Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
いやぁ、三章は楽しかったネ!
ガチャは回したかな?馬も虞も朕(?)も来たよ!1回で!
……ところでなんか知らないけど、うちの朕には首がないんやが。あとワンコに乗ってるんだよね……おかしいなぁおかしいなぁ……喋らねぇんだよこの朕
「と、言うわけで戦力強化をしようッ!」
「何がどうして、というわけなんだよ」
「前略するのはどうかと思うよ?ロマニ」
「理由話してくれないとわかんないドクター」
「……えっと、その、先輩に同じくです……ドクター」
理由ある言葉の槍がロマニを貫く。
ロマニは傷つき倒れた。
「うぅ……容赦ないぞお、みんな……」
「まずは理由を言え、理由を」
カルデアのミーティングルームにて所長代理であるロマニ・アーキマン、技術部顧問(自称)ことレオナルド・ダ・ヴィンチ、召喚システムフェイトの管理者兼特異点探索チームリーダーのランスロット・デュ・ラック。そして、マスターである立香とマシュが顔を見合わせ一様にロマニを言葉で叩いていた。
ロマニはもはや顔を机に突っ伏して嘆いているが、ランスロットはそれを嘲るように追撃を行うばかりである。
「うぅ…………ほら、ランスが……馬鹿やらかしたわけで次の第二特異点の様にレイシフト出来ない場合が他にもある可能性が高いじゃないか……」
「否定は出来んな」
俯きながらロマニが口にする言葉にランスロットは視線をずらし、立香からジト目を受けつつ肯定する。
今回の戦力強化は十中八九とは行かずとも半分近くは自分の責任であることを分かっているのだろう。
「それで、立香ちゃんの戦力を強化するのがいいと僕は思うんだ」
「なるほど……それなら、私は召喚したいです。ランスロットさん」
「先輩……」
立香の言葉にランスロットは頷きながら、その心中を考える。
先日、ランスロットは立香のカウンセリングをしていたロマニが立香よりある事を聞いたのだ。先の第一特異点での出来事、主にランスロットが前へと出て無茶をし結果として第一特異点を修復した事。
それの事で自分はランスロットに信頼されていないのではないだろうか、自分が頼りないのではないだろうか。と、立香はロマニへぽつりぽつりと話した事をランスロットは知った。
だからなのだろう。ランスロットが特異点へ赴けない分自分が頑張らねばならないと考えている。ランスロットにはそんな彼女の考えを否定する事は出来ない。
「レオナルド」
「ん?なんだい?」
「少なくともロマニがこう言ってる以上、今の立香がサーヴァントを召喚しても問題ないのだろうが…………実際問題、立香の負担が増えるのは変わらんのだろう?それでどの程度の負担が生じる?」
ランスロットが口にするのは立香のサーヴァント召喚における懸念事項。
生じる負担の大きさによって話は変わる。負担の殆どをカルデアが受け持っているとはいえほんの少しでも負担は立香へと残る。
その負担が立香に対してどれほどの影響を与えるのか、本当にちょっとの気にする程でもないその場限りの負担ならばいいだろうだが、それが気にしなくとも確実に積み重なっていく負担ならどうだ?
本人も気付かぬ内にその負担が積み重なって致命的なものになったら事だ。
「まあ、君が心配してる事は分かるよ。うん、大丈夫さ、少なくともまだ問題じゃあない……これが五騎も六騎もだったら流石に止めるけど、四騎までならまったくもって負担はない」
「そうか」
ダ・ヴィンチの言葉にランスロットは頷き、そのまま椅子に深く座り直して口を閉じる。
それをロマニは特に何か言うことはもうない、と判断して立香の方へ視線を向ける。
「それじゃあ、立香ちゃん。サーヴァントの召喚が決まったわけだけども、何か意見はあるかな?」
「……うーん、こう、パワー?」
「フフ、力が、欲しいか……?……アイタッ!?」
立香が首を傾げながらロマニへ返す意見を茶化すようにダ・ヴィンチが言葉を挟み込むがランスロットにより発射されたフォウによりその額を叩かれる。
そんな光景をロマニと立香、マシュは軽く笑いながら立香の意見に対して考えを深めていく。
「パワーって言うと、強いサーヴァントがいいってことかい?」
「確かに、ランスロットさんがいないとなるとヴラド公やアルトリアさんの前衛がいません」
「アストルフォは、ほら、前衛というより……ねぇ?」
「アストルフォだからな」
「うん、まあ、彼のスペックは前に出て奮闘するアタッカーとかじゃなくて、持ち前の宝具を使って戦線を掻き乱すものだからねぇ」
ロマニとマシュを除いて三人ともアストルフォを軽くディスりつつ、みな立香の意見に賛成の意を示す。
ランスロットとそのサーヴァントがいないという事はカルデア側に一騎足りともアタッカーが居ないということになる。シールダーであるマシュは言わずもがな、ライダーであるアストルフォは単純に多種多様な宝具による援護等が主になる為間違いなくアタッカーとは言えない。
だからこそ、立香の意見は真っ当なものである。だが、そうそうお目当てのサーヴァントが召喚など出来るわけはなく────
「ある程度調整すればクラス指定……いや、クラス枠を潰す事は出来る」
徹夜コースだな、分かってる。
死んだ目をしながらそう乾いた笑みを浮かべる彼にマシュも立香も目を逸らし、ダ・ヴィンチはなにゆえかイイ笑顔で親指を立て、ロマニはランスロット同様乾いた笑みを浮かべるばかりである。
「いやぁ、アレだね、徹夜しながら何かを作るのって楽しいよね!!??」
「座に還れ」
首を右手で、目頭を左手で抑えながらランスロットは隣で何やら妄言を口にしている変態に苛立ちながら言葉をぶつける。
サーヴァント召喚システムフェイトの調整におよそ一日と五時間を使ったランスロットは言わずもがな、調整されたフェイトに対応する呼符を作り出すのに一日かけたダ・ヴィンチはその徹夜の影響を受けていた。
無論、サーヴァントは本来食事不要睡眠不要などの大きなメリットがあったが受肉しているランスロットにはそんなものは通用せず、ダ・ヴィンチは単純にそういう性分であるから。
「書類業務、不眠不休の戦働きとはまた違って疲れる。分かるか?目が痛いし腰が痛いし肩も痛い、一応アラフォーなんだよ俺は」
「えぇ……その見た目でアラフォーなのかい?どう見てもアラサーじゃないかな?」
「乙女の加護だ、加護。受肉したとしてもある種のスキルだから幾ら年食おうが肌やなんやらは三十前後で止まってるよ」
そんな風に疲れた顔で語るランスロットにダ・ヴィンチは興味深そうに相槌を打つ。
「肌やなんやらが一定の年齢で止まるのか……世の女性が聞いたら垂涎ものだねぇ……」
ちなみに私も羨ましいと思う。
お前は女じゃないだろ。
なんて酷い言い草だ、マシュにチクるしかない。
事実だろう。
そんな風に軽口を叩きあって二人は振り返って視線を自分たちの背後、この召喚実験場の出入り口へと向ける。
扉は開き廊下から何人かが入室していくのを確認してランスロットはシステムの最終調整を始めていく。
「やぁ、みんな。調整はほとんど終わってるよ」
「ほんとに出来ちゃったのかぁ……いやぁ、流石二人だね」
「全部この二人に任せてもいいんじゃ……」
「立香。それはやめておけ、ランスとアグラヴェイン二人に一度全て任せようとしたら、ランスは軽く発狂したしアグラヴェインは死にかけた」
「あ、ハイ」
ロマニはクラス枠を潰して望んだクラスが召喚しやすくなるという荒業に頬を引き攣らせ、立香はこの二人に全て任せればいいのでは?と口にし、それが無理な事をアルトリアに諭されていた。
一緒に来ていたアストルフォは召喚実験場を改めて色々見回っており、マシュとヴラド三世はそんなアストルフォが何かやらかさないかの監視をしている。
「さて、はい立香ちゃん」
そう言いながらダ・ヴィンチがやや虹っぽく輝く呼符を立香へと手渡した。恐らくこれが今回の召喚に用いる触媒なのだろう。そう、立香は理解しそれを手にして実験場……実験管制室であるこの部屋からフェイトの部屋へと入っていく。
そんな立香の背を見ながらロマニは心配そうな視線をランスロットへと向けて、
「問題は無い。実にアレだがそいつは天才だ、ほぼほぼ失敗は無い」
「それは、まあ、信頼してるけども……」
「立香―――最終調整を終えた、召喚を開始してくれ」
手元のマイクで実験場内の立香に促し、ランスロットは窓越しに実験場を見る。
立香がその手に握る虹の呼符を使用する。
それにより魔力が吹き荒れていき、視覚化された魔力は三本の円環へと変わっていく。
光の円環は廻り回りまわり、その内に虹色の輝きを迸らせて────────
「あっ」
「あっ」「むっ」
「え?」「は?」
後方から漏れた声にランスロットが、ロマニが、マシュが、ヴラド三世が振り向いて……
瞬間、魔力がぶれた
虹色の輝きが大きく昂り
そして、光の中に立香は人影を見た。
「おっと、こりゃどういうわけだ?いいや、理由なんてもんは関係ないね。
それよりも人理修復、カッコいい話じゃないか!」
黒と白の衣服の上から軽装を付けた同じく黒と白の混じった髪の青年。
白く裏地が水色のマントを羽織り腰には白い剣を携えて一人の英雄が召喚された。
「サーヴァント・セイバー。問おう、アンタが俺のマスターか?」
今回は立香の戦力強化です。
まあ、アストルフォとマシュだとねぇ……前衛がおらん。