オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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風邪引いたまま夜中のテンションにまかせて書き上げたらこうなった。
なるようになるさ!いざとなったらここだけ消して無かったことに(以下略)


第29話 会食

 道中、一度交通事故に巻き込まれそうになったが間一髪で回避し、それ以降は特に何事も無く進んで店に到着。駐車場へバイクを停め、暖簾を潜って店の中へ。

 

「いらっしゃいませー」

 

 前に来た時と同じく、客のほとんどが中年男性だ。店員は変わっているようだが。八神二佐……もう上司ではないから階級付けでいう必要はないか。カウンター席は酒の入ったコップを掲げて乾杯するオッサンが数人いるが、女は居ない。座敷席に目を向けても、八神はやての顔は見当たらない。早すぎたのだろうか。

 

「何名様ですか?」

 

 考えていると、若い女性の店員に声をかけられた。

 

「八神はやてに、この店で食事をしようと誘われて来たのですが」

「奥でお待ちです、こちらへどうぞ」

 

 奥の部屋、なるほど。VIPというか、特別待遇というか。佐官というと、将官クラスには及ばなくともそれなりに……いや、かなり偉いのだ。そんな相手を一般客と同じように扱うことはできないか……しかし、前に中将と来た時には一般客と同じようにカウンター席で食事をしたような。どこに差があるのか……電話で予約でも入れたのか?

 あれこれと考えを巡らせながら店員に案内されるままに店の奥へ。

 

「あ、待っとったで」

 

 部屋には私服姿の、薄化粧した八神はやて一人。いつもの取り巻きは居ない。隣の部屋に待機している可能性は無くもないが、私を拘束する理由もないから可能性としては無視しても良い程度だろう。もちろんスカリエッティとの関係がバレていれば話は変わるが、それは一言も伝えてないし、あいつ自身が伝えない限りはないだろう。

 相変わらず無粋な考えをしてしまうが、いつもの癖だから仕方ない。テーブルを挟んで正面に座る。

 

「では、注文が決まったらお呼びください」

 

 店員が下がったところで、口を開く。

 

「どうも、誘ってくれてありがとうございます」

「もう部下やないんやし、敬語は使わんでもええで」

「了解。それで、どういうつもりで呼んだんだ? もう部下でもないだろう」

 

 メニューを開いて適当に安いのを探しながら聞いてみる。私には彼女と親しくするメリットがあるが、彼女にはない。あったとしても、デメリットも大きい。私と親しくなることを、彼女の取り巻きはあまり良くは思わないだろう。私と親しくすることで、その取り巻きと不仲になる可能性もある。そこまでして親しくなるメリット……思いつかないな。

 

「部下じゃないと仲良うなったらあかんのか?」

「理由がわからない」

「私はアンタのことを気に入っとる」

「自分を撃った相手を気に入るはずがない」

 

 私だったら、という前提があるが……。考えてみれば、今私には気に入った人間、つまりは好意を持った相手は一人も居ない。信用に値する人間なら何人か居るが、それは仕事をする上での関係。個人としての立場で気に入る人間は居ない。

 

「そう言うてもな。わたしの家族も、なのはとフェイトと何度か敵同士で戦こうて、今はあの仲やし」

「……」

 

 なるほど、考え方が根本的に違うと。敵味方はあまり関係なく仲良く出来る相手なら仲良くしておきたい、大体これで合ってるだろう。とりあえず理解はできないが、納得はした。しかし元々戦っていた敵を信用するのは簡単ではない。私なら絶対に裏切らないという保証がなければ背中を撃たれることを恐れて警戒を解けないだろう。

 

「別に、仲間として親しくなろうとは思っとらん。家族になってほしいとも、今更言わん。ただ、友達くらいにはなれればええなって」

「友達……」

 

 相手からそういう申し出があるとは、正直願ってもない。だが一度『嫌い』だと面と向かって言ってしまったし今更『喜んで友だちになりましょう』というのも不自然だろう。少しだけ過去の自分の行動を後悔する。今後のためにはそう言っておいたほうが得なのだが、その言葉に違和感を感じられれば……面倒なことになる。

 しかし友達か。そんなものも、あの事件が起きるまでは居た。確か居たと思う。記憶には全部ノイズがかかっていて顔も、声も、名前も思い出せない。

 

「最期に一つ質問だ、私のどこを気に入っている」

「顔」

 

 ……なぜだろう。すごく馬鹿にされた気がする。微妙に腹が立つ。だがこんな風にイライラするのは、少し感情が回復してきた証拠。少しは喜ぶべきか。

 

「冗談や。昔の私がまた別の道を辿っとったら、ハンク君みたいなひねくれた性格になっとったかも。そう思ったらなんか気になってな。あとはなんか危なっかしくて放っておけんてのもある」

「もう他人だろう」

「一度関わったら、赤の他人とは言えんやろ?」

「そういうものか?」

「そういうもんや」

 

 いまいちよくわからないが、彼女がそう言うからには一般的にはそういうものなのだろう。さて、それよりもどう友人になりたいと切り出すべきか。いっそのことストレートに、表面上だけの好意を伝えてみるか。急だが、怪しまれても騙し通せばいい。

 

「……そういえば、お前のことはどう呼んだらいい? 管理局を抜けたのに階級で呼ぶのもおかしいだろう」

「ん? せやなぁ……はやてって呼んでや。その方が親密な感じがするやろ」

「なら、そう呼ばせてもらおう。はやて」

「何?」

 

 名前で呼ぶと、やけに上機嫌そうな声で返事をされた。さて、ここからが問題。どう転ぶことになるやら。

 

「以前はああ言ったが、家族に誘ってもらえたのは嬉しかった。ありがとう」

 

 まずは嘘から入る。嘘から入って、少しずつ事実を混ぜて。演技は得意だ、騙せるはず。

 

「!? あ……いや、別に礼なんていらんで」

「断った理由を言ってなかったから、今ついでに言わせてもらう。私に妹が居るのは知ってるな?」

「……うん、まあ」

「あれはかなり酷い状態だ。昔より状態は安定しているらしいが、精神医療の進歩は遅い。私が生きている間に寛解する見込みはないだろう。だが、私のたった一人の家族だから見捨てる訳にはいかない……私を家族にするということは、それも身内に引き入れるということだ」

 

 口が乾いてきたので、一口だけ水を飲んで乾きを癒す。できれば話したくないが、親しくなるのに一番手っ取り早い方法は腹に溜め込んでいる物をぶちまけることだ。親しくなればなるほど、裏切られた時の動揺は大きくなる。動揺が大きくなればなるほど、生まれる隙は大きくなる。そこに付け込む。

 

「魔法や科学の技術はどれだけ進歩しても、人の心はそこまで大きく変わっていない。身体障害者、精神障害者への理解は狭く、風当たりは未だに厳しい。当然その家族にも。これから管理局ではたらく上で重い足かせになる。出世も難しくなると思う」

「……なんや、そんな事気にしとったん。わたしは、こう見えても元犯罪者や。そんなんは全然気にせん。そこまで出世するつもりもない。問題ないで」

 

 ……ほう、初耳だ。ここまで話してくれたということは、それなりの信頼を得られたと考えてもいいだろう。これ以上は望み過ぎというものだ、切り上げよう。

 

「今日は食事をする、それが目的で来たはずなんだが。いつのまにか話がメインに切り替わってた。いつまでも話して注文を決めなかったら、店員にも迷惑だろう? いつまでも続けていたら、閉店の時間もいずれ来る。それなら閉店の時間も気にならないところでゆっくり話をしたほうがいいと思うんだが」

「そ、それってもしかして……ち、ちょっと早いと思うんやけど」

 

 何を想像したのか、顔を真赤にして視線をあちこちに彷徨わせるはやて。三号からナンパするなら覚えておけと一方的に教えられたセリフを少しアレンジしたものだし、そういうことが目的だと思われても仕方ない。とりあえず効果は覿面のようだ……まんざらでもない顔をしているが、きっと気のせいだろう。

 だが、とりあえず冷やかしの一つでも入れておかないと、後がマズイ。

 

「生娘みたいな反応だな」

「どうせ生娘やもん……相手もおらんし。ああもう、ヤケや! 酒持ってこいやー!」

 

 ……冷やかしのつもりで言ったら、地雷を踏んでしまったようだ。面倒なことになったと、頭を抱える。これは、どうしたものか。

 

「ハンク君にも飲んでもらうで!」

「バイクで帰るのに酒は飲めない」

 

 馬鹿なことをしてしまった。私は面倒が嫌いなのに、わざわざ自分から面倒を呼び込んでしまうとは。

 

「ホテルに泊まればええやろ?」

 

 これは……どうしたものか。いっその事一線を越えて、より関係を深めるか? その方が動揺は大きくなるし、相手も私に手出しをしづらくなる……気は進まないが。もしも情が湧いてしまい、いざという時に殺せなくなったら困る。無いとは思いたいが、何分経験のないことだ。どうなるかはわからない。

 それに、もしも行為の最中に追手が殺しに来たらどうする? 咄嗟に対応できるだろうか。そろそろ追手の用意も完了する時間だし、リスクは高い。それに見合うだけの利益があるのかも問題だ。

 

『pipi! pipi!』

「すまん、メールだ」

 

 送信者は……J/S。件名、『追手の心配は無用』中身、『見張りを送った。君はゆっくり会食を楽しみ給え。何なら、その後もね。クアットロにも、君が今夜は帰らないかもしれないと伝えてあるよ』

 最高に最悪なタイミングでメールを入れてきたか。すぐに削除ボタンを押し、メールを消す。見られたらマズイ。

 

「誰から」

「メールマガジン」

「……」

 

 後ろの障子が開いて、店員がやってきた。

 

「ご注文はお決まりになりましたか」

「ああ、はい。これ一つ」

 

 品書きの一番値段のやすいメニューを選んで。付け合せやドリンクはなし……。食事が終わるまでには、彼女の気が変わってくれていることを祈ろう。




カップリングなしと言ったな。あれは嘘……ではない。
カップル(couple)とは、一対の存在のこと。特に、夫婦(結婚)、婚約中、恋人同士、恋愛などの関係にある一組の男女、あるいは、男女に限らずそうした関係にある2人のこと。
by Wikipedia

主人公ははやてに対して恋愛感情を持っていません。むしろ嫌っています。よって肉体関係をもっても恋人同士にはなりません。よってカップリングは成立しない!

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