オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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第3話

 

 

ゆさゆさと体を揺すられて、泥沼のような眠気から意識が少しずつ引き上げられる。目を開くと、そこには見目麗しい女性が……いる訳もなく、居たのはただの隊員だった。

 

 

「隊長、移動地点に到着した。降りようぜ」

「……ん、ああ。そうだな、行こう。観測器具は持ったか?」

 

なにか金髪の女に追い掛け回される夢を見た気がするが、まあそれはいい、どうせ夢は夢だ。任務に関係はないだろうし、内容もはっきりとは覚えていない。大方枯れていたと思ってた欲求が鎌首をもたげて出てきただけだろう。

 壁にかけてあるボルトアクション式の対物ライフルとその弾を取り、さらに木の枝や草をたっぷり括り付けた簡単なギリースーツを被り、トラックから降りる。

 

「ああ」

「よし。それじゃ行こう」

 

 降りたらそこからは徒歩で狙撃地点まで移動する。トラックで狙撃地点に行くのは木が邪魔で無理なので、仕方なく徒歩で行く。贅沢を言えばヘリで急襲して皆殺しが最高に楽なのだが、この部隊にそんなものを与えてもらえるはずもない。大型倉庫の方には地球産の大型武装ヘリがあるようだが、いきなり引っ張り出すわけにも行かない。

 鬱蒼とする森の中へ立ち入り、狙撃地点に向けての行軍を開始する。

 

「……隊長」

 

 道無き道を進み始めてしばらく。三号に声をかけられた。

 

「何だ」

「なんでその歳で階級まで上り詰めた。子供がそうそうなれるものじゃないはずなのに、どうしてなれたんだ」

 

 これは果たして答えていい事なのだろうか。答えるのは簡単だが、立場としてはどうなのか。流石に「憧れたから」という理由では無理があるし、かと言って本当のことを言うのも不幸自慢のようになって複雑な気分だ……だが部下との信頼関係も重要。信頼関係を築くためには、嘘はよろしくない。

 本当のことを話そうか。

 

「褒められた理由じゃない。復讐だよ」

「テロリストに?」

「それなら話は簡単だったんだけどな。犯人は随分前に証拠不十分で釈放された管理局員だ。忘れちまったか。まあそいつらだ。両親を殺されたあとその後妹共々連れ去られて拷問を受けてた。そこを救ってくれたのが管理局のさるお方だ……復讐だけならテロ組織に入ってもよかったんだが、一応の恩返しにな」

 

 それにしても全くひどい話だ。管理局に家族を奪われ人間性を奪われたのに、そこから救ったのもまた管理局だなんて。まあ、憎んでいるのは個人であって管理局という組織ではないので別になんとも思っていないが。

 

「この部隊を立ち上げたのも、この階級まで上り詰めたのも、全て復讐の土台作りだ。足場があれば多少は動きやすいだろう」

 

 正直に言えば管理局だろうとテロ組織だろうとどちらでもよかった。制限は多いがそれなりの地位が手に入り、活動にあまり支障の出ない管理局に、制限は無いが管理局に追い回されることになるテロ組織。どちらも魅力的だし。助けられたのが管理局だった。助けられたのがテロリストなら自分もテロリストになっていただろう。

 

「どうりで。目が死んでるわけだ」

 

 目が死んでるのか。それはいけないな、これからは公人として会見に出ることもあるだろうから、出来るだけ自然な顔を作れるようにならないと。

 

「そうか。で、なぜ急にこんな質問をした」

「俺達の部隊の謎多き若隊長だが、いまだにまともに話したことが無い。少しでも親睦を深めようと思ったわけだ」

「そうか」

 

 私はこいつらの個人情報などどうでもいし、私も進んでこいつらと話をするつもりはない。ただ、話をすることで訓練への意欲が高まるならそれも試す価値はあるだろう。

 と、林道を歩いていると目の前の景色に少しだけ違和感を感じたので立ち止まり、3号にも止まるように手で合図をする。

 

「ど…」

 

 言葉を出そうとした3号の口に指を突っ込んで黙らせる。

 

「何か居る。静かに」

 

 耳元で囁き、音を立てないように地面に伏せさせる。もちろん自分も地面に伏せ、様子を見る。だが違和感だけがあっても、見るだけではその正体まではわからない。なので、バックパックのポケットに入れてあるサーマルスコープを取り出し、装着してその正体を探る。

 

「……ああ、なるほど」

 

くっきりと浮かび上がる、明るい色のついた人型の影。なかなか上手く隠れている、普通に歩いていたらまず気付かなかっただろう。警戒しながら歩いていてよかった、危うく後ろから殺られるところだった。

 接近戦になったときのために持ってきた大口径拳銃にサプレッサーを付けて、もう一度他にも敵が居ないかを確認。そして銃を構え、胴体に狙いを付けて、単発射撃。

 

「うぐぁ!?」

 

 弾はバリアジャケットを貫通したようで、何もなかった空間に血の赤が浮かび上がる。どうにも森で獣を狩っているハンターではなさそうだ。少々時間のロスが出るが、尋問に30分はまずかからないだろう。

 

「周囲を警戒。動くものがあれば撃て」

「りょ、了解」

 

 3号に指示を出し、腹を押さえて呻いている男を仰向けにしてマウントを取る。そこから口を抑えて右腕に発砲し、デバイスを強制的に手放させる。あとは、マウントという姿勢からちょうど傷の上に乗る形になるので、痛みのあまり声も出ず、目を見開き、顔は青ざめ、それほど暑くもないのに汗を顔面に大量にかいている男の顔を改めて観察する。頭のなかに入れてある指名手配犯の顔写真とは一致しない。

 とりあえずこのままでは意思の疎通もままならないので、口にハンカチを突っ込み、顔を一度平手で叩き、正気に戻してからナイフを顔面の横に突き立てる。

 

「これからいくつかの質問をする。イエスかノーで答えられる簡単な質問だから、声は出さなくていい。出したら眼球をえぐり出す。オーケー?」

「……!!」

 

 ガタガタ震えているせいで首を振っているのか振っていないのかよくわからないが、とりあえず首を振った事にして尋問を進めよう。

 

「最初の質問だ。お前は廃墟を占拠している犯罪者の仲間か?」

 

 首は動かない。さっきのは首を振っていなかったのか? 仕方ないな。意思表示をしたくなるようにしてやるか。次は右手で相手の左手を抑え、もう片方の手でナイフを持ち、刃先を犯罪者の抑えている左親指に当てる。

 

「これから質問を拒否するごとに一本ずつ指を切り落とす……嘘をついていると判断した場合にも同じだ。まず一回」

 

 少しずつ指の付け根に刃を食い込ませて行く。少しずつ力を加えていくと、皮膚を破り今度はより手応えのある筋肉に当たる。

 

「ん?! んん??!!!」

 

 泣きながら暴れるが、動けないようにマウントを取っているのだから、いくら体格差があろうと動けるはずもなし。鋭い刃は筋肉を突き破り、硬い骨に当たって止まる。ここからその気になって力を入れれば、骨も簡単に断ち切れるだろう。

 

「さあ、ここで挽回のチャンスをやろう。お前は犯罪者の仲間か?」

「!!」

 

 目に涙を浮かべながら必死で首を振る男。さっきの姿勢はどうしたのやら、やはり身の危険を鮮明に感じると人は素直になれるようだ。

 

「次の質問。この林道、その周りに居るのはお前だけか?」

 

 今度も首を縦に振る。言ってることが本当かどうかはわからないが、ひとまずは周囲の警戒をしながら進むのが先決か。時間も無限ではない。警戒を強めながら進めば問題無いだろう。

 

「よく答えてくれた。ありがとう」

 

 礼を言ってからナイフを指から外し、懐にしまう。解放してもらえると勝手に思いこみ、安堵の表情を浮かべる男の脳天に銃弾をぶち込む。額に小さな穴があき、地面には真っ赤な花が咲いたように血が広がる。胸にももう一発撃ちこんで、確実にトドメを刺しておく。

 

「なんで殺したんだ隊長。抵抗してなかっただろう」

「放置しても出血多量で死んでいた。どっちにしても結果は同じだ」

 

 騒がれてもかなわないし、あのまま放っておいて出血多量で苦しんで死ぬよりはいいだろう。背を向けた途端にもしかしたら最後の力を振り絞って殺しにかかってきたかもしれない。そう考えれば、自然なことだ。

 周りを見回し、人影がないことを確認し地面に転がったデバイスを回収。バックパックに放り込み、また林道を進む。デバイスは売れば多少の金になるからな。3号が何か言いたげな顔をしていたが、これも仕事だ。これからも同じことを何度もして、何度もさせるのだし、早く慣れてもらいたい。

 

「はぁ……元からマトモじゃないとは思っていたけど、まさか人を殺すしデバイスは奪うし。ひどい上司だ」

「何を今更。馬鹿なことを言ってないで早く行くぞ。時間に遅れたら作戦に支障が出る」

 

 初仕事で失敗なんてしたら、部隊の存在意義を問われるだろう。中将に援軍は要らないと言った手前もある。失敗なんてしたら、恥ずかしいだろう。


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