Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

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今までエクターに言わせてた台詞ですがとある感想でスペルミスという事に気が付きました……辛い。
Luckerさんありがとうございました。
それと毎度誤字報告ありがとうございます、烏瑠さん。



厚き信仰

 

 

 

 

 

 場所は移り変わり、ジャンヌらの戦いへと変わる。

 マリー、モーツァルトは立香らと共にアサシン・処刑人シャルル=アンリ・サンソンと取り巻きのワイバーンを相手しており、残ったジャンヌとアルトリア・オルタそしてヴラド三世はフランス軍へと襲いかかるバーサーク・アサシンの指揮するワイバーンの群れへ突貫していた。

 

 

「たあああぁぁぁぁ!!!」

 

「ふん!」

 

「フハハハ!!(みなごろし)である!!」

 

『────!?』

 

 

 弱体化しているジャンヌは一体一体少しずつ倒しているのに対し、アルトリア・オルタとヴラド三世は正しく一騎当千の如くワイバーンを蹴散らしていた……ヴラド三世に関してはまるで水を得た魚の様に暴れ回っていてアルトリア・オルタですら若干引いていた。

 内容はともかくサーヴァント三騎により次々とワイバーンの数が減少していくがそれでも全体から見て僅かな変化でしかない。

 

 

「……おい、なんで竜の魔女が……」

 

「……知るかよ……だが、都合が良い……こんまま共倒れになってくれりゃいい」

 

 

 ジャンヌとワイバーンのぶつかり合いを見てフランス兵らは困惑しつつその武器を下ろした。

 正しく高みの見物とも言えるその態度にジャンヌは唇を噛み、アルトリア・オルタとヴラド三世は愚か者め、と一蹴すると同時に憐れみを感じていた。

 

 

「あらあら、守っている相手に散々な言われようね、聖女様」

 

「……放っておいてください」

 

 

 そんなジャンヌに嘲笑の声をかけるのは黒いワイバーンに乗るバーサーク・アサシン。

 

 

「ああ、失礼。今の貴女は竜の魔女……ああ言われるのも仕方がないことね」

 

「……」

 

「ねぇ、聞かせてくださらない、ジャンヌ・ダルク?貴女はいまどんな気分なのかを」

 

 

 バーサーク・アサシンが紡ぐその言葉は端から端までジャンヌを貶めようとする意思と嘲笑に満ちていた。

 だからこそジャンヌはその力の篭った眼でバーサーク・アサシンを見る。

 

 

「死にたい?それとも殺したい?

あの兵士たちの胸に、その杭のようにその旗を突き立てたくてたまらないのでしょう?」

 

「……普通でしたら、悔しいと思うのでしょうね。絶望にすがりたくなるのでしょうね。

ですけど、生憎と私は楽天家でして」

 

 

 力強く、ジャンヌはその旗を握りしめバーサーク・アサシンへと告げる。

 

 

「彼らは私を敵と憎み、立ち上がるだけの力がある。それはそれで、いいかと思うのです」

 

「────貴女、正気?」

 

「さあ、フランスを救おうと立ち上がった時点で正気ではないとよく言われたので!」

 

 

 バーサーク・アサシンの嘲笑をその言葉で跳ね飛ばしジャンヌはバーサーク・アサシンへと駆ける。

 

 

「そう、どちらもイカれている事に関しては、白黒関係ないのね……ワイバーン!!」

 

「はあぁぁぁ!!」

 

 

 バーサーク・アサシンの号令と共にジャンヌへと殺到するワイバーン。

 全体をみてそれなりの数がジャンヌへ向かっているとはいえアルトリア・オルタ、ヴラド三世にかかっているワイバーンが居なくなったわけではなく彼らは彼らでワイバーンと戦いジャンヌへと手助けは出来ない。

 しかし、多勢に無勢?だからどうしたと言わんばかりにジャンヌは目の前のワイバーンを打ちのめしていく。

 

 

 少しずつ確実にワイバーンを蹴散らすジャンヌ。前方左右を塞がれてもなおジャンヌは突き進む、だからこそバーサーク・アサシンはワイバーンの上で嘲笑し

 

 

「全ては幻想の内、けれど少女はこの箱へ────」

 

「ッ、まずい!」

 

 

 バーサーク・アサシンを中心に吹き上がる魔力。それは宝具発動の兆候と気づいたジャンヌはその場から飛び退こうとするも、バーサーク・アサシンの命令かワイバーンの群れが一斉にジャンヌへと襲いかかり邪魔をする。

 

 

「これでは……ッ!」

 

 

 ジャンヌの後方から巨大な鉄器が姿を現す。

 開かれた内側には大量の刃と針が備えられた、少女へ死の抱擁を交わす事でその生き血を一滴残らず搾り取る鉄の処女(アイアン・メイデン)

 これこそが彼女、バーサーク・アサシンの真名を露とするモノ────しかし、それは本来存在しないと判明した空想の……幻想の拷問器具すなわち

 

 

幻想の鉄処女(ファントム・メイデン)────!!」

 

 

 バーサーク・アサシンの真名解放と共にジャンヌを抱擁せんとする棺桶。ジャンヌは逃れようにもワイバーンが多く逃れられない。

 嗚呼、これにてフランスを救わんとする聖女の二度目の生命は幕を引く

 

 

 

 

 

 

 

 

「────否だ」

 

「え?」

 

 

 投げ飛ばされるジャンヌ。

 その首を尽く引き裂かれたワイバーンたち。

 閉じる棺桶、その隙間から見えたのは嘗てこの特異点にて吸血鬼として猛威を奮った串刺し公、その別側面たる鬼将。その横顔である。

 

 

────ガキンッ

 

 

 閉じられた棺桶から大量の血が流れ出ていく。それは棺桶内の生命から搾り取られたもので

 

 

「フフ、フフフ、不様ね。聖女様の身代わりに死ぬだなんて!!」

 

「な……」

 

 

 投げ飛ばされ受け身が取れずに尻餅をついたジャンヌは目の前の血が流れ出ていく棺桶を見て茫然自失となり動けない。

 そしてそれを見て嗤うのはバーサーク・アサシン。

 

 別側面で召喚されたと思えばころりと優しくおなりになって。

 バーサーク・アサシンの嘲笑は周囲に響く。

 

 アルトリア・オルタはそれを耳にしつつも感情を出さずにひたすら目前のワイバーンたちを蹴散らしていく。

 

 

「フフ、面倒な王様はこれで退場。どうしたものかと悩んだけれど……フフ、なんて丁度いいのかしら」

 

 

 動かないジャンヌへとバーサーク・アサシンはわざわざワイバーンより降りて一歩一歩近づいていく。その手の魔杖に魔力を迸らせて。

 その表情から見て取れるのは嘗ての彼女そのもの。貴族たる彼女は虐げている者が自分に反抗しないと決めつけジャンヌを嬲ろうとその魔杖を振り上げて────

 

 

「さあ、快い声で鳴いて頂戴」

 

 

 

 

 

 

 

────バキッ

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 殺到する銃弾の雨。

 毎分四千発から六千発もの弾幕をばら撒くガトリング砲、宝具で強化されたそれは十分にサーヴァントの脅威となる。

 それをランスロットは振るうアロンダイトで弾き落としていく。

 兜のスリットから覗くその眼光はただ、ただエクターを見つめている。

 

 

「Frere」

 

 

 弾幕をばら撒く最中、バーサーカーとして呼ばれた為か元来そんな機能が無いはずの鎧の飾りであるそれが触手か何かのように蠢き虚空から四つほど拳よりも一回り大きいモノを取り出す。

 本来エクター・ド・マリスというキャメロットの騎士が持ちえぬはずのソレ───無論、ガトリング砲もしかりだが───は今のエクターでは思い出す事など出来ぬ遠きとある戦争にて彼がマスターより与えられた武装の数々。

 だが、生前使っていたわけでもないその武装がここに呼ばれるなどありえない事だが今は人理焼却の最中、ありえない事などありえない。

 

 

「ッ────」

 

 

 エクターの鎧飾りが取り出したそれをみてスリットから覗くランスロットの瞳は細まる。

 器用に鎧飾りの先でそれのピンを引き抜き、四つ共にランスロットに投擲される。距離はあるがしかし、そこはサーヴァントそれもバーサーカーであればすぐにランスロットの許へと飛来し────

 

 

「チィッ────!」

 

 

 ランスロットはすぐさま横へと飛び退く。

 一拍置いて、投擲されたそれ───手榴弾が起爆する。擬似宝具化された手榴弾の爆発は本来のものではく威力規模共により強力なものへと変わっていた。

 

 

「ぐうっ!!」

 

「Frere!!!」

 

 

 如何に魔力で強化しているとはいえ流石に衝撃全てをどうにか出来るわけでなく、空中に身体があったこともあり擬似宝具化された四つもの手榴弾の爆風がランスロットを襲い吹き飛ばす。

 吹き飛んだランスロット、その隙を逃さずエクターのガトリング砲から弾幕がばら撒かれる。

 

 

「────ッゥ!!??」

 

 

 次々と着弾していくランスロット。強化の魔術は重要な箇所を重点的にかけられている為、薄い箇所である手や肩の強化の魔術を銃弾が撃ち抜く。

 流石のランスロットもこれには苦痛の声を漏らす。勝ち筋が遥かに鮮明となったことにエクターは狂化しているにも関わらず心の底からの喜悦を憶え、確実に強化の魔術を撃ち抜きランスロットを倒す為にエクターはより魔力を込めて────瞬間ランスロットが消えた。

 

 

「────!!??」

 

 

 ありえない。おかしい。

 どうして。どこへ。

 どうやって。何故。

 

 ひたすらなまでの疑問が狂化されたエクターの脳裏に過ぎる。

 一瞬たりとも視線を外さなかった。にも関わらずその場から消えたという事実にエクターは困惑し

 

 

「────ガッ!?」

 

 

 側頭部に衝撃が走る。

 正体不明の衝撃にエクターは蹌踉めき、次の瞬間に肘からハッキリと嫌な音がたったと同時に激痛が走る、無論両腕である。

 両肘が砕け、ガトリング砲をエクターはその手から落としてしまう。その大きすぎる隙に困惑するエクターに襲いかかるのは騎士。

 

 

「────このまま落とす」

 

 

 エクターの首下へ差し込まれる腕はそのまま背後へと引かれ、その背中に踏みしめられる。

 いったい、いつの間ににそこにいたのかランスロットはまるでエクターの首を引きちぎるかのようにその首を引き寄せる。

 

 

「ァアアア!!??」

 

 

 首が、鎧が悲鳴をあげる。

 すぐにでも意識を飛ばしかねない激痛が走るがエクターは本能で耐える。

 

 

「耐えるだろうな。お前なら」

 

 

 ああ、お前ならきっと耐えるに決まってる。

 だからこそ、俺はこうするのだ。

 

 兜の下で言葉にせずランスロットは語る。

 瞬間、エクターの背からランスロットの重みが消えエクターはそのまま首を引かれ仰向けで倒れてしまい────

 

 

「────兄、上」

 

「…………戯けめ。最後の最後で正気になるな」

 

 

 エクターの鎧を刺し貫きその心臓を穿つアロンダイト。

 馬乗りになったランスロットは狂化の解けたエクターに呆れたような悲しいような声を出しながらアロンダイトの柄を握りしめる。

 

 

「…………そう、ですか……」

 

「……正気になるならなるで最初からなれ。そっちの方が俺の気持ち的に助かる」

 

「……それは……なんとも……では次からはそうさせていただきます」

 

 

 兜の下でぎこちなく笑うエクターにランスロットは呆れる。

 

 

「なら、そうしてくれ」

 

「はい…………兄上」

 

「なんだ」

 

 

 エクターの声音が唐突に変わった事にランスロットは少し顔を顰めて問う。

 

 

「いえ…………御迷惑をおかけしました」

 

「戯け。迷惑ではない……弟なんだせいぜいかけてろ……心的迷惑以外でな」

 

「はい」

 

 

 ランスロットはなんとなくにエクターが言おうとしたことに察しがつきつつ答える。

 それにエクターも満足したか、そのまま今までのサーヴァントのように消滅した。

 

 

「…………次に会うのは何時か。その時こそは兄弟らしく話せるといいな」

 

 

 治癒を施しながらランスロットは立香らの許へと足を向けた。

 

 

 




次のイベントって何ですかねぇ……はやくやりたい。
もう刑部姫は諦め申した。後、刑部姫の部屋の武蔵ちゃんクッションが凄い欲しい。

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