市街地を赤いザクが駆け抜ける。ジム・コマンドも遅れて駆け抜ける。
『ジムが俺の機動力に勝てるか?』
「…………」
ザクの煽りに答えず、ビームスプレーガンが狙いを定めた。移動しながらの射撃は難しいらしく、カスリもしない。
ジムはシールドを投げ捨てる。重量を下げて機動力を確保する考えだ。
「更に被弾を増やしたいのか?」
両手で構えて放たれるピンク色の線がザクの居ない方向を駆け抜ける。
「当たらない……」
「だろ」
ジムの操縦者は愚痴をこぼす。赤いザクはシャア専用と呼ばれ機動力は随一だ、ジムが勝てるわけが無い。
「何回戦って何回負けたかお前は覚えてないのかよ」
「全戦全敗か」
「だから機体の時点で勝てない、俺にはな」
制限時間はもう近い、スプレーガンの残弾も僅か。勝つにはトリッキーな手段しかないだろう、シュミレーションなら何でもしていいはずだ。
『いや、今回は俺が勝つ』
「は?」
ジムがビームスプレーガンを捨てながら、赤いザクを見ながらブーストを最大出力で噴射する。
「その程度の捨て身で……」
「……」
ザクがマシンガンで威嚇射撃をしながら後退。それを逃がさまいと最短距離で接近するジムが思い切った行動を取った。
ブチブチッ。
ジムは、右手で自身の左腕を掴んで大きく引き抜いたのだ。左肩から下はケーブルが剥き出しになり電気音を掻き鳴らす。
「お、おま……!」
『お前を倒すためなら、ジム・コマンドの腕なんかくれてやる』
驚いたザクが操縦を誤り、一瞬ふらつく。その隙を見逃さなかったジムが腕をガタンと道路に投げ捨ててビームサーベルを引き抜いた。
「貰った!」
機動力で超えられたシャアザクはヒートホークでなんとか横切るビームサーベルを弾く。その代わり完全に勢いは止まってしまう。
「だが耐えたらザクが勝つ」
「わけないな」
「く、クラッカー!」
急接近するジムの目の前でクラッカーが爆発し、黒煙がジムを包み込んだ。
「終わったか?」
煙の中、黒いシルエットと共に緑色のモノアイが姿を現す。
効果はなかったようだ。
「どうしてなんだよ……」
ブーストをふかし、ザクをビームサーベルで貫く。距離を取り、素早くスペアのビームサーベルを逆手に握ると。
『ジュースは奢れよ』
赤いザクの肩をビームサーベルが貫いた。
ここで制限時間残り1秒という文字と共に、画面の真ん中にデカデカと『Win』という文字が表示される。
ジム・コマンドの搭乗者が勝ったのだ。
「うわー負けるとは思わなかったわ」
機動戦士ガンダムのVR対戦ゲームに。
「……そうか」
2人はそそくさとコックピットをイメージした球形の部屋から出ると、自動販売機に向かっていた。
ジム・コマンドのパイロットは、ユウ・カジマ。
ジム・コマンドカッコイイよね!