オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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前話の最初についていたのは、このssのボツ題です。気にしないでください。


第4話

先ほど始末した男の言っていたことはどうやら嘘だったらしく、もう一人だけ隠れている奴が居た。もちろん見つけた瞬間に発砲して、声を出される前に3号に始末させた。殺した感想を聞くと、魔導師でも先手を打てばこんなものか、とあっさりとした感想しか返ってこなかった……まあなんともつまらない。

 

「質量兵器か……こりゃ禁止されるわけだ。向けられたくないもんだな」

「魔導師も防御魔法を使わなければあのザマだからな」

 

 自分が使っているのが恐ろしい物である、という自覚を持てるのはいいことだ。自分の手にあるもので何ができるか、何ができないか、何をしてはいけないかを理解できないままに道具を使えば、その内に道具を壊すか道具に壊されるかの、どちらかの結末に落ち着く。管理局が質量兵器を禁止するのは、多数の愚者が簡単に人を殺せる道具を手にし、人死が出るのを防ぐためでもあるのだろう。かといって個人の良心に任せきり、極端な表現だが都市一つ簡単に席圧できる程の力を個人にもたせるのもどうかと思うが。

 もしも銃を持ち、乱射する輩が所有者千人につき一人居るとして、被害者は多くても十、二十ほど。対して魔導師でも都市を制圧できるほどの力を持つものはごく少数。しかも大体の人間は管理局に入っているので、暴れるのはさらに少ない。暴れさえすれば、それはもう被害者が百人単位で出てもおかしくないが。

 相対的に見れば、銃を持ち犯罪を犯すのが1として、高ランク魔導犯罪が0.0001、低ランクならもっと多いだろうが、銃には届かない。なるべくしてなった結末だろう。銃もきちんと管理して、管理局員だけが持てるようになれば一番いいのだろうが、やはりどこかで裏ルートに流通するんだろうな。

 

「隊長、ストップ。その先崖だぞ」

 

 と考えている間に狙撃地点まで到着してしまった。それどころか通り過ぎて転落死するところだった。日の出までどのくらいだろうか。

 

「今の時間は、四時五十分。ギリギリだな、休む暇もない」

 

 バックパックを広げ、中からライフルケースと菓子パン、コーヒーを引っ張り出す。夜食にと思って買っておいたのに、まさかこんなハイキングついでに食べることになるとは。腐らすよりはいいが。パンを半分に割り、三号に渡す。残りの半分をコーヒーで流し込みながら一分とかけずに食べ切り、ライフルの調整をする。スコープのゼロインは700mで、風は右に微弱。弾が逸れることは考えないでいいだろう。ボルトを立てて引いて薬室を開き、弾薬を装填。ボルトを元の位置に戻し、薬室に弾を押し込んで準備は完了。二脚を立てて、工場跡を狙えるように構える。サプレッサーは弾道にブレが出る可能性があるので使わない。三号は伏せて双眼鏡を覗き込み、索敵を行う。

 

「三号。頭を出してるバカは居るか」

 

 日の出までは、通常の高倍率スコープでは薄暗くてよく見えない。かと言って暗視スコープに付け替える暇はない。付け替えたら多分照準が少しズレる。

 

「二階右から四つ目の窓から、外を監視してるのが一人。正面玄関付近を巡回するのが二人」

「……一人、二人三人。確認」

 

 空も少しずつ白んできている。地上にも太陽の光が差し込んでいるので、敵の姿もはっきりと見えて来た。デバイスは起動していないようで、何も持っていない。

 

「先に仕留めたらどうだ?」

「日が出るのを待つ。薄暗いとあまりよろしくない」

 

残りの一人は人質の見張りか、あるいは人質とお楽しみ中か。そうでなければ休んでいるのだろう。

 

「五時零分、作戦開始」

『了解』

 

 

 スコープを覗き、十字線の中心に窓から顔を覗かせる男に合わせ、トリガーを一度引く。ドゴン、と腹に響く音が鳴り、ほぼ同時に犯罪者の体が真っ二つに裂けた。さすが対物ライフル。人間に使うには少々威力が大きすぎる。

 

「見張り二人が音に気づいてデバイスを起動しました」

「問題ない」

 

 バリアジャケットを展開した歩哨に照準を合わせ、また発射。運よく頭にあたったのか、首から上が消し飛んで、首から噴水のように血を噴き出して倒れた。もう一人も狙おうとしたが、建物の中に隠れられてしまった。

 

「砲撃開始」

『了解、砲撃開始!』

 

 ボン、ボン、とまずは二度砲撃音が静かな山の中に響いてから数秒後。さっきの砲音とはまた別種の大きな音が鳴った。こちらもまた腹の底に心地よく響く轟音。迫撃砲の砲弾は見事建物に着弾し、その屋根に大きな穴を空けた。

 

「工場に着弾。砲撃班、穴から一人魔導師が出てきた。空戦魔導師」

「了解」

『了解』

 

スコープを当ててない方の目で空に出た魔導師の姿を探し、銃を動かしてまたレティクルに合わせる。今度は頭でなく胴体を狙う。が、空中でうろうろと飛び回り砲撃班を探しているので、正確に狙えない。狙いはついているのだが、止まらなければ命中は期待できない。

 

「砲撃班、第二射」

『今撃つ』

 

 ボン、とまた大きな音がして砲弾が空中に飛び出し、放物線を描いて建物へ落下して行く。はずだったが、その砲弾は放物線の頂点で爆発した。魔力弾に撃ち抜かれたのだ。しかし同時に魔力弾を撃った直後の硬直を狙って私も撃ったので、砲弾を撃ち落として自分も撃ち落とされる結末となった。

 

「空戦魔導師撃墜」

『隊長! なんか落ちたぞ!』

 

 ヘッドセットから1号の大きな声が。耳が痛い。たかが人が降ってきたくらいで騒ぐなよ、まったく。

 

「鳥だ。気にするな」

『いや、思い切り人型に見えたが』

「じゃあ人の形をした鳥だ」

「砲撃班の方に2人向かった。道路を走ってるが、早い。逃げた方がいいんじゃないか」

 

 銃を構え直し、走る魔導師の走る速度を考え、当たるように手前に銃弾を撃ち込む。しかし、外れてずっと手前に着弾した。やはり動く目標は狙えないか。おまけにこっちに気付かれた。片方向かってきたし、これはまずい。

 

『了解。撤退する』

「了解。三号、お前はライフルを持って撤退しろ」

 

 ライフルをケースにしまって三号に渡し、動きやすいようにギリースーツも脱いで普通の迷彩服に。剣の形をイメージして、ロストロギアの形を整える。そしてすぐに消す。イメージさえ固めておけば、一息と置かずに出せる。出せるようになるまで練習した。

 

「隊長は?」

「迎撃するから逃げろ」

「年下を置いて逃げろって? 無茶言わんでくれ」

 

 はっきり言って、居られても迷惑なんだが。まあ仕方ない、変に反抗を買いたくもないし、居たいなら本人の意志を尊重しよう。

 

「ここで迎撃する。茂みに隠れて、隙があったら撃て」

 

 三号に指示を出し、こちらに向かってくる魔導師に向き直る。それにしても、あの魔導師は足が早い。さっきはかなり遠くに居たはずだが、もう結構近くまで接近してきている。残り十秒もあれば交戦距離に入るだろう。60秒はかかると思ってたんだが。

 蛇足だが、木々を足場にして走るのは非常に気持ち悪い。

 

「こんにちは、死ね!」

 

 崖を垂直に駆け上がってきたと思ったら、そのまま飛び上がり、大剣を重力に任せて振り下ろしてきた。なかなかインパクトのある攻撃だが、大振りなので避けるのは非常に簡単だった。横に少し飛ぶするだけで避けれる攻撃なんて意味がないだろう。しかも剣が地面にめり込んで抜けなくなってるし、それを必死になって抜こうとしている。こいつは間違いなく馬鹿だろう。どうしてこんな馬鹿が人質を取れたんだ? ……馬鹿だからか。

 

「ぐは!」

 

 剣を抜こうと必死になっているところを、三号が容赦なく弾丸を撃ち込む。しかし頭に目に見える程度の発赤ができただけで、ダメージはなさそうだ。所持する武器の中で一番貫通力のある武器で、鎧はともかく露出している頭部を狙ってこれとは、非常にまずい。戦っても勝ち目は薄いだろう。

 

 対物ライフルを腰だめに構えて、銃口を頭に押し付ける。

 

「ちょ、待てよ! 俺まだ剣抜いてないぜ!?」

 

 そんなことは知らないと、トリガーを引くが、手応えは今一。頭の潰れる音どころか、まるで鉄の塊を殴ったような音しかなかった。それでもデバイスは地面に刺さったままになり、その所有者は吹っ飛んで崖の下へ真っ逆さまに落ちて行ったのだが。きっと死んではいないだろう。生きていてもデバイスは地面に刺さっているから、大した戦力にはならないだろう。

 

「何だったんだ、あいつは」

「知るか。それよりも、砲撃班。被害状況を報告しろ」

 

 こっちは雑魚というか馬鹿だから無力化に時間はかからなかったが、向こうも馬鹿とは思えない。死んでるとは思えないが…連絡はしてみようか。

 

『あ、隊長。無力化できたぜ。こっちの傷は擦り傷程度だ』

『地雷の一斉爆破でミンチになったの見ちまった……しばらく肉は食えねえな』

 

 ……どうやら無事だったようだ。初任務で死傷者ゼロ、素晴らしい成果だ。人質はどうだか知らないが、全員始末したし残りは空か海かが送ってくる部隊に手柄を譲ろう。人質が生きていればの話だが。

 

「それじゃあ、中将のに報告しようか」

 

 バックパックを漁り、連絡用の端末を探す。確か底の方に押し込んでいたはずだが……なかなか見つからん。あった。

 端末を取り出して、番号を入力。空中に映像が投影され、渋いオッサンの顔がアップで映る。

 

「報告、犯人は一名除き全員殺害。その一名は崖の下へ落としたので、生死の確認は不可能。人質の無事はこれから確認します。あとは迎えをお願いします」

『ご苦労だった。迎えは出せない、行きに使ったトラックで帰ってきたまえ』

「わかりました。あとはこんなふざけた任務を言い出した奴に『訓練中なのにあまり無茶な仕事を押し付けるな、脳が疲れで凝り固まった老害』と言っておいてください」

 

 目障りだから排除したいという気持ちはわからないでもないが、流石に今回のような事は我慢ならない。設立一週間の部隊をいきなり戦場へ放り出すなんて馬鹿がどこにいる。私が経験豊富なテクニシャンだから安心して任せた、とかそういう言い訳は聞かないぞ。

 

『こちらも抗議はしておく。迎えはすぐによこそう』

「ついでに予算もいただけませんか」

『それは無理だと何度も言っているだろう。だが、人員は一名確保できた。また後日隊舎に向かわせる。それと、また後日本日の件で表彰を行う。帰ってきたら制服にアイロンをかけておけ』

「了解しました。失礼致します」

 

 通信を切る。表彰と人員追加とは。嬉しいやら嬉しくないやら。確かに今は人員も、名誉に伴う支持も必要だが、一番必要なのは予算だ。名誉を得て支持を得て、金がなくても少ない予算のまま人員が増えても動きづらくなるだけ。そして今後は活躍の場をもっとたくさんもらえるだろう。嬉しくない。

 

「二号と一号は人質の回収に向かえ。私と三号は回収ポイントで待機する。死亡していても回収しろ」

『了解。人質の回収に向かいます』

 

 人質が生きていれば、善意での募金を頼んでみようか。まぁ、無理だろうな。人質のごと砲撃で殺そうとしたんだし。

 


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