ISと髑髏 作:ビッグ・アス
「パラズィート・クワイエット大佐。 貴様に指令が来ている。」
部屋の扉を不躾に音を立てて開けると共に、眼帯をした銀髪の少女が部屋の中にいる男に声を掛けた。
男は照明を一つも点けずに読んでいたグラビア雑誌を丁寧に閉じて几帳面に棚の中に返し、ベッドに横たわったまま少女の方を見やる。
「…ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐、貴官は小官よりも階級が下の筈だが?」
「そう言いながらもきちんと一人称が"小官"じゃないか。 それは階級が下の者が上の者に謙る時のものだ。」
「小官はこれが癖なのだよ。 たとえこれが階級が下の者が上の者に謙る為の一人称であろうと、小官はこれを変えるつもりはない。 貴官が小官にきちんとした敬称をつけたり、敬語を使う気が無いように、だ。 …指令の内容を聞こう。」
パラズィートと呼ばれた男はゆっくりとベッドから起き上がり、サングラスを掛けた。
「場所は日本。 目的は織斑一夏の警護だ。」
「…了解した。 出発は?」
「明朝だ。」
ラウラと呼ばれた少女の返答に、パラズィートは首を傾げながら電子時計を見やる。
現在の時刻は21時44分。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐、小官は出発があまりに性急過ぎることから、貴官が小官にその指令を伝達するのを忘れていた。 もしくは意図的に伝達を遅らせたと推測する。 …また、小官は貴官が"明朝"の意味を間違っていることを願う。」
「当たりだ。 少し遅らせてやろうと思ったら今日まで忘れていた! そして明朝は理解している。 明日の朝、という意味だ。」
「…小官はそろそろ貴官に罰則を与えても問題が無いと推測するが、いかがだろうか?」
「無駄だな! 私は自分の立場を考慮した上で貴様に無礼を働いている!」
パラズィートは呆れ気味… というよりも明らかに呆れながらため息をつき、加湿器の電源を切った。
「この異常な湿度はなんとかならないのか? ついでにいい加減シャツを着ることを覚えるべきだ。」
「小官は主に皮膚で呼吸を行なっているため、シャツを着たら死ぬ、ということも無いが少しばかり息苦しい。 また、高い湿度は小官にとって快適な空間を作るために必須である。」
「…両生類め。」
「小官の正式な名称は
パラズィートはスキンヘッドをさすりながら部屋の外に出た。
「ボーデヴィッヒ少佐、小官はこれよりATMで資金を引き下ろしに行く。 貴官はもう寝たまえ、子供は寝る時間だ。」
パラズィートはラウラの頭に手を置きながら言った。
身長185cmのパラズィートには150cmにも満たないラウラは子供のように見えるだろう。 実際子供だが。
「子供扱いするな。 同い年だろう。」
「その発言が既に子供のものだ。 そして小官は年齢の話でなく、体格や性格によって貴官を子供と判断した。」
パラズィートは、怒って彼を殴ろうとするラウラを頭を抑えて止めながら寮の近くの銀行に向かった。
スカルズ、戦いのために作り変えられた者たち、その一人であるパラズィート・クワイエット。
彼がスカルズとしての力を最大限まで行使した場合、現行最強の兵器であるISをも超える戦闘力を有する。