オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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今回、グロテスクな内容が含まれております。ご注意ください。


第24話

 一晩考えたが、特に良い案は浮かばなかった。とりあえず、朝一番で銀行に行って、ある限りの貯金を妹の口座へ振り込んで出勤したが……さて。まあ、昼に備えて準備をしておくべきだろう。事を起こすのは、正午だと言っていたな。場所は知らされていない。

 となると、誰かに逮捕される可能性もあるわけか。それは困るな。昼前にヘリで空に上っておいて、現場に直行できるようにしておこう。飛ばす名目は、飛行訓練でいいだろう。

 

「二佐。ハインドの飛行訓練をしたいので、市街上空での飛行許可をください」

 

 一応、できるだけ落ちても被害の少ないルートを提示させてある。本来なら戦闘用だが事務仕事にしか使っていないデバイスが、また事務仕事で一つ活躍した。今日のことが終わって捕まらなければ、デバイスマスターに戦闘用の機能を全て削ぎ落として事務仕事専用に改造してもらおうか。

 

「私に言われてもなぁ……地上本部に掛けあってみんと」

「許可は昼までに出ますか?」

「どうやろ。それはあちらさん次第やしなんとも言えんわ。なんか急ぐ理由があるん?」

 

 ポチポチと、自分の前に浮かぶスクリーンでメッセージを送信する二佐。何をしているのかは裏からも見える。地上本部あてにヘリの飛行許可願を出してくれているようだ。

 

「部下が銃の整備を怠って作動不良を起こした連帯責任として、今日の私の部隊は休みなしで一日訓練にしてあります。昼は訓練場を他の方が使うようなので、その間に飛行訓練を行いたいのです」

 

 丁度いい言い訳のネタがあってよかった。三号には感謝しなければならないだろう。感謝の意を込めて、あいつだけ訓練内容を倍に増やそう。多分午後から私はここには居られなくなるから、四号に監視させておこう。前に配属されてた部隊の方針か、それとも単純に本人の気質か。あいつはやけに素直に命令を聞くから。

 

「ああ、それはアカンな……」

 

 事の重大さをわかってくれたようで何より。今回は訓練中だったが、銃の動作不良が実戦の最中に起きれば命はない。私が居なくなった後はあいつらに新人の訓練をしてもらわないといけないのに、これでは困る……私ではなく中将が。

 私の部隊は中将が提唱する『新しい戦力』の代表で、経験を積み重ねて基礎を作り、それを次世代へと伝えなければならないのだ。基礎がしっかりしていなければ、その上に立つのはひどく不安定で脆い物になる。だが、それは中将が望むのは安定した戦力。不安定ではダメなのだ。

 

「っと、もう返信来たで。『事故を起こさぬよう、最大限の注意を払った上で訓練せよ』……やっぱ中将と関係あるやろ。あのオッサ……堅物がこんなに簡単に許可出すはずがないわ」

「関係も何も、中将が後見人となって設立された部隊ですが」

「そりゃわかっとるわ。関係っていうのは……うちの情報を流したりしとらんやろな」

「模擬戦の事は当然報告していますが」

 

 それ以外のことは報告するようには言われていない。言われてもないことをするほど働き者ではない。

 

「では、失礼します」

 

 敬礼して、背中を向けて隊長室から出て行く。下手をすれば、もう二度とここには戻らない。戻れないかもしれない。だが、挨拶はしない。余計な事を言って勘ぐられても面倒だ。

 

「また、後ほど」

 

 後ろを振り返らず、ロッカールームへ進む。普通の儀礼用の制服を乱暴に脱ぎ捨て、エンブレムの付いた戦闘用の制服に着替えて用意は終わり。私はこれでいい。寝かせ続けて六年間。たっぷりと熟成させた深い恨みだ、たかが一ヶ月と過ごしていない仲間と引き換えにするのに、躊躇うことなどないだろう。

 着替えも終えたので、今度は屋外ヘリポートへ。

 

「あら、隊長」

 

 出た所で丁度四号と出くわした。周りを見るが、四号一人だけだ。一号、二号、三号の姿はない。一人訓練をサボるような奴ではないと思っていたが。はて、どうしたのか。

 

「訓練はどうした」

「……隊長、こんなナリですが、私も一応女です」

 

 つまり、そういう日か。それなら仕方ない。辛いとは聞くが、どれほどのものかはわからないし。無理に働けとはいえない。

 

「そうか。十一時三十分からヘリの飛行訓練を行う。他の奴らに二番ヘリポートへ来るよう伝えろ」

「了解」

 

 また四号と別れ、一人でヘリポートへ向かう。整備は万全のはずだが、一応先に乗りこんでエンジンを起動して暖気しておく。その間に一旦降りて武装の点検。ロケットポッドにかぶせてあるプラスティック製防塵カバーを外して、中身を見る。ハチの巣のように穴がいくつも並んでいて、その中にロケットの弾頭が見える。残弾はそれほど多くない。前に対ガジェット戦で盛大に撃ってから補給されていないからそれも当然だ。こっちは動く的に当てるのは難しいし、外れたら市街に大きな被害が出るから使わない。使うのはその真横に吊り下げられている4つの対地誘導ミサイル。こちらなら外れることはないだろう。ただし一発につき無茶苦茶な金が飛ぶが。

 性能と調達コストが比例するのは、質量兵器も魔導兵器も同じか。管理局に入ったのはやはり正解だった。テロリストじゃこんな大きなものはマトモに使えやしない。

 

「隊長、全員呼んできました」

 

 四号の声に振り向くと、完全武装した部下四人が一列に並んでそこに居た。装備を置いてから来ると思っていたが……完全武装で走ってきたのか。感心だな。

 

「全員乗り込め。今日は昼食抜きで遊覧飛行だ。ただし二号、お前が操縦しろ」

「え、マジですか隊長」

「お前以外に操縦できるやつは居ないだろう。暖気は済ませてある。速く乗れ」

 

 嫌な顔をする二号を無視して、副操縦席へ座る。私に続いて渋々操縦席に乗り込む二号。ついで後ろのドアから三人が乗り込むと、ローターがゆっくりと回りだし、徐々に回転数を上げていく。そしてしばらく待つと、ヘリが少しずつ浮かび上がり空へと上がっていく。

 

「離陸完了。高度五十……七十……九十……百…………三百。高度確保。これより訓練飛行を開始する。隊長、しっかりルート指示頼むぜ」

「わかってる。北西へ頭を向けろ」

 

 デバイスを開いて飛行ルートを表示する。クラナガン西のハズレには刑務所がある。ヘリで全速を出し、真っ直ぐ行けば三十分もいらない……だが、そこへ直行すれば怪しまれるので少しだけ進路をずらす。報告が入ってから向かう。スカリエッティが手助けするとなれば、刑務所に常駐している警備の魔導師には手が負えないだろう。

 

『いい眺めだな。街を見下ろしながらサンドイッチでも食いたいもんだ』

「残念ながら飯はなしだ。恨むなら三号を恨めよ、一号」

『おい三号~』

『悪いって言ってんだろ……許してくれよ』

『私は別に一食くらい抜いても構いません』

 

 客室でどうでもいい会話をしている三人は放置しよう。

 

「二号、エンジンの調子はどうだ」

『悪くない。整備兵に感謝しねえとな』

 

 いいことだ。

 

「……」

『……」

 

 しばらく沈黙が続く。 

 

『ところで隊長、どうしてこの飛行ルートを選んだんだ』

「お前はよく質問するやつだな。行政施設を避けるなら、このルートが一番少なくていい」

『市街地を速く抜けるなら南東だ。他に理由があるんじゃないのか?』

「……デバイスが選んだルートだ。私の意思は関与していない」

 

 それよりも、午後零時……時間だ。

 

『緊急通信。移送中の犯罪者が五名、車両を奪って四番道路を西へ逃走した。援軍を頼む』

 

 ようやくか。待ちわびた。

 

「こちら機動六課質量兵器運用小隊。訓練飛行中だが、進路を変更してそちらへ向かう……そういうことだ。進路を変更しろ」

『このタイミングで……まさか、隊長知ってたのか?』

「私がそんなことを知ってるはずないだろう。それよりも西だ。全速で向かうぞ」

 

 ローターの回転数が上がり、スピードも上がる。もうすぐだ……もうすぐこのくだらない因縁にもケリを付けられる。

 

『逃げた犯罪者が何人か人を轢いたという情報が新たに入った。事実かどうかはわからないが、放っておいては危険なことに変わりない。できるだけ速く奴らを止めてくれ』

「搭載する武装の関係上、生け捕りは困難と思われる。死んでも構わないか」

『停止命令に従わない、もしくは抵抗するようなら許可する。民間人の安全には変えられない』

「了解」

 

 誰に言われなくとも、元よりそのつもりだ。遠くに他の車とは全く違うスピードで走る、灰色の大型車を見つける。おそらく、あの中に仇が乗っているのだろう……

 

「左翼対地ミサイル、機首下機銃セイフティロック解除。ミサイルロックオン」

 

 今すぐ撃ちたくなるが、それは我慢。形式上だけでも警告はしておかないと。

 

『おい、隊長。まさか警告なしで殺すのか?』

「警告はする。従わなければ殺せばいい」

 

 おとなしく捕まってくれるなという願いを抱きつつ、管理局の車載無線機にチャンネルを合わせる。

 対地ミサイルをロックオンする。ピーーーッとロックオン完了の音がやかましく鳴り響く。

 

「逃走中の犯罪者に告ぐ。直ちに車を停止させ、投降しろ。さもなくば殺害も辞さない」

『ふざけるな! 我々は犯罪者などではない!!』

 

 やはり、糞は糞か……だが、そうでなくては殺し甲斐がない。糞は糞らしく、見難くあがきながら糞をまき散らして死ねばいい。

 

「繰り返す。停止しろ」

『断る!』

 

 そうこなくては。最後くらいは私の思い通りになって死ね。

 

「威嚇射撃を実行する。進路を直線で維持しろ、間違って当てたら事だ」

『了解』

 

 車そのものを狙いたくなるが、狙うのは車の真横。手元のハンドルで機銃の角度を調整して、トリガープル。機首下の機銃が火を吹いて、道路に着弾。アスファルトを抉り散らす。

 

「最終警告だ。停止しろ。次は当てる」

『……わかった、投降する。撃たないでくれ』

 

 車が徐々に速度を下げて停止する……そして、中から人が一人降りてくる。 そいつはこちらにデバイスを向けていて、その先には砲撃魔法を使用するとき特有の光と、魔法陣が輝いていた。

 

「回避しろ!」

『りょ、了解!』

 

 機体が右に傾き、スライド移動する。そしてその真横を青い砲撃がかすめ……右翼が爆発した。右翼に載せていた武装に誘爆したらしい。

 

「くそ……」

 

 右目が見えないし、右腕も……首を右に向けると、キャノピーの強化ガラスは吹き飛んでコックピットが空にむき出しにされていた。右半身は服が破れ、その下からは血が。パネルに表示される右翼の武装の表示は全て真っ赤。おまけに機体が回転しながら徐々に高度を下げていて、あちこちから警告音が鳴り響く。エンジンは……パワーが下がっている。このままだと間違いなく墜落して、みんな仲良くお陀仏だ。

 

「二号、機体を安定させろ」

『……』

「二号、返事をしろ」

 

 ……足掻けとは思ったが、ここまでしろとは一言も言っていない。殺されるゴミのくせに、随分と舐めた真似をする。

 

「操縦権を副操縦士に……よし。機首上げよし……エンジンの回転数は、上がらないか」

 

 まずは機体を安定させる……機首を上げて減速はできた。エンジンはいかれてしまったらしい。次の瞬間には警告音もランプも、ボタンのライトも消えた。今度は電装系がいかれたようだ。これで武装は使用不可能……私が殺すには、直接行くしか無い。

 

「一号、三号、四号。生きてるか」

『三号が血まみれだ! どうすりゃいいんだよ畜生!! 遊覧飛行じゃなかったのか!?』

『私は軽傷です!』

「そうか。二号! 起きろ!」

『さ、叫ばないでくれ……よ隊長……ゴホッ』

 

 ……声から察するに、かなりの重傷だな。血が喉にせり上がって、それを吐き出そうとしてる。

 

「機体を墜落させないように降ろせ。死ぬならそれから死ね。一号と四号、三号を死なせるな」

『隊長は?』

「奴らをぶっ殺してくる」

『ちょっと待て! ぶっ殺すってどうやって!?』

 

 ベルトを左手で抜いたナイフで切断し、割れたキャノピーから顔を突き出して地面までの距離を見る。百メートルくらいはあるか……できるかどうかは、蛇と私次第だな。ヘッドセットを外す。

 

「ああ……畜生。ヒデエ隊長だ…ゲホ、やってやるさ」

「頼んだぞ。後ろに乗ってる奴らを生かせるのはお前だけだ」

 

 キャノピーに足をかけ、身体強化して飛び出す。そして、イメージするのは長い棒。果てしなく長い棒。左腕を突き出す。蛇が痣から這い出ていき、黒い棒が自由落下の速度よりも速く地面へ伸びて、突き刺さる。ここまでは、なんとか成功。問題はここから。

 

「くぅ!」

 

 衝撃で肩が外れそうになったが、身体強化をしていたおかげでなんとか外れずに済んだ。だが、落下の勢いはまだ消えない。棒を思い切り握りしめるが、手の皮が一瞬で剥けた。次に肉が削られ、骨まで削れて掌がなくなった。それでも落下の勢いはあまり衰えず、地面がすぐそばに迫る。身体強化、脚部限定。所詮Eランクしかない魔力を全て足と、足の裏へ注ぐ。

 

 地面が目前に迫った所で、足の下で魔力を爆発させる。ほんの僅かに減速したが、着地はうまくいかず。足が破裂し、脛から折れた骨が突き出た。……だが、それがわかるのは生きてる証拠。なに、問題ない。まだ動ける。バインドで突き出た骨を縛り付けて戻すと、すぐに傷が消えた。立ち上がり、ずっと遠く…‥豆粒のように見えるほど遠くで止まっている車を見据える。

 

「……」

 

 ようやく奴らを殺せる。そう思うと、顔の形が笑顔にゆがむ……果たしてここまで『嬉しい』と感じたのはいつぶりか……蛇も急に与えられた巨大な感情〈餌〉に喜んで食いつき、飲み干し、それでもまだ尽きない昂ぶりを魔力へと変えてくれる。肉体にかつて感じたことがないほどの魔力があふれる。それもそうか、六年間ずっと感情を抑えこんで生きてきた。その抑えてた分が、一度に出たんだ。

 

「これなら行ける……殺せる!」

 

 肉体強化をすれば、今までにないほどに力が漲る。体が軽い……もう治った足で地面を蹴れば、地面が爆ぜ、一瞬で景色が流れる。一歩で数十メートルほどは進んでいるか。一度地面を蹴るごとに小さく、遠くにあった車がみるみるうちに近づいてくる。そして、さっき砲撃をしてきた屑の面が目の前に。足を止める。

 

「やあ……6年ぶり。僕のこと覚えてるかな? 随分老けたじゃないか……」

 

 六年前よりも髭が濃く、皺も増えている気がする。でもそんなことはどうでもいい。いつの間にか口調が昔に戻っているが、それもどうでもいい。

 

「誰だお」

 

 6年前の軽い仕返しのつもりで右手で顔を殴ったら、頭が綺麗にはじけ飛んで脳みそをまき散らして死んだ。これっぽっちじゃ、全然仕返しになっていない。6年前に味わった苦痛の、屈辱の一欠片も返せていない。仕方がないので、不格好に立っている体を蹴り飛ばした。今度は胴体に大穴が空き、その向こう側へ真っ赤な絨毯のように血と肉と内臓と……色々混ざったものが広がった。

 

「おいどうし……相棒!!」

 

 助手席からもう一人の見覚えのある顔が出てきた。剣の形をしたデバイスを振り下ろされたので、それを弾くために蛇を剣の形で出し、それを持つ右腕を振り上げるとデバイスが砕けた。唖然としているその顔に剣を振り下ろす。水を切るように抵抗なく顔が切れた……しまったな。じっくりと痛めつけて殺すつもりだったのに。まあいいか、あと三人も残っている。

 

「ば、化物だ!!」

 

 車の後ろから出てきた三人の内一人が私の顔を見るなり怯えて背中を向けて逃げようとしたので、追いかけて背中に剣を根本まで突き刺した。致命傷だけど、すぐには死なない位置に刺したからしばらくは苦しんでもらえるだろう。

 

「がっ……ふ!?」

「逃げたらダメだよ。まだ仕返しが済んでないんだからさあ!」

 

 剣を引き抜き、横に居る二人をしっかりと見つめる。最高だ……6年間の願いがようやく叶う。6年前の恨みがようやくはらせる。

 

「やあ、会いたかったヘンリー・グスタフと、そっちの眼帯してるのは、名前なんて言ったっけ。まあどうでもいいや。僕のことを覚えてるかなぁ? 6年前、あんたに家族を殺された後、妹ともどもひどい目に合わされたんだけどさぁ」

「ま、まさか……あの時のガキか!」

「そうそう! 思い出してくれたかなぁ……妹はおかげでず~っとベッドの上さ。大変なんだよ? 会いに行く度に『殺す、殺す』ってさぁ」

「頼む! 助けてくれ!! 私には家族がいるんだ、見逃してくれ!」

 

 地面に頭を擦り付けて、典型的なセリフを吐くヘンリー。その隣で、逃げようとした奴の背中に刃を突き立てる。

 

「人の家族を殺しておいて自分には家族が居るから見逃してくれって、聞くと思ってるんだ」

「頼む! 金ならいくらでも払う!!」

「…………」

 

 後ろで物音がしたので振り向くと、デバイスをこちらに向けた男が。

 

「お前も道連れだ……化物!」

 

 デバイスの先に魔力が集中するが、それが放たれる前に近寄り頭を踏み潰す。そして、またヘンリーに向き直る。

 

「そうだなぁ……まあいいや。たくさん殺して気は済んだし、行ってもいいよ」

「ほ、本当か!?」

「ああ、行きなよ。今僕は最高の気分なんだ」

 

 歩いて隣で苦しんでいるウジ虫のような男に、剣を突き刺してトドメをさして蛇を腕に戻す。

 

「ありがとう! 本当に……ありがとう!!」

 

 喜びながら立ち上がり、逃げようとするヘンリーの片足を後ろから斬り落とす。前に走りだそうとしたところで斬ったので、正面に倒れる。

 

「……へ? 嘘……お、俺の足が!?」

「その通り! もちろん嘘さ。助けるつもりなんて、元からないよ。助けてもらえると思ったんだ、へぇ~~、馬鹿みたいだね! 大馬鹿だ!」

 

 剣をナイフに変えて、右手の親指を切り落とす。

 

「ひぎゃ!?」

「いやぁ…‥6年間長かったんだよ? 毎日毎日、アンタ達を殺したいと思ってた」

 

 人差し指。

 

「いぎ!!」

「管理局に入って、本当はしたくもない殺しをして。途中でなんで僕はこんな事してるんだろうって、危うく自分を見失いかけたこともあったなあ」

 

 中指。

 

「っ……もう、やめてくれ」

「6年前、僕はそう言ったけどやめてくれなかったよね」

 

 薬指。

 

「~~! はっ、はっ……」

「頑張って、殺して、殺して、殺しまくって准尉になって、部隊を設立して」

 

 小指。

 

「やっと復讐ができると思ったら、機動六課の雌狸に邪魔されて……聞いてる?」

 

 反応が薄くなったので、身体強化を解除した『左手』で叩く。

 

「っ……頼むから……やめて」

「それで、一度は諦めたというか妥協したんだけど、スカリエッティがアンタたちを殺す機会を作ってくれるって言うから取引して」

「あ、あいつが……俺達は、逃してくれるって言ったから……信じてたのに!!」

 

 もう死ぬかと思ったけど、案外元気になってくれた。人間は意外と頑丈なものだ。右手首。そろそろ血も少なくなってきたのか、流れる血が少なくなってきた。そろそろ殺そう。トドメは自分の手で。

 

「っ!!!」

「アンタ達は、僕から全部を奪った。折角作った部隊も、きっともう解散だ。まあ、もう用無しなんだけど、一人か二人は死んだかもしれない。本当に最期の最期まで色々奪ってくれた……でも、それも」

 

 相手の左腕を剣で串刺しにして地面に縫い付け。左手で頭を抑えつけて、右手を振り上げる。これでようやく終わる。6年間の因縁も、この下らない恨みも。

 

「嫌だ、嫌だぁ!!」

「これで終わりだ!」

 

 固く握った拳を振り下ろす。

 

「死にたくなっ」

 

 水風船が破裂するように頭蓋骨の中身が周りに飛び散り、拳はアスファルトの路面に突き刺さった。腕を引き上げて拳を緩めると、血が雫を作って地面へと垂れた。

 

「……ふぅ」

 

 目を閉じて、一つ息を吐く。これで、全部終わった……血で汚れてしまった色の車に乗り込み、無線を本部のチャンネルに合わせる。

 

「……こちらハンク・オズワルド准尉。本部、応答してくれ」

『こちら地上本部。どうしました』

「ヘリは逃走した犯罪者に落とされたが、犯罪者は皆殺しにした。小隊の重傷者は二名……離れてるから今どうなっているかはわからない」

『了解。すぐにヘリをそちらへ向かわせます』

「頼む」

 

 車のエンジンをかけ、ヘリが落ちた方向へ走らせる。しかし、派手にやりすぎたなぁ……査問されるだろうし、言い訳はどうしようか。

 

 ……まあいいか。それはその時考えよう。今は……とりあえず復讐を終えた達成感と幸福感を味わっていよう。




これにて、一章は終了です。
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