リースとセシリアが対戦をしていた時、一夏は管制室で試合を見ていた。
そして思ったのだ、あのセシリアはなんだと。
普段セシリアはブルー・ティアーズを使ってオールレンジ攻撃をするか、スターライトMK‐Ⅲを使って狙撃しかしてこなく、接近戦など一度たりともしたことはなかったのだ。だからセシリアは近接戦は出来ないと思っていた。
しかし、これはどうだ? セシリアはインターセプターを呼び出し、トンファーを呼び出したリースと同じ速度で、そして相手より少ない手数で的確に逸らし、そして刺突を食らわせているではないか。
「これが、オルコットの、代表候補生本来実力だ織斑」
「これが、代表候補生…」
圧倒的。
今まで苦労はしたものの模擬戦では今はセシリアに対して勝ち星が多くなった一夏であったが、これほどまでの実力を見せつけられたことはなかった。
クラス対抗戦のときの無人機も、ラウラの暴走の時も、そして福音の時も。
一夏は仲間を守ったと思っていた。
守れるほど強くなったと思っていた。
しかし結果はどうだ? 今まで自分は助けられていなかったか? 守っていたのではなく、守られていたのではないのか?
そんな思いが一夏の心を覆っていく。
「千冬姉…俺って、弱かったんだな…」
一夏はふとそんな言葉を零した。
「ああ。お前は弱い。だから強くなれ、一夏。」
そんな一夏に一人の姉として千冬は答えた。
「さて、お前はオルコットの勝利を祝ってこい。他の連中は行ったぞ」
「はい!」
勢いよく出て行く一夏を見送り、千冬はアリーナの方へ目を向け、顔をしかめた。
「アルフェンシアのあの動き、あの反応…まさか、な……」
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「……ごめん」
―――リースは悪くありません。今回は、向こうが僅かに上回った…それだけです。
それに、勝負は時の運とも言いますし……
クノがフォローするが、それでもリースは「ごめん」と言い、作業に没頭する。
セシリア戦の後、リースはアリーナに隣接している整備区画でリーンヴォルフの修理に取り掛かっていた。
主な修繕箇所は腕部と関節部分。サンダーボルトを破壊された際の爆風で左腕が、近接戦闘時の連続突きで胸部装甲が小破状態にされたが、現在は修理の為その部分の上層装甲は取っ払われていた。
通常、この位の規模だと打鉄やラファール・リヴァイブはそこまで大掛かりにしない。
しかしリーンヴォルフ自体はラファール・リヴァイブよりも装甲が薄い為、そういう訳にはいかない。
ましてや、コア意識であるクノはリースにとって家族も同然。尚更十全の状態で仕上げてやらなければならない。
―――それにしても、ここに私向けの資材もあるとは…少々驚きました。
ふと、気付いた事を口にするクノ。それを聞いてリースも確かに、と思った。
この整備区画には基本的に、訓練機用の資材が置かれている。
他にも専用機向けの設備もあるのだが、それは後から置かれたもの。
専用機持ちが増えれば、その分対応した設備や資材が配備される。もっとも、それらが運ばれるのは大抵ここに来た日の翌日辺りだ。
なのに、ここには既にリーンヴォルフ用の資材などが充実していた。
全体的に見れば打鉄やラファール・リヴァイブには劣る数。埃も被っているが、問題は無いようだ。
「社長が事前に送っていたとか…?」
―――だとしても、埃を被っている程ですから結構前からあったと思いますけど…。
まあ何にせよ、これで十全に仕上げる事が出来るのは間違いない。
何でここにあるかは知らないが、今は最大限使わせて貰おう。
そう考え、リースは埃を被った資材から修繕箇所に使う資材を漁り始めた。
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そうして修理に取り掛かって数十分、リースは手元に展開している投影ディスプレイを見て軽く息を吐いた。
「…修理完了」
―――お疲れ様です、リース。有難うございますね。
「お礼はいい。 クノは大事な家族だから……」
そう言って少し赤くなった顔を逸らす。
クノから見ればバレバレの照れ隠しだが、リースの為に敢て黙っておく。
彼女から見れば世話が掛かる妹か娘みたいなものだ。まあそんなこと言えば、暫く口をきいてくれなくなると思うので言わないが……。
―――ふふっ、そうですね。さて、では皆さんの所に戻りましょう。
「うん」
頷き、リーンヴォルフを待機形態である十字架のペンダントに戻す。
そして通路に出て、教室に戻る道を思い出しながら今後の事を考える。
恐らく、今後は他の代表候補生たちとも対戦する事になるだろう。
そうなった場合、損傷率は上がり、より大掛かりな修理が必要となってくる。
(もっと、努力しよう。そして、クノへの負担を減らさないと……)