オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

47 / 89
最後の方は、なんだかアンチっぽくなってしまいました。
むう、こんなはずでは……



第44話 覚悟

 いつもと同じ訓練場。いつもと同じメンバー。いつもと同じ時間帯。なのに空気だけがいつもと違う。張り詰めた、というか。刺すような、というか。もう少しハッキリとした言葉で表現するならば、私達含めた新人全体の士気が下がっている。そしてなのはさんたちはその逆に、ハッキリとした戦意。敵意とも言えるだろう。それを普段から隠す様もなくまき散らしている。

 原因はわかっている。前回の出撃時、ヴィータ三尉が狙撃されて重傷を負ったからだろう。それ以前の出撃では負傷してもせいぜいが軽傷位で、この隊に居てる間に死を実感することはなかった。だけど前の一件で、いかに死が身近にあるかを実感させられたから。

 

 そう。今までは正直言うと、言っては悪いが気が抜けていた。ずっと自分が死ぬなんて、誰かが死ぬなんて考えもせず訓練し、戦ってきた。だけどヴィータ三尉の負傷が現実を教えてくれた……いや、現実なんてそれより前にわかっていたはずだ。

 ずっと前はお兄ちゃんも犯罪者を追って殺された。少し前はなのは一尉と、ハンク准尉の模擬戦で准尉が死にかけた。その時には私は気絶していたので後でビデオを見せてもらったが、一尉は本気で殺すつもりで戦っていた。そして准尉は質量兵器とロストロギアでなんとか応戦し……普通なら死ぬほどの重傷を負った。一週間としない内に戦線復帰したけど。

 その後には、逃走中の犯罪者を追った結果、あの人の部下が一人死んで、一人が完全に戦線離脱した。そして倍返しと言わんばかりに、部下を殺した相手を皆殺し。

 そうだ。私はお兄ちゃんと、あの人とも同じ管理局員で、同じく犯罪者を相手にしている。関係ないはずがなかったのに、死を無意識に恐れて関係ないと切って捨ててた。

 

「関係ないはずがないじゃない」

 

 誰にも聞こえないよう小さく呟く。スバルの憧れが高町一尉なら、私のあこがれはハンク准尉……だった。バリアジャケットすら展開できない、魔導師とも呼べないような存在であるにも関わらず、質量兵器や策を弄して多くの高ランク魔導師を撃破しあっという間に准尉の階級まで上り詰めた……撃破イコール殺害と知ってからは幻滅したけど。

 けどその実力だけは認め、准尉の本気と戦って、そこから色々なことを学ぼうとしていたのに、手加減をされた事に腹を立てて突っかかって。結局何一つとして学べない内に彼が管理局を去ってしまったのは、とても残念だ。彼は誰よりも死に近い場所で戦っていたのだから、死への心構えの仕方等も教えてもらえただろうに。

 けれど、後悔していても仕方がない。今は対策を考えなくちゃいけない。

 

 けど対策と言っても、音の方が遅く聞こえてくるほどの速度と、AAAランク魔導師のバリアジャケットを貫通し、掠っただけで腕を千切り飛ばす威力。当たったところが胴体なら間違いなく、体に風穴が空いて……いや最悪胴体が二つに千切れるかもしれない。死に方はどうあれ、間違いなく命を落とすだろう。

 そして特徴的なあの音。使われたのはおそらく質量兵器。威力と弾速に特化し、射程距離はヴィータ三尉でも察知できない距離という驚異的な長さ。同じ効果を持つ魔法は、射撃魔法に特化した高ランクの魔導師でなければそう使えないはずだけど、質量兵器なら弾の続く限りポンポン撃てる。

 対策としては、常に動き続けて狙いを付けさせないか。先に相手を仕留めるか。どちらにしても現実的ではない。

 

「皆。今日はいつもとちょっと違う訓練をするよ」

 

 いつも通り、高町一尉が私達を上から見下ろしながら訓練の内容を発表する。その内容は、いつものシュートイベーションと何ら変わりない……回避する弾丸が超小型で超高速の直射弾ということ以外。

 どう考えても対質量兵器用の訓練。最初にそれを告げないのはどういう意図があるのだろう。

 

「それじゃあ、まず一発。いくよ」

 

 そして無慈悲に人数分発射される魔力弾。同時に全員が衝撃で吹き飛び、地面に倒れる。いつもなら皆「痛い」とか「いきなりひどいです」とか言うけども、今日に限ってはそんな愚痴は出ない。ヴィータ三尉の負傷の影響だろう。

 ともかく、見てから回避は無理とわかったので、とりあえず防御魔法を使用する準備だけ整え、起き上がって第二射が来ないかを見る。大丈夫、魔力弾は浮いてはいるけど動きはない。

 

「今のは一般的な質量兵器と同じくらいの弾速だよ。さて……皆、今以上の速度の攻撃を、発射の場所もタイミングもわからない状態で回避できるかな?」

「……」

 

 エリオとキャロはすぐさま首を横に振り、私とスバルは少し考えてから互いの顔を見て、首を横に振る。発射位置がわかっているならまだしも、わからない状態では。まず無理。 

 

「うん、私も無理だから仕方ないよ。でも、今のは非殺傷設定の魔法だけど、敵が使ってくるのは質量兵器。防ぐことはできないし、当たれば死ぬ……ヴィータちゃんは運良く生き延びたけど、次もそうなるとは限らない。むしろ死ぬ可能性のほうが高い」

 

 ヴィータ三尉の、片腕を失って大量の血だまりに沈む姿を思い出し、顔をしかめる。確かに、あれはあくまでも当たりどころが良かったから即死せずに済んだのだ。自分が死ぬ可能性もあると考えれば……怖くなるのは当たり前。でも大丈夫。同じことを管理局に入る時に考えて、考えた結果ここに居るのだから。

 周りも私と同じ考えらしく、それぞれ下を向いたり肩を抱いて震えたりしてる。

 

「皆には死んでもらいたくないけど、それぞれの考えもあると思う。だから、今日の訓練はなし。訓練の時間皆よく考えて。これからも機動六課に残って戦うか。機動六課から抜るか。それから答えを聞かせてくれるかな」

 

 私は恐怖を乗り越えてここに居るからこそ、その物言いに腹が立った。高町一尉の優しさに気づき、その提案に乗ったほうがいいという自分に腹が立った。一度飛び越えたはずのハードルを再び目の前に置かれた事に。

 

「……無責任じゃないですか? ここまで指導しておいて、あとは私達に任せるっていうのは」

「強制はしたくないから」

「それって、自分が責任から逃れたいだけじゃないんですか!? 死なせたくないなら隊を抜けろって命令すればいいだけじゃないですか! 私達が出撃を志願して死んだら、私達が望んだ結果だから自分には責任はないって、そう思いたいから私達に任せるんですよね!」

「ちょっとティア!」

 

 スバルに口を抑えられても、それを引き剥がして叫ぶ。

 

「……」

「黙ってないで何とか言ってくださいよ!」

 

 目の前に降りてきていれば、胸ぐらを掴みあげて怒鳴れたのに。上から私たちを見下して……

 

「もう一度言うよ。自分たちで考えて、答えを出して。一時間後に戻ってくるから」

 

 それだけ言って、訓練場から飛んで離れていった。当然撃ち落としてでも話を聞くなんて真似は私にできるわけがなく、歯を食いしばりながらそれを見送るしか無かった。

 

「……ティア、多分なのはさんは、私たちのことを本気で思ってくれてたんだよ? なのにあんな言い方は」

「わかってる。わかってるからこそ気に入らないのよ。私は管理局に入った時から、もう覚悟はできてた」

 

 家族が任務中に犯罪者に殺されておいて、前線で働いてて死ぬことはない。なんて思うわけがない。それを知ってか知らずかあの言葉。腹が立たないわけがない。

 でも、冷静に考えれば高町一尉が私なんかの過去を知ってるわけがないし、何もあの言葉は私だけに向けられたわけじゃない。皆が私と同じように家族を殺されてるわけじゃないんだし。皆が私と同じように覚悟できているわけじゃないんだし。

 

「一人で怒って……馬鹿みたいね。私」

 

 クールダウン。落ち着いて、冷静に。

 

「ティアナさんは……どうするんですか」

 

 エリオが私を見上げて聞いてくる。その顔はどうしていいかわからず、親に助けを求める子供のよう。今思い返してみれば、こんな子供を前線に立たせてたなんて。でも、それが本人の意志なら。

 管理局も私達も、そこらの犯罪者に負けないくらい外道だ。テロリストと同じことをやっていると考えると、どうもやるせない気持ちになる。

 

「私は残るわ。スバルはどうするの? 私に気を使わなくてもいいから教えて頂戴」

「ティアが残るなら、私も残るよ」

「……そう。怖くないの?」

「そりゃあ怖いよ。でも、私の命で誰かが救えるならそれもいいかなって。なのはさんに助けてもらったんだし、恩もまだ返してないから。後もう一つ、私が居ないとティアが無茶するからね」

「あんたは……まったくもう」

 

 ため息をつく。もうスバルには何を言っても無駄だろう……でも、その理由だと残った二人も。自分のやっていることに気づいて少し嫌気が差したばかりだというのに。

 

「僕も残ります!」

「私も……!」

 

 案の定。おそらくはスバルと同じ恩から来る感情だろう。スバルと同じ事情なのに、スバルだけ認めてこの子達を認めないのは不公平で、絶対に納得しない。だから私も否定しない。止められないことへの罪悪感が胸を刺すけど、止められないのは仕方ない。

 この罪悪感を消すには、高町一尉あるいはフェイト執務官、それもダメなら八神二佐の良心にかけるしかない……けど、きっとムリだろう。彼女たちは小さいころから戦い続けてきた。特に高町一尉と八神二佐は管理外世界の中で最も安定した世界の、戦いから最も遠い国で育ちながら、戦いの中に身を沈めている。期待はできない。フェイト執務官もだ。そんな良心があるならはじめからこの二人を前線には出さないはず。

 

「そう」

 

 自分の所属する組織の異常さに気付いてしまい、落胆してこめかみを揉む。けど一度決めたことを今更投げ出す事は自分の信念に反するから、管理局を抜けるつもりはない。

 

「ま、今までと変わらないってことね。改めてよろしく、皆。お互い死なないよう頑張りましょう?」

 

 逆に考えるんだ。上司がアテにならないなら、私が死なせないように頑張ればいい。頑張ってどうにもならなかったら、そこは諦めるってことでいいだろう。




とりあえず、管理局陣営はこれ以上の戦力減少はなし。そして新人四人とも(狩られる)覚悟が完了しました。
これで両陣営とも用意が完了。次回から動きが激しくなります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。