Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
実はハロウィンネタ考えてあるんですよ。
「三画全てをもって我が剣に望む。
────ランスロットの手の甲、令呪が紅く輝く。
元来、カルデアの令呪は本来の聖杯戦争で配られる正規の令呪と違い、いわばライト令呪という正規の令呪のような絶対的な命令権なんてものはない。
だがしかし、優れた魔術師ならば魔力リソースの結晶たるこのライト令呪を用いてサーヴァントに呪いをかけることが可能だ。カルデアのマスターで令呪を持っているのは藤丸立香とランスロット・デュ・ラックのみ。
前者には魔術師としての技能など半人前にも満たないようなものであるが後者は幻想種のそれに近しい魔術と技能を保有した魔術使い。令呪に対して自前の魔力を混ぜ合わせ使えばそれは十分サーヴァントへの呪いたりえる。
さて、何が言いたいのかというと。
────そんな幻想種並の魔力と技能で底上げされた令呪三画による強化を用いた宝具はいったいどれほどなのだろうか?
「
瞬間リヨンの空へと吹き上がるのは黒く反転した極光の柱。
それは冬木にて使用された時の比ではない。
アルトリア・オルタの魔力、ランスロットの令呪三画の魔力、ランスロット自前の膨大な魔力が収束・加速していく。もはや、黒き聖剣から伸びる反転した極光は人間の振るう剣でなく戦神か、はたまた軍神が振るう神代の剣の如く。
「極光は反転する。光を呑め」
伸びる。伸びる、伸びてゆく。
数歩下がった所でランスロットはアルトリア・オルタに魔力を送りながらもあらかじめ仕込んでおいた魔術を起動させていく。
『────!?』
本能で悟ったか空へと逃げようとするファヴニールの四肢に無数の鎖が絡みつく。
無論、何も無いところから手品の様に出したわけではない。ランスロットの最も得意とする置換魔術によりリヨンの瓦礫や切り殺したワイバーンの素材から置換されたものだ。
弱いといえども幻想種の端くれであるワイバーンの素材が素となっていた鎖だ。そう容易く千切れるものではなく────ファヴニールの動きを僅か数秒程度その場に止めた。
たかが数秒、されど数秒である。
その数秒はファヴニールにとって致命的なものとなる。
「
振り下ろされる黒き極光の柱。
柱は回避が遅れたファヴニールを容易く飲み込んだ。ジャンヌ・オルタらサーヴァントが乗っていた黒いワイバーンは既に柱の範囲外へと逃れていたが他のワイバーンらは尽く飲み込まれて塵となっていく。
放出された黒き極光は暫くその場に存在していたが徐々に途切れ始め黒き極光は蜃気楼のように最初から何も無かったかのように掻き消えた。
しかし、黒き極光があった事をその場の状態が明確に表している。
極光の余波に巻き込まれ吹き飛ばされたリヨンの外壁の一部とアルトリア・オルタの周囲の塵となった瓦礫の数々。
それら全てが如何に先程の黒き極光が凄まじいものなのだと語っている。
────────。
掻き消えた黒き極光の後には何も残っていない。強大な竜種であるファヴニールの姿はもはや無く、かろうじて範囲外にあったファヴニールの尾が地面に落ち一秒も待たずに灰に変わった。
「ふ、ふ…………」
そんな光景を目の当たりにしたジャンヌ・オルタはワイバーンの上で身体を小刻みに震えさせていた。それは恐怖故のではない。
「ふふ、ふふふ、ふァ、アハハハハハハッ!!!!」
呵呵大笑である。
近くのワイバーンに乗っているサンソンとバーサーク・アサシンはマスターである彼女の様子に気でも狂ったか、と視線を投げかけ
「ふっざけてんじゃないわよッッ!!!!」
一転、ジャンヌ・オルタは怒号をあげた。
それはこのフランスを滅ぼす災厄たるファヴニールが宝具の一撃で消し飛ばされた為か。
その手の黒い旗を握りしめながらジャンヌ・オルタは怒りを爆発させる。
「何よ何よッ!?令呪全画使った宝具!?それで私のファヴニールが消し飛ぶ!?ふざけんな!!…………ハァハァ」
呼吸を挟まず叫び散らしたせいか、ジャンヌ・オルタは一度呼吸を整え、ファヴニールを消し飛ばしたアルトリア・オルタではなく、そのマスターであるランスロットを睨みつけ
「サー・ランスロット……ええ、あの英雄こそが最大の障害。私の残滓?そんなものが障害なわけないでしょう。仕留めなさい……出来ずとも手傷を負わせなさい、バーサーカー、アサシン」
「…………」
「……分かりました」
「あら、私は?」
一人指示が出されなかったバーサーク・アサシンはジャンヌ・オルタに問いかけるがジャンヌ・オルタはそれに反応せずにこのリヨンを離脱した。
ジャンヌ・オルタの脳裏にあるのは意気揚々とカルデアと己が残滓を最強の駒で皆殺しに来たというのに、その最強の駒が本領を発揮する前にカルデアのサーヴァントに滅ぼされたという事実とそれによる羞恥心と怒り。
故に次こそは、次こそは…………
離脱したジャンヌ・オルタにバーサーク・アサシンは呆れバーサーカーとアサシンと共にランスロットと戦うことに決めた。
────────────
「…………アル、大丈夫か」
「ああ、問題は無い……が流石に暫くは宝具を撃てんと思え」
「むしろ、撃てたら恐ろしいぞ」
まあ、流石のアルも消耗するか。
このまま座り込んでマシュらを待つ、かと思った矢先俺たちの許にカルデアからの通信が届いた。
『────ランス、ランスロット!!』
「聞こえている。どうしたロマン」
『どうしたもこうしたもないぞ!?いきなり馬鹿みたいな宝具を撃たせて!!通信がしばらく出来なかったんだぞ!?』
喧しいロマンの声に俺は耳を抑えながら応対するがそれでもロマンの声は俺の耳に響いてくる。
喧しい、がそれは心配の表れなのは理解している。まあ、グチグチ言っていても進まない為、ロマンに話を促す。
「で、どうした」
『あ、ああ、少し前に立香ちゃんらが城で竜殺し……はぐれサーヴァントのセイバー・ジークフリートを無事見つけた……見つけたはいいんだがそっちで本物の竜種が現れたと思ったらあの宝具だ。とりあえず咄嗟にリヨンから退避を命じといた』
「いい判断だ。すぐに追いつく、方角を教えてくれ」
なるほど、そうなるのか。
本来はファヴニールのブレスにマシュとジャンヌが耐えていたほんの少しの時間にほんの僅かながらも魔力が回復したジークフリートの宝具でファヴニールを退かし、その間にリヨンから離脱だったがここではそうなるのか。
いや、まあ、ファヴニールをここで仕留めた以上これから先も大いに変化するだろう。というか、正直に言うとEXTRAなヴラド三世がいる以上この後のバーサーク・アサシンも逃さず仕留める可能性の方が高い。
段々と知識からズレていくがもう俺というイレギュラーがいる以上そんなものは極力気にしない方がいい……何よりも、黒ジャンヌいやジャンヌ・オルタが召喚したバーサーカーがいったい何者なのかが気になる。
バーサーカーの俺なのかはたまた彼なのか、それとも本来のランスロットなのか……。
『端末に情報を送っておいた』
「助かる。アル」
「了解した」
オーバーチャージの宝具を使った後だとしてもそれなりに魔力がある為、魔力放出による加速でリヨンをすぐさま離脱する。
端末に送られた位置情報を頼りに駆けていく。
後方からワイバーンの鳴き声が聴こえた辺り、どうやら俺らを狙って追いかけ始めたようだ。
足であるワイバーンを撃ち落とすか、と思ったが騎乗しているのはサーヴァント。
ワイバーンに乗ってる間の方が遅いだろう。
なら、このまま立香らと合流して迎え撃つ。
ワイバーンはあらかたアルのオーバーチャージ宝具で消し飛んでいる、これならば迎え撃つ際にある程度楽になるだろう。
「ランス、見えてきたぞ」
「ん……ん?アレは……」
立香らが見え、その前方の方には集団が見える。おそらくフランス軍だろう。
「なるほど……アル、ここで迎え撃つぞ」
「了解した」
足を止めて振り返る。既に背後にはワイバーンの群れ。そして、黒いワイバーンが二体。
見る限り一体には黒騎士と恐らくサンソンと思われるサーヴァント……そして、バーサーク・アサシン。
バーサーク・アサシンはヴラド三世とジャンヌに任せるとしてサンソンは立香らに……黒騎士は俺の獲物だ。
「ランスロットさん!」
「ここで奴らを迎え撃つ。フランス軍を巻き込むのは悪いが、この際仕方がない」
「……!いえ、仕方がありません。このままフランス軍をすり抜けたとしてもワイバーンや彼らはフランス軍を襲うでしょう……それなら」
ジャンヌも俺の案に納得し旗を構える。俺も再び無毀なる湖光を抜き放ち構える。
「来い。黒騎士」
オーバーチャージだオラァ!!(NP500)
すまないさん、出番消失。