Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】   作:カチカチチーズ

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 私は帰ってきたぞ。
 自虐よりも読者のエールだよね。

 頑張ろうかな


永続狂気帝国セプテム
永続狂気帝国セプテム:プロローグ


 

 

 

 

「────というわけで」

 

「なるほど、では……」

 

 

 整備され、調整された管制室。

 そこに二人の男が言葉を交わしている。片や白衣の青年、片や黒衣の青年。

 互いに手に持つ端末に視線を向けながら語る彼らはふと背後から響いた扉の開閉音に振り返る。

 

 

「やあ、おはよう諸君」

 

「諸君と言うほどの人数はいないがね」

 

 

 カルデアの制服に身を包む二人の少女。人類史最後の人間のマスターである少女とデミ・サーヴァントである少女。

 そんな二人に白衣の彼、ロマニ・アーキマンはいつも通りの何処か気に抜けた朗らかな笑みを浮かべ、黒衣のランスロットはそんなロマニの言葉を訂正するように皮肉めいた表情で彼女らを迎えた。

 そうして彼女らを迎えてすぐに再び扉が開き、新たに三人の男女が入ってくる。眠たげなモナ・リザとアストルフォに先日新たに召喚した立香のサーヴァントであるセイバー・シャルルマーニュ。

 

 

「ふわーあ……や、おはよう〜」

 

「おっはよう!マスター!」

 

「おはようマスター」

 

 

 いつも通り元気溌剌なアストルフォと好青年らしいシャルルマーニュに立香もマシュも応え、そしてランスロットはダ・ヴィンチに軽く頭痛を覚える。そんなランスロットに苦笑しながら再び視線を立香とマシュへと戻し話の続きを始める。

 

 

「既にレイシフトの準備は整っている……今回のレイシフト先は一世紀のヨーロッパだ。より具体的に言うと古代ローマだね。イタリア半島から始まり、地中海を制した大帝国だ」

 

「ん、古代ローマ?ホント?私も行きたーい」

 

「お前は聖杯の解析作業を急げ」

 

「えぇー!」

 

 

 ロマニの説明に横からちゃちゃを入れ始めるダ・ヴィンチにランスロットはぶっきらぼうに言葉を投げかける。

 無論、ダ・ヴィンチとてランスロットの言い分は理解しているがしかし天才というものは得てして面倒なものであり、ランスロットに抗議する。言わずもがなランスロットはそんな抗議を何処吹く風と言わんばかりに無視しているが。

 

 

「ハハ……さて、いいかな立香ちゃん。転移地点は帝国首都のローマを予定している。多分知ってると思うけどローマ帝国の首都はローマでね。地理的には前回と近似だと思って貰って構わない」

 

「存在する筈の聖杯の正確な場所は不明。歴史に対して、どういった変化が起こったのかもだ」

 

 

 今回の特異点について知り得ている情報は前回のフランスと何ら変わらない。むしろ、百年戦争中でありジャンヌ・ダルクが処刑された日の近くであった分、まだフランスの特異点は分かりやすかったものだろう。

 だが、今回の特異点はローマ。皇帝ネロの治世以外の情報はないと言っていいだろう。知っているランスロットも流石に大っぴらに情報を話すことは出来ず、現地に行ってからの手探りになることは必至だ。

 

 

「すまないね。観測精度が安定してないようだ……」

 

「問題ありません。どちらも私と先輩で突き止めて見せます!」

 

「ランスロットさんの分まで頑張ります!」

 

 

 故に事前情報が揃えられなかった事に申し訳なさを感じるロマニの言葉にマシュも立香も大丈夫だ、と励ますように言う。

 彼女らには既にランスロットが今回の特異点にレイシフトが出来ないという旨は伝えており、彼女らだけ───アストルフォやシャルルマーニュはいるわけであるが───のレイシフトは今回が初だ。きっとその事で表には出さないが不安に思っているだろうにそんな彼女らの溌剌な言葉にロマニは申し訳なさと同時に頼もしさを感じた。

 

 

「うん。ありがとう、二人とも。とても頼もしいよ。……さて、作戦の要旨だけども、それは前回の作戦と同じ。特異点の調査及び修正と聖杯の調査だ」

 

 

 出来れば入手がいいんだけども、最悪破壊して構わない。

 そう追加で言うロマニに立香は頷く。

 と、そんな所にダ・ヴィンチの相手をしていたランスロットがやってきた。

 

 

「立香、マシュ。今回、人類史の存続は君ら二人の双肩にかかっている。その事に重みを感じるかもしれない、不安に思うかもしれない、投げ出したくなるかもしれない。分かっている、今回君ら二人に任せてしまうのは俺の不徳故だ。だがしかし」

 

 

 そこまで言って、ランスロットは一度言葉を切り立香とマシュの顔を見渡す。そうしてから二人の頭に両手を乗せて軽く、いや少し乱暴気味に撫でる。

 

 

「わっ」「ひゃっ」

 

「君らならばきっと出来る。俺はそう信じている。何より、後ろサポート側には沢山いるんだ、君らのバックアップは任せろ。だから大船に乗ったつもりで行ってきなさい」

 

 

 まるで父親の様に優しげな表情でそう言うランスロットに二人は軽く顔を合わせてからすぐにランスロットへと向き直り、表には出ていなかった不安がまるで消え去ったかのような表情で返事を返した。

 

 

「「はい!」」

 

 

 その返事にランスロットは満足したのか一度頷いてからその場を下がり、その変わりに再びロマニが前へと出る。

 

 

「きっと一世紀ローマにも召喚されたサーヴァントたちがいるかもしれない。可能であるなら、彼らの力を借りるように。ああ、でも敵対する者に対しては叶わない願いだけどね」

 

 

 と、そんなロマニの言葉にマシュは一つ疑問を抱いたのだろう。軽く挙手をし、ロマニはマシュに発言を促す。

 

 

「はい、それじゃあドクター。敵対サーヴァントと中立サーヴァント。これは反応感知の時点では見分けられないのでしょうか?」

 

「こちらの観測情報として把握可能か。ということだね、確かに出来るに超したことは無い」

 

「だが、どうやって敵対中立を見分けられるのか、という話になる。その辺りはもはやサーヴァント個々人の考え方に由来するものだからな。観測機器じゃあ内面までは観測は出来ない」

 

 

 マシュの疑問にロマニはいい質問だ、と言うように答えそれの続きを横からランスロットが語る。

 実際にカルデアにおける観測機器であるシバとトリスメギストスの両方を併用したとしても生体や魔力反応を読み取るのがせいぜいであり、ランスロットの言った通り敵対中立などのサーヴァントの精神的なモノに区分されているモノまでは数値として分類する事は不可能であった。

 そんな答えにマシュはややその表情を落ち込ませる。

 

 

「すいません、無理を言って。論理的に無理のあるお願いだと分かっています……けれども」

 

「戦闘は避けたいもんね……」

 

 

 マシュの想いを汲み取ったのか、自分も同じ気持ちであるのか立香はマシュの言葉の先を口にする。

 それには流石にロマニもランスロットも申し訳なさそうな表情をするしかない。

 

 

「作戦として考えるなら究極的には不要な戦闘を避けるべきか、と……ですが、いいえ。無理なお願いとは思っていました。すいません、忘れてください」

 

「いいや、こちらこそ済まない。無茶をさせるのは分かってる……だから、ランスがさっき言ったようにサポート・バックアップはボクたちに任せなさい。それだけは約束させてくれ、二人とも」

 

 

 それを聞きながら、ランスロットはシャルルマーニュとアストルフォにレイシフトの準備をさせる。

 アストルフォは前回のを憶えている───かは不明であるが、ランスロットは初めてのシャルルマーニュに説明していく。

 その様子を見たロマニも軽く自分の両頬を叩き、笑みを浮かべる。

 

 

「じゃあ、ぱぱーっとレイシフトと行こうか!」

 

「……ドクター」「ええ……」

 

 

 マシュと立香のジト目を受けつつもロマニはいつも通りの気が抜けるような表情を辞めずに二人の背中を押す。

 

 

「辛気臭いのはやめやめ!精神的にもボクはバックアップしていくぞい!」

 

「いいえ、その……突然そんなにテンションを……」

 

 

 マシュや立香の疑問など、聴こえないと言わんばかりのロマニに二人は軽くため息をつきつつもどこか笑みを浮かべてコフィンの中に入る。

 アストルフォやシャルルマーニュもレイシフトの準備が整ったようだ。

 ランスロットのいないレイシフト、そこに確かに不安はある。だが、信じているとまで言われてしまえば頑張るしかない。故にもう立香の中の不安はどこかに消えていた。

 

 

「プログラムスタート!」

 

 

 

『アンサモンプログラム スタート。

霊子変換を開始 します』

 

『レイシフト開始まで あと3、2、1……』

 

『全工程 完了。

グランドオーダー 実証を 開始 します』

 

 

 

 




FGOものは書くのが大変なんですよね。
 シナリオ確認しながら書かなきゃいけないのでええ。


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