オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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第23話

 退院から二日。街ではいつも通りひったくりや強姦、乱闘等の軽犯罪が起きているが、ある意味いつもと変わりない平和とも言える状態が続いている。ひったくりだの何だの、そういう軽い事は我々が出る事もない。地上本部の軽犯罪対策課の仕事だ。私はいつも通り訓練をしたり書類仕事をこなして本日の職務を終えた。

 模擬戦をしたいと頼んできたらしい二名からの接触も特になし。訓練の最中に一度だけ様子を見に来たが、挨拶以外の言葉は一切交わさなかったところを見ると、模擬戦をどうしてもやりたかったというわけではないようだった。

 

 そして今日も仕事を終えて郊外にある安いアパートに戻り一人で用意した夕食を、何故か三人で食べている。

 

「随分と暇なんだな」

「いくら私達でも、偶には休みが必要だって」

「私にも一日くらい暇な日はあるさ」

 

 私は一応人間なのに、毎日仕事をしているわけだが。何もしない休日が無いことはないが。

 

「それよりも、当たり前のように私に会いに来るのはどうかと思うぞ」

 

 保護者付きとはいえ、年若い娘が云々と、常識ある人なら言うだろう。私は手を出すつもりなど無いし、手を出した所で返り討ちにされるのが目に見えている。

 それよりも、犯罪者とその部下が警察に当たり前のように会いに来てるのは絶対におかしい。頭の少しイカれてる私にもわかる。

 

「私もそんなに来たいわけじゃないんだけど、人目につかずに動くのは私が一番得意だから仕方ないんだよねー。ドクターの頼みを断る訳にはいかないし」

「そうか。それで、要件は何だ」

 

 わざわざ人の部屋まで直接やってくる位だ。ただ飯を食いに来たわけじゃないだろう。大なり小なり、何かしらの用事があって来たはずだ。

 

「君はあまり賢くないようだから、単刀直入に聞こう。仇を自分で討てずに、満足かい?」

「……最初の一言は余計だな」

「気を悪くしたのなら謝ろう。それで、答えは?」

 

 考えるまでもなく決まっている。だが、果たして答えていいものか。私が入院していた間に盗聴器が仕掛けられていないとも限らない。うっかり答えて翌日確保されましたでは、話にならない。

 

「盗聴の心配はいらないよ。仮に仕掛けられていたとして、電波を妨害するなど私には造作も無いことだ」

 

 なんとも、準備がいいことだ。

 

「満足な訳がない……あの屑共をこの手で殺せずに、満足できるはずがないだろう」

 

 これが本心だ。だが牢屋の中にいる奴らをぶち殺せば、私は犯罪者だ。犯罪者が死んだとしても、保険金は一切出ないだろう。

 

「私が手を貸せば、簡単に牢屋に居る彼らを脱走させられる。脱走した凶悪犯罪者を殺してしまっても、大きな罪には問われないだろう? 管理局は管理世界に住むすべての人々の安全を守るために存在するのだから」

 

 予想通りの展開だ。復讐の機会を用意する代わりに、自分と手を組めということだろう。なんともわかりやすく、素晴らしい話だ。

 

「それで、対価は何だ」

 

 誰もタダで動いてくれるとは言っていない。むしろ、ここからが本題だろう。

 

「六課の情報を可能な限り私に流す。または私の側に寝返り、私の目的を達するための戦力になってもらう。どちらか一方を選んでくれ」

 

 前者も後者も明確な反逆だな。バレたら処罰は免れない。だが、私にとってそれだけの価値がある取引だ……最悪仇だけ討ってこいつを裏切ればいい。というのは甘いか。相手は指名手配を受けておきながら、こうも大胆に行動できる人物だ。その程度のことを計算に入れていないわけがない。

 管理局内部にもスパイが居るとのことだし、何か行動を起こせばすぐにバレて処理されてしまうだろう。それは殉職だから悪いことでもないが、処分されるのが私ではなく妹であれば、最悪だ。

 反対に相手が私を使い捨てにする可能性は……低いだろう。情報を吸い出すなら使い捨てにするのは惜しい。私がスカリエッティの立場になったとして、やるとすれば洗脳か。まあそれもいいだろう。復讐さえできれば、あとはそれで。

 

「……どうだね?」

「受けよう」

「交渉は成立だ。よろしく頼むよ、ハンク君」

 

 嫌らしく歪んだ笑顔を浮かべながら片手を差し出すスカリエッティ。チラリとセインの方を見るが、とても美味しそうに私の作った夕食を食べている。が、ここで私がスカリエッティに危害を加えれば態度を豹変させて襲いかかってくるだろう。

 大きな手柄を一つ挙げれば多少の無茶は許されるかもしれない。つまりは自分の手で処刑することも、スカリエッティの首を中将に持って行って頼めばできるかもしれないが。この場で殺すのはまず無理だ。単独で戦闘機人を相手にする能力なんて、私にはない。

 

「手をとるのは、仇を殺した後だ。代金ももらわずに領収書は渡せない」

「ははは、手厳しいね。彼らは明日の正午にでも脱走させよう。君は車を止める手段と彼らを殺す手段だけ用意して、私からの連絡を待っていればいい」

「わかった。次に会うのはいつだ」

「それは教えられないね。君が裏切って仲間を呼ばないという確証もない……まあ裏切ったら、君の妹が死ぬだけだがね」

 

 簡単に裏切れないよう人質か。人に言うことを聞かせるにはいい手だ。

 

「君が自分の命を軽く見ていることは知っている。そして自分の命を軽視する分だけ、残るたった一人の家族に執着していることも知っている。私が知らない事は殆ど無い……心の治し方も、少し研究すれば理解できるだろうさ」

「脅しと懐柔か。私の家族に危害を加えたら貴様らを一人残らず殺してやる」

 

 それこそ手段を一切選ばずに。管理局の質量兵器保管庫には、そのための手段がいくらでもある。それこそ、A級ロストロギアに匹敵するものも。それを使えばどれだけの強さを誇ろうが関係なく皆殺しにできる。

 だが、正直こいつなら妹の心も治してやれるかもしれないという期待がほんの僅かながらに存在する。

 

「安心したまえ。君が裏切らない限り、私達は何もしない。治療の研究も片手暇にしておこう。尤も、せっかくのスパイが怪しまれては意味が無い。仕事の遂行中に仕方なく交戦する事になった場合は、死なない程度なら攻撃しても裏切り扱いはしないよ」

「攻撃の結果、戦闘機人が死んでもか?」

「持ち運べる火力で彼女たちを殺すのは、かなり難しいと思うがね。まあそうだね。死人が出たのにお咎め無しとは行かない。見逃してあげられるのは重傷が限界だ」

 

 そうなると対戦車ミサイル、ロケットランチャー、対物ライフル、ヘリに搭載している武装での攻撃はできないか。さすがに死ぬ。

 

「この制約は君の部下にも適用する。部下に命令して殺すのもアウトだ」

「わかってる」

 

 殺すなら私にしてくれればいいのに。そうすれば何も考えること無く職務を全うし、殉職できるのに。

 

「それじゃあ、今日はこれで失礼しよう。セイン、帰るよ」

「はい、ドクター」

 

 床へ沈んで消えた二人を見送り、二人の使っていた食器を台所へ持って行って洗いながら、これからの身の振り方を考える。糞野郎どもを殺した後どうするか。とりあえず思いつくだけの道を考えてみる。

 一、スカリエッティに従い情報を流す。

 二、管理局を抜け、スカリエッティの戦力として働く。

 三、管理局を抜け、スカリエッティの側にも着かず、今後起こるであろう事件を傍観する。

 四、中将にこの件を報告し、スカリエッティには偽の情報を流し続ける。

 

 一は最も安全で、妹が危険に晒されることもない。

 二は私の身に結構な危険が伴うが、別にそれは問題ではない。保険金の代わりに退職金をもらえるのだし。

 三は現実的ではない。管理局はともかく、スカリエッティが許さないだろう。

 四……下策だな。一度や二度は騙せても、それ以上は無理だ。バレるまでに捕まえるのも無理。

 

 結局、スカリエッティの言うとおりにするのが一番賢い選択か。じっくり考えれば他にも道はありそうだが、それほど時間もない。今私にできることは、現時点である全ての金を妹名義の口座に振り込み、治療継続の用意をすることだ。明日の朝にでも口座振替をしに銀行へ行こう。

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