか? 単に探りを入れているだけなのか?

 

「ええ、そうですね。より警戒を厳重にするよう、部下にも伝えておきます」

「せやな。恩人が殺されたら悲しいやろ?」

「そうですね」

 

 間違い無く俺の計画を知ってるな。だが計画を変更する訳にはいかない。待ちに待った復讐の機会だ。邪魔をされるくらいなら……

 

「邪魔されるくらいならここで始末する、か?」

 

 ベルトに納めたナイフに手を伸ばしたところで、心の内を言い当てられる。まあこの状況ならわからない方が阿呆だが。

 

「何のことだかさっぱりわかりませんね。恩人を殺すわけないでしょう」

「しらばっくれても無駄や。ここで私を殺したら復讐はできひんで。手を出した瞬間に人が集まって、あんたは捕まり仇は逃げる」

「さっきから何を言ってるんですか?」

「……隠す必要もないんやで」

「ここで私が『その通り』と認めれば、そこらに隠れている奴等に飛びかかられ取り押さえられ、危険人物として牢屋へ放り込まれる。冗談じゃない。何もしてないのに、少し考えたというだけでだ」

 

 ため息が出る。どうして私はこうも運に恵まれていないのか。家族を奪われて、その上復讐の機会すら奪おうとは。

 神は俺に喧嘩を売っているようだ。買ってやろう。買ってやろうじゃないか。

 ナイフと拳銃に手をかける。これで完璧に反逆罪に問われるだけの行為はやり尽くしてしまった。

 

「まあ……その通りなんですがね」

 

 銃とナイフを抜き、彼女に向ける。潜んでいたシグナムがこちらに飛びかかるが、行動が少しだけ遅く、首に剣を当てられるだけで済んだ。もうこちらはトリガーを引くだけでいいのだから、もう手は出せない。

 

「動くな」

「こっちは首を刎ねられる前に撃てる。それを踏まえて、少しだけ話を聞いてもらいたい」

 

 説得できるとは思わない。だが、試す価値はあると思う。何もせずに諦めるなんてのは、怠慢であって愚か者の行為でしかない。

 

「法が罪人を裁けないなら、被害者が裁く以外に方法はないと私は思っています」

「……」

「被害者にはその権利があるのではないでしょうか」

 

 しっかりと、彼女の目を見て自信を持って言い切る。自分は正しい。俗にいう正義ではないが、同じような境遇の人になら理解を得られるはずだ。法が裁かないなら自分が裁いてやりたいと思うのは、あたり前のことだろう。

 

「法廷に立たせて罪を償わせるのは?」

「正当な裁きを受けていれば、そもそもこんな真似はしません」

 

 私だって本当は糞の同類になるような真似はしたくない。だが家族の名誉のために、自分の満足のために、奴らを裁く必要がある。こんなことをしたところで過去には戻れないし、幸せは手に入らない。所詮自己満足にすぎない行為だが、そのためには喜んで殺す。予行演習も済ませて、既に肥溜めに片足を突っ込んでいる。もう復讐を諦めるという選択肢はない。

 

「そんな事をしても家族は帰ってこんのやで」

「知っています」

「復讐は何も産まん。それがわからんのか?」

 

 なんともありきたりなセリフだ。つまらない、小説で使い古されたな。ありきたりな言葉で返すのもつまらない、少し変わった言葉で返してやろう。

 

「シグナム二尉。私がここで八神はやてを殺したら、あなたはどうします?」

 

 目も向けずに話題を振る。こいつにとって八神はやては家族であり、家族とは即ち大切な物だ。それを目の前で奪われて、一体誰が冷静でいられようか。

 

「知れた事。叩っ斬る」

「復讐は何も産みませんよ。それでもやりますか?」

「当然だ」

「との事です」

 

 家族を目の前で殺されて、妹をレイプされ、自分も痛みを感じなくなるほど拷問されて。その苦しみがわかるだろうか。いいや、わかるはずがない。人間性すらも奪われた苦しみがわかるはずがない。

 わからないなら、わからせてやればいい。

 

「あなた達には関係ない……私が仇を取るのを止めますか?」

「それが仕事やしな」

「それが主の意志だからだ」

「はぁ……どうしてこう、最近の司法は被害者に優しくないんでしょう」

 

 また大きくため息をつく。彼女たちに既に全てを知られているのなら、もはや復讐は継続できないということ。計画の続行は不可能。生きていく上で最も重要な任務は失敗。

 目の前から光が失せていくのを感じた。もう何も考えられない。この感覚が、絶望というやつなのだろうか。

 

「……復讐ができないなら生きてる意味もありません。殺してください」

「お断りや」

「私も断る」

「そうですか。ならこうしましょう」

 

 今構えている銃は前日にきっちりと整備されており、弾薬も使用期限の切れていない正規品。ここに来る前には試射も済ませ、動作不良が起こらないことも確認してある。そして弾薬の入ったマガジンがセットされていて、チャンバーに弾丸は送られている。

 

 わずかに銃口をずらし、特に考えることもなく軽いトリガーを引く。結果弾詰まりを起こすこともなく、弾丸は彼女の肩へと飛んで行った。

 

「つあぁあ!?」

 

 発砲音、後悲鳴。

 

「貴様ァ!!」

 

 さあ、殺せ。

 

 そう言うまでもなく、首につけられた剣は横に一閃され、切られたところから血が噴き出て、血が抜けて行くのと同じように体から力が抜ける。大理石の床に膝をつき、一度止まる。

 彼女も、俺の味わった苦痛と恐怖、屈辱の一片くらいは味わってくれただろう。悔いは……数えればいくらでも出てくるが、もう死ぬんだしどうでもいいか。

 

 髪の毛を掴まれ、目の前に剣の切先が迫る。これが頭を貫いてくれれば、楽になれるのだろう。そう思い目を閉じた瞬間に、ガツンと鈍い音がして体が床に放り投げられた。剣はまだ頭に達していない。

 

「隊長大丈夫か! すぐ止血する!」

 

 意識が朦朧としてきたが、この声は一号か。多分一号に首を押さえられている。止血しようとしているのか。力の入らない腕で振り払おうとするが、やはりびくともしない。

 

「どういう事だ。説明を要求する」

 

 騒がしさにまぶたを開くと、二号と三号が一尉に銃を向けていた。四号は八神二佐の様子を見に側へ立っている。いい加減、楽にして欲しいものだ。もう疲れた。ゆっくり寝たい。

 

「こいつは主を撃った! だから斬った! 文句があるか!!」

「そうなのか、隊長」

 

 小さく頷く。そして目をとじる。これ以上は、何も考えられない。考えなくて済むのだろう……。

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