言い訳するとバイトが忙しかったんです!はい、ふざけるなですよね!ごめんなさいぃ…(震え声)
そんなこんなでまたブロンドのツンツンヘアーが出てきます…どうぞ!
私ことアリーチェは幽霊である。
だから、眠ることはない。
一日中、休みのない生活を送る私には考える時間とひとりになる時間はありすぎるほどにあった。そんな時間をすごして、思うことはいつも同じ。
私は、なんのために身体が亡くなってまでこの世に居座り続けているのだろう?
いくら考えても記憶を思い出すことはないし、わからない。
その答えを知るために私は明日も明後日も明明後日も、この世を練り歩いて答えを探さなくちゃいけないような気がした。
気が遠くなりそうな年月の中、私は幽霊としてずっと存在し続けるのかもしれない、なんて…眠らない夜に私は、月でさえ昼は寝てるのにな、とそんな言葉で誤魔化しながら、街を彷徨い歩く…明日はどこへ行こうかな、と能天気なことを考えたりして。
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最近はとてもいい天気が続いている。曇りがちなイタリアだけど、晴れの日も少なくない。今日の天気も晴れ、青々とした空が広がる午前中…することもないのでぽけーっと空を眺めていた私は、久しぶりに見たブロンドのツンツンヘアーに目を見開いた。
「あれ、向こうから歩いてくるのって…ジョット?」
久しぶりに見たジョットの姿に首をこてりと傾げる。ジョットの足は迷わずまっすぐこっちに進んでいて…私に用でもあるのだろうか?
「アリーチェ、久しぶりだな」
「うん…久しぶり」
やっぱり気さくに手を挙げて声をかけてくるジョットに私も挨拶を返す。ジョットに会ったのって…確か、前に昼食に誘われた時以来だったから、うん、確かに…とても久しぶりだ。
「この前はすまなかった。あの後、部下に案内させるように言って行かせたのだが既に帰った後だったと報告されてな…自警団からは1人で帰ったのか?迷わなかったか?」
「あ〜……うん、大丈夫だったよ。ごめんね、居ちゃ悪いかなって思って…」
なるほど、そんな感じになってたんだ…確かにジョットの言った感じの人は来てくれたけど、私が見えなかったんだよね…それで、帰ったと思われたんだ。
申し訳なさそうに謝るジョットに、気にしないで、と言って笑うとジョットはもう一度謝ると、また何かを思いついたようにうなづいた。
あ、なんかデジャヴ。
「昼食にはまだ早いしな…アリーチェ、もし暇だったらまた付き合ってくれないか?」
「え?うん、まぁ暇だけど…」
また溜まった仕事の愚痴を聞くのかと思ってベンチを探すと、ジョットは私の考えをよんだらしい、違うぞ、と言って街の広場のほうを指さした。
「今日は俺の久しぶりの休みでな、少しリフレッシュに付き合ってくれないか?」
「リフレッシュ?」
「あぁ、簡単に言うなら散歩だな」
「散歩…」
なんだかおかしくってクスリと笑うと、ジョットは私の笑みを肯定と受け取ったらしい。行くぞ、と一言言うと、私の腕を掴んで広場の方へとずいずいと進んでいく。
「え、ちょっ…」
戸惑ってるフリして、ジョットに掴まれた腕を見て安心している私がいた。
…私のことが見えて、触れる人がいる。まだこの世に私という存在がいることを実感して…なんのためにこの世にいるのか、なんて考えなくてもいい気がした。
だから少し、ほんの少しだけジョットに付き合ってもいいかなって思ってしまったのだ。
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ジョットに手を引かれて連れていかれた広場は、相変わらず賑わっていた。前に私が行っていた定期市もこの広場でやっているのだ。人が来るのは当たり前だろう。
「ジョット…ここで、散歩するの?」
「ん?あぁ、たまにはいいだろう。街の人々の活気に溢れた姿を見ると、自警団の仕事を頑張ろうと思えるんだ」
だからたまに、疲れた時やリフレッシュしたい時は街に来るのだ、とジョットは言った。そしてジョットと手を繋いだまま、広場を散策しているとなにやら遠目で賑わっているとわかるような1角を見つけた。
「アリーチェ、向こうでちょっとした大道芸をやっている者がいるらしい」
「え?行くの?」
「せっかく来たんだ。見に行ってみよう」
ジョットも気になっていたようで、どこから聞いたのかその話を私に伝えると強引にも私は返事をしていないというのにぐいぐいと私を引っ張ってその場所に近寄った。
「ここなら見えるぞ、アリーチェ」
「…あ、ほんとだ」
「演目は…おぉ、玉乗りってところだな」
「玉乗りしながらジャグリングしてる!すごいっ」
人と人との隙間に上手く体を滑らせて、ジョットと前の方へと進んでいくと見えたのは赤色の大玉に乗ってジャグリングするピエロの姿。落ちてしまいそうな危うさはなくて、可笑しくジャグリングを続けるピエロに思わず拍手を贈る。
「すごいねっ、ジョット!」
「そうだな」
ピエロを見ながら手をたたいていた私は、ジョットにもこの気持ちを共有したくて声をかけると、とうのジョットは私を微笑ましげに眺めていたところだった。
「な、なに?」
「いや、アリーチェの子供らしいところが見えて嬉しく思ったんだ」
「ふふっ、なにそれ」
ジョットの言うことがおかしくって、くつくつと笑うとジョットもそんな私に釣られたように笑みを浮かべた。
笑いあって、次はどこへ行くかと話をする。
その後はまぁ適当に…出店を冷やかしたり(店の人に私が見えないからジョットと一緒に出店をまわってただけ)他の大道芸を見たり…と、楽しく充実した時間を過ごした。
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けっこう広場をまわって色んなものを見た私たちは、少し休もうかと、広場の端っこにある木陰の下のベンチに2人で腰掛けた。
賑やかな広場の隅っこで私は足をパタパタと揺らしながら隣のジョットの顔を覗くと、私の隣に座るジョットは盛り上がる街の人々の笑顔を見て、とても優しげな微笑みを浮かべていた。
自警団として、守るべき存在である街の人々の笑顔はジョットたちにとってとても大切なものなんだろうな…
「ジョットは、すごいね」
「……そうか?」
心の中で呟いたのに、どうやら口に出てたらしい。いきなりの私の言葉にジョットは不思議そうな顔をしていた。その顔を見てクスリと笑うと私はうなづいて言葉を続ける。
「自警団として、街の人たちを守ってる。すごいと思うし、偉いと思うし、かっこいいとも思うよ」
幽霊の私には出来るはずないことをやってのけるジョットが、羨ましいと感じた。そして、私が生きていればジョットともっと仲良くなれたのかもしれない、なんてありもしない考えを振り払って、私は下を向いてしまう。
「私は、そんなのできないから…」
「アリーチェは」
「…?」
ジョットは私の頭に手を置いて口を開いた。そしてくしゃくしゃとちょっと雑に頭をなで始める。
「アリーチェは、大事な人とかいないのか?」
「……どうだろう」
「両親や、兄弟や親友や友達…たくさんいるだろう?」
大事な人なんて、私があの墓場にいた時にはもうすっかり忘れてしまった。私に両親がいたのかも、兄弟は何人だったのかも、親友がいたのかも、ましてや友達なんて…私はなにも覚えてない。
「わからない」
ひどく、震えた声がでてしまった。気まずくてジョットの手を払って深呼吸をしてから、今度はちゃんとした声音で言った。
「わからないよ……私に、そんなのいたのかな」
チラリとジョットの顔を覗くと、とても悲痛な顔をしていた。
そんな顔しないでほしいなぁ…なんだか、私が可哀想になっちゃうじゃないか。
「……アリーチェが、自分について何も言わないことを追求するべきではないのは分かる」
ジョットは私が払った手を握りしめて言った。
「でも、俺は友が困っているなら力を貸すのが友人としての務めだと思っている。アリーチェ、俺では力不足なのかもしれないが…お前のおかげであの時、気分が楽になったんだ。だから…もしお前が困っているならば、俺たち自警団を頼ってくれないか?」
「…ジョット」
「1人で悩むな。お前はまだ子供なんだから、俺たち大人に助けを求めてもいいんだ」
ジョットの言葉に揺らいだ自分がいた。思わず自分が幽霊で記憶がないことを言葉にしそうになった。
でも、それはダメなんだ。
「…うん、ありがとうジョット。でも、私は大丈夫だよ」
「お前がそういうのなら、俺は何も言わない…が、ほんとうに困った時は言ってくれ。力になろう」
「うん。心配してくれて、ありがとう」
ジョットはとても優しいから、私のワガママを呑んでしまうかもしれない。既に死んだ人間について、細かく調べてほしい…なんて、そんな事言ったらさすがのジョットだって困ってしまうだろう。
それが、私は嫌だ。
そんな気持ちを誤魔化してにこりと笑うとジョットも優しい笑みを返してくれる。
「ねぇ、ジョット」
「ん?」
「次はあそこに行ってみよう」
ベンチから勢いよく立ち上がって広場を指さすとジョットも仕方なさそうに笑って私についてきてくれた。
そういえば、と私はふと思い出す。
さっき、ジョットは私のことを『友』と言っていた気がする。
誰かと友達になったのなんか、幽霊になって初めてのことだ。まぁ…生前、私に友達がいたかは覚えてないからなんとも言えないけど。
でも、そっかぁ…『友』かぁ。
「アリーチェ?行かないのか?」
突然立ち止まった私にジョットが不思議そうな顔をして尋ねる。
「ううん、行こうジョット!」
私は『友』と言ってくれた彼に今度こそ、心から笑ってジョットの手を引いて歩き出した。
はい!さすがのジョットもまだ幽霊だとは気づいてませんよ!ってかジョット…超直感はどこにやったの…?なにっ!?売りにだした…!?なら仕方ない!()
はい、ジョットの超直感が冴えてくれることを願って!
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