いわゆる幽霊になりまして   作:幸い

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この季節になってインフルA型になりました幸いです!
皆様は季節の変わり目をどのようにお過ごしでしょうか…風邪を引かないように気をつけてくださいね。特にインフル!この季節にかよ(笑)と友達に笑われる屈辱!…コホン、それはそれとして。余計な前置きなどいりませんね!どうぞ!


幽霊になって衝撃の事実を知りまして①

すぅすぅ、と健やかな寝息が隣から聞こえる。

今は何時だろうとゆっくり首を動かすと時計の針はもう朝の6時をさしていた。

 

「…やっぱり」

 

寝られなかったか。そのことに割と残念に思いながら、昨日あった不思議体験を思い出し小さくため息をついた。

 

見たこともない真っ白な場所。精神世界だと言っていた謎の男性…これらが本当に夢なんかでないのなら、私は一体どこでなんの体験をしていたのだろう?

 

「特にあの男の人…」

 

髪型が非常に面白い人だったけれど、あの人は多分すぐに会えるだろうから、と言っていた。

 

「ほんとに、会えるのかなぁ…?」

 

この静かなお部屋には、私の問いに答えてくれる人は誰もいなかった。かわりにいるのは、私の隣で健やかな寝息をたてているエレナさんだけ。

 

もしかして、エレナさんと関わりの深い人だったりするのかな?だって、ここはエレナさんの部屋だし…なんて。そんなわけないか、とうんうん唸って考え込んでいる私の隣で、いつの間にか目を覚ましたらしいエレナさんが少し眠そうに欠伸をしてそれから私を見て、そしてふわりと微笑みながら挨拶をしてくれた。

 

「ふわぁ…おはようアリーチェ。随分早く起きたのね」

「あ、えっと、おはようございます…エレナさん」

 

私も急いで挨拶をかえすと、エレナさんはゆったりとした動作で体を起こして、ぐぐっと背伸びをしながらさっきの寝起きの声と違った声で「いい朝ね!」と私に笑いかけてくれた。私もエレナさんに習って体を起き上がらせると、エレナさんの視線に合わせてコクン、とうなづく。

 

「今日はね、アリーチェ。ちょっとした会議があるのよ」

 

朝の支度として、顔を洗い歯を磨きメイクを始めたエレナさんの横の椅子でゆったりとくつろぎながら待っていた私は、かけられた声に「会議…ですか?」と首をかしげた。

ちなみにだけれど、私は水に触れられないので顔を洗う時はもちろんしたフリで誤魔化した。歯磨きも同様、やったフリだ。

 

それはそうとして会議?会議って、自警団のえらい人が集う会議だろうか?そういえばエレナさん、実はとってもえらい人なのだとかここに来る前に聞いた気がするような…

 

「そうよ、午前中だけなのだけれどね…私は必ずその会議に出なきゃいけなくて」

「そうなんですか」

「…なにも、こんな朝早くに会議なんて開かなくてもいいわよねぇ?せっかく、アリーチェと一緒に朝ごはんを食べようと思っていたのに…」

 

もぅ!と言いながらぷんすこと怒るエレナさんを見て苦笑いをしながら私は、頭の別のところで『朝ごはん…そんなのあったなぁ。その会議がなかったら危なかったや…』と冷や汗をかいていた。

 

ほら私、食べ物とか消化出来ないからご飯とか食べられないせいで、今日の朝ごはんまでは考えてなかったんだよね。失敗失敗、次からは気をつけよう、

 

「だから、悪いのだけれどアリーチェ。食堂で朝ごはんを貰って欲しいの」

「食堂って、あぁ…」

 

ほんとは一緒に外に食べに行きたかったのだけれど…と続けたエレナさんに、私は危なかったとまたも冷や汗を流しつつ納得するとエレナさんは途端に不思議そうな表情で私を見つめた。

 

「あら?アリーチェ、ここの食堂に来たことがあるの?」

「え、あ…ジョットに連れられて1回……でも、途中でジョットにお仕事が入っちゃって」

 

それで中には入らなかったんです。そう続けた私にエレナさんは納得したように「そうだったの」とうなづいた。

 

知ったように言ったけど私、実際にここの食堂に行ったことはないんだよね。ほら、前に来た時は途中でジョットに仕事が入っちゃったし、迎えに来た部下の人は私が見えてなかったから…いや、行っても食べられないからそれはそれでピンチだったんだけど。

 

「会議は多分早く終わると思うの。アリーチェが朝ごはんを食べ終わる頃には私も自由になると思うから…だから、貴方を家に送るのは朝ごはんの後でもいいかしら?親御さんも心配されているでしょうから、ほんとは早めに送りたかったのだけどね…」

「あ、えっと…」

「大丈夫よ。ちゃんと食堂まで案内してから会議に行くから」

 

ずんずんと進んでいく話に目を白黒とさせていると、エレナさんは心配そうに私の顔を覗いて「いいかしら?」と不安げに尋ねてくるので私はとりあえずこくんとうなづいて了承を示した。

 

こんな美人さんにそんな顔させるのはとても私の胸が痛む…で、でもわりと話聞いてなかったんですけど。エレナさん、もう1回今度はゆっくりお願いしたいのですが…あ、ダメ?

 

理解しきれていないままの私のうなづきを見て、エレナさんは安心したように笑うと、私の腕をとるとそのまま部屋を出て軽快な足取りで歩き始めた。どうやら、着替えも既に終わっていて支度も完了していたらしい。いつの間に…ってそうか、私が惚けている間にか。

 

「じゃあ、案内するわね!こっちよ!」

「わわっ…は、はいっ」

 

ここに来た時同様、もうどうにでもなれと私は軽く放心状態のままエレナさんに引きずられていった。

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

「あら、プリーモ?」

「え?あ、ほんとだ…」

 

朝の自警団で、廊下を慣れたようにスタスタと歩くエレナさんと手を繋いでそのあとを追っていると、ふとエレナさんが立ち止まり私達から見て前方から歩いてくる男性を見つけると私にやってきた男性の正体を教えてくれた。見慣れたツンツン頭のブロンドヘアー。遠目から見てもこのシルエットで分からない人はいないだろう。

 

こんな朝早くにも関わらずジョットは手にたくさんの書類を抱えながら、私たちを見つけて気安く声をかけてくれた。

 

「エレナか、おはよういい朝だな。それに、アリーチェも」

「おはよう…ジョット」

 

おはよう、と挨拶しながら慣れた手つきで私の頭をゆるりと撫でるその手に私は目を瞑りながらジョットに素直な挨拶を返した。エレナさんにも爽やかに挨拶しようとして、ジョットの口角がピクリと固まった。

 

「エ…レナ?」

「ふふ、おはようプリーモ。今日はこんな朝早くから会議だなんて殊勝ねぇ?せっかく、可愛いお客様と朝ごはんを一緒にしようとしてたのに…」

「……えっーと」

 

とんだ藪蛇だったねジョット。

 

エレナさんは確かに顔は笑ってはいるものも、目が笑っていない。今にもジョットに飛びかかるんじゃないかってくらい殺気というかなんというか、雰囲気が達観している。ジョットもそれに気づいたのだろう、ピシリと固まってなんと声を掛けようか考えているようだった。

 

…仕方ないなぁ。

 

「ねぇ、エレナさん。早く行かなくて、いいの?」

「あら…そうね。行きましょうかアリーチェ。じゃあプリーモ、また後でね」

 

後でね、と言ったエレナさんは目が笑っていなかったけれど会議でそんな問題は起こさないだろうから、ジョットはエレナさんに催促してあげた私に感謝するといいよ。なんて胸を張ってジョットを見ると、ジョットは助かったような助かってないような顔で私を見つめていた。しかし、何を考えたのエレナさんと私を再度呼び止めるように声をかけた。

 

「ちょっと待ってくれ」

「なぁに?会議なら後で行くわよ。アリーチェを食堂に送ってからね」

「…エレナ、今日の会議はそんなに長引くことはない。議題も自警団の風紀や少しの報告をするだけだから、部外者であるアリーチェがいても構わないだろう。だから…そのまま会議に来るといい」

 

それなら会議が終わってからでも、アリーチェと食事に行けるだろう?

 

そう続けたジョットにエレナさんはパチパチと瞬きして、そして何を言ったのか理解すると花が咲いたように嬉しそうな顔をして私と繋いでいた手に力を込めた。

 

「本当っ!?やったわね、アリーチェ!早速会議に行きましょう!」

「え、ええっ!?で、でも私、自警団の人じゃないし…」

「構わないぞ。今日の会議はただの定例会のようなものだからな」

 

ちょ、ちょっとちょっと、まずいんじゃないかな…?だって、会議に行って終わったらエレナさんと朝ごはん一緒にすることになっちゃうんだよね…?それって、つまり。私が幽霊だってバレちゃうんじゃ…

 

「いいい、いいですっ。待ってます、待ってますから」

「そうは言ってもアリーチェ、1人で待つよりかは会議にいる方が気持ち的に楽でしょう?」

「大丈夫だ。そうした方がエレナも喜ぶだろう」

「それに…」

 

ぶんぶんと大きく横に首を振って拒否する私に、エレナさんとジョットは二人がかりで説得してくるけど、違くて。私からしたら死活問題なの!すごい剣幕で首を横に振る私に2人は更に言いくるめようと口を開くけど、その説得も途中で中断することになった。

 

「お前ら、こんなところでなにやってんだ」

「おや?プリーモとエレナではござらなぬか!んん?もう1人いるでこざるね」

 

私たちが廊下の途中で騒いでいると、廊下の向こう側から歩いてくる影が2つ。1人はサラサラの赤髪とキリッとした目が特徴のジョットの右腕であるGさんで、もう1人は頭にちょこんとのせた黒い長帽子とイタリアでは見ない雰囲気の衣装に身を包んだ笛吹きの青年、雨月さんだ。

 

え、Gさんは分かるけどなんで雨月さん?

 

混乱する私を横目に、現れた2人に対しジョットとエレナさんは知り合いなのか気さくに挨拶を返していた。

 

「G、それに雨月も。おはよう、もう来ていたのだな」

「あら2人とも、珍しい組み合わせね」

「あぁ、おはよう。いやなんだ、雨月とはさっきそこで会ってな」

「おはようでござる、やや?もう1人は誰かと思ったら」

 

挨拶を交わすみんなの隅によって目立たないように隠れていた私を目ざとく見つけたのは雨月さんだった。私を見つけた途端、雨月さんは声をあげてそれがジョットやGさんにも伝わって私は見つかってしまった。

 

「あぁ、Gには前に紹介したな。アリーチェ、2人にも挨拶を」

「お、おはようございます」

「確か、アリーチェだったな?おはよう、早起きなんだな」

「やはり!アリーチェではござらなぬか!いやぁ、こんなところで会うなんて奇遇でござるなぁ」

 

えっと、Gさんにはジョットを介して会ったから知り合いなのは必然だったんだけど雨月さんが私を知っていることにジョットやGさんだけじゃなくてエレナさんもびっくりしてるなぁ。その視線に気づいていないのか雨月さんはマイペースに奇遇だなぁと頭をかいてるし…

 

「えっと、おはようございます。雨月さん」

「…アリーチェ、雨月を知っているのか?」

「私も、皆とアリーチェに面識があったことに驚いているでござるよ。私とナックルは、アリーチェとは月に一度笛を聞かせに行っている協会で会う間柄でござる」

 

でござるな?と確認するように覗かれた瞳にコクンとうなづくと、皆は雨月さんが協会で子供たちに笛を聞かせているのを知っていたらしい、納得したようにうなづいていた。

 

…いや、私はまだ納得していないのだけど。

 

「驚いたわ、こんな偶然あるのね」と瞬きをするエレナさんの袖を引っ張って、私は当然の質問を投げかけた。

 

「えっと、雨月さんはなんでここにいるの?」

「それは知らないのか、嬢ちゃん」

「そういえばそうでござるな。アリーチェ、隠してたわけではなかったのでござるが、私とナックルは自警団の一員でもあるのでござるよ」

「え」

 

えぇっ!?雨月さんは今までの雰囲気からなんとなくそうかなぁとは思ってたけど、ナックルさんも自警団に!?あの人、牧師さんとかじゃないの!?

 

「ナックルさんも…?だって、牧師さんの格好してたから…てっきり」

「いや、アイツは協会の神父も務めてたはずだぞ。嬢ちゃんの予想も、あながち外れてないな」

「あ、そうだったんだ…」

 

兼任してるんだ。なるほど…

 

ようやく全てに納得してうんうんうなづいていると、私に説明してくれていたGさんは腕にあった時計を覗くと「ん?もうこんな時間か」と呟いてジョット達に向かって声をかけた。

 

「そろそろ時間だ、先に来てる奴もいるだろうからな。急ぐぞ」

「あぁ、じゃあ行こうか皆」

「そうね!ほら、アリーチェも!」

 

ぞろぞろと揃って移動しようとしている中、エレナさんがガッチリと私の腕を握ってそのまま会議に行こうとしていた。雨月さんが私も会議に行くのかと何故か瞳を輝かせていて、Gさんあたりに怒られるんじゃと淡い期待を抱くも「いいんじゃないか?」とすんなり認められてしまった。

 

「えぇっと、でも…」

 

ほら、会議に来る人に私が見えなかったら色々めんどくさいことに…なる。なるな、これ。でもどうやって抜けよう?ぐるぐると頭の中でどう切り抜けようかと悩んでいると、姿勢を低くして私の顔を覗き込んだジョットが頭にポンと手を乗せてゆっくり撫で始めた。

 

「アリーチェ、そんなに不安がらなくても大丈夫だ。みんなも、それに向こうにはナックルだっているからな」

「他の奴らも悪いやつじゃねぇしな」

「来るといいでござるよ!」

「ほら、行きましょうよ。アリーチェ?」

 

ジョットに続くように言うみんなの言葉に、私はどんどん逃げ道が閉ざされているのを感じてつぅと背中に嫌な汗が流れる。そして観念した私は、「……分かり、ました」と内心涙を流しながら了承してしまった。

 

いや…もう、どうなってもいいや!むしろどうにかなってしまえ!

 

 

そうして私は、会議に出席することになってしまったのである。




なんか、長いなぁ。キャラが多いからかな?ちょっと長いので2分割3分割にしますね。さて、この会議で話がぐんっと進みます。進む…んじゃないですかね?(完全見切り列車)
でも!アリーチェの正体が分かるのは少し先ですが、この会議で自警団メンバーとの話が進みます。乞うご期待!


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