オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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ほぼ作業回。ハンクと名無し以外出てきませんし、9割地の文なので読むのにすごく疲れると思います。
手先が器用な主人公。


第59話

 十二時。昼食を作るだけ作って、先に一人で食べ終えて、食事の時と同じように一人訓練場で作業をしている。目の前にあるのはウェンディから借りているボードのスペア と工具と、ガジェットの操作装置。ガジェットには人の手ではとてもじゃないが重くて持ちあげられないような武器……重機関銃とその弾。歩兵用の対空ミサイル弾体と、発射筒。それらを使用するための小型レーダー。それに接続するためのケーブルなどを吊るしてもらっている。食事を先にしたのは、オイル臭い手で料理を作って文句を言われてはかなわないからだ。

 と、まあそれは置いておいて。ボードの先端部に小型レーダーを押し付け、ボルトと金具で数カ所を固定。緩まないように、ガジェットのアームの先端につけたスパナでしっかりと締めさせる。そこに保護用の円錐形のカバーを被せて、隙間からケーブルを引っ張りだしてボードの上に付けられた、ノートパソコンに似た形を取っているデバイスと、プレートの腹部分にセットしてある大容量バッテリーにつないで、スイッチを入れて起動。デバイス側からもレーダーユニットが認識されていることを確かめて、次の作業に移る。今度はボード自体を持ち上げさせ、その下に潜り込んでいくつか金具をセットする。そうしたら次はボードの背に小型の対空ミサイルがセットされたミサイルコンテナを固定。またコードを伸ばしてデバイスに接続する。

 

 なぜ一々デバイスに接続するのかというと、事務処理特化に改造した私のデバイスは、情報処理能力だけは高い。市販品と大した差はないが、それでも戦闘用の機能を本当に最低限だけ残して後のメモリは全て情報処理に割り振っている。なので試しにこれ一つで火器管制装置の役目を果たせないだろうか、と思い少しテストしているところだ。処理するためのプログラムは専門外なので、ガジェットの改造型の物をそのまま流用している。パーツの番号も同じだし、処理装置を少しだけアップグレードしただけなのでおそらくバグなどは出ないと思う。しかし、念のために一度だけチェックしておく。スキャンボタンを押して、プログラムチェックを開始。同期ズレ、なし。連動、問題なし。他、問題なし。使用可能。

 

「さて……」

 

 ここからが悩みどころだ。このボード、大きさの割に積載量はかなりのものの、さすがに色々とゴテゴテとつけすぎた。理想はさらにこれの腹に機銃と無誘導爆弾を付けたいのだが、ロケットブースターとミサイルコンテナの占めるウェイトが大きすぎる。つけられない事はないが、過積載で動きが鈍くなる。付けるとしたらどちらか片方。ミサイルをばら撒いて落とせる奴だけ落として、その後爆弾を落として一気に離脱する爆撃スタイルを取るか。それともミサイルと機銃で、ガジェットか味方と連携して敵を落とす、戦闘機のようなスタイルを取るか。それとも、いっそのこと全部武装を降ろして大型砲を載せ、硬い敵だけを狙って落としていくようにするか。

 ……数秒考えた結果、今回の出撃には戦闘機スタイルが一番適切だと判断。換装は簡単なのだからボードの下に潜り込んで、金具をセット。センサー付きの台座をつけて、そこに重機関銃をマウントする。一応上のデバイスからも操作できるようにして、これでほぼ完成。油で真っ黒になったグローブを脱いで、ゴミ箱へ放り投げる。ガジェットに配線を隠すためのカバーを設置するよう指示を出して、私は次の事を始める。

 

 買い物袋からステンレス製で銀色の筒の形をした携帯灰皿を取り出し、蓋を取って中にC4爆薬と信管、受信機をセットにしたものを詰め込む。それにまた蓋をして、それをガジェットに持たせ、訓練場の端。およそ300メートルほど離れた場所まで移動させ、置いてこさせる。その後ガジェットを数体自分の前に並べて、さらに伏せながらリモコンのスイッチを素早く二度押す。

 ドゴン、と軽いような重いような爆発音が、訓練場の壁に反響して鳴り続ける。その反響の中で、パラパラと砂やコンクリートの破片が落ちる音がなる。少ししてから顔をあげ、双眼鏡で爆心地を覗くと。威力は過不足無く、想定通り適切だったようで、地面がえぐれて焦げているだけだった。あれだけなら、魔導師一人殺すくらいは簡単だろう。というわけで2つ目の制作に入る。同じサイズの携帯灰皿を取り出し、蓋を開けて……さっきと同じ作業をしたら、今度は蓋をバーナーで溶接し、絶対に開かないようにする。その後はリングに極細のワイヤーを通して完成。ひと通り終えたので手で汗を拭いて、それからボードを見れば、もう配線がむき出しだったあの汚いボードはなく。代わりに配線を隠すカバーでデコボコしている、ほんの少しだけ小奇麗になったボードがそこにあった。腹に機銃と巨大なロケットブースターを抱え、背には本体よりも巨大なミサイルコンテナを。さらにUの形をしていた先端部は本体の色と同じグレーのカバーで覆われ……もはや原型をとどめていない。本来はこの武装全ての機能が使えるはずだったのだが、あいにくと私には魔法を使う才能が欠片もないのでこうするしかない。つくづく魔法の便利さというものを思い知らされる。魔力とデバイス、あとは才能さえあればなんでも出来る。空も飛べて、近接格闘もできて、誘導弾。直射弾。捕縛。砲撃。索敵。本当になんでもできる。魔法が使える奴は本当に羨ましい。

 こんな事を考えるのは、作業が一段落ついて余裕ができたからだろう。本当はこんな事を考えている場合じゃないんだが。

 

「……」

 

 次に考えるべきは、今回連れて行くメンバー。フェイト・ハラオウンが元味方を相手に本当に戦えるかどうかを見る、という目的で出撃するのだが。さすがに私一人とガジェットだけではあまりに心細い。爆弾を持たせて裏切れないようにするからフェイトに攻撃される心配はないが、敵に狙われたら起爆はできないし逃げられないしでひとたまりもない。もしもフェイトが落とされた時には回収しなければならないし、その時には敵陣に一人で突っ込むことになるから援護が必要。さて、誰に頼むか……と、考えていたところで誰かの足音が聞こえる。その方向へ向くと、訓練場の入り口からこちらへ歩いてくる名無しが見えた。

 

「どうした」

「今回の出撃、私も一緒に行かせて」

「却下」

「私も戦力として役に立てるはず。どうして?」

「私の妹の入れ物になる身体だ。傷の一つでも付けさせるわけにはいかない」

 

 作業に使った道具は道具箱に。爆薬と信管はそれぞれ別々の箱に入れて、箱をガジェットに持たせて立ち上がる。ボードは浮遊設定にしておけば重力に逆らって地面から一定の距離で滞空するので、あとはそれを押して歩けばいい。どれだけ重量があろうとも、重力から解放されて浮いているので重みはゼロ。

 隣に並んで歩く名無し。もとい『容器』の顔は見ずに、言葉だけを聞きながら前に進む。こいつには私に対して何か特別な感情があるようだが、その正体はよくわからない。わからないということに対し、得体のしれない不気味さを感じるのでできるだけ接触は避けている。だというのに、こうして接触してくるのはとても。迷惑だ。顔と声がエリーと一緒なだけあって、まるで妹と一緒にいると錯覚しそうになるのもまた辛い。抱きしめたくとも、姿が似ているだけの偽物とわかっているから抱きしめるわけにはいかないのがまた……人形を抱きしめようとしているのだと、思いとどまるのだが。その度に虚しさに苛まれる。そんな事を思うのは、孤独を感じているからなのだろう。

 

「私も戦いたい。役に立ちたい」

「ダメだと言っている」

「絶対に怪我はしないから」

「万が一にも、お前が鹵獲されるような事があってみろ。スカリエッティの作戦が一瞬で無駄になる」

 

 一度は世話になった隊長殿に売り渡そうとしたこともあったが。こいつの用途を知ってからはそうしなくてよかったと思っている。なぜなら、一度敵の渡してしまえば、貴重なサンプルとして監獄の奥深くに監禁されるだろうから。もしその状況になった時、成功するかしないは置いておいて。私はなんとしてもこいつを回収しに管理局へ全力で突っ込まなければならない。成功率は限りなく低いだろう。だがそれでも、大事な大事な妹の体だ。やらなければならない。こいつは戦闘経験が無いし、他のナンバーズよりもそうなる可能性は高い。そのリスクを考えると、こいつを前線に引っ張りだすわけにはいかない。

 それに、偽物であるとはいえ妹を傷つけられたら、私は絶対に正気では居られない。冷静さを欠いた兵士など、役立たずもいいところだ。だから、こいつを戦わせる訳にはいかない。

 

「お前は常に健康で居ればそれでいい。ソレ以外は考えるな」

「……」

「じゃあな」

 

 地面を蹴り、腰のあたりで浮いているボードに飛び乗って訓練場を移動する。無駄話をしている間に、出撃の時間が迫ってきている。私は死んだことになっているのだから、フェイスマスクでもしておかなければならない。そのために、一度手を洗って適当な布でも探さなければ。




武装追加
魔改造ボード
レーダー
多連装ミサイル
重機関銃
ガジェット操作装置

あと、以前70話くらいで終わらせたいと言ったような気がするが。どう考えても無理。この調子だと90。最悪100以上行くかもしれない。

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