IS 白狼の軌跡   作:アリアン

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連投ですよ!

リースほとんど出ませんが!


黒き男

IS学園のすぐ傍にある港。

其処はIS学園に送る資材諸々が届く場所。

季節が変わろうとしている今、各企業からの支援物資が大型船から運び出されていた。

その港に、黒いコートを着た男が大型船から降りてきた。

 

長身痩躯、背中の中間まで伸ばされた黒い髪。顔の左側には大きな切り傷の跡があった。全身黒ずくめの男は、船から降り切ると同時に空を見上げた。

 

「……もうすぐ秋か。早いものだな…」

 

感慨深そうに呟き、端末を取り出す。

そして慣れた手つきで、とあるデータ群を表示させる。

 

「…この二年、必要な事は全てやった。後は……」

 

PLLL…

 

端末からコール音が鳴り響く。

男は端末を弄り、耳元に近づける。

 

「もしもし、N・イェーガーですが……あぁ、貴方でしたか。えぇ、今帰国したところですよ」

 

通話相手の言葉に答えながら、歩き出す。

 

「…えぇ、いい休暇でしたよ。土産もありますので……。そうですか、では戻り次第、仕事ですね……え、転入生?

 ……いえ、何でもありません。…はい、では後程…」

 

通話を切り、端末を懐に戻す。

その顔は、何かを推理するようなものになっていた。

 

「……この時期に転入生…しかもアメリカから、か……。

 ……なるほど、『こちら側』でもやはり変化があると……急ごう」

 

黒い男―――N・イェーガーは足早に港を後にし、IS学園に向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

IS学園に着き、Nは学園長室で作業服姿の老人と会合していた。

 

「おぉ、お帰りなさい、イェーガー君。長期休暇はどうでしたかな?」

「まあ中々にスリルでしたよ。あ、お土産です」

 

そう言ってNは手提げカバンから洋菓とUSBを取り出し、老人に渡す。

老人はUSBを一見した後、懐に入れた。

 

「とりあえず、そちらは後ほど確認を…。彼女に渡せばいいかと」

「あい解りました。やはり仕事が早いですなぁ、イェーガー君は。頼んで正解でした。

まあそれよりも……ホホホ。これ、有名なところの茶菓子ですな?」

「ヨーロッパで最近流行の茶菓子です。個人的には緑茶にも合う様な味わいだったので、十蔵さんもいけるかと思いましてね。

 ……ところで話は変わりますが」

 

老人、轡木十蔵に対して先ほどまでの笑みを消し、無表情な顔で話題を変える。

轡木氏も居住まいを正し、だが笑みを崩さずNの話を聞こうと相槌をうつ。

 

「なんですかな?」

「先ほどの連絡であった、アメリカからの転入生……どういう人物ですか?」

「ホホ、そう来ると思い、資料は用意してますよ。……これでしたな、どうぞ」

 

そういって、机の引き出しから数枚の資料を取り出し、Nに渡す。

渡されたNは「どうも」と一言だけ言い、黙々と資料を読みふける。

 

「…リース・アルフェンシア、アメリカ出身で、同国の企業『ヘリックテクニクス』のテストパイロット……両親は……、……なるほど、少なくとも警戒する必要はありませんね」

 

ある項目で一度詰まるが、それを見逃さなかった轡木氏はNに問いかける。

 

「ほぅ…イェーガー君が資料だけで人を判断するとは、……珍しいですね?」

「……いえ、いつも通りですよ。しかし、ヘリックテクニクスといえば、現在シェア4位のIS企業。

現在は武器製造が主体で、機体の開発はストップしてた筈…」

 

轡木氏の問いをはぐらかし、ヘリックテクニクス社について考える。

デュノア社のラファール・リヴァイヴの登場であの企業が開発してた機体、『リーンヴォルフ』は生産ストップ、代わりに武器を製造してたのだが…。

もしや例の生徒の機体のデータ取りに来たのだろうか?

…ありえる。彼女が入るクラスには二人ほど、第4世代型があるから、来てもおかしくないだろう。

 

「……様子見程度に、しておきますか」

「ふむ、それでいいと思いますよ?さて、そろそろ私も学園内の掃除をしなくてはいけないので、今日はこの辺でお開きと参りましょうか」

 

そう言い、轡木氏は立ち上がり、重厚な扉に足を向ける。

Nもその後を追うように、立ち上がる。

 

「では私もこっちでの仕事に戻ります」

「ホホ、では今日も一日頑張りましょうか」

 

轡木氏の笑顔に釣られるようにNも薄く笑い、学園長室から出て行った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

N・イェーガーのIS学園での役割は、用務員と整備士だ。

一年半ほど前からここで働いてるが、一年の殆どは海外に出掛けている。

同じ用務員仲間からは『私たちと同じくらい働けこの野郎!』と言われているが、実際は彼の方が一番働いてたりする。

整備士としては生徒からの訓練機や専用機の整備、機体の動かし方のアドバイスを頼まれ、

用務員としては各種行事の手伝いもやってたりする。

しかし、その殆どが2学期からの事が多く、彼を知る人は限られている。

今年の一年生の殆どは彼の事を一度も見てないだろう。

 

「さて、今日も頑張るか」

 

帰国したばかりである本日も彼は、普段通りといった感じにハンガーに掛けられた『打鉄』の整備を始める。

打鉄を整備してるその手は、軽快に動く。

そうやって整備を始めて数十分、不意に人が近づいてくる気配を感じ、作業の手を止める。

少し待つと、複数の足音と声が聞こえてきた。

 

「あのリースとか言う奴、まさか一夏目的で送られてきたのでは……」

「いえ…それはさすがにどうかと……」

「てかさ、何で今頃なわけよ?」

「たぶん、箒の機体も関係してるんじゃないかな?」

「恐らくその可能性は高いな。第4世代ともなれば、一人や二人、データ取りに人材を派遣しても可笑しくは無い」

 

どうやら例の転入生と同じクラスになった少女たちの様だった。

その声を聞いたNは、一瞬懐かしさを感じながら整備を再開した。

時期にその足音が遠のいていくのを感じながら、息をつく。

 

「…………いかんな、集中力が切れた」

 

再開したはいいが、急に作業が思う様に進まなくなった。

…仕方ない、別の作業をして気分を変えよう。

そう思い、打鉄のハンガーから去る。

 

通路に出て、アリーナの観客席に向かう。

イベントか何かある以外はあそこは大抵、汚いままだ。

掃除道具一式を持って、通路を歩く。

 

「……っと、ごめんよ」

「…あ、すいません」

 

通路を曲がると、栗色の髪を持つ少女とぶつかりそうになる。

咄嗟に避けて、謝罪し観客席に向かう為、そのまま通り過ぎる。

 

「…? 今の子……気のせいか?」

 

不意に気になったのか、Nは後ろを振り返るが、既に少女は居なかった。

 

 

 

 

 

 

「…? 今の人、何か違和感が……」

 

そして通路の角を曲がった少女も、先ほどの男に疑問を持っていた。

 

 

 

―――これが、N・イェーガーとリース・アルフェンシアの最初の邂逅だった。

 

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