Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
文もだが右腕が。
やはり、ガチ勢とのバトミントン試合は駄目だったか
邪竜百年戦争オルレアン:プロローグ
これは夢だろう。
少なくとも夢だと理解できる。
私はカルデアのマイルームで寝ていた筈だ。なのに、何故こんな所にいるのだろうか。
そこは美しい街だった。
現代の街ではなくファンタジーや中世で出てくるような城下街。
ここは何処だろうか。
ここがいったい何処なのか、そう考えていたらいつの間にかに場所は変わっていた。
何処かの城の中。きっと、先ほどの街から見えた美しい白亜の城の中だろう。
ここは恐らく城の中にある中庭の一角かもしれない。空は暗く、夜の帳が落ちていた。
そんな時に丁度中庭に一組の男女がいた。誰だろうか。私は影に隠れながらその男女に近づいた。
『……この様な時間に何でしょうか』
『おお……この様な時間にこの様な場所にお呼びした無礼をお許しください王妃』
そこにいたのはやはり、現代の格好ではない男女。
女の人はとても綺麗な姿で清らかなドレスに身を包んだ美しい女性。
男の人は白い鎧に身を包んだ何処と無くランスロットさんに似た風貌の短い紫色の髪の男性。
『王妃……貴女を私は救いたい』
『……何を言っているのですか卿は』
『貴女は知っているでしょう。我らが王は男性ではなく女性だと』
『…………ッ』
何を話しているのかはあまり聞き取れないが男の人の言葉に女の人が苦い顔をしたのは見て取れる。
その手は強く握られている。
『女性が男性と偽る女性に嫁ぐなど苦痛でしかない筈だ。どうか、どうか私に貴女を救わせてほしいのです』
『…………』
なんだか、男の人は憂いている表情で何か語っているけれど、女の人は俯いて男の人からは見えないけれど口許から血が出てきてるぐらい噛み締めてる。
男の人は女の人の為を思っているのかもしれない……だけれど、きっと女の人にとって男の人の言葉はとても我慢ならないのだろう。
『貴女を救えるのは私だけ……ランスロットでもガウェインでもアグラヴェインでも我が王でもなく、私だけです』
『…………ッ!』
そして、遂にその時が来たのだろう。
女の人は顔を上げて
『卿』
『はい、王ひ――』
――パァンッ
男の人の頬を張った。音はいい具合に響いた、見ていて気持ちのいいぐらいに。
頬を張られた男の人は何が何だか理解出来ていない顔で女の人を見る。
『恥を知りなさい! 誇り高きキャメロットの騎士でありながら王を軽んずその言動、そして誇りある円卓の騎士を侮辱するその言葉……貴方のような騎士がいる事はキャメロットの恥以外の何物でもありません!』
そう言って女性はその場を後にした。
残ったのは男の人だけ。
男の人は張られた頬に手を当ててしばし呆然としていた…………。
また変わった。
今度は何処かの一室。
そこには何人もの騎士たちがいた。
そして、先ほどの男の人も
『なあ、ランスロット卿と王妃様のアレどう思うよ?』
『……ふむ、アストラット王とその子である我らキャメロットの騎士の一人ラヴェイン卿による不義捏造未遂か……アレは未遂でよかったよ』
『だな。捏造だとしてもそんなのが広まったら国が割れたな……何せランスロット卿は円卓の中でも王をも越える最強の騎士だ。それにブリテンの諸侯や民草からも人気がある』
『清らかな王妃と言えども、もしあのランスロット卿に迫られたら……なぁ?』
『なあ、卿はどう思うよ?』
何人かの騎士が何かの話題について話していて、唐突に壁際で何かを飲んでるあの男の人に声をかけると男の人は不機嫌そうな顔で語り出す。
『……貴様らアレが捏造未遂だと思っているのか?』
『はぁ?』
『……火がないところには煙は立たんだろ?アレは捏造しようとしたんじゃない、真実を晒そうとしたのさ』
『おい、何言ってんだ』
『ランスロットと王妃の不義こそが真実。そう、私は確信している』
『…………』
『…………』
『……お前、酔いすぎじゃねえのか?』
男の人の勝ち誇った様な表情に周りの騎士たちは首を振り呆れた様な視線を、呆れたような言葉を投げかけて再び最初のように話し始めた。
そして私の視界は暗転し
――何故私は
――何故私は
――何故私はそんな事を考えたのだろう
――どうして私はあの人を疑ったのだろう
――王妃に拒絶された腹いせか?
────私ではなくあの人が王妃の相手として流布されようとしていたからか?
────私はどうして
────貴方の裏切りという有り得ない報を聞いて、やはり、と考えたのだろうか
────心の中でそんな事は有り得ないと信じていたのに
────何故私は……貴方が王を裏切ったなどと信じたのだろうか
────赦すな
────赦すな
────赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな赦すな
どうか……こんな憐れな畜生を赦してくれるな
兄上
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「フォウ? ……キュ、フウゥゥ?」
「……なんだろう……変な夢を見た気がする」
夢の内容はイマイチ覚えてないけど変な夢を見たのは確かだ。枕元のフォウを撫でて私はベッドから出て制服に着替える。
備え付けの冷蔵庫に入っていたランスロットさんお手製のサンドイッチを食べながら私は髪型をセットしているとフォウくんがいきなりドアの方に走り出した。
「ミュー、フォーウ! フォフォーウ!!」
「おはようございます、先輩。そろそろブリーフィングのじか――きゃっ!?」
「あ」
ちょうど良くドアが開きマシュが私に挨拶しながら声をかけて、飛び上がったフォウくんによる肉球パンチを額に食らった。
アレ、痛いんだろうかそれともやわらかいんだろうか?少し気になる。
「キュウゥゥゥ……」
「ごめんなさいフォウさん、避けられませんでした…………でも、朝から元気そうで嬉しいです。
先輩も昨夜はよく眠れましたか?」
「うーん、まあ眠れたかな?」
攻撃を受けた側なのに攻撃してきたフォウくんに謝るマシュに私は少し笑いながら、マシュに返事をする。変な夢を見たのは確かだが、よく眠れたのも事実だ。
そんな私の返答にマシュは笑顔になる。
「それはよかった。よく眠るのも才能の一つといいます。目が覚めたところでブリーフィングの時間です。皆さんも集まってますよ」
「うん、わかった」
残ったサンドイッチを口に詰めて私はマシュとフォウくんと共にマイルームを後にした。
管制室に入ると待っていたのはドクター。
いつも通りのヘタレな笑顔で私を迎えてくれた。
「おはよう、立香ちゃん。よく眠れたかな?」
「はい」
「おっはようマスター!」
「うん、アストルフォもおはよう」
いつの間に私の背後にいたのか分からないアストルフォにも挨拶を返してドクターの方へと進む。入口からは見えなかったがランスロットさんやアルトリアさんも既に待っていた。
「…………立香も来たようだロマン」
「うん、それではブリーフィングを始めようかな。まずは……そうだね。君たちにやってもらう事を改めて説明しよう」
私に目線をやったランスロットさんはドクターを促して、ドクターは説明を始めた。
「一つ目は、特異点の調査及び修正。
その時代における人類の決定的ターニングポイント」
「君たちはその時代に飛び、それが何であるかを調査・解明して、これの修正をしなくてはならない。さもなければ2017年は訪れない、2016年のまま人類は破滅するだけだ」
「以上が第一の目的。これからの作戦の基本大原則になる。第二の目的は────」
「聖杯の探索だ」
「……ランスロット」
話を遮られ、言おうとしていたことを取られたドクターはランスロットさんに咎めるような視線を向けるがランスロットさんは肩を竦めるだけで悪気など無いような態度で話し始める。
「すまんな。……推測ではあるが、特異点発生には聖杯が絡んでいる」
「聖杯とは願いを叶える魔導器の一種でな、円卓の探した聖杯とは違うが……膨大な魔力を宿している」
「レフは恐らく聖杯またはそれに準ずる何かを手に入れ利用している。時間旅行やら歴史改変をする以上そういったものでなければ不可能に近い」
「というわけだから、特異点調査の過程で必ず聖杯もしくはそれに準ずる何かの情報は得れるはずだ。元の歴史に戻したところでそこに聖杯があっては元の木阿弥だ」
「故、聖杯の破壊もしくは回収をする必要があるわけだ」
確かに原因であるその時代に無いものがあったら大変だ。それが聖杯何ていうやばい代物なら尚更……
「……以上二点がこの作戦の主目的だ。わかったかな?」
「はい、分かりました」
話を取られていたからか何処と無く不機嫌そうなドクターの口調に私は苦笑いしながら返事をする。
「よろしい……それじゃあ他の事は現地でランスロットから聞いてくれ」
「おいおい、待ちなよロマニ。私は?私の自己紹介は?」
「貴様の自己紹介はもうしただろ」
いきなり現れたというか多分さっきからいたんだろうダ・ヴィンチちゃんが自己紹介をドクターに要求し、ランスロットさんに却下される。
何度か見てきたけど、ランスロットさんはダ・ヴィンチちゃんが嫌いなのだろうか?少なくとも毎回ダ・ヴィンチちゃんに辛口な気がする。
「改めてだよ。天才の自己紹介ってのは何度聞いてもいいものさ」
「俺はすぐさま無毀なる湖光のサビにしたい」
「ちょっとこの円卓の騎士凄い物騒なんだけれども…………さて、改めて自己紹介するとしよう。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ、キャスターのサーヴァントだ。君たちマスターと正式に契約してるわけじゃないからほいほいレイシフトは出来ない。主に支援物資の提供、開発、英霊契約の更新などのバックアップ担当だ、よろしくね?」
「うん……ところで……レオナルド・ダ・ヴィンチって男じゃ」
「コレは自分で自分をモナ・リザに改造した変態だ、気をつけろ」
「え、マジですか」
「マジだ」
マジなんだ……というか自分の身体をモナ・リザに変えたってサーヴァントってそんな事も出来るの?……それともこのダ・ヴィンチちゃんが凄いだけ?
もしかして、ランスロットさんがダ・ヴィンチちゃんを嫌ってるのってそういう変人だからとかそんな感じの理由なのかな?
「ちょっと~何でそんなに辛辣かなぁ?」
そう言いながらダ・ヴィンチちゃんは管制室を後にする。
……本当に自己紹介だけして帰ってった…………それでいいのか天才。
「……ほんとに自己紹介だけして帰ったな。さて、話の腰は折られたが本題に戻るよ。休む余裕なくこれからレイシフトするけども、いいかい?」
「大丈夫です!」
私はドクターの言葉に勢い良く返事をする。
何より下手に休んでたら踏ん張りがつかなくなりそうで怖い。だから、やるなら早い方がいい。
「よかった。今回はきちんと君たちのコフィンを用意してある。レイシフトは安全かつ迅速に出来るはずだ」
「向こうについたら、こちらは連絡しか出来ない。ランスロットが色々と指示を出すから最初はそれをする事。その時代に対応してからやるべき事をやるんだぞ?では────健闘を祈る」
そう締めくくったドクターを背に私達はコフィンに入る。不思議と緊張はしていなかった。
何故だろうと思ったがすぐにその理由は分かった。きっと、マシュがドクターがランスロットさんがアストルフォ、アルトリアさんが居るからだろう。
私は一人ではない。
だから、緊張はしなかった。
『アンサモンプログラム スタート。
霊子変換を開始 します』
『レイシフト開始まで あと3、2、1……』
『全工程 完了。
グランドオーダー 実証を 開始 します』
次回は少し遅れると思います。それでも水曜までには投稿しますが
そう言えば今年中に1.5部は終わるらしいですね?ということは一気に来るのか……セイラムでモルガン実装しないかな