オリ主が逝くリリカルなのはsts   作:からすにこふ2世

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大変お待たせしました


第77話 面会

今日は全く最悪な一日だ。一日に二度も叩き伏せられて、己の身の程、あるいは限界というものを改めてよく理解させられた……おかげで頭も冷えたが。最近は大体の事が上手くいっていたことで少々油断し、計画もあと少しで完遂ということで焦っていたのだろう。だから今回のような馬鹿な失敗をした。そして今、こうして地上本部地下の特別房に放り込まれている。地上なのに地下というのはなかなか独特な名前だが、静かでいい。

 いつどんなときでも冷静さを失ってはいけない。基本中の基本ができてないのはかなり問題だろう。死ななかったのは運がいいか。

 

「陸の英雄さんも、落ちたもんだな。戦闘機人と手を組んで管理局にテロをしかけるなんてよ」

 

 自分の馬鹿さ加減に何度目かわからないため息を吐くと、檻の外に居る看守から話しかけられた。

 

「私は最初からこうだ。英雄なんかじゃない」

 

 看守の問に対してそう答える。そもそも私が英雄だと勝手に言い始めたのはマスコミだ。元々英雄とは真逆の中身なのに、外見だけを見て英雄だなんだと祭り上げられたのを勝手に信じこんで落ちたと言われても困る。

 

「んなこた知ってるさ。ただの皮肉だよ」

「そうか。それより看守、暇だ。本を持ってきてくれ」

「暇か。そうか。悪いが絶対に目を話すなって命令されてるんだ。離れるわけにはいかんな」

「この身体で何かできると思うか?」

 

 鉄製の手枷足枷、魔力を吸収する魔導師用拘束具、さらに吸収した魔力を使って作動するロストロギア封印術式。全四種の拘束具を看守に見せつける。ここまでされて何ができるというのか。やろうとすればできないこともないが、ここは凶悪犯を一時的に抑えこんでおくために地上本部に作られた特別製の地下房。看守一人始末したとしても、逃げられないのだし無駄な事はしない。そもそもこの看守を突破するのもムリだろう。いつでも銃を撃てるように肩にストックをつけてトリガーに指をかけっぱなしだし、魔法を封じられている状態で射線を回避するような曲芸じみたことはできない。

 

「あんたならなんとかしそうだな」

「何度も言うが過大評価だ……それより、話にも飽きた。娯楽もらえないなら寝ていいか」

 

 ろくに会話らしい会話もしてないが、飽きた。目的もあとは待つだけだし。それまで暇な時間を過ごす位なら寝たほうが有意義だろう。

 

「一応囚人なのに態度でかいなぁ……うん。ま、ちょっと待て。本は無いが人は来る」

「人?」

 

 一体誰が。と、思ったが私に用がある人間なんて数えるくらいしか居ない。機動六課派か、中将派か。はたまた口封じのために猟犬がやってくるか。いや口封じのためならもうとっくに殺されてるか。ともかくその客が退屈を紛らわせてくれることを願う。

 

「俺の予想じゃ、そろそろ来る頃だ」

 

 看守の後ろの階段から足音がする。音は軽い、女性の足音だろう。看守が椅子から立ち上がり、階段を降りてくる『誰か』に向けて敬礼をする。

 

「地上本部地下特別房にようこそ。高町一尉。私とイスと犯罪者くらいしかない部屋ですがどうぞごゆっくり」

「……出迎えありがとう」

 

 聞こえてくる声は、実に起伏がなく、風のない池の水面のように平坦。人前だから感情を理性の殻で無理やり抑えこんでいるのだろう。しかし心の中は嵐のように荒れ狂っているに違いない。軽くつつけば簡単に殻を破って、激情が顔を見せるだろう。

 危険な爆弾が、看守の横を通り檻の中であぐらをかいている私の前に出てくる。蛇が封印されているせいで色は見えない。しかし内側で荒れ狂う殺意が一瞬だけ顔に出てきた。彼女がどれだけ私を憎んでいるか。百の言葉で伝えられるよりも遥かによくわかる。

 

「半日ぶりだね」

「そうだな。それで、何の用だ」

「聞きたいことがあるんだけど」

「答えられる範囲なら答える」

 

 このセリフは、今までに何度か言った気がする。まあいいか。

 

「大丈夫、聞きたいことは三つだけだから。まず一つ、ヴィヴィオはどこ。無事なの」

 

 三つだけとは意外と少ない。てっきりもっと多くの質問をされると思ってたのに。

 

「スカリエッティのアジト。捕まえるとき生け捕りと命令されたから、おそらく無事だろう」

「そう……じゃあ次。フェイトちゃんはどうしてるの? 前に君の元部下が落としたって聞いたけど、生きてるの?」

「生きてる。本人の意に反して戦わされてはいるがな」

「後で詳しく話を聞かせてもらうよ……じゃあ最後。ヴィータちゃんを撃ったのは、君?」

 

 本当のことを言ったら怒りそうな気もするが、隠してもいずれバレる。なら正直に話しておくべきか。

 

「私だ」

「弁解は」

 

 殺意が膨れ上がる。看守も異常に気付いたのか銃を持ち上げて構えようとしている。ここで煽るような事を言ったら、看守が見ている前でも関係なく殺されるかもしれないな。普通に対応しよう。普通に。

 

「撃ちたくて撃ったわけじゃない。妹を人質に取られて反抗できなかった」

「本当?」

「本当だ」

 

 嘘は言ってない。

 

「ヴィヴィオを攫ったのも、自分からやったことじゃない。そういうこと」

「もちろん」

「だから許せって?」

「いやいやとんでもない。私も同じ立場なら許せるはずがないからな」

「ッ……じゃあなんであんなことをしたの! どうしてあんなことができるの!」

 

 苛立ちが限界に達したのだろう。殻を破って激情が弾けて出た。手も待機状態のデバイスに触れているし、ここで煽ったら確実に砲撃が飛んでくるだろう。煽らない程度に、言葉を選んで説明しようか。どう説明するのがいいだろうか。そもそも『あんなこと』とは何を指しているのか。元仲間を傷つけたことか、それとも彼女の『大事な物』を奪ったからか。それともどちらもか。

 

「そうだな……何て説明すればわかりやすいか」

 

 少しだけ腕を組んで考える。パッと浮かんでくるのはどうも相手の怒りを煽るような説明。こんな説明の仕方をすれば私が死んでしまう。自殺したいわけでもないのに良い説明の方法が浮かばないのは、知らずの内にスカリエッティに影響されていたからか。

 

「私を殺せばヴィヴィオが返ってくる。殺さなければヴィヴィオが殺されるとしよう。その時お前はどうする」

 

 浮かんだいくつもの煽り文句から、比較的相手が怒りそうにない。あるいは怒る気を削ぐ物を選んで自分の置かれていた状況を伝える。

 

「……」

 

 実際に、彼女も私と同じように『大事なもの』を奪われている。そこから状況を広げて、私の立場を想像するのは簡単だろう。そして私と同じ答えを出すはずだ。だが納得はしないはず。

 

「この話はまた後。今度は、フェイトちゃんのことについて話して」

 

 だからなのか、答えは言わず後回しにして話を進めようとしている。

 

「いいとも。何から話せばいい」

「フェイトちゃんの意志に反して戦わされてるっていうのを、詳しく」

「デバイスにウイルスを仕込んで、身体とリンカーコアを外から操作してる」

「……つくづく外道だね。看守がいなかったら君、どうなってたかわからないよ」

「怖い話だ」

 

 彼女が一度死んで、脳だけを新しい身体に移植してあると教えたら一体どうなってたことやら。いや、それは私のせいじゃないし怒られることもないか? まあ、ヴィータの事と同じようにどうせ後でバレるのだし教えてもいいだろう。殺されるのならその前に看守がどうにかしてくれる。そのための看守だろうし。

 

「もう一つ。最初の質問の答えで、あいつが生きているといったが。実は一回死んでる」

「どういうこと」

「ミサイルの爆発で飛散した破片を全身に浴びて、肉体が生命維持不可能かつ修復不可能なレベルまで損傷した。それで一度心肺停止状態になった。脳を摘出して新しい身体に移植した。容姿は本人の幼少期と変わりないから、見たらわかるはずだ」

「…………」

 

 数秒間表情が固まって、まばたきもしなくなったと思ったら、同じ表情を顔に貼り付けたままデバイスに手を伸ばした。それを見かねた看守が声をかける。

 

「高町一尉、お気持ちは察します。なので殴る蹴る位なら見なかったことにもできます。しかし魔法の使用はさすがに見過ごせません。デバイスから手を離してください。そいつには聞かなきゃならんことが山ほどあるんです」

「わかったよ……ところで、なんでそれを私に言ったの。怒らせたくて言ったのかな」

「気遣いだ。どうせこの後出撃するんだろう? 友人を気付かない内に殺してしまわないようにな」

「……どうもありがとう」

「こっちこそ。いい暇つぶしになった」

 

 わざわざ睨みながら言わなくても、全く感謝していないのはよく分かる。

 

「皮肉だよ! ……それじゃ今日は帰るね。もう疲れた」

「疲れさせて悪いな。また来てくれ、話し相手はいつでも歓迎だ」

「私はできれば二度と話したくないよ。じゃあ」

 

 肩を落として踵を返し、来た道を戻る高町を見送る。これでまた、しばらく退屈になってしまう。

 

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