いわゆる幽霊になりまして   作:幸い

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処女作です!
掴みどころのない主人公をツナたちのサポート役にしたくて書きましたが、(物理的に)掴めない主人公になりました。後悔はしてません((


幽霊になって自警団と出会いまして
幽霊になって人と会話しまして


気がついたら、私はここに居た

辺りを見回すと、ここは墓地であると分かる。その数多く並ぶ墓石の前に、私は佇んでいた

 

「………?」

 

ふと後ろの墓石に目を向けると、墓石にはとある名前が刻まれていた

後ろの名前は霞んでいて読めないけど、その墓石にはイタリア語で『アリーチェ』と書かれていた

 

…ふむ、つまり、どーゆーこと?

 

ちょ、ちょっと整理してみよう!

まず、私の名前…

 

「名前…私の名前は…」

 

あ、れ?なんで…思い出せないの!?

 

思い出そうとする度に耐えきれないほどの頭痛が襲う

自分の名前が思い出せないなんて、ありえない。記憶喪失、の四文字が思考をよぎるが、まさか、と首を振ってその考えを否定する

でも、いくら自分のことを思い出そうとしても他の、例えば日常生活で困らない情報を思い出すことは出来ても、自分に関する情報を少しでも思い出すことは出来なかった

そこまで考えて、私は盛大に顔をひきつらせる

 

まさか…本当にまさかだけど…き、記憶喪失!?

 

混乱した頭で周りをよく見回す

青々とした空、ここら辺一帯に広がる墓石、そして墓に手を合わせる人の姿…

 

っ、そうだ!とにかく人に聞いてみよう!ここが何処で、私が誰だか分かるか?とか…ここで悩んでいても、多分ずっと悩んだままだろうし…

 

そう思い立った私は急いで近くの墓に手を合わせていた女性の元へ駆け寄った

不思議と自分の足音がまったく聞こえないことが気になったけれど、今はどうでもいいと考えることをやめた

 

「す、すいませんっ…あの、ちょっと聞きたいことが…」

「…………」

 

女性が手を合わせ終えたタイミングを見計らって声をかけた、のだが…

 

聞こえてないのかな…?

 

女性はいっそ清々しいほどこちらに視線を向けようとせず、墓石の見て悲しげに微笑んでいる

声が小さかったんだ、と思い直した私はもう1度声をかけてみた

 

「あのっ!!少しいいですかっ?」

「………そろそろ、行くわね」

 

やっと私に気がついたのか、と安堵した私だが、女性の視線は相変わらず墓石を見つめていて…今の言葉も私に言った、というよりかは墓の中にいる大切な誰かへ向けて言ったかのような響きだった

 

「ぇ…あ、あのっ!だから私の話をっ…」

 

思わず手を伸ばして女性に触れようとして、私はあまりの衝撃から目を見開いた

確かに女性の肩に伸ばされた私の手は、女性をすり抜けてその手は空を切った

 

「…!?」

 

手を伸ばした体勢のまま、ピタリと固まった私を無視して…いや、無視した、というよりかは()()()()()()()()()()()かのように女性は去っていってしまった

女性が去る際、私の体をすり抜けて歩いていったことで、私が1番信じたくなかった予想が真実なのだと思い知らされる

人間が人間をすり抜ける、なんて技は並の人間は不可能なことである…つまり、私は人間だけど人間じゃなくて…つまりは…もしかして私……

 

「幽霊になってる?」

 

......................................................

 

「えぇ〜…嘘でしょ…」

 

女性が去った後、私は頭を抱えて唸り声をあげていた

確かに、死んで幽霊になっているならば墓地で気がつくのも分かる…そして一番最初に気がついた場所…つまり『アリーチェ』の墓の前で気がついたということは、肝心な私の名前…つまり『アリーチェ』は、私の名前?

 

「私の名前は…アリーチェ?」

 

とてもしっくりくる名前だった…もしかしたら間違っているかもしれないけれど、なぜだかそうだと言いきれるくらい自信をもっていた

 

そして、他にも何かわかるかもしれない、と私は必死の形相で墓地を練り歩いた

 

 

 

 

 

わかったことを一通り説明すると、ここはイタリアのちょっとした街で私はアリーチェという名前の齢10歳の少女だった、ということくらいだった

ここがイタリアなのは…墓石の文字がイタリア語な時点でまぁ、ちょっと予想していた。そして私の年齢は私のお墓に書かれていた享年10歳という文字を見てわかった

 

「情報はちょっと収集できたけど…問題はなぜ死んだはずの私が霊体になっているか、だよね」

 

亡くなった理由はお墓には書いてなかったから、私の最後が未練の残る最後だったとか…?幽霊が成仏出来ない理由なんて、未練があるってくらいしか思いつかないし…

 

「未練…未練ね…未練っていっても、私は何も思い出せないし…」

 

あぁだめだ…確実に詰んでるよ…せめてなにか思い出せればなぁ…

あぁ…神様…私はなぜこんなことに……生前の私はそんなに悪いことをしたのでしょうか?もう神でもなんでもいいから私を助けてぇ!!!誰かァ!!

 

そうやって墓地の真ん中でうだうだ現実逃避していた時だった

 

「…そこの少女」

「あ〜!!どうしようっ!?むしろどうすればいい!?」

「聞こえているのか?墓石に乗って頭を抱えているそこの少女」

「ん?ぇ、はいっ!?」

 

いつの間にか、ブロンドのツンツンヘアーの青年が私の目の前に立っていた

そしてあろうことか、確かにその青年は私を見据えて見えてないはずの私に声をかけてきたのだ

あまりの混乱に訳分からない叫び声をあげて発狂していた私は、その事実にピタリと動きを止めた

 

「え?私?」

「あぁ、君以外に墓石に乗って頭を抱えている少女なんて誰がいるんだ?」

 

やっぱり…この人、私が見えてる?

 

あの女性の他にも数人の人に声かけたけれどやっぱり反応してもらえなかったので人と会話するのはもう諦めていた

霊感とかあれば見えるのだろうか?というか、かなり変人に見られてる気がする…いや、人に見られないなら、と人目を気にせず騒いでたのは私だけれど…

 

「あなた、私が見えるの?」

「…見える、というのは一体…?」

 

あ、あれ?この人、私が幽霊だってわかってない?

 

心の底から不思議そうな顔をしている青年の私を見る目は、さっきの倍不審がられていて…そ、そうだよね、墓石に乗って頭を抱えて叫んでただけじゃなくて、自分が見えるのか、なんて聞く子は頭おかしい子だと思うよね

とりあえず弁明しなくては、このままでは私は頭のおかしい残念な子だ…でもなんて説明すれば納得してくれるんだろう?

 

「う〜ん…」

「…君の名前は?」

 

突然名前を聞かれて私は青年の質問の意味を理解するのに時間がかかって、ようやく自分の名前を聞かれているのだと理解したときには青年が名乗っていた

 

「俺はジョットだ、この街で自警団をしている」

「私は…アリーチェ」

「そうか、アリーチェ…まず、墓石には乗るな」

 

「危ないからな」そう言ってクスリと笑うジョットに私は目を見開いた

この人、私が幽霊だって知らないから注意しに来たのかな。もしそうだったらなんか申し訳ない…だって私、死んでるから墓石から落ちて頭ぶつけても多分平気だと思う

でも、私が幽霊だということを言ったら怖がるか、また頭がおかしい認定されそうだから言わないことにするけど

適当にうなづくとジョットは満足そうに微笑んだ

 

…優しい人なのかな

 

「ところで、アリーチェはこんなところで何をしているんだ?墓石にのったりすると亡くなった人が夜に化けてでてくるぞ」

 

悪戯する子供のような顔で子供だましの嘘をつくジョットに小さく笑う

でも、さすがに自分の墓だから乗ってて、しかももう自分自体が化けてでてるからあまり意味がないなんて言えない

 

「ふふっ、オバケなんて信じてないよ?でも、墓石に乗るのはだめだってわかったからもうしない」

 

普通の人間より明らかに軽い自分の体を浮かせて、ひょいっと墓石から飛び降りる

地面に足は着いたけれど、自分のお墓の他に行くところが思いつかない私は、どうしようかと適当に石を蹴り上げた

 

「ならよし…あと、墓地で大声を出すのもよくないからな」

「はーい、もうしません」

 

多分ジョットにはさっきの私はただの遊びで墓石に乗っていたのだと思われている気がする

それならそれで結果オーライだけれど…やっぱりどこに行けばいいのかわからない私はよほど困った顔をしていたのだろうか?ジョットが心配そうな視線をする

 

「もう夕方だしな…アリーチェ、家まで送ろう。家はどこだ?」

「………ううん、大丈夫だよ。家、近いから」

 

気がつけば空は朱色に染まっていて…

送る、と言ったジョットに取り繕った笑顔を見せると更に心配そうに顔を歪められる

送られる家なんて思い出せないし心当たりもない

 

「しかし…」

「大丈夫だから、じゃぁ私はもう行くね」

 

頑なに送ろうとするジョットに大丈夫だと言い続け、私はジョットを墓地において走って逃げてしまった

後ろからジョットの声が聞こえたが、私は足を止めることはなかった

 

そうしてその日私は、適当な路地裏に入り込んで眠らない夜を過ごしたのだ。




主人公頭おかしい子ですね…はい。
今後は初代たちと絡ませたいですね!


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