Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

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評価を貰い見てみたら9?
ああ、期待されているようで辛いなぁ……
でも、頑張ります!



ニヴィアンという男

 

 

 

「して、俺の部屋で何故ケーキを食べているのかアーキマン」

 

 

 額に手を当てながらため息をつく彼を見て、僕はショートケーキを食べる手を止めて曖昧な表情で彼を見る。

 

「…………サボるのなら俺の部屋じゃなく別の部屋でしてくれ。まだ全員来ていないだろう?なら、誰も使ってない余り部屋がある。そこに行け」

 

「ははは、いいじゃないかランシア。ボクと君の仲じゃないか」

 

 そんなボクの言葉に彼は、ランシアは何処と無くイラついた表情で僕に冷ややかな視線を投げかけてくる。僕はそれを誤魔化すようにケーキを食べるのを再開する。

 そんな僕を見て彼は溜め息をついて二人分の紅茶をいれる。まったく、なんやかんや言いながらもそういう事をしてくれる辺り彼の面倒見の良さが感じられる。

 

「もうすぐプロジェクトが始まるんだ。俺もフェイトの調整で忙しくなる、こっちに戻るのもきっと片手で数えられる程度になるだろう……だから、サボるんなら俺の部屋じゃなくて別の空いてる部屋でしてくれ」

 

「いやー、そう言われてもね。ほら、君の部屋って時々マリーやスタッフ、ごく稀にレフが訪ねて来るぐらいだろう?サボるには丁度いいのさ」

 

「サボるんなら、誰か来る可能性がある部屋より揃うまで誰も来ない空いてる部屋にしろ……!」

 

 僕の言葉に頭を抱えるランシア。彼はやや言葉が強いが決して彼が僕の事を煩わしいと思っているわけではなく、きっと僕がサボっている時にマリーと鉢合わせした時の事を考えて言ってくれているんだろう、……そう思っておこう。流石に友人にウザがられている訳じゃないはずだから……うん。

 

「正直に言うとだな、呑気にサボってるお前を見ると軽くイラッとするのは確かだ」

 

「今、ナチュラルに心読んだ!?」

 

「まさか、降霊科でなら上から数えて三本指で足りる俺だとしても流石に人の心は読めんよ。なにより、それは俺の専門外だ」

 

「え、いまの自慢?」

 

「お前からすれば団栗の背比べみたいなものだが、な」

 

 紅茶の入ったカップを僕に差し出した彼はデスクに腰掛け、紅茶を飲みながら自嘲する様に言う。

 そう、僕が彼の部屋に入り浸る理由の一つ。

 彼は僕の正体を、目的を知っている。

 知っている上で彼は僕以外に何も言わなかった。

 正体、それはあの時あの場にいたのだから知っているのはわかる。だが、目的を何故知っているのかはわからない。だけれども、僕は彼は大丈夫だ、と直感できる。

 嘗ての様な力を失いはしたけれども、この信じるという自分を疑うという事もするけれども、何故か酷く納得が出来るのだ。

 彼は、ランシア・ニヴィアンは信じられる…………筈だ。

 

「…………さて、食べ終わったな?」

 

「え?うん、食べ終わったよ?」

 

「そうか」

 

「え」

 

 彼は食べ終わった皿を僕の手から取ってデスクに置き、僕の襟首を掴んだ。

 何故に?

 

「ちょうどオルガマリーから連絡が来た、お前を連れてこい、だとよ」

 

「ははは……なあ、ランシア。ボク達友人だよね?」

 

「残念だが、俺まで説教食らいたくないんでね。それにこの程度は聞いてやらねば面倒だ」

 

 何処と無く面倒くさそうな表情でそう言って彼は僕を引き摺り始めた。

 そう、向かうは所長室。すなわちサボっていた僕へ雷を落とそうとしている我らがマリーの下に。

 

「はなせぇぇぇ!!ボクはサボりながらマギ☆マリのブログを見るんだぁぁい!!」

 

「そんなにマギ☆マリが好きなら中の人に会わせてやろうか!」

 

「中の人なんていない!」

 

 

 

 まあ、結果的に言えば僕の抵抗虚しく僕は雷を落とされてしまった…………辛い。

 マギ☆マリに中の人なんていない。いいね?

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 彼、ランシア・ニヴィアンは人理継続保障機関フィニス・カルデア、通称カルデアの前所長マリスビリー・アニムスフィアにより招聘された魔術師兼技術者だ。

 時計塔には属していないがこと降霊に関しては時計塔の降霊科の魔術師と比べて上から三本指に入るという実力者だという触れ込みでカルデアに入り、既にその実力はカルデアスタッフらにとって本物だと認識され、彼の人柄……やや強めな言葉使いと態度だがそこには相手を思いやっているものが見え隠れし、役職や身分関係無く接するような人柄からスタッフ全体、特にメインスタッフではなくサブスタッフから信頼を置かれている。

 

 そんな彼の担当するのはカルデアの重要施設の一つである守護英霊召喚システム・フェイト。この発明はカルデアの召喚した第二号英霊と、前所長マリスビリー・アニムスフィアと同じく十年前の極東で開催された聖杯戦争に参加した前所長の同盟者である彼、ランシア・ニヴィアンの協力によりようやく実証に至ったもので、この事もカルデアスタッフからその実力を買われている一因となっている。

 

「ミスタ!ミスタ・ニヴィアン!」

 

「ん?どうした」

 

「実はフェイトに小さなバグがあるようで……」

 

「わかった。すぐ行こう」

 

 現所長オルガマリー・アニムスフィアとの衝突からカルデアの運営から離れフェイトのみに仕事を割り当てられて久しいが、彼は一切の不満を抱かなかった。

 オルガマリーによる不当な文句を投げかけられても、カルデアの運営に関わる事が出来なくなっても彼はランシア・ニヴィアンは何も文句を言わなかった。

 ある時、彼の部下ではないが彼を慕うスタッフが「何も不満に思わないのか?」と問いかけた事があった。それに対し彼はぎこちない笑みで一言「仕事だからな」ただ、そう答えたという。

 その事を知った周りのスタッフらはそんな彼の精神に感銘を受けた、らしいが……実際の所単純に彼の経験上、不満なんて持っていたらやってられなくなるから、という少しズレた考えの下で、感銘を受けるほどのものでは無いと彼は思っているようなのだが……何事も知らないほうがいい

 

 

 

「ん?…………キャスパリーグか」

 

「フォーウ」

 

 部下に伝えられた作業を終え、休憩スペースで一息をついていたランシアの下に一匹の白い小動物が訪れていた。

 狐と羊を足して割ったような外見のキャスパリーグと呼ばれた小動物は、ランシアの膝へと飛び乗りそのまま猫のように丸くなる。

 

「ふむ……お前はいつも俺の膝で丸くなるがそんなに良いものなのか?…………自慢、とは言えないが俺の膝は女子供に好かれるようなものでは無いと思うのだが」

 

「フォウフォーウ、フォウ(ガレスやライオネルとか時々騎士王に膝枕をせがまれていた癖に何を言ってるんだコイツ)」

 

「…………キャスパリーグ。もうすぐレイシフトが始まる。その時は俺じゃなくマシュ、いやキリエライトについていてやってくれ」

 

「フォーウ?」

 

 何処と無く憂いを感じさせる表情と言葉のランシアに、キャスパリーグは顔を上げ首を傾げる。

 

「彼女は、あの子に似て純粋無垢だ。俺のように穢れてはいない。彼女の傍ならお前もその理を肥え太らせるという事も無いだろう。…………ああ、俺のような男に似なくて本当によかったよ」

 

「………………フォフォ、フォーウ(駄目だ。自虐思い込み激しい……早く何とかしなきゃ)」

 

 憂いを感じさせる表情の男とそれに擦り寄る美しい小動物、見る者が見ればきっと一枚の絵に感じさせるような光景だが、この一人と一匹は全くもって考えが噛み合っていなかった。

 といってもランシアが悪いのだが。

 嘗ての主君やその周りからの評価など自分の事だというのに過小評価してそう思い込み、きちんと話し合えばいいのに裏切り者扱いされれば「ああ、やっぱりな」とそれを撤回させる様な動きをせず、「目指すは二次小説で時おり見かけるマトモなランスロット」などと意気込んでいた結果自身を過小評価しすぎて一言足りないような某施しの英雄よりも酷い湖の騎士になってしまった彼が悪いのだ。

 無論、それを仮に誰かに伝えられたとしても彼は「ああ、やっぱりな」と自身を変えないのかもしれないが。

 

「…………さて、俺はもう行く。きっと当日までフェイトの近くで過ごすだろう」

 

「フォーウ」

 

 膝の上のキャスパリーグをランシアは退かして立ち上がりそのまま休憩スペースから立ち去っていく。だが、その動きはまるで何かから逃げるようで

 

 

「フォウさん?こんなところにいたんですか」

 

 ちょうど入れ違いの様に休憩スペースに一人の少女が訪れた。

 髪で片目が隠れている眼鏡を掛けた少女。

 どうやら、キャスパリーグを探していた様で、ランシアの膝の上から退かされベンチで丸くなっていたキャスパリーグを抱き上げその頭を撫でる。

 

「フォーウ」

 

「……?どうしたんですかフォウさん?」

 

「フォフォーウ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ランシア・ニヴィアン

 十年前、前所長マリスビリー・アニムスフィアの同盟者として聖杯戦争に参加していた。

 聖杯戦争終了から一年後、マリスビリー・アニムスフィアの助手ロマニ・アーキマンと共にカルデアに招聘。

 高い降霊の魔術力量と、高次霊体との融合を行い且つ聖杯戦争にて英霊に触れていた事から守護英霊召喚システム・フェイトに携わった。

 

 

 曰く、清らかな湖、その騎士たるこの身はあの日穢れ堕ちた

 曰く、この身は罪、もはやどれだけの勲功があっても許されまい

 曰く、だがしかし、これ以上どれほど穢れようとも、人理修復だけはしてみせよう。

 

 

 穢れ堕ちた、と嗤う湖の騎士と純潔無垢な盾の騎士。

 罪を抱く父親と無垢な娘。

 

 父親と娘・息子を再び繋ぐ人類最後のマスターが来るまであと僅か。

 

 




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溜めた石で20連……来たのは頼光さん…………違うんや……オルタが来てくれれば儂はそれだけで……
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