オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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今回も短いです
温い展開はもう少しだけ続きます


第28話 迎え

 一旦アパートに帰ってから、荷物を纏めて夕食でも作ろうかと思った所で八神はやてから電話が来た。話の内容は、仕事が終わったから一緒に食事をしよう、ということだった。そういえば、昼にそんな事も話した記憶がある。もちろん私は了承した。その理由は、裏切るのなら親しくなってからの方が衝撃が大きいという非常に打算的なものだが。

 指定された店は、第97管理外世界のニホンという国の料理を出す珍しい店。もちろん珍しさだけが売りではなく、味も一流ということで非常に人気の高い店だ。以前中将から飲み会に誘われた時、自慢気に話していたのでよく憶えている。だが男女が一緒にディナーを食べるような店ではない。むしろ仕事に疲れた中年男性が数人で集まって、互いに愚痴を言い合いながら飯と酒を腹に入れ、酔いつぶれて家に帰る。そんな雰囲気の店だ。

 どうでもいいことと考えながら、バイクを停めてあるアパートの駐車場へ降りる。

 

「……」

 

 階段を降り、駐車場の方へ向くと、街灯の下に人が一人。長身の女だ。そいつは季節外れのコートにフードを被っていて、いかにもそれといった風体だ。懐に仕舞いこんである減音器付きの拳銃に右手を伸ばし、空いている左手に小さいナイフ形に蛇を出す。さらに身体強化をかけて、戦闘の用意は完了した。

 

「……」

 

 フードをかぶった『怪しい奴』が顔をあげるが、その容貌は影に隠れて見えない。体型からして女なのはわかるが、先手は取らない。先手必勝とはよく言うが、それは一撃で確実に仕留められる手を持っている時に限る。相手がどんな戦闘スタイルかもわからないのに突っ込むのは自殺と同じだ。判断は慎重に。行動は大胆に。

 

「ハンク・オズワルドですわね?」

 

 声から敵意は感じられない。相手の周りの靄からもだ。だが、安心はできない。

 

「人違いです」

「……あらぁ? ごめんなさい、人違いでしたか」

「女性がこんな夜に出歩くものじゃないですよ」

 

 警戒は解かずに、一般人のフリをしてバイクに近寄る。

 

「なんて、騙されると思って?」

「ッチ」

 

 即座に懐から拳銃を抜き出し、安全装置を外して発砲。サプレッサーに抑えこまれた銃声が夜に木霊して、銃弾が何か硬いものに弾かれる音がする。一発でダメならもう一発。それでダメならワンマガジン。今までの人生で培われた経験が、勝手に指を動かす。

 

「ま、待ちなさい! 私は敵じゃないわよ!!」

 

 リロードしてさらにもう一発、といったところで制止が入る。とりあえず拳銃弾では歯がたたないことはわかった、これ以上は弾の無駄なので、銃をしまって空の薬莢を拾う。

 

「こんな夜に、コートを着て、フードを被って、街灯の下で一人私を待っている。しかも私は追われる身で、私はお前を知らない。敵じゃなければなんだ」

「もう……私はクアットロ。ドクターの命令であなたを迎えに来たのよ。なのになんでいきなり撃たれなきゃならないのかしら……全く不愉快だわ」

 

 どうやら傷はない様子。あのコートに何かしらの秘密があるのだろうか……以前、セインを狙撃させた時には銃弾がたしかに体を貫通していたから、肌で弾くほど化物ではないことは確かだが。

 

「そうか」

 

 ポケットを漁り、部屋のキーとデバイスを取り出して迎えの女に投げる。

 

「なにこれ」

「私はこれから食事に行く。多分明日までには戻るから、部屋で待っていてくれ。デバイスは連絡用の端末だ」

「はぁ!? ここで一時間くらいずっと待ってたのに、また待てって言うの!?」

 

 ……なぜ通報されなかったのだろう。こんなに怪しいのが一時間も棒立ちしていたのに。それとも触れたくなかったのか。それもあるかもしれない、皆誰しも面倒は嫌いだ。

 

「静かにしてくれ、近所迷惑だ」

 

 一応、相手の感情に配慮して注意する。怪しいという自覚がないなら、怪しいとストレートに言われたら傷つくかもしれない。一応恩人の仲間だ。できるだけ機嫌は損ねたくない。ヘルメットを被ってエンジンをかける。

 

「なんですって?」

「言い方を変えよう、通報されるぞ。管理局との接触は避けたいだろう?」

「……まぁ、そうですわね」

「すまんな。待つ間は寝るなり本を読むなり、好きにしてくれ。何かあったらデバイスにメールを送る」

 

 ライトを付けて夜の道へと走りだす。食事だけならそれほど時間はかからないだろう。本当に用事が食事『だけ』なら。


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