Fate/Grand Order【Epic of Lancelot】 作:カチカチチーズ
3年目……?人理修復中に一度目……修復後に二度目……あれ?3度目って……うっ頭が……
カルデアボーイズ・コレクション
それは何処ぞの変態万能キャスターがホワイトデーに開催し始めた男どもによる謎の企画である。
当初俺とロマニは奴のその提案に首を横に振ったのだが負担は全て奴持ち、男性サーヴァントに着せるコスチュームも設備も全て自分で用意するから、とまあ騒ぎ立て立香がそれに賛同しマシュもまた悲しい事に賛同してしまった。女三人寄れば姦しいとはこの事か、三人による説得とは言えない何かによって俺とロマニは仕方なしに首を縦に振ることとなった。
いや、待て、そもそも約一名女じゃねえだろ……身体はともかく中身オッサンが交じってるんだが。
話がズレたな。ともかくそんなカルデアボーイズ・コレクションだが今回で三回目の開催となり…………ん?……んん?三回?少し待て、そもそもこれは人理修復中に始まって解決して……三回目とはいったいどういう…………
────おっと、気づいてはいけないことに気づきそうだ。安心するんだランスロット、いつもの事さ
……うん、いつもの事だな。それでボーイズ・コレクションもカルデアのサーヴァントが増えていくことで段々と規模が増していき何ともアレな感じである。
例えば昭和か大正風な探偵だったりアウトレイジだったり学園モノだったりカフェだったりとまあ、アレでな……俺自体はそういうのには参加していないんだが段々と規模が大きくなった事でレオナルドだけでは手が回らなくなり俺も服飾作成に駆り出されているわけだ。
流石に当初の約束を反故したからボーイズ・コレクションはやらないと言えば女性サーヴァントやカルデアの女性スタッフからのブーイングが溢れるわけで仕方なくこうして手伝っている。
……わけなんだが。
「ランスロット、どうか貴方にも今回のカルデアボーイズ・コレクションに参加していただきたい」
「我ら円卓の絆を見せるのです、ランス」
「…………どういう事か説明を頼む」
作業室でアーチャー・アラフィフの衣服を仕立てている最中にこの馬鹿共は現れた。
何やら無駄にやる気を出している根菜の騎士と珍しく目を開いて力説する眠り豚。
そんな二人の後ろで困った顔のベディヴィエールに何故ここにいるのかわからないアグラヴェイン。
「…………頭が愉快に常温で沸騰しているだけだ」
「いつもの事、としか言いようがない気が……」
ああ、なるほど。子女に自分らの魅力を伝えたいがためにモテたいがためにこいつらはいつも通り、それは違うだろ、と言われるような方向に全力を注ぐのか。
おい、円卓の騎士は大体駄目な奴ばかりなのか?まともなのは俺とアグラヴェインとベディヴィエールだけか。ケイは泳ぎが変態レベルだぞ?
「……却下だ」
「なんと!?」
「私は悲しい」ポロロン
「当然だな」
「当然ですね」
そもそも仕事が増えるのは嫌なんだ。思えばこの二人はまだ生前の頃も仕事を増やしてくるド畜生だったな。はぁ、辛い。休みたい。
ふう、アラフィフのはこれで終わりか……次は柳生殿だな。ちなみに前世や受肉後でわりと頻繁にこういう刑事モノを観てた……面白いし刑事の一人か二人が大体個性的……アラフィフか。
「ランスロット、お願いします……どうか、どうか我々に救いの手を……!!」
「ランス、あなたは見せたくはないのですか?レディ・マシュやあなたの愛するエレイン姫に!」
「…………うぐっ」
「おい」
「揺れないでくださいランスロット」
いや、そうは言ってもだな。マシュやエレインに勇姿を見せるというのはとてもその魅力的というか、な?
いや、だがしかし。下手に醜態を晒すというのもアレだろう。それを考えればやはり、出ないということで────
「話は聞かせてもらった」ドンッ
「あ、あなたは……!?」
「白い槍の王、ではありませんか!?」
「陛下」
「王よ……」
あっ…(察し)。作業室に勇ましく入ってきたのは我らが騎士王のロンゴミニアドを持ってる白い方の王。うん、ちょっと良くわかんね。
ちなみにだが、黒い方でも白い方でも兜を外しているだけで鎧は纏っていたり男モノの衣服を着ていることが多い。どうやらアグラヴェインへの配慮らしい……うん、アグラヴェインの胃が下手したら死ぬもんな。
ともかくそんな通称獅子王なアルトリアが現れた事で俺は先が見えた。
「卿らの話は聞かせてもらった。ランスロット、騎士として乙女もといおのが伴侶や娘を愉しませるのも必要な事ではないか?卿の事だ、もしも醜態を晒してしまったらなどとらしくない事を考えているのだろうが…………それでも卿は円卓の騎士か!」
「我が王よ……!!」
「王は騎士の心が分かっていらっしゃる」
「…………陛下もこう言っているのだ、やれ」
「…………お疲れ様です、ランスロット」
思いっきり掌返したぞアグラヴェイン。王大好きだなおい、多分本人に言ったら殴り殺される。
そしてお前らは気づいていないだろうが、このアルトリアから何やら良くないものを感じる。具体的にはボーイズ・コレクションに参加した俺らをワインの肴にしようしているという感じのものが。
そんな未来、俺が焼却してやろう。焼却式ランスロット────
「ちなみにだが、エレイン……彼女は期待して待っているそうだ」
「カフッ」
未来焼却失敗。おのれぇ……いや、エレインが期待しているというのならば本気でやるしかない…………。
「…………何とも嵌められた気がしなくもないが、いいだろう卿らに協力しよう」
「「おお……!!」」
「(恨むからな)」
「(ワイン片手に愉しみにさせてもらう)」
本当に許さんぞアルトリア……!!
…………こうして俺のカルデアボーイズ・コレクション参加が決まってしまったのだ。
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「やはり、ここはいつも通り気高い騎士としての姿を見せるべきだと私は思うのです」
「気高い?」
「いえ、ガウェイン卿……ここは女性にとって理想とも言える白馬の王子がいいと思うのです」
「それは異世界の我が王に任せておけ」
ランスロットら円卓の騎士がカルデアボーイズ・コレクションに参加することが決まり彼らはその際のテーマを意見しあっていた。
作業室の一角にホワイトボードを置いて参加するガウェイン、トリスタン、ランスロット、ベディヴィエールが各々の意見────といっても発言しているのはガウェインとトリスタンだけだが────を出していく。
なお、アグラヴェインはランスロットが参加することとなった為に不参加を許された。どうやらアグラヴェインはランスロットを売ったらしい…………がそれを悪いと思っているのかこうして案をホワイトボードに書いていく書記を引き受けていた。
「……はぁ、ベディヴィエール。卿は何かないのか?」
「私ですか?……そうですね、二年前の夏にやった船乗りはどうですか?アレはかなりの好評があったと聞いていますが……」
なかなか決まらない討論に嫌気がさし始めたアグラヴェインがベディヴィエールに意見を聞いてみれば出されたのは嘗てやった事のあるテーマ。ランスロットはその時のことを思い出し頷く。
思い出すは二年前の夏。レイシフトしたら無人島でサバイバルをする事となったあの時の事。作業も順調になっていき暇な時間が多くなってきたある日、獅子王なアルトリアの気まぐれによりランスロットら円卓の騎士六人はコスプレをしてアルトリアの無聊を慰める事となった。
なお、その際にマシュによって撮影された写真はカルデア女性スタッフにたいそう人気だったようだがそれはまた別の話としよう。
「ふむ、確かにあの時の制服は残っている。無論、そのままというのもあれだから多少の手直しはするが」
「いえ、ランスロット。考えてみてください……同じものをやっては我々円卓の騎士の顔に泥を塗る畏れがあります」
「ひいては我らが王の顔にもそうなる可能性がありますよ」
「「「(少なくともお前ら/貴方がたの言動の方が泥を塗りかねないのだが/ですが)」」」
割りとオープンな二人の言葉に対して常識人枠の三人は呆れてしまう。まったくどうしてこの二人はこうも自信があるのだろうか……三人には到底理解できないだろう。
「ともかく、やはり新しいものがいい」
「ええ、乙女の心をこう……鷲掴みにするようなものを」
俺はお前らの首根っこを鷲掴みにしたい、とランスロットは心に思った事を口に出さないようにして考える。安牌なものは何かを……と、そこで乱入者がチラホラ。
「へー、まだ決まってねえのか」
「モードレッドか。何のようだ」
彼らの下に現れたのは同じ円卓の騎士であるモードレッド。その手にはランスロットが数時間前に作ったあんドーナツの入った袋が握られている。
「ここではあまり食べるなよ」
「わーってるって。どれどれ……白馬の王子に気高い騎士?うわぁ……」
「そんな目で私を見るな。私はやらん」
ホワイトボードに書かれている案にモードレッドはあからさまな表情で反応し、アグラヴェインはそれを否定する。どうやらモードレッドはアグラヴェインにそれらが似合わないと判断したようで、ランスロットもベディヴィエールもそれには肯定の意を示しつつも苦笑する。
と、ランスロットはモードレッドから視線を切り一緒に入ってきた従妹のライオネルを見る。
「にしてもお前とモードレッドとは……なかなか珍しい組み合わせだな」
「あ、そうですか?私結構モードレッド卿と話しますよ?ほら、同じ雷系ですし」
金髪ポニテですし。そう、騎士らしくない頭の足りない馬鹿娘っぽくにへらと笑うライオネルに、この馬鹿娘が……とランスロットはやや呆れるもその頭を少し乱暴気味に撫で付ける。
「わわっ、やめてくださいよぉ……崩れるじゃないですか」
「……それは置いといてどうした」
ガウェインとトリスタンの相手をベディヴィエールに押し付けランスロットはライオネルにここへ来た理由を問いただす。その間、モードレッドはアグラヴェインの手伝いと称して紅茶を入れ始めていた。
「えっとですねぇ、我らが獅子王陛下にランスロット卿たちがCBCに出るからそのテーマを決めるのを手伝ってやれ、と言われまして」
「CBC……?いつの間ににそんな略称を……というより王の差し金か」
だって陛下ですよ?そう笑うライオネルにランスロットは疲れたように笑うしかない。
思えばあの獅子王アルトリアがカルデアに来てからランスロットは疲れることが多くなったというよりも生前の疲労度に戻り始めている気がしてならなかった。キャメロットとは別ベクトルの疲れで胃に穴が空きそうな思いでランスロットは日々増えた騎士王の相手をしている。
と、ランスロットはやや後ろ向きになり始めた自分の思考を心のアロンダイトで切り伏せライオネルに協力をしてもらう。
「執事なんてどうですか?」
「……執事か…………アグラヴェインはさしずめ執事喫茶のオーナーか」
「強面の執事じゃないですか?需要ありますって」
「ふむ……モードレッドも執事として動かせるな」
「メイドよりも執事の方が似合いますよね」
「おい、何か言ってるぞ」
「知るか」
ライオネルとランスロットの話し合いは当人らを置いてどんどんと進んでいく。
なお、話が終わった時にはベディヴィエールに愚痴愚痴と文句を言われ流石のランスロットもそれには大人しく聞くこととなった。
思い返すは二年前────
あの夏のある日の事、暇を持て余し海で戯れる事に退屈しだした獅子王の一言
────卿らに我が無聊を慰める栄誉を与えよう
絶対に面倒事だ、と判断したランスロットは泉に猪狩りを、トリスタンは川釣りをするべく逃げ出すものの獅子王の尖兵と化したモードレッドにより捕縛され獅子王の無茶振りを聞くこととなった。
モードレッドより没収し本来の舟としての姿を現したプリドゥエン。興が乗った影の国の女王により流麗な船員服を着込んだ六人の騎士は獅子王の無聊を慰めるべく凡そ三日ほどの奉仕をするのであった────────
【ナイツ・オブ・マリーンズ】
不夜「ところでランスロット、泳ぎの心得は?」
凄烈「無論あるとも。水蛇の群れが住まう妖川であろうとも泳いでみせよう。卿は?」
不夜「私は嵐のただ中にある川を横断する程度ですね」
不要「それを程度で済ませていいのか、私には分からんのだが……」
暴走「太陽脳筋にそういうところ、求めちゃ駄目だろ…………ところでトリスタンとベディヴィエールはどうした」
凄烈「トリスタンなら無断で私物を持ち込んだ事を船長室でベディヴィエールに説教されているよ」