オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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あまり質はよろしくない


第34話

 私はいつも死と戦ってきた。目的のため自ら望んで死地に赴き、時には銃弾の雨に晒されながら他人を殺して生き延びてきた。そして、生き延びて無事に仇を討った。仲間……部下と引き替えにだが。それで人生においての本懐は遂げた。

 

 そして、今は死とは全く無縁の場所にいる。誰かに殺される心配もなく、誰かを殺す必要もない。最初は警戒していたが、カリム・グラシアから交渉の結果正式に保護することとなった、と伝えられてからは少し警戒をゆるめた。もう数日が経ち、監視の目はあるものの、敵意は感じられないので完全に警戒を解いて雑務の手伝いをしている。

 ……そして思う。ひょっとするとこのままでもいいのではないのだろうか、と。本当なら治らなかったはずの妹の事など諦めて、このまま安全に過ごしていけばいいじゃないか、と。

 

 確かにそれも一つの選択肢だ。人生における最大の目標は果たしたのだし、ほんの一つを切り捨てるのもアリだろう。いくらスカリエッティといえども、聖王教会の奥深くまでは侵入できるはずがない、このまま安穏と過ごしていけばいい。

 

「……無理だな」

 

 自分で考えた事だが、すぐにそれをひっくり返す。私にとって、妹とは自分の命よりも重い物。切り捨てたとして、その先に幸せはない。待っているのは真っ暗で底なしの絶望と、絶対に消えない後悔だ。

 

「何がですか?」

 

 隣で仕事をしていたシスターが聞いてくる。

 

「このまま教会の世話になっているのは、耐えられない。そう思ったんですよ」

 

 私にはやるべき事がある。やらなければならない事がある。それを忘れてはならない。席を立ち、隣のシスターを見下ろす。

 

「……逃げるおつもりですか」

「いいえ、保護を解いてもらおうと。直談判しに行くので、案内をお願いできますか」

「管理局から狙われていた、とお聞きしていましたが」

「お願いします」

 

 頭を下げて頼む。スカリエッティからの接触が無い今、自力で脱出する以外に方法は無い。見捨てられたとも考えられるが、奴のアジトまで単独で向かえば出迎えてくれるだろう。

 そして、頼んだ結果帰ってきた答えは私にとって非常に予想外のものだった。

 

「危険を犯してまでドクターの下へ戻ろうとしますか。予想を裏切られましたね、てっきり安全な所で一生を過ごすのかと思いました」

 

 笑顔でとんでもないことを言うシスター……いや、私の目的を知っていて、かつスカリエッティのことをドクターと呼ぶ。そんなのは、戦闘機人くらいしか居まい。

 

「心外だな」

 

 しかし、驚かされた……まさか、これほど近くにスカリエッティの手の者が居るとは。

 

「怒りましたか?」

「いや」

 

 この程度では怒る気にもなれない。八神はやてに勝手に身元を調べられたのに比べれば遥かにマシだ。いくら私でも、アレには腹が立った。

 

「私もいつ気付くだろうと待っていたんですよ。それで、いつまでも気付かないものですから……」

「待たせたか?」

「それほどでも。一週間をこえたら声をかけようと思っていましたから。しかし、ここまで決断が遅れたのはやはりここの居心地が良かったからですか?」

「ああ。寝心地のいいベッドはあるし、食事は自分で作るより美味いのが出る。殺すこともないし、殺される心配もない……」

 

 ならなぜ、と聞きたそうな顔をしているので、答えてやる。

 

「だが、私は妹が目に届く所に居たい。何かあったら、今度こそ守ってやれるように」

 

 私の居場所は、妹を守れる場所。妹をマッドサイエンティストの手元に置いて、一人のんびりと安全地帯で寝ていられるものか。たった一人の家族が、次に見た時には戦闘機人に変わっていました、なんてことになったら奴を殺さない自信がない。

 

「そうですか、ではすぐに脱出……といきたいところですが、まだ準備が足りてません。あと二日ほど待って下さい」

「わかった。脱出方法の詳細は?」

 

 下手に動いて、脱出のための計画をぶち壊すのは私にとっても彼女らにとってもあまり良くない。だが、やれる事はやっておきたい。それで脱出が少しでも楽になるなら。

 

「単純に、あなたを聖王教会の敷地外へ連れ出す。セインに連れて行かせる。それだけです」

 

 ……予想以上に単純な方法で、なんというか。気が抜けた。一つ息を吐き、椅子に腰掛ける。

 

「簡単でしょう? あなたはただ待っていればいい」

「楽でいいな」

「ええ。だから、その間は仕事をしてましょう。急に仕事の手を止めたとなると怪しまれますから」

 

 椅子の位置を直して、端末に書類通りにデータを打ち込んでいく。と、ここで眼の前の端末画面にメールの着信を知らせるアイコンが点滅した。タイトルは『呼び出し』。内容は、至急応接室まで来るように、とのことだった。

 応接室というと……私に誰か客だろうか。おそらく管理局、機動六課のメンバーの中の誰か。その中でも最有力なのは、八神はやて。

 

「呼び出しだ。行ってくる」

 

 また席を立ち、一人応接室へ。 

 

 

 応接室の扉を開けると、予想は半分当たりで半分ハズレだった。応接室に居たのは八神はやて、シグナム、ヴィータの三名。単独でなかった、という意味でハズレだ。

 

「元気そうやな」

「お陰様でな。保護なんて窮屈なだけで要らなかったんだが」

「まあそう言わんといてや。ハンク君のためや……で、今日はいくつか聞きたいことがあるんやけど。時間ええかな?」

「いくらでも」

 

 聞きたいことか。あまり良い予感はしないが、果たして一体なんだろうか。

 

「まず、一つ。あんたの妹さんが攫われたのは知っとるか?」

「もちろんだ」

 

 やはり妹にも監視の目があったか……想定の範囲内だが。さて、どう答えたものか。

 

「誰に攫われたか、心当たりは?」

「機密をばらされないよう私に首輪をかけたい管理局か、私に恨みを持った反管理局勢力の一グループか、あるいは以前私に接触しようとしてきたジェイル・スカリエッティか……連絡があったら犯人をぶち殺しにも行けるんだがな。全くない」

「卑怯な奴らだ……許せねえよ」

「全くだ」

 

 他人の事で怒れるのは優しい証拠、と本で読んだが。当事者から見ていればとてつもなくマヌケに見える。笑いを堪えるのもなかなかつらい。

 

「それで、聞きたいのはそれだけか? 私にもここで与えられた仕事があるんだが」

「いや、それだけやない。犯罪者が脱走したあの日の朝に、不自然な金の動きがあった。まるで、彼らが脱走して、殺害した後に口座凍結されるのを恐れて動かしたように」

 

 なるほど、そこを突っ込んでくるか。確かに切り込むには妥当なところだ。しかし、まだまだ詰めが甘い、もう少し証拠を揃えてからでなければ意味など無い。

 

「私は金がたまったから纏めて妹の口座に振り込んだだけだ。治療費にな。それに、それだけでは私が奴らが脱走する、と知っていた証拠にはならない……前に私が怒ったのをもう忘れたか?」

「……ほんまに知らんかったんやな?」

「ああ」

「その言葉が聞きたかったんや。疑いだしたらきりがないしな……ごめんな、嫌なこと聞いて」

「……」

 

 謝るなら最初から聞くな、と思ったのはこれで二度目だ。たちの悪い事に事実なのだから、知らなかったフリをするしかないのがまた面倒だ。

 随分と下らないことのために時間を割く。しかし、それなら後ろの二人は何のために来たんだろう。もしも私が認めた時に捕まえるためか?

 

「それじゃ、シグナム」

「ああ。ハンク殿、私と手合わせして欲しい……結局六課に居るときには一度も手合わせできなかったからな」

 

 また唐突な頼みだ。だが、断る理由も特にない。今の私は一般人だし、死ぬような事はしないだろう。リスク無く相手の情報を得られるというなら、やる価値はある。手土産を一つ増やせば、スカリエッティから今後の支援を引き出せるだろう。

 

「私は問題ないんだが……」

 

 扉を背に立っているシスター・シャッハの方を見る。私はよくても許可が降りなければ模擬戦などできないだろう。私は一応ロストロギア所有者なわけだし、それを起動するとなれば、尚更勝手に動く訳にはいかない。

 

「訓練場を使ってもいいですよ」

「ありがとうございます」

「おお、いいのか! 感謝する」

 

 戦えば私がスカリエッティにデータを渡して、対策を練られるとも知らず。大層な喜びようだ。

 

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