オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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オリジナル設定 スカリエッティは変態


第37話

 目の前に召喚される複数のガジェット。その数十。内Ⅱ型が二体、Ⅰ型改が八体。

 二型に装備されている機関砲が火を吹いたので、蛇を大剣の形で出し、斜めに構えて弾きつつジグザグに前進。防御魔法はおろかバリアジャケットすらないこの体で弾丸を受ければミンチ化は免れないため、真っ直ぐ正面からは突っ込まない。

 周囲に回り込んだガジェットから発射されるレーザーが肉体に穴を開けるが、小さい

 

ので一瞬で再生。肉体の機能低下はない。

 レーザーと銃弾の弾幕を掻い潜りつつ、機関砲の死角となる二型の真下へと滑りこむ

 

。ガジェットは絶対に誤射をしないように設定されているので、その穴を突いた回避方法。

 直後に四方から鋼鉄製のベルトが襲いかかるが、それの内一つを一刀で叩き斬り、その方向へと転がって回避。自分が先ほど居た所にベルトが突き立っており、回避していなければ圧殺されていた、と心の中でつぶやく。

 ベルトが動き出す前に二型の上に飛び乗り、力任せに大剣を叩きつけて表面装甲を切り裂き、裂けて内部が覗いているところへ粘着榴弾を叩きつけて、ベルトに襲い掛かられる前に飛び降り起爆。亀裂部分から侵入した爆風で内部を破壊されたガジェットは隣に居た二型と数機のⅠ型を巻き込んで自爆し、その爆風にあえて吹き飛ばされ距離を稼ぐ。

 

 が、吹き飛んだ装甲板が足に突き刺さりその場から動けなくなる。

 仕方なくその場でアサルトライフルで弾幕を張って対応する。弾はⅠ型相手なら一発当たれば装甲を貫通し、内部の基盤を傷つけ制御を失わせることが可能な威力だ。しかし、なかなか当たらない。その間にもレーザーは再生を上回るスピードで体を焼いている。たまに飛んでくるミサイルをセカンダリのハンドショットガンを撃ちこんで直撃するより速く撃ち落とすが、炸裂した火炎と破片がまた体を焼き、武器を破壊する。

 レーザーで体に穴を穿たれても、穴そのものが小さいのですぐに塞がる。だが、その数が多すぎる。完全に包囲された状態で武器もなく、蛇を絡ませて一機落とす……が、背後からミサイルの直撃をもらい視界が真っ暗になり、感覚が現実に引き戻される。

 

「ご苦労様、どうかね、感想は」

 

 バイザーを外すと、目の前にスカリエッティの顔があった。気持ち悪いので顔を押して無理やり離したが、かなり息が荒くて気持ち悪い。生理的嫌悪という奴だ。

 ちなみに先ほど外したバイザーだが、視覚を通して脳をジャック。肉体を設定された状況下にあると誤認させる。そして肉体に送られる信号を、バイザーとコードで繋がっている機械が解析し、バーチャル空間内の行動に反映させる。そして肉体へ送られる信号は生命維持機能以外すべてシャットアウトする。小型だが、とんでもない性能のシミュレータだ。

 なんでも、これを片手暇で作ったというのだから恐ろしい。頭がおかしいとも言い換えられる。いや、おかしくなければ犯罪者などになりはしないか。

 

 

「誤射をしない設定が邪魔になってるな。それがあったおかげでⅡ型を撃破できてしまった。それさえなければⅡ型を撃破できずに終わってた」

「そうかね? 味方を破壊する兵器など欠陥品ではないか」

「そうとも限らない。ガジェットなんて、一度に何十機と投入するのが普通だろう。一機や二機の犠牲でエースクラスを殺せるならお釣りが来る」

「では対エース以上限定でフレンドリー・ファイア抑止システムを解除するよう設定しておこう。他には?」

「Ⅰ型の耐久性が少し気になった。装甲をもう少し強化できないか?」

「コストが増えるのはあまり良くないね。それなら逆に一機あたりの性能を落としてでもコストを減らして、その分多く生産すればどうだろうか。どうせ落とされるときには簡単に落とされるのだしね」

「そういう考え方もあるか。AMFで並の魔法は無力化されるし、いいんじゃないか? あとは……被害を少なくするなら低ランクの魔導師を集中して狙わせるといいかもしれない。落とせない相手にいつまでも粘るより、落とせる相手から落として行くほうが効率がいい。それに、弱い奴の援護に回らざるを得なくなるから攻撃の手も緩む。結果的に損害も少なくなると思う」

「そうか。ではAIに新たなチップを組み込んで、生産ラインにも少し調整を入れておこう。ありがとう、ゆっくり休んでくれ」

 

 スカリエッティが自動ドアからスキップしながら出て行く。恐ろしくテンションが高いのは放っておき、私がラボに戻ってからはずっと今のようなやりとりが繰り返されている。私がシミュレーターを使用してガジェットと戦闘。問題点をどんどん上げていって、それをスカリエッティが改良していく。最初のシミュレーションでは全機被弾すること無く撃破できたが、二度目では被弾が増え。三度目では全滅させる前にこちらに死亡判定が出た。そして、今のは四度目。次はおそらくもっと強化されて、一機撃破するのも困難になるだろう。

 

「おつかれー」

 

 スカリエッティが出て行った直後、セインが入れ替わるようにして水と濡れたタオルを持ってきてくれた。

 

「ありがとう」

 

 水を受け取って飲み干すと、吐き気と動悸がわずかに収まる。あのシミュレーターは脳と体に結構な負荷を与えるらしく、終わった後は動悸と吐き気と目眩が同時に襲ってくる。じっとしていればすぐに収まるものだが、やはり心地よいものではない。

 

「ひどい汗だね。大丈夫?」

「大丈夫、死にはしない」

 

 タオルで顔を拭きながら答える。本当は全身汗だらけで、今すぐ全身を拭きたいくらいなのだが、婦女子の前で服を脱ぐわけにもいかないので、顔と首だけを拭く。拭いたタオルをバスケットに放り込んだ位で気分の悪さも薄れてきた。自分の足で立って歩いて、部屋から出る。目的地はシャワールームだ。後ろをセインがついてくる。

 

「今の時間なら、シャワーは誰も使ってないよな?」

「たぶんねー」

 

 随分と曖昧だ。まあ、入る前に確認すればいい。角を曲がると、誰かとぶつかりそうになったので足を止める。見上げると、図体のでかい初老の男性が居た。

 ゼスト・グランガイツ。戦闘機人が過去撃破したという、陸戦Sランクの魔導師。一度は死んだらしいが、今は破壊された心臓の代わりにレリックを埋め込まれて動いているらしい。境遇は違えどロストロギアに生かされている者同士、気はそれなりに合う。今度一緒に出撃することになるらしいが。

 

「どうした? 随分と顔色が悪いな」

「シミュレータを使った。汗まみれで気持ち悪いからシャワーを浴びてくる」

「……ああ、アレか。アレを使ったならそうなっても仕方ない。ゆっくり休め」

 

 元々は戦闘機人用にと開発されたもの。それを脳の処理能力で劣る普通の人間が使えば、負荷が大きすぎて廃人になってもおかしくないと奴は言っていた。だがその質はメイドインスカリエッティなので非常に高く、ガジェットの運用能力向上だけでなく私自身の経験を積むのにも役に立っている。まあ、私の戦闘力が上昇したとしても、それはほんの雀の涙程度なのだが。それでも、無いよりかはマシと思って使い続けている。

 

「言われなくとも。そうする」

 

 とはいえ、無茶をして廃人になっては元も子もないのでそこまで熱心に取り組む気もない。スカリエッティからも無茶はするなと言われているし、限界を超える前に大人しく休む。

 ゼストと別れ、まっすぐシャワールームへ進む。ノックをしても返事が無かったので誰も居ないと思い、ドアを開ける。脱衣所に入ると籠の中に放り込まれた戦闘服が目に入った。奥からはシャワーの音が聞こえてくるので、誰か入っているのだろう。

 

「仕方ないな」

 

 ドアを閉め、脱衣所を後にする。このラボでは女性の数が多い。常駐するナンバーズが十一機……訂正、十一人。あとはルーテシアを入れて十二人。稀に帰ってくるドゥーエを入れれば十三人。対して男はスカリエッティ、ゼスト、そして私の三人。男女合わせれば十六人。一人ずつ入っていては時間がかかって仕方ないので一度に多く入れるようにシャワールームも脱衣所も広くなっている。

 よって奥でシャワーを浴びていたらノック音は聞こえないし、ノックする側も脱衣所が広いため、少人数あるいは一人でシャワーを浴びていた場合は音が小さく、よほど意識しなければ聞こえない。そのため、うっかり遭遇してしまうという事故が稀にあるらしい。それでスカリエッティはよく殴られる、とセインが言っていた。男女別の浴場を作ればいいのにと思うのだが……スペースの問題でできないのだろうか。

 

 とりあえず自分に割り当てられた部屋……倉庫を片付けてパイプで組み立てたベッドを置いただけの部屋に戻り、服を脱いでタオルで体を拭く。シャワーはまた後で浴びればいい。

 

「入るぞ」

 

 返事も待たずにチンクが入ってきた。

 

「あ、すまない」

「謝ることはないが、せめて返事を待ってからにしろ」

 

 裸を見られたからといって別に気にならないが、返事を待たずに入ってくるのはどうかと思う。そこらは常識として教育されていないのか、あるいは他の姉妹の部屋に入るのと同じ感覚で入ってきたのか。

 しかし。謝った上でジッと観察するようにしてこちらを見るのはどうしたものか。なんとなく気味が悪いのでさっさときれいな服を着る。

 

「ああ、すまないな……それにしてもいい体だ。ドクターと違って、よく鍛えてる」

 

 さっき見てたのは、私の体が珍しかったからか。確かに珍しいだろう、傷だらけの筋肉ダルマ+全身を覆う蛇の刺青なんて、そうそう見るものじゃない。

 

「対魔導師用に使える質量兵器はほとんどデバイスより重いからな。振り回すには筋肉がいる」

 

 対物ライフルを持ったまま山の中を走り回ったり、廃ビルの階段がないから仕方なく外壁をロッククライミングしたり。フル装備で遠泳したり。そんなことばかりしていれば嫌でも筋肉がつく。

 しかし、何故だろう。『ドクターと違って』という言葉が気になる……確かにあいつは見てわかるほど筋肉がないが、なぜそれをわざわざ比べるのだろう。

 

 まあいいか。

 

「それで。どうしたんだ」

「シャワールームが空いたぞ。すまないな、さっきは私が入ってたせいで入れなかった

 

のだろう?」

 

 さっき入ってたのはコイツだったらしい。

 

「別に入ってきても、私は気にしなかったがな」

「そういうわけにもいかない。問題があるだろう」

「たかが裸を見られたくらいでどうだと言うのだ。それとも貴様はこんな貧相な体に欲情するのか?」

「しない」

 

 そもそも行為への嫌悪感があるし、それのせいで性欲は無いに等しい。だが、彼女の体に欲情する人間は結構いるだろう。もう少し警戒心を……持つ必要がないか。暴漢に襲われても、逆に襲った方を心配しなければならない位だ。

 

「一瞬で断言されるのも少し傷つくが……なら問題ないだろう」

 

 教育係の常識を疑う。いや、こいつらは戦闘機人。生まれた時から常識外の存在だ。そいつらに常識を問う私が間違っているのだろうか。

 

「大有りだ。お前は誰に教育してもらったんだ?」

「稼働歴は長いからな。私の教育係はウーノお姉様とドクターだ」

「……そうか」

 

 ウーノともいずれ話をしよう。だがその前にスカリエッティ……何よりも速く奴と話をしなければならないようだ。奴の頭がおかしいことはわかっていた。それについてとやかく言うつもりはなかったが、気が変わった。私の大事な妹は治療のため仕方なく奴に預けているが、それも奴への信用あってのこと。もし奴に何かヘンなことを、あのクソどもがやったことと同じ事をされていたら、奴を殺さないまでも手足の三、四本叩き折って下半身の一物を切り落としてやらなければならない。

 

「お前は良くても、他のナンバーズはそうじゃないかもしれないだろう。誰かが使っていたら大人しく待つさ。わざわざ教えに来てくれてありがとう」

「それもそうだな。もし入っているのが私一人だけなら言おう。それと、どういたしまして」

 

 部屋を出て行ったチンクの後を追い、薄暗い廊下に出る。チンクは自分の部屋へ戻っていったようだが、私が目指すはスカリエッティの研究室。あいつが素直に話すとは思えないが、吐かないならそれでもいい。強引に吐かせるだけだ。

 拷問は私の得意分野だ。指の一本や二本切り落とした所で、やつなら再生させるだろうから問題あるまい。




主人公の活躍により、ガジェットが強化されました。
フレンドリーファイア防止装置解除&コスト削減により出撃数が1.2倍になります。性能据え置き。

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