オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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今回もそれほど長くないデース。でもストーリー上大事な場面なので、抜く訳にはいかないのデース。
ああ、他の作者様のように描写を丁寧にしてかつ毎日更新できればなぁ……

11月17日 ちょっとだけ修正


第41話 見舞い

「さて……」

 

二号の病室前に辿り着いたはいいものの。どう声をかければいいのか全くわからない。生きてて良かった、というのは嘘臭いし、かといって死んでいればよかったのにとも思ってない。元気にしているか、と聞けば嫌味になるし。謝るには事実を告げる必要があり、それはこちらに引き込んでからでなければリスクが高い……まあいい、入ってから考えよう。二度ほどノックして、返事を待たずに病室に入る。

 

「あー、誰だ? た……隊長!?」

「管理局はもうやめたから、隊長とは呼ぶな。あと無理に立たなくてもいいぞ、調子が良くないのはわかってる」

 

 ベッドから慌てて立ち上がろうとしたので、一声かけて制止する。

 

「あ、ああ。まあ……それで、なんで今更見舞いに?」

「色々ゴタゴタしててな。ようやく身の回りが落ち着いたから見舞いに来た。腕だけじゃなく足まで動かないんだってな。そのことで話がある」

「……軟着陸とはいかなかったしな。たいちょ……うでいいな。面倒だ。隊長みたいに再生能力があればよかったんだけどな。まあ安心してくれ、恨んじゃいないから。むしろ感謝してる。非魔導師でも管理局で働いて、悪党をぶちのめして平和に貢献したいって、ガキの頃の夢を叶えてくれたんだしな」

 

話を聴いていたら長くなりそうなので、返事もせずに要件を伝える。時間はあるが、あまり長居はしたくない。私は今のところ尻尾を掴ませるようなヘマはしていないので、指名手配などは受けていない。だが一応マークはされているはず。管理局員掛かりつけの病院で身分証を提示したのだし、そう遠くない時間に私への訪問者が来る。できればその前に用事を済ませたいのだ。

 

「また自分の足で歩きたいか?」

「無理無理、医者からも無理って言われたよ。まあ、二足歩行に未練はあるけど」

「ならこっちを見ろ。一度しか見せない、しっかり読め」

 

読唇術。音を出さずに唇だけを動かして言葉を伝える技術。念話や通信のように解析されたり、音に出して話すように盗み聞きされる心配もない。そう言って、ハンドサインと一緒に教えた技術。たかが病室の監視カメラでは口の動きまでは読めないので、一番安全な意志の疎通方法だ。

 

『私はスカリエッティの仲間だ。奴なら治せる』

 

唇だけ動かして、そう伝える。

 

「……マジか?」

 

驚愕の表情で固まる二号。残念だが、本当だ。

 

「私は嘘を付くが、これに限っては本当だ。どうする。どちらでも後の自由は保証する」

 

ただし、他に言わないとい条件付きで。それはスカリエッティとも相談済みだ。外部に漏らした場合はもちろん、私が責任を取って始末することになっている。

それは言わなくてもわかるだろう。なにせ私の元部下だ。私の行動の一つ位、予想できないはずがない。

 

「少しだけ考える時間をくれ……すぐには決められない」

「その内迎えが来る。その時までに答えを出しておけ。じゃあな」

「待ってくれ。無理にとは言わないが頼みがある。隊の奴らに連絡を入れてやってくれ、心配してるんだ」

「無理だ」

 

考えるまでもない。こうして病院に来ることもそれなりのリスクがあるのに、どうして敵の本拠地深くに行ってまで元部下に挨拶しなければならないのか。

病室の扉を開いて廊下に出る。と、これまた厄介な奴に出くわした。

 

「あ」

「失礼」

 

 話しかけられるより早く横をすり抜けようとするが、腕を掴まれた。顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべた八神はやてがいた。

 

「久しぶりやなぁ、ハンク君。偶然に感謝せんと」

「どうも」

 

 最悪だ。今一番会いたくないやつに出くわしてしまった。一応礼儀として挨拶はするが、可能なら今すぐこの手を振り払って逃げ出したい。

 

「教会から抜け出したって聞いて心配したんやで。ずっと探しても見つからんかったし、どこに隠れとったん?」

「どこだろうな」

「後ろめたい事が無いなら教えてくれてもええやろ」

 

 随分と引っかかる言い方だ。天然を装っておいて、実は私がどういう状況なのかを探ろうとしている。

 丁度いい、ボロを出さない程度にこちらも探り返してやろう。スカリエッティとの繋がりはまず知られていないが、それでも疑いの一つは持っているはず。どこまで知られているのか、私も気になるしな。

 

「知りたいなら犯罪者として拘束して強引に吐かせたらどうだ?」

 

 挑発。これの返答で、一体どこまで知られているのか。どこまで確信を持っているのかを知る。

 

「いくら私でも、好きな人を犯罪者扱いはしとうないわ。もしそうなら、それ相応の対応はとるけどな」

 

 随分と白々しい。腹の中でどう思っているのかが丸見えだ。だが、どこまで確信を得られているのかはまだ微妙にわからない。しかしこれ以上深く探れば相手も同じだけ探ってくる。今いるのがギリギリのライン。もう少し探りたいところだが、どうしようか。相手が踏み込んでくるならそのまま探り。踏み込まないなら下がる。それでいこう。

 

「それは良かった、管理局にいた間はかなり犯罪スレスレの所をくぐってたからな。それで罪に問われたら言い逃れのしようがない。あと恋人が欲しいなら他にいい奴を探せ」

「傷つくわあ、私そんなに魅力ないん?」

「前に言ったろう、私はお前の事が嫌いだと。ところで私の元部下は元気にやってるか?」

「ああ。それなら、地上本部直属に戻ったで。自分の意志でそう希望した。今は、治安維持隊に合併されとる」

「そうか。なら良かった」

「ところで。私からも質問なんやけど」

 

 腕を振り払おうとした途端に、急に握力が強くなった。まるで家族の仇を逃がすものかと捕らえるように。だが顔は相変わらず薄っぺらい笑みを浮かべたまま一切変わらない。

 

「うちのヴィータが作戦中に質量兵器で狙撃されて、腕が一本なくなる重傷を負ったんや。多分スカリエッティの協力者やと思うんやけど、そういう事する犯罪者に心当たりないか?」

 

 とこまで知られているのか、今ハッキリした。この目と言葉は……私が犯人だと疑っているのだろう。犯人と断定するだけの証拠がないので、あくまで疑いにとどまっている。隠そうとしてはいるが、敵意と殺意が漏れ出ているし、証拠さえあればこの場で捻り殺す事も厭わないだろう。だが証拠が無いから手が出せないと。

 

「それは私に聞くよりも、陸のデータを漁る方が確実だと思うぞ」

「質量兵器を扱う部隊の元リーダーなら、犯人でなくともどんな銃が使われたとか。わからんか?」

 

 当事者なら知っていて当然だろう、ということか、それとも私の経歴をからしてわかって当然ということか。

 おそらくは両方。答えなければ疑念を確信に変えてしまうだけだから、答えた方がいいな。答えても確信するだろうが。

 

「普通の人間に対して使われる弾丸なら、騎士甲冑を貫けたとしても腕を飛ばすには威力が足りない。使われたのは多分対物ライフルだろう。それなら騎士甲冑を貫通した上で掠っただけでも腕を引き千切る位の威力はあるはずだ」

「なんでわかるん?」

 

 自分から聞いておいて説明を求めるか。本当にひどい性格をしている。

 

「経験だ。バリアジャケットも騎士甲冑も、硬くてせいぜい防弾ガラス程度の強度しかない。対人用の弾丸程度なら防げるが、鋼鉄の装甲を食い破るために開発された対物ライフルにはあってもなくても同じだろう」

 

 軽く説明したが、説明したところで防げるものじゃない。防ぐためには発砲の瞬間を目視し、着弾までに戦車の装甲に匹敵する強度の防御魔法を使用するか、あるいはそれに匹敵する遮蔽物が必要だ。そんなことができるのはオーバーSランクでも極限られた人数しかいないし、戦場にそう都合よく遮蔽物があるとも限らない。つまり、現実的ではない。

 

「経験て……まあええわ。防ぐ方法は?」

「厚さ数十センチのコンクリ壁で覆われた窓のないシェルターに引きこもるか、それに匹敵する防御魔法を使用する。もちろん着弾までに使わないと死ぬ」

 

 つまり、狙撃を回避する方法はあっても防ぐ方法はない。だが避けるのは、狙撃位置を目視さえすれば簡単だ。目視さえすれば発砲された瞬間に移動すれば回避できる。逆に言えば、目視できていなければこれも現実的ではない。

 

「忠告だが、死にたくない。あるいは他人を死なせたくないなら、戦わないことだ。いくらお前らが強かろうと、死ぬ時は死ぬ」

「心配してくれとるん?」

「そう聞こえたか?」

 

 心配はしていない。ただ厄介な奴らが不安を抱き前線から下がってくれるのなら。生命の危険に対して恐怖し、僅かにでも隙を見せてくれれば。そんな甘い事を考えている。

 

「でもな、私らは仕事を放棄するわけにはいかんと思うんよ」

「……その結果誰かが死んでも?」

「誰も死なせんかったらええだけの話や」

 

 予想とは違って、とんでもなく甘いことを平気で言うな。家族が重傷を負っているのにそんな甘い事を演技でも言えるとは、随分と太い女だ。普通なら取り乱して然るべきだと思うのだが。

 

「そうか。私からはそれだけだが……もう帰っていいだろうか」

 

 今度こそ腕を振り払って、一歩離れる。嫌いかつ敵対する相手とあまり長話はしたくないし、セインをあまり待たせると機嫌を損ねてしまう。運賃の代わりに菓子を作るという約束でここまで連れてきてもらったが、機嫌を損ねると要求がグレードアップする可能性もある。

 

「ええけど、外はもう暗いで。送ろか?」

「いや、いい。自分で帰る」

 

 前を遮る八神を押しのけて、そのまま廊下を進む。目的は果たした、今は応援を呼ばれるよりも速くセインと合流し、安全地帯へと逃げるべきだ。

 




ああ、仕事がほしい
あと、評価ありがとうございます。これからもボチボチやっていきますので、よろしくお願いします。

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