Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
筆が乗った!……別に構いやしないのですが……クオリティが下がってそうで怖いです
「────え?」
「ガアァァァッ!!??」
アサシンが短剣を握っていた左腕から大量の血を噴き出しながら叫ぶ。
それは唐突な事であった為、いま殺される寸前であった立香ですら唖然としていた。
予兆は無かった。
いや、立香は殺される寸前に誰かの声が聞こえた気がしたがあまりに突然の事で動きが停止していた。
「……ハッ!マシュ!!」
「……は、はいっ!!」
予想外の出来事で生まれた大きなチャンスを逃さんとばかりに硬直から戻ったオルガマリーはマシュに指示を飛ばす。
「はあぁっ!!」
盾を大きく振りかぶり、アサシンの頭部を殴りつける。
「ゴッ!?」
「……あ、マシュ!」
マシュがアサシンの頭部を殴打した事でアサシンから出た苦悶の声で立香は漸く意識を取り戻しすぐさまオルガマリーの元へ走っていく。
『よしっ!マシュそのままトドメだ!』
「はいっ!!」
苦悶で動けないアサシンの顎目掛けてマシュはその盾をかちあげる。
これによりアサシンはそのまま吹き飛んでいき
「グ────オノレ 聖杯ヲ 目前トシテ」
『アサシンの消滅を確認!初サーヴァント戦は勝利だ!』
「だ、大丈夫でしたか先輩ッ!!」
「う、うん……」
アサシンは消滅し、初サーヴァント戦の勝利に喜ぶロマニ、死ぬ寸前であった立香の身を確認するマシュ……だが
「…………いったい何者かしら……ランシア?いいえ、いくらアレの魔術が普通よりズレていてもサーヴァントにアレほどの傷をつけることは不可能でしょうし……サーヴァントかしら、仮にサーヴァントだとしたらどうしてわざわざあんな事を」
オルガマリーはその場で自分たちを助けた何者かについて思案する。
この場にいない魔術師が脳裏を過ぎるものの有り得ないと断じて他の可能性を考えていく。
「……所長?」
「……え、あ、何かしら?」
「いえ、その……心配をおかけしてすいませんでした」
オルガマリーに声をかけた立香はオルガマリーに頭を下げる。自身に力がなかったからあのような殺されるかもしれない状況に陥った事を謝罪する。
オルガマリーはそれを見て穏やかな表情になり
「別にイイわよ。怪我、ないんでしょ?」
「はい、怪我はしなかったです」
「そう、ならいいわ。でも囮になろうなんて考えはやめなさい。貴女は仮にもマシュのマスターなの……サーヴァントを信じなさい」
「……はい!」
穏やかな表情で立香を許し、マシュを呼ぶ。
調査自体はまだまだ進んでいない。
アサシンの左腕に深傷を負わせた存在が何なのかは未だ分からないがオルガマリーは調査を続行させる事を決めた。
未だランシアは現れず。
────────────
「………………」
「………………」
「………………」
「………………ふむ、マスターは我が友に似ていますね」
「似ているんじゃなくて本人だ」
「………………」
「………………」
「…………なるほど、どのような事情かはわかりませんが貴方が私のマスターなのですね友よ」
「ああ、卿が来たのは若干ながら不満はあるが、縁召喚による戦力としては最優と言える」
「おや、ガウェイン卿を差し置き私を最優と呼ぶとは…………いえ、失言でしたね。どうか容赦を」
「気にはしてない。諸事情でな、その事については本人と会ったときに解決する予定だ」
「そうですか、それは友として喜ばしい」
ランシアにより呼ばれた赤髪の騎士姿の英霊はしばしランシアと見つめ合い沈黙を保っていたが己のマスターを見て一言零すとランシアに訂正され、再び沈黙したが無かったことにするかのように話し始めた。
二人の間にはとても親しげな雰囲気が流れる。
「して、友よ。此度の召喚は如何様な理由なのでしょうか」
「…………ああ、そうか。カルデアでも現地の聖杯またはカウンターでもないからその辺りの知識は無いのか」
「ええ、残念ながら」
周囲は地獄の様に燃え上がっているというのにこの赤髪の騎士とランシアは変わらず談笑する。
場違い感はあれどもこの二人にとってこの特異点に存在するサーヴァント及びエネミーに敵はなく、この談笑はその自信の表れなのだろう。
「では……この特異点Fにて異常事態が起きている。俺と卿はこの特異点解決までの間だけだがマスターとサーヴァントの関係となるわけだが…………何か不満はあるか?」
「いえ、不満はありません。強いて言うなら────何やら隠していますね?ランスロット」
「…………勘が鋭いな」
ランシアの説明を受ける中不満の有無を問われた赤髪の騎士はその細目を開きその鋭い視線をランシアに向ける。
そんな赤髪の騎士の視線に肩をすくませ、笑みを浮かべる。
「そうだな、情報源は言わんが……この特異点には俺と卿に因縁のある者がいる」
「…………なる、ほど……ですが構いません。今さら顔を背ける事など出来ますまい」
「…………そうか」
ランシアの言葉から何となく察したのか赤髪の騎士は再び目を細め頷く。
しばし沈黙が流れ…………
「さて、動くか。実はいま所属している組織の人間が離れた所にいるんだが……経験を積ませたい。合流するのは時間を置きたい」
「……ですが、経験を積ませたいということは未だ未熟……つまり」
「対応出来ない部分を影ながら支える」
「…………卿がそこまでするとはいったい……いえ、深くは聞きません。お任せをマスター」
赤髪の騎士の言葉にランシアは若干表情を歪ませた。
それに気づき、その理由を察したのか赤髪の騎士は笑みを浮かべる。
そして、まるでランシアを揶揄う様な口調で喋り始め
「おや、どうしましたマスター」
「…………」
「どうやらマスターは虫の居所が悪い様ですね……大丈夫ですかマスター」
額に青筋を浮かべつつランシアは目の前の赤髪の騎士を睨む。
「…………トリスタン。揶揄うな」
「……ええ、少し調子に乗りました」
ランシアは赤髪の騎士……トリスタンの揶揄いを強制的に終わらせ、ランシアはトリスタンを連れてその場から離れる。その際に魔術を用いてトリスタンにも認識阻害を付与させるのを忘れない。
「……さて、彼女らですか…………なるほど、そういうわけですね」
ランシアの下を一時離れたトリスタンはマシュらがアサシンと戦っている場所からやや距離を置いた場所で待機し見ていた。
シャドウといえども元々の敏捷のステータスが高いアサシンにサーヴァントになったばかりのマシュと魔術師たちが翻弄される姿を見てトリスタンは何故ランシア、ランスロットが彼女らに目をかけているのかを理解し、弓に張られた数本の弦のうち一本に指をかける。
そして、アサシンがマシュとオルガマリーから数歩離れた所にいた立香の背後に現れその短剣を握った左腕を振るいあげ
「では────御手を拝借」
弦にかけていた指を弾く。
音階を矢として放つというアーチャーというクラスにおいて一際異彩を放つトリスタンの矢はそのままアサシンへと迫り
「ガアァァァッ!!??」
その左腕を刻んだ。
「さて、後は彼女でも何とかなるでしょう………」
トリスタンはもう一度マシュを見てランスロットの下へ戻っていった。
「それにしてもあのシャドウサーヴァント…………何処かで見た記憶がありますね。そう、例えば………………なるほど、彼なのですか。ああ、私は悲しい、我が非道を止めた技に生きた翁があのような姿になった事に私はこの悲しみを隠せない」
トリスタンの状態は霊基再臨二段階目です