いわゆる幽霊になりまして   作:幸い

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みなさん非常におっっっっ久しぶりです!
遅れてすいませんっ!!!忙しいリアルから抜け出して、なんとか舞い戻ってきましたよ…!


とかなんとか言い訳してますが許してください(小声)


幽霊になって自警団にお泊まりしまして

どうも、幽霊少女アリーチェです。

 

みんなが寝静まる真夜中の街を幽霊らしく徘徊していた私はとある小道で美しい女性と出会い、なぜだか家出だと思われて女性の職場に寝泊まりさせてもらうこととなりました。

 

…なんで、こんなおさらいみたいなことをしているのかというと。

 

「あら、どうしたの?アリーチェ、シャワーは入らないの?」

「…や、その…はい……」

 

幽霊になって以来の、大大大ピンチに見舞われているからである。

 

 

 

 

 

 

話は少し遡って、エレナさんに連れられて来た自警団の中。

 

エレナさんに引っ張られて自警団の中へドンドン入ってしまっていたが、私はまだ自警団にお泊まりするのを防ぐことを完全に諦めてはいなかった。

 

「え、エレナさん。私、やっぱり家にかえ…」

「そんな水臭いこと言わなくてもいいのよ?それに、こんな遅い時間に帰らせるわけにもいかないもの」

 

繋がれた手は女性にしては強い力が込められていて、振りほどこうにも私の力では振り払うことが出来ず、私は内心うなだれる。確かに、先程時計を見た限りでは今は夜中の12時。真夜中である。自警団でもあるエレナさんが私みたいな子供の夜歩きを許すとは思えなかった。

 

「ほら、そんなに親御さんのことが気がかりなら朝イチで帰ればいいだけだし…ねっ?」

 

ねっ?って…。

 

可愛らしくウィンクするエレナさんに私は苦笑いを返す。年齢は関係なく、綺麗な人がウィンクすると普通に可愛いいんだなぁ、なんて現実逃避しながら私は遠い目をしたまま、エレナさんに引っ張られていった。

 

 

 

 

 

 

「さっ、ここが私の部屋よ」

 

仕事の時の寝泊まりの部屋…エレナさんは自警団の中でも幹部に近い重要な人らしく、普通に一部屋まるまる与えられているようだった。

 

こうやって扉の前まで来てしまっては、今更引き返すことは困難だ。私は覚悟を決めて、部屋の中へと入っていくエレナさんの背を追いかけた。

 

「…大丈夫大丈夫。なんとかなる、よね?」

 

なると信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、綺麗な部屋…」

 

エレナさんの部屋はわりと広くて普通にここで暮らすことが出来そうなほど、家具や器具などの設備が整っていた。生活感がありながら、女性らしくお化粧の道具や花瓶にいけてある花なんかもある。つまり、一言で言うとしたら素敵なワンルームということだ。

 

「そうかしら?ふふ、ありがとうアリーチェ。普段からちゃんと片付けはしているから、そんなに汚くはないだろうけど…そう言ってもらえると嬉しいわ」

 

私がしきりにキョロキョロと辺りを見回してそう呟くと、エレナさんは嬉しそうに微笑んで私を椅子へと案内した。座るように促されて、少し足の高い椅子に苦戦しながら背にもたれかける。

 

「ずっと外にいたから体が冷えているでしょう?さっき繋いでいた手も、氷のように冷たかったもの。うーん…そうだわ!お風呂…と言いたいところだけど、ここにはシャワーしかないの。でもシャワーでも十分に暖まれるでしょうから先に浴びてきていいわよアリーチェ」

「…シャ、シャワー…?」

 

一瞬、エレナさんに何を言われたのか分からなかった。

 

 

そうして、今に至る。

 

「あら、どうしたの?アリーチェ、シャワーは入らないの?」

「…や、その…はい……」

 

にこにこと微笑むエレナさんには悪いけど、私は絶賛混乱中だった。

 

 

しゃわー?シャワー…What?シャワーってなに?

 

 

頭の中が真っ白になり、そして数秒かけて私は何を言われたか理解した。思わず体を前のめりにしてエレナさんに声をかけようとした私は、次の瞬間、椅子から消えることになった。

 

「まっ、待ってくださっ!?」

 

ぐらりと傾いた椅子とそのまま崩れる私の体。スローモーションに見えたその出来事に、私は何が起きたのか分からず目を白黒とさせているだけだった。近くから、エレナさんの焦ったような声が聞こえる。

 

「えっ?アリーチェ!?」

 

 

エレナさんが横向きに見える。

 

 

反射的に私はすぐ隣に見える床の木板に手をかけて、横になっていた体を起こす。そうして、ようやく私は自分が椅子と共に床に叩きつけられたのだと気づいた。派手に転んだらしく、心配を目を浮かばせたエレナさんに支えられるように立たせてもらう。

 

「大丈夫!?怪我は…ないみたいね。もぅ…急に視界からアリーチェが消えたからびっくりしたわ。本当に怪我はない?」

「だ、大丈夫です…」

 

椅子が高かったのかしら、と呟くエレナさんに私はその考えを頭の中で否定した。多分、今、私が落ちたのは…

 

「アリーチェ?本当に大丈夫?」

「えっ…あ、はい。大丈夫、です…」

 

どうやら、心ここにあらずって感じだったらしい。エレナさんはまたも心配そうに私の顔を覗き込む。私はそれに作り笑いを浮かべて、手を振って大丈夫だと主張した。

それでも、優しいエレナさんはまだ心配しているようだけど…でも、本当に体はどこも怪我なんてしていないし、私のこの体は死んだ時のままなのだろう。だから、幽霊の私が怪我をするなんてこと自体ありえないのだ。さっきだって痛みを感じることはなかった。

 

「そう…大丈夫なら良かったわ。椅子は危ないでしょうから、そっちのソファにでも座りましょうか」

「はい…」

 

申し訳なく思いながら、エレナさんとソファに座り込む。心配そうに私を見るエレナさんの様子を、私はじっと見つめていた。

 

…さっきの違和感を、エレナさんが気づいていないか。それがとても心配だった。

 

そもそも、私が椅子から落ちたのは椅子が傾いたからではない。確かに結果、椅子は傾いて私と共に落ちたけれどそれは私が傾けたからである。シャワーについて聞かれた私は、焦って椅子をすり抜けていたのだ。

 

…私はシャワーを浴びれない。私は水と人間には触れられない。それは私という幽霊に限ったルールだった。もしここでシャワーの誘いを受けてしまったら、私が普通の人間ではないとエレナさんにバレてしまうことになるだろう。幽霊だって、気づかれてしまうかもしれない。…怖がられてしまう、かもしれない。

 

せっかく、ジョットの次に友達になれるかもしれないのに。

 

「それは…嫌だなぁ」

 

これが本心。紛れもない、私の本心である。

 

だから、私はさきほどの失態がバレたりしてやいないか、をこんなに気にしているのだ。

小さく呟いた私の声に、エレナさんは「え?何か言った?」と反応してしまい、それに私は曖昧な笑みで返して露骨に話を逸らす。

 

「なんでもないです。えっと、シャワーですよね?その…今日は、夕方に友達の家で浴びてきたので私は遠慮しときます」

「あら、そうだったのね。いえ、大丈夫よ。そういうことなら、私はさきに済ませてしまうからアリーチェは少しここで待っていて頂戴」

「はい。わかりました」

 

私がついた適当な嘘に納得したように明るい笑みを見せたエレナさんを見て、小さな罪悪感が募る。そしてエレナさんは手早くシャワーの支度をすると、「それじゃあ、行ってくるわね」と私に一声かけて部屋を出ていってしまった。

 

 

しんと静まる部屋。

ようやく1人きりになって、私は小さく息をつく。

 

「…バレてなかったのかな」

 

さっきのエレナさんの態度からして、バレた心配はなさそうだけど…それでも、自警団で働いている人だ。もしかしたら目敏く見ていて、それを隠していただけなのかもしれない。

 

「…………………」

 

傾いた体に焦って、そのまま椅子に手をかけて椅子を触ることを意識したら、椅子も傾いて…そして、そのまま椅子と共に倒れてしまった。しっかり見ていたら気がつくような違和感のある落ち方。誤魔化すことの出来ないその出来事の瞬間、エレナさんがどこかよそを見ていたことを私は祈るしかない。

 

ドキドキとなる鼓動なんてものはあいにく持ち合わせていないけれど、私はエレナさんが帰ってくるまでの静寂に目をつむってテーブルに身を預け過ごしていた。幽霊だから、寝れる訳でもないけれどそれでも目をつむっていると楽だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほう…これはまた、珍しい魂を持っていますね…』

『…え?』

 

え?誰?てか、ここどこ?

 

気がつくと、辺り1面真っ白な空間に私はいた。おかしいな…さっきまで確かにエレナさんの部屋にいたはずなのに。

 

『ここどこ…なんでこんな場所にいるの…?』

『おかしいことを言いますね。君が私を呼んだと言うのに…ヌフフフフ』

 

呼んだ?私が?

 

『それは…どういう…』

『それにしても、君は随分空っぽなんですね…こんな精神世界を見たのは、私も初めてですよ』

 

話をかぶせるように話すその声に、私は疑問しか浮かばなかった。空っぽ?精神世界?

 

『…どうやら、ほんとに分かっていないようだ。私を呼んだことは偶然のことのようですね』

 

ヌフフ、と不思議な笑い声を最後に付け足したその人は淡い紫色の炎を体に纏わせながら私に対面していた。藍色の髪を上で結っていて、その姿はまるで…

 

『藍色の南国果樹みたいな…あ、紫色の野菜かも?』

『……どうやら、喧嘩を売られたみたいですねぇ』

 

今度は怒っているのか、声を震わせてヌフフと笑うその人に私はあっと声をあげて急いで頭を下げた。

 

しょ、初対面でヘアースタイルを馬鹿にするなんて…!私ってば、なんて非常識!

 

『ごっ、ごめんなさい!つい、ポロッと本音が…』

『ヌフフフ、それはフォローになっていませんよ…でもまぁ、もういいです。話を元に戻しましょう』

 

そう言えば、この人はいつからここにいたのだろう?私の精神世界(?)って言ってたけどほんとにここってどこなんだろう?

 

『ふむ、しかし時間がないようだ…本当に貴方の精神世界はおかしいですね。夢を見ているわけでもなさそうだ…興味深い』

『え?時間?』

『それに、この気配は。なるほど、貴方もしかして……』

 

スっと目を細めた藍色の髪の男の人は、私を興味深そうに見つめると何事かをブツブツと唱え始めた。私は完全においてけぼりで、藍色の髪の男の人を見上げながら、頭にはてなマークを浮かべている。

 

『まぁ、私ももうここに用事はありませんし多分すぐに会えるでしょうから一旦引きます』

『…?』

『ヌフフ…さようなら、興味深い少女よ』

 

藍色の髪の男の人は、ここから離れるような口ぶりで私に別れを告げると次第に私の視界からゆらゆらと陽炎のように藍色の髪の男の人が揺らめいて…そして。

 

 

 

 

 

 

「…ーチェ?…い、る?アリーチェ、アリーチェ!」

「ふぇっ?」

 

耳元で響く大きな声に驚いてバッと頭を起こした私は、パチパチと大きく瞬きをすると呆然と目の前を見つめた。

 

え?何?今、何が起こった?

 

「あぁ、良かったわ。起きたのね…こんなところで寝ていると、風邪をひいてしまうわよ?」

 

どうやら私はソファーにいたようで、シャワーから上がったらしいエレナさんがソファーで横になっている私を見て揺すりながら起こしてくれたみたいだ。

 

…待って、私ってば寝てた?え、寝れるの?私。でもこれは、なんというか…寝てたというよりは、意識が引っ張られてた……みたいな?なんか、ここじゃないどこかで誰かと話していた気がするんだけど…

 

うまく説明できない出来事に頭が追いついておらず、相変わらず間の抜けた顔をしているだろう私に、エレナさんは不思議そうに私の顔を覗いて心配そうな声音で声をかけてくれた。

 

「大丈夫?アリーチェ、眠い?」

「えっ…あ、その…」

「そうよね、育ち盛りですもの。ほら、もう夜中になってしまったわ。ベットに横になりましょう?」

 

夜中になってしまった、という声に時計をチラリと見てみるとその針は深夜1時を越していて…あぁ、たしかに。この時間に私みたいな子が起きているのはおかしいな、と他人事のように考える。まぁ、私は幽霊だからいくら夜更かししても寝ない…はずなんだけど。

 

演技した方良いいかな?と子供らしく眠そうに目を擦りながら私はエレナさんに手招きされて大きなダブルベットに寝転んだ。

ふわふわとした感触が、いつも路地裏で夜を過ごしていた私には酷く新鮮に感じて、とても感動してしまった。瞳を輝かせる私にエレナさんも気づいたのか、微笑ましそうに目を緩く細めると私の頭を優しく撫でながらベットの中でクスリと笑みをこぼした。

 

「嬉しそうね、アリーチェ。ベットで寝るのは初めて?」

「えっと、そうです…その、家が貧乏で……」

「そうだったの…ほら、とてもふかふかでしょう?もし良かったら、またここに来ていいのよ。家出するくらいなら、ここに荷物を持ってきてもいいし…」

 

私はいつでも歓迎するわ。そう言ったエレナさんを横になりながら見上げると、まるで母親のように慈しみのこもった瞳で私を見つめていた。母親の存在なんて、幽霊として存在してから初めて感じたものだから…懐かしさからかわからないけれど、少し目尻に涙が溜まってしまった。

 

「…嬉しい、です」

「ふふ、それなら私も嬉しいわ」

 

そう言って心底嬉しそうに笑うエレナさんにつられて、私もクツクツと笑い出した。そして一通り笑ったあとは眠気がやってきたのか、エレナさんが目をうとうとと微睡わせながら私に暖かい声で、おやすみなさいアリーチェ、と言った。

 

 

エレナさんのその言葉をきっかけに私も目を瞑ってみたけれど…さっきみたいにまた意識がどこかに引っ張られるようなことは、やっぱりなかった。




主人公の設定を固めて、色々書きたくて書きました!
生存の可能性は…?もしかしたらほんとに死んでいるのかも…?なんて、たくさん考えながら読んでいただけると嬉しいです!


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