Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

50 / 64
今回は少し短いです。
え?待ったのになんで短いかって?……本来の完成形が少しアレで分割したからです。
多分明日か明後日に続きを投稿します。


厚き信仰2

 

 

 

 

────ガキンッ

 

 

 

「は?」

 

「え?」

 

 

 それは金属音だった。

 ここは戦場。ならば金属音など何処からでも聴こえる場所。

 だが、それがバーサーク・アサシンとジャンヌの近く…………バーサーク・アサシンの宝具から聴こえてくるのなら話は別だ。

 何か金属が折れるような、割れるような音。

 これだけならば宝具の内側、鉄処女の抱擁を受けたヴラド三世の鎧が砕けたのだろうと思うだろう。しかし、そこから断続的に金属の軋む音が聴こえてくる。

 

 

「な、なにが……起きてるというの」

 

「まさか……」

 

 

 

────ギシッ

 

 

 ピタリと閉じられた棺桶に僅かな隙間が生じる。ゆったりとだが隙間が僅かに広がっていく。

 少しずつ、少しずつ。

 広がっていく度にバーサーク・アサシンの表情が固まっていく。仮面で隠れているというのに近くにいるジャンヌはバーサーク・アサシンの感情がなんとなくではあるが理解出来た。

 

 

「嘘よ……そんな事、ある筈」

 

 

 言葉を零すバーサーク・アサシン。そして、ある程度の隙間が出来た瞬間に隙間から槍が勢いよく突き出た。

 

 

「神の愛を知らぬ者に、我が魂は傷つけられぬッ!!」

 

 

 そのまま内側よりこじ開けられる鉄処女。

 開かれたその内側には血が搾られたワイバーンの数々と見るも無惨に折れた棺桶の刃と針、そして無傷のヴラド三世である。

 棺桶より出てくるヴラド三世はその手に槍を構え真っ直ぐとバーサーク・アサシンを見据える。

 

 

「そんな……私の宝具が……」

 

「───生きる為に血が必要だと語りながら、その中身は不老への渇望のみ」

 

 

 一歩。一歩。

 確実にバーサーク・アサシンへと近づいていくヴラド三世。その瞳は正しく罪人に終わりを告げる執行者。

 目の前の光景があまりに異質であった為か動けず逃げれぬバーサーク・アサシンにヴラド三世は静謐でありながら怒りを宿した声音で語る。

 

 

「我が『 』の前に立てば、恥辱から灰になろうよ」

 

「ッ!死になさい!」

 

 

 ヴラド三世がバーサーク・アサシンの目の前にたどり着いてようやくヴラド三世に気がついたのかバーサーク・アサシンはその魔杖をヴラド三世へと打つがしかし、堅牢な鎧の前に霧散する。

 霧散した事に驚き、無意識に後ずさるバーサーク・アサシン。だが、身のまとっているドレスの裾を踏みそのまま尻餅をついた。

 

 

「あ……」

 

「バーサーク・アサシン否、カーミラよ。我が槍が貴様の墓標」

 

 

 槍を振り上げ、ヴラド三世は一言告げる。

 

 

「死ぬがよい」

 

「────」

 

 

 

 振り下ろされた槍は深々とバーサーク・アサシン───カーミラの胸を貫き串刺しにする。

 鮮血を吹き出し、抵抗する力も無いのかその手から魔杖が転がり落ち、消滅した。

 これにてバーサーク・アサシンとヴラド三世の戦いは終幕。

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「────サーヴァントが消えた……となるとバーサーク・アサシンか?」

 

 

 立香らから離れた場所で残っているワイバーンどもを切り殺しながら俺はそう呟いた。

 別にルーラークラスほどサーヴァントの気配察知に優れているわけではないが、このサーヴァントが多い戦場において何となくわかる。というのもサーヴァント同士がぶつかれば宝具の一つや二つは使われるのだからその際の魔力やらなんやらでわかる……はず。

 

 

「兎にも角にも、これで黒ジャンヌ陣営のサーヴァントは減ったな。ジャンヌ・オルタ、ジル・ド・レェ、バーサーク・アーチャー、バーサーク・セイバー、シャルル=アンリ・サンソン。ファヴニールとバーサーク・ランサーの脱落は大きいな」

 

 

 後五騎……少なくともこちらの戦力回復の為にも聖人を探す必要もあるが……そこはアレでも何とかなるはずだろう。しかし、戦力という面で見ればゲオルギウスを仲間に加えないのは悪手だ。

 だが……その場合二手に分かれるかもしれないわけで……安珍だけにはなりたくない。

 かといって立香に安珍という称号───呪いにより外せない!───を付与するのはどうかと思う、それに二手に分けた時にマスター二人を片方に集中させるのも駄目だ……

 

 

「どうするか……」

 

 

 安珍にはなりたくない。だが、立香に押し付けるのもどうかと思う。でも恐らく俺か立香どちらかが安珍になる。これは避けられない事だろう。

 どうすればいい。どうすれば…………

 

────逆に考えるんだ、安珍になってもいいさ。と

 

 ぶっ殺すぞマーリン。と、俺の脳裏に過ぎった濃ゆい顔のマーリンへアロンダイトしつつ、現実ではワイバーンの首を絞め落とす。

 

 

 それにしても手脚が痛む。

 治癒の魔術を施したとはいえ、流石に擬似宝具化したガトリング砲だ……対サーヴァント用の宝具となったそれが付けた傷は確実に俺を消耗させている。

 完全治癒に果たしてどれほどかかるか……少なくとも第二特異点に行くまでには治癒するだろうが…………この特異点中にどれぐらい治るかだな。

 

 

「無茶をしなければ治るのも早かろうが……無茶なぁ」

 

 

 無茶な事と馬鹿な事をするのが円卓だからな……脳裏に過ぎるマッシュポテトやら馬鹿どもに呆れつつワイバーンを踏み砕く。

 さて、どれぐらいワイバーンを倒しただろうか。ワイバーン程度、傷があろうが十分狩れる。

 周囲を見回せばかなりのワイバーンが倒れ伏していた。一瞬生態系の心配をしたがすぐにここが特異点でワイバーンは本来存在しない生物だということを思い出し胸をなで下ろす。

 

 

「回復役がいないのもネックだな。マリーはギリギリ出来るようだが……それでもキャスターではないからな。ついでにいえば彼女はこの特異点攻略中の仲間……出来れば立香にキャスタークラスを呼んでもらいたいものだ」

 

 

 となると、メディア・リリィが無難か?だがしかし…………なら通常のメディアか?なるほど、彼女なら立香の性格的に酷いことにはならなそうだが……。

 …………マーリンでも引っ張り出すか?いや、アレには第七特異点で馬車馬も過労死するレベルで働いてもらわなければいけない……だからここらで呼んで働かせてもな……というかお前は賢王を見習え。

 

…………あ

 

 

「…………いけるか?もしかしたらだが」

 

 

 脳裏に過ぎるのは一つの可能性。

 無論、この可能性はとても小さなモノ。出来ずとも問題は無い、少し俺のモチベーションがだだ下がりするだけで人理修復にはそんなに影響は出ないはず……多分、きっと。

 来なかった時は大人しくメディアを狙って召喚してもらおう。

 

 

「とりあえず彼女には魔術の逸話がある。それならキャスターとして呼ぶ事も出来なくない、問題の治療も出来るだろう」

 

 

 それに自衛自体も充分出来る。最悪マシュに立香と共に守る事を頼めば大丈夫だろう。

 と、なればこの特異点を終わらせたら上手い具合に立香にキャスターを召喚するようロマンを丸め込むか。

 ああ、今からそれを考えると少し足取りが軽くなるな。今ならトゥルッフ・トゥルウィスが群れで来ても勝てそうな気がするぞ。

 

 

「なら、さっさとこの特異点を終わらせるか」

 

 

 アロンダイトを鞘に戻し、ひとまずは立香らのもとへ足を向ける。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。