今回は番外編なのですが…息抜きで書くつもりがだんだん熱がはいってしまいとんでもない難産になりましたw
アラウディside
僕はアラウディ。僕は誰のしたにもつく気は無いけど、プリーモとは利害が一致しているから仕方なく自警団の門外顧問として仕事をこなしている(名目上は)プリーモの雲の守護者だ。
ここ2、3日、前々から目をつけていた組織の幹部どもの取り引きを取り押さえるため、僕は毎夜のようにとある飲み屋へと出かけていた。
その飲み屋はたまに一般人もいるようだけど、簡単に言ってしまえば裏稼業の奴らが好んで使うような場所。
あちこちの悪党どもが好んで使うから、情報収集にはもってこいのこの場所だけど…その分、警戒心の高いやつが出入りしていて自警団の僕がここにいるとバレると一斉に囲まれてしまうだろうね。
…まぁ、囲まれたとしてもこの僕がそこいらの小悪党共に負けるはずがないのだけれど。
しかし、ここで暴れるとのちのち僕に面倒(書類)がまわってきてしまう。プリーモに暴れないでほしいと嘆願されたのにはイラッとしたけど、一通り追いかけ回したらせいせいしたしね。
そして今日もまた、夜になってからあの飲み屋へと足を運んだ。2人組の幹部たちがいつも座る席が良く見える位置に移動して、そのまま適当な飲み物を頼む。そして2人組の幹部たちがこの飲み屋に現れるのをじっと待っていた。
夜も深まり、飲み屋の客の酒もいい感じにまわったころ、2人組の幹部は現れた。待ちくたびれた僕はやっと来たことに思わずため息をついて、そして目を細めて気づかれないように観察を始める。
数分間見ていると、ふと僕は僕と同じくあの2人組を見つめる小さな視線に気づいた。入口近くに立っているその視線の主の小さな客は、見たところここみたいに大人しか来ないような場所は初めてのようだった。
それもそうだろうね。だってその小さな客はまだまだ幼く、成人してもいないのだから。
その時はその少女に特に興味も湧かなかった僕だけど、少しして少女の違和感に眉をひそめた。
…なぜ誰も彼女を注意しない?
彼女の周りのテーブルの席の者も、誰ひとりとして彼女に見向きもせずに話で盛り上がっている。幼い少女がこんな場所にいることを、誰も指摘することはなかった。
僕は彼女が幻覚かなにかなのだろうかと目を凝らして見るけれど、彼女にはなにも感じなかった。霧の炎の気配も、生きてる人間の気配も感じない。
「へぇ…」
僕は少し興味をもった。あの歳でまるで空気のように気配を消せるなんて真似、普通の少女では不可能だ。彼女は何者?
僕は席を立って、少女のもとへと近づいた。
少女はまだあの2人組を見つめているようで僕が近づいたのにも気づいていないようだった。声をかけようと口を開いた僕は、少女の次の言葉を聞いて固まってしまった。
「やっぱりここだった」
「…!」
あの2人組の幹部たちを見つめながら確かにそう言ったこの少女に、僕は目を細めた。
どういうこと?この少女は、あの2人組の幹部たちがここに来ることを知っていた?なぜ…この少女は、一体何者なんだ?
少女を警戒しながら、僕はすかさず口を挟んだ。
「なにが?」
「…?」
少女は僕の声に反応を示した。くるり、と身を翻して僕をしっかり見上げてくる。その瞳は不思議そうに揺らいでいて…僕を見上げたあと、しきりに辺りを見回していて僕がだれに話しかけたのかと不思議に思っているみたいだった。
僕が話しかけたのは君なんだけど…
少し経って、ようやく自分が話しかけられているのだと理解したらしい少女は少し恥ずかしそうに笑ったあと。
「…こんばんわ?」
となぜか疑問符つきで挨拶をしてきた、仕方ないから僕も適当に挨拶を返すと少女は僕が少女に話しかけているのを確信して安心したように息をついていた。
そして何かを考え込むと、今度は僕の顔をじろじろと見てきた。あまりにじろじろ見てくるから、僕が不快に思って眉をひそめると少女も僕の様子に気づいたらしい。じろじろと見るのを止めて気まずそうに口を開く。
「あ、えっと…」
まぁ、いいや。僕は少女が知ってる情報が得られれば十分だしね…とりあえず名前と歳を聞くと、少女は素直に答えた。
名前はアリーチェ、歳は10歳、ね…それにしても…
「10歳の子供が、なぜこんなところにいるの?」
「っ…」
目を細めて探るようにアリーチェと名乗った少女を見つめると、少女は眉をぴくりと動かしてそのまま黙ってしまった。
言えない理由があるのか、一切口を割らない少女に圧をかけてみるが…気丈にも少女は、僕の圧に屈することは無かった。
ふぅん、やっぱりこの少女、只者ではなさそうだね。
少女を怪しく思いながらも僕は、適当な理由で追求することをやめた。そのことに少女はわかりやすく安心していて、この少女は一般人なのか、裏稼業に雇われた使い捨ての子供なのかとそこまで考えて、僕は自分がまだ名乗っていないことに気がついた。
名乗らなくても困らないけど、この少女があの2人組の幹部たちについてのなんらかの情報を持っているなら一応名乗っておいて損は無いだろう。
「あぁ、僕はアラウディ…仕事であの2人組のやつらを見張ってる」
「え、ぁ、なるほど…?」
僕が2人組の幹部たちへ視線を向けて、少女も僕の仕事を察したのだろう不安そうに見上げてきた。
その視線を無視して…名乗ったことだし情報を頂こうか、と近くのカウンターへ少女を案内すると、少女は意外と素直についてきて意を決したように席につくと僕はその隣に腰掛けて適当に飲み物を頼んだ。
その際、少女にもなにかジュースかなにかを奢ろうとしたけれど丁寧に断られてしまった。僕が毒をいれるとでも思ったのだろうか?毒なんていれるわけないけど、やっぱり警戒されているのだろう。僕は自分の分の飲み物だけ頼んで、話を切り出した。
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結果として、少女はあの2人組の幹部たちの会話を偶然聞いてしまったただの一般人だった。それでも、今日が例の取り引きの日らしいという重要な情報を得ることが出来たので、収穫はあったと言えるだろう。
少女の気配の件は気になるけれど、それより優先すべきは奴らの取り引きだ。少女に注意を促したあと奴らの近くへと行こうとした僕を、何を思ったのか少女は袖を掴んで引き止めた。
「お兄さん、その、ここってたくさんの人が来るんだよね?なら、ここなら…人の情報とか、手にはいったり、する?」
つまらない用事だったら無理やり振り払っていこうと思っていた僕は少女のその問いに足を止めた
「…君は人を探しているの?」
「えっ、ぁ、いや………」
振り返って短くそう尋ねると、少女は少し迷ったあと、覚悟を決めたようにうなづいた。
「うん、そうだよ。私はある人のことが知りたいの」
そう言った少女は、濁りのない綺麗な瞳で僕を貫いた。真っ直ぐな視線と力強い決意がこもった声に僕は少女の問いにらしくもなく素直に肯定した。
そして、この少女がどこかのお人好しな自警団の長と重ねて見えたことに腑に落ちてため息をついた。こんな理由で納得するなんてごめんだけど、納得してしまったのも事実だ。
妙な気持ちになった僕は、そっと息をついて気を引き締めると再度少女に背中を見せて、仕事に戻った。
後日、少女のことが気になって少女を調べてみるも、この街にいるはずのアリーチェという10歳の少女は、既に他界している…という報告が僕のもとへ届き、先日一緒にいた少女を思い出して僕は唖然とした面持ちでその報告書を眺めた。
アラウディと主人公との勘違いが書ければと思いましたが…どうだったでしょうかwちなみに気配がまったく感じなかったのは主人公が幽霊だったからです(小ネタ)
ほんとうは泣き虫な避雷針くんの話も書こうとしたのですが、アラウディだけで力尽きまして…気分がのればかこうかな、と思います!
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