オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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やはりメモ帳では改行がおかしくなる。良いのはないものか。
忘れてたけど、無名のオリキャラ出ます。


第43話

 セインと他数名のナンバーズにクッキーを振る舞った後は、こちらに来てから日課である妹の経過観察を行うためにスカリエッティのラボに向かった。エリーの病巣は肉体ではなく心にあるため、生体ポッドに浮かぶ一糸まとわぬ死体のような体からは容態の変化を窺い知ることはできない。

 

「やあ、ハンク君。丁度いい所に来たね。おかげで探す手間が省けたよ」

「どうした」

 

 やけに楽しそうな口調と、いつもより三割増しほど醜く歪んだ笑顔でスカリエッティが詰め寄っ

てきた。その勢いは凄まじく、顔に息がかかりそうなほど近くによってきても止まらないので頭を鷲掴みにして腕を突き出し、無理やり距離を取らせてしまうほどだ。

 少しだけ感情を覗いてみるが、なんとまあ太陽のように眩しく輝いていて目が潰れそうだった。すぐに目を閉じて、視界を人間のそれに戻す。目がチカチカする……それよりも、スカリエッティがこれほど喜ぶとは絶対ろくなことではない。

 

「君の再生能力を再現できないかと、細胞を少し培養してみたんだがね。培養液に浸けた途端際限なく増殖し始めたよ、まるで癌細胞だ! だが、その再生能力は素晴らしいの一言に尽きる」

「……それで?」

 

 ただそんな事をいうためだけに、わざわざ私を捕まえてそんな話をするとは思えない。たったそれだけの事でここまで喜ぶはずがない。なので、下らない前座を聞かされる前にさっさと本題を聞き出す事にした。

 最近こいつの扱いにも慣れてきた気がする。慣れたくはなかったが。

 

「それで、早速戦闘機人に応用してみた。十四体ほど再生速度の調整と投与段階を失敗して、機械と肉の混ざり合ったナニカになってしまったが、十五体目でようやく成功したよ。おかげで、かなり無茶な強化をしても壊れなくなった。さらに高い再生能力でより頑丈になった! 正直ウェンディ以上の性能の機人は作れないと思っていたのだが、君のおかげだ。本当にありがとう」

「……お前は本当に。いや、なんでもない」

 

 改めてどうしてこんな奴に妹を預けてしまったのか、と後悔してしまうが、しかし妹を治療できる可能性があるのはこいつだけ。世界とは何とも残酷だ。それにしても命を完全に物扱いとは、わかってはいたが本当に倫理の欠片もないようだ。せめて僅かにでも倫理観があればと期待していたが、無駄だったらしい。

 まあ最終的に妹が治りさえすれば倫理などどうでもいいのだが。期待していたのは家族を治療する者が倫理観の欠片もない人物だと心配になるからであって、こいつに良識ある善人であって欲しいなどとは全く考えていない。

 

「それで、初の成功例である彼女をお披露目したい」

 

 スカリエッティがそう言うと、ガジェットに抱えられて一人の少女がやってきた。私と妹と同

茶色の髪と瞳をした、世間一般には可憐と言われるであろう顔つきの少女。髪は肩の長さで切りそろえられていて、背丈は丁度、私よりも頭ひとつ小さい程度。そして何故か衣服の一つも纏っていない。

 なぜ彼女を私に差し出したのかは不明だ。私にそういった欲望は存在しないのはわかっているだろうに。

 

「こう見えて、ほら」

「……」

 

 スカリエッティが彼女の首に刃渡り十センチ程度の果物ナイフを当てても、少女は表情を微動だにさせない。そしてスカリエッティは全く躊躇う様子がなく、一気に根本まで刃を突き刺し、引きぬいた。彼女は首を抑えて床に崩れ落ちる。床に首の動脈を切ったのか、手で抑えられてなおすさまじい量の血が噴水のように飛び散り、当然私の顔と体にもかかった。私にこういうものを見せられて喜ぶ趣味はなく、わずかに不快に思う。

 そして衣服を着せなかったのはこのためか、と一人納得する。首を切った意図はわからないが。

 

「どういうつもりだ」

 

 だが、吹き出ていた血は一秒としない間に止まった。スカリエッティが彼女の首についた血液を布で拭くと、傷口が綺麗さっぱり消えていた。まるで最初からなかったかのようだ。

 

「見ての通り、再生能力もオリジナルの蛇を有する君には劣るが、非常に高い。まああまり多く出血したら輸血が必要だがね。これを君にプレゼントしたい、素材を提供してくれたお礼だよ。遠慮はしないでくれ」

 

 そう言ってスカリエッティは彼女の腕に針を刺し、チューブに接続して輸血を開始する。再生能力を見せるためなら、わざわざ部屋を汚してまで首を切る必要はなかったと思うのだが。後の始末は全てガジェットにやらせるから、多少ラボが汚くなっても別にいいのだろうか。

 

「そんなもの貰っても困るんだが……まあいい。戦闘能力は?」

「君の娘のようなものだというのに、いらないとはね。残念だ。まあ今の段階では戦闘能力は皆無だ。適性は近接格闘型だけど、訓練しないとね」

「私の家族はエリー一人だけだ。其れ以外には居ないし、増やす予定もない。それで、実用に耐えられるようになるまでどれ位かかる」

「そうだね……君の満足できるレベルを教えてもらえるかな? それを知らないことにはなんとも言えない」

「AAAランクの近接特化魔導師を五秒以上足止めできる」

 

 機動六課を敵にするなら、最低でもそれくらいでないと厳しいというか足を引っ張るだけ。それよりも戦力が低いなら、正直必要ない。砲撃、射撃特化なら最悪固定砲台にすればいいから足止めなど考えなくてもいいのに。

 

「半年かかる。十分に教育に時間と労力が割ける事前提だがね」

「しばらく戦力としての期待はできないと」

「時間をかければ間違いなく我々の中では最高の戦力となるのだがね。いやあ、その時間がないのが残念でならない」

「なんだ、近く総力戦でも仕掛けるのか?」

「ああ、そのつもりさ」

 

 ……もしかしたら、というつもりで言ったのだが。まさか当たってしまうとは。

 

「エリーはどうなる。治療途中で放り出すつもりか」

「そんな無責任な真似はしないよ。器は既に作り始めてるし、なに。一年もすれば器は完成する。全部終わった後に、ちゃんと仕上げをするさ」

「終わった後と言うが、いつ、どこにどうやって仕掛ける。計画は。勝算はあるのか。管理局は腐っても次元世界を統括する組織だぞ?」

 

 そこらのテロリストを撲滅するのとはわけが違う。規模も、練度も、個々の能力も、何もかもが違いすぎる。いくら戦闘機人の能力が高くとも、彼女らは一応人としての側面がある。戦い続ければ疲労するし、疲労が重なれば戦闘能力が下がる。そうなれば数の暴力で封殺されるのは目に見えている。

 

「だからこそ勝ち目があるんだよ。何も次元世界のすべての人間が管理局による支配を良しとしているわけではない事は、君もよく知っているだろう」

「……ああ」

 

 でなければ、テロリストなど居るはずがない。まあそのおかげで、私は准尉の階級までたやすく上り詰めることができたのだから、いくら嫌いな管理局でもそこだけには感謝しなければならないだろう。しかし元をたどれば、管理局さえなければ私がこんな生活を送る必要はなかったのだから、感謝する必要もないか。

 まあ何にせよ。管理局の統治を揺るがすようなでかい事をやらかすつもりなのだろう。この変態は。

 

「ミッドチルダで生活する全ての人々を人質に取ればいい。そうすれば管理局も下手に手出しができなくなる」

「言うは易しだな。レリックは集めて爆弾にでもするのか?」

 

 仮に地上本部が陥落できたとしよう。どれだけ手際よく。どれだけ損害を少なくできたとしても、その後には残る空と海が総攻撃を仕掛けてくるだろう。その前にミッドチルダの人々を人質にしなければならない。果たしてそれができるのか? まあ、不可能ではないだろう。レリックを爆弾として使って脅せば……ただそうなると、何もレリックである必要はない。核などの強力な爆弾で代用できる。わざわざ管理局の激しい妨害を受けながらレリックを集めるよりもずっと簡単だ。

 それをしないのには当然理由があるのだろう。

 

「いや、聖王のゆりかごの起動キーに必要なんだ」

「なんだそれは」

「古代ベルカの遺産だよ。地面に埋まってる。簡単に説明すると、1隻でミッドチルダを衛星軌道から瓦礫の山にできて、管理局の艦隊も蹴散らせる巨大戦艦だ。それを使い管理局の艦隊を蹴散らし、誰にも邪魔されない研究用の空間を手に入れることが私の目標だ」

「今までひっそりと隠れて研究してた割には、派手なことを考えるな。シナリオもらしくない。まるで子供みたいだ」

「ひっそりと隠れていても邪魔が入るからね。じっくり、ゆっくり一つの拠点に腰を据えて研究したいものさ。それに、ゆりかごがあればそこまで細かいプランなど必要ないよ」

 

 話だけ聞けばとてもすさまじい代物のようだが、実際にその場面を見ているわけでも性能を見ているわけでもなく。ましてや古代ベルカの骨董品で管理局の最新鋭艦を相手にできると言われても。スカリエッティが楽観的になるとは考えにくいが、やはり信じることはできない。

 

「賛成できない」

「ほう、理由を聞こうか」

「理由は二つ。一つは私は実際にそのゆりかごの性能を見たわけじゃないから、話を信用出来ない。二つは、古代ベルカの時代から地面に埋まっているのなら、誰も手入れする人間が居らず、保管状況は最悪のはず。本当に当時そんな性能があったとしても、今掘り起こした所で同じ性能を発揮するとはとても思えない」

 

 どこかの自動小銃は普段は泥の中に埋めておいて、有事の際は掘り起こして泥だけ洗い流せばそのまま使えるという話を聞いたことがあるが。さすがに戦艦となるとそうもいかないだろう。

 

「なら他の案はあるのかな?」

「市民を人質に取るだけなら、そんな物を使わなくとも強力な爆弾が何個かあればいい。研究するための空間はその後に交渉して強請れば問題ないはずだ。レリックを集めるよりもずっと簡単で、手早く済む。爆弾は地上本部の質量兵器保管庫に忍び込んで奪うだけだからな。あそこの警備はザルだから、クアットロと私が組めば苦労することはないはずだ」

 

 クアットロが電子機器を制圧し、私が歩哨を制圧して爆弾を奪って逃げる。中将には恩を仇で返す形になるが、上司への恩など家族に比べれば羽一枚ほどの重さしかない。申し訳ないとは思うが、家族のために無能の烙印を押されてもらおう。

 まあ、まだやると決まったわけではない。決定するのはスカリエッティだ。

 

「それは私も思いついたのだがね。簡単すぎて面白くない」

「手段を選んでいる場合か」

「私は天才だからね。普通の手段では満足できないのさ」

「はぁ……そういえば。私の元部下は結局どう返事をしてきたんだ」

 

 相手をするのが馬鹿らしくなってきたので、話を変えてみる。結局アイツのことはまだ聞いていなかったしな。私のことを誰かに話しさえしていなければ、どういう選択肢を取ろうとも構わないが、やはりどちらを選んだのかは気になる。

 

「ん? 彼なら提案を拒否したよ。犯罪者の手を借りるくらいなら、高い金を払って義手を貰ったほうがマシ、と言ったらしい。管理局員らしく、立派なことだ」

「私への皮肉か? 別になんとも思わないぞ」

「そうかい、残念だ。君の怒るところも見てみたかったのだがね。ところで彼のことはどうする? 私と君の関係を知る人間は少ないほうがいいとは思うのだが」

「忠告はしてある。拾った命をわざわざ自分から捨てるのなら、それもいいだろう」

 

 別に指名手配されてもやることは変わらない。戦うときにはただ頼まれたことをやるだけでいい。後方からの狙撃でも、前線に切り込んでも。街を歩くなら変装すればいいだけだし、身分証は金を払って偽造すればいい。幸いそういう事が得意な業者はミッドチルダには表に出てこないだけでたくさんいるし、金もそのくらいなら持っている。

 失敗して逃亡した後の事を考えなければ、指名手配されても問題ない。どのみちスカリエッティの計画が失敗して捕まったら私の妹は助からないのだし、失敗した時のことを考える必要はない。

 

「もしも彼がばらしたら、処分は自分でしたまえよ。君が撒いた種だ」

「もちろんだ」

 

 私が訓練したとはいえ、それも非常に短期間だ。地上本部の奥深くに潜らなければ始末するのは簡単のはず。まあ、多分その必要は無いだろう。話したら殺すと脅してあるのにわざわざ話すはずがない。

 私のように狂っていなければ、誰でも命は惜しいものだ。




今回出てきた少女、一応ナンバーズの13番扱いですが、知識などが備わってはいますが目覚めたばかりの脳ではそれを理解できていないので、自我がほとんどない状態です。ですので、一言も喋りませんでした。

次出てくるときには喋るでしょう。多分。

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