こういう話もっといっぱい書いていたかったと、最後の番外編を書いてて思いました
終わるっていうのは悲しいなぁ
後、佐世保鎮守府の日常は『はこちん!』の作者様である輪音さんがほとんど考えてくれました
ありがとうございました
■豆知識前書き
佐世保の提督は本気で陸奥になるビームの研究をしている
もちろん自分が陸奥になる為である
(なぉ、絶対完成しない模様)
あと最後の番外編なのに新キャラとか登場させてしまった
思ったよりキャラは立ってるけどもう出番は無い(無慈悲)
■ 佐世保提督の日常(覚醒偏) ■
「はぁ・・・・・・」
豪華絢爛な執務室で溜息をつく大柄の美中年
佐世保鎮守府の提督であり、一期の十英雄の一人でもある上堂薗(かみどうぞの)提督である
かつては生きた深海棲艦を串刺しにして海岸にさらし、串刺し公とあだ名され、狂気を以て敵の進攻を防いだといわれるほどの恐ろしい逸話を持つ提督・・・・・・なのだが、今は見る影もないほど消沈している
その様子を見ていられず、秘書艦の『大和』は声をかけた
「あのー、提督、大丈夫ですか・・・?」
大和は自分の決戦戦艦としての能力の高さを把握しているが、自分を運用するに当たっての資材がどれだけの量になるかも正確に把握している
その上で自分と同型艦である『武蔵』と共に資材を準備し適正に運用し、育ててくれた上堂薗提督の手腕と心意気に、深い尊敬と感謝の念を抱いていた
もっとも、そんな主の思いは目下、まったく違う方向に向いているのだが
「大丈夫じゃないわよ、まったく。彼がいないだけで、これからのことを考えるといろいろ気が重いわ・・・・・・暗闇の迷宮で光を失ったようなものよ、とほほほほ」
「は、はぁ・・・」
そんな有能で花が咲き誇るような自信に満ちた自分の主が、例の豚提督が国外追放という名の処刑を受けてからというもの、萎れた花のようになっている姿に大和はほとほと参っていた
そんな主にもう一人の秘書艦である『武蔵』が声をかける
「その彼が残してくれた潜水艦のことなんだが提督」
「なによ」
力なさげに武蔵に顔を向ける上堂薗
「その、野原提督に言われていたように、彼女らを最大限活用したかったら資材保管用の大型倉庫と、彼女達専用の入渠施設をその隣に作って、後は好きにさせてくれという事で・・・・・・そのとおりにしたんだが・・・」
そう言って上堂薗に資料を渡す武蔵
「彼女らいったい何人いるんだ?資料では伊19、伊8、伊168、まるゆさん、伊58、伊401の六人という事だが・・・・・・明らかに彼女達が遠征から持って帰ってくる資材の量がその・・・・・・おかしいぞ?」
受け取った上堂薗は力の無い目で資料に目を通していたが、確認を終えるころには驚きを隠せない顔になっていた
「やだ、なにこれ恐い。何がどうなったら一週間で大型倉庫の半分が資材で埋まるのよ・・・・・」
「そ、それが、どうもどこかから敵の補給艦や空母を破壊してその中身の物資を接収してくるようで・・・・・・、しかも彼女ら独自のノルマがあるらしく、この前など『あ号い号ろ号完了!!さぁこれからが本番でち!!行くぞイムヤ(別個体)ぁああああ!!』などと血走った目で言っててな。恥ずかしながらその、すこし恐かったぞ・・・・・・」
オリョクルの闇は深い
「しかも錬度がおかしい、この前うちのトップクラスの水雷戦隊と鎮守府内で演習をしたんだが、百個近く投下した爆雷が一発も当たらないとかで、涙目になってたぞ・・・・・・」
きっとカッコカリをしなくても錬度が臨海を突破して壁を超えてしまったに違いない
やオ深(やはり・オリョクルの闇は・深い)
驚いた様子で資料を見ていた上堂薗だが、しばらくして机に資料を置くと、ふうと息ため息を漏らす
「はぁ・・・・・・こーんな優秀な子達を託してくれたんだから、私もいつまでも落ち込んでらんないわね・・・・・・」
そう言って上堂薗がくすりと笑みを漏らす
秘書艦の二人は、それが萎れていた花が活力を取り戻し再び花開くかのような光景に見えた
「高雄と愛宕を呼びなさい!!任せていた企業経営と込みで今後の戦略を立てるわよ!!こんだけ資材があれば何だって出来るわ、それこそ、彼をドイツに迎えに行く事だって!!」
『はい!!提督!!』
活力を取り戻した主の姿に目を輝かせる二人
彼が付近海域と九州の軍事、経済、政治を完全に掌握し、独立国家に近い強固な自治権を持って九州に君臨する一年前の出来事である
■ 佐世保鎮守府の日常(乱世偏) ■
佐世保鎮守府
南国の風吹く、串刺し公の本拠地
佐世保バーガーがばり、うまかー!
風鈴のように揺らめくは敵の残骸
それらが海岸沿いに並ぶ光景が特色のちょっとやんちゃな海軍基地は、それ故に近隣住民からおそれられていた
野原提督の指示に従ってこの地へ着任した潜水艦たちは居酒屋鳳翔で何本もの日本酒や焼酎を豪快に空け、イムヤによる単騎抜け駆けに怒り狂って呪詛さえ漏らしていた
まともな神経の者が聞いたら、卒倒するか失神するか失禁するであろう
事実、提督の秘書艦である大和と武蔵は早々の撤退を指示し、第一艦隊の龍驤を始めとする軽空母群や重巡洋艦群の脱出は難なく行われた
それを知らない古参の天龍と龍田がその少し後に入店し、今は潜水艦たちの執拗な愚痴に愚直に付き合っている
軽巡洋艦たちからすれば、恩義(三話参照)ある野原提督へのささやかな恩返しのつもりであった
だが、その認識は甘かった
カスドースよりも甘かった
「あと一撃……あと一撃あいつの腹にぶち込んでいたら……」
「ゴーヤたちもこのまま行くべきでち」
「あのね、この魚雷がね、とってもとっても疼くの」
「過去にこだわって未来に背を向けるな、我々がすべきはその逆なのだけど、まるゆも彼女の後追いをすべきと思います」
おお、とか、ああ、としか言わない世界水準の眼帯娘
ええ、とか、そうねえ、としか言わない薙刀軽巡洋艦
こんなに酒癖が悪いとは思わなかった
鳳翔は早々に暖簾を店内に入れ、奥で明日のための仕込みに入っている
彼女はたまに無言でなにか食べ物と酒を持ってきて、空いた皿やコップを引っ込めるだけだ
料理上手な軽空母手作りの肉じゃがやカサゴの煮付けや佐世保バーガーなども、今夜はその巧みなる味わいが少し薄れているように思われた
潜水艦たちの不満の噴出は止まらない
酔って尚一層激しさを増し始めている
ちくわ大明神の力も及ばない程である
上堂薗提督は今頃ベッドの中で報告を受けているだろうが、なんの手も打たないだろう
少なくとも、目に見える範囲内にては
「お前らも来るでち!」
「そうよ、そうよ。提督への恩返しをするといいわ!」
「決まりね! 私たちもイムヤと提督を追う! 誰がなんと言おうと!」
妙に盛り上がる潜水艦戦隊
軽巡洋艦姉妹はいつの間にか酔い潰されていた
翌朝
二日酔いで頭がガンガンする軽巡洋艦二名を引きずって海に出ようとした潜水艦戦隊は、なぜか水着姿の上堂薗提督とかち合う
「待っていたわよ」
昨今の激戦を感じさせない、張りのある声音
全身に闘気が満ちている
セブンセンシズ大開放だ
無言を貫くは潜水艦たち
「わかっていたわ。もっと早くに見せるべきだったわね」
がさごそとどこからともなく(身に着けてるのはブーメラン水着のみ)手紙を取り出した彼は、ひょいとそれを放り投げた
『潜水艦の皆の衆へ』
不恰好な字体
野原提督の直筆だ
間違いない
だが、出された場所が問題だ
何故、手に持ってこなかった?
結局、巨乳軽巡洋艦が読んだ
泣いていたようにも見えるが、余程感動的だったのであろう
その後、潜水艦たちは野原提督を追いかけるのを止めた
「仕方ないわね。今回の呑み代はアタシのツケにしてあげる」
上堂薗提督が口調に似合わぬ男前な発言をした
それで済んだら安いものだと思っている
天龍と龍田はそのまま彼女たちのやけ酒に付き合わされ、大破し、その後入渠した
姉妹の周りは、二名を心配する駆逐艦たちで溢れることになる
面倒見のいい姉貴分たちと、その妹分たちとの心温まる交流だ
翌日
歴戦の軽空母からおそるおそる差し出された請求書は、コングロマリットの総帥である上堂薗提督ですら一撃大破する額だった
やぐらしか佐世保鎮守府は今日も元気ですばい
■ 大湊提督の日常(絶望偏) ■
大湊鎮守府(正式には警備府)
その中央棟の廊下を、整ってはいるが生意気そうな顔をした若い提督が歩いていた
といっても提督の象徴である白い軍服はかろうじて着ているものの、頭にはアイヌ文様の布を巻き、ポケットに手を突っ込んで歩くその姿はやんちゃ盛りの高校生にしか見えない
実際彼は今年17歳になったばかりで、横須賀ではなく二年前に大湊鎮守府の最高責任者である烏丸提督に直接見出だされた提督候補だった
今は見習いとして毎日烏丸提督の後を付いて回っている
しかしその素質は目を見張るものがあり、二期以降の提督たちと比べてもなんら遜色ない実力をすでに身につけていた
と、いってもこの鎮守府には現在世界最高峰の提督である烏丸提督しかいなく、比較対象がそれになる為本人からしたらまだまだという自覚しかなかった
今日は朝から烏丸提督の機嫌が悪かったので工廠で資材の確認をしていたのだが、いつまでも顔を合わさないわけにはいかず、重い足取りで提督執務室に向かっていると扉の前に烏丸提督の秘書艦である金剛が待機していた
普段は底抜けに明るい金剛の顔が曇っている事から、若い提督は烏丸提督が未だ超絶不機嫌である事を悟ってしまった
「あーーーー、おやっさんまだ機嫌悪い感じっすか・・・・・・」
「oh...ボーイ・・・その通りデース、さすがにもう壊すもの無いと思うのデスが・・・」
そう言って扉を見る金剛、その瞬間何かが壁にぶつかる大きな音が響き、烏丸提督の絶叫が遅れて聞こえてくる
金剛と顔を見合わせた若い提督は、お互い覚悟を決めて扉を開いた
「くそがああああああああああああ!!!横須賀も佐世保も舞鶴も呉もぉおおおおおおおおお!!!ドイツもコイツもアホばっかりじゃあああアアアアアア!!!」
そう言って鎮守府圏内の企業から献上された高そうな絵を壁から引き剥がし、フリスビーのように窓に投げつける烏丸提督
絵は窓を突き破って外に飛んで行った
(後ほど夕立がうれしそうに咥えて持ってきた)
「おやっさん、いつまでその調子なんすか・・・・・・艦娘達も怖がってるんでいい加減機嫌直してくださいっすよ」
肩で息をする烏丸提督に若い提督は物怖じせず話しかける
その度胸こそ、烏丸提督が見込んだ資質でもあったのだが、今はどう考えても間が悪い
烏丸提督はぎろりと若い提督を睨む
「おうボーイ、お前大阪警備府の野原提督の事、当然知ってるよな?」
「当然じゃないっすか・・・・・・」
若い提督は苦々しげに表情をゆがめる
数日前、軍事法廷で裁かれ海外移籍という名の処刑を執行された豚こと野原提督
そして
かつて天狗になっていた自分の鼻っ柱を完膚なきまでにへし折った豚提督の姿を思い出す
烏丸提督に借りた最高の戦力で挑んでなお、かすりも出来なかった無敵の潜水艦隊を
「お前、今ならあいつんとこの潜水艦隊対策思いつくか?」
「なめんで下さい、あれから俺死ぬほど研究してるんすよ、三つ四つは用意してあるっす」
はっきりとそう明言するも、その顔は苦々しげに口をゆがめていて
「ただ、どの対策も超大量の爆雷飽和攻撃が最初に出来るっつーアホみたいな前提っすけど・・・・・・」
そう続けた
「それでいい、自信満々に勝てるって言ったらぶっ殺してた所だ」
「でも言っちゃなんですが、もう野原提督と戦うなんてこと無いでしょ」
烏丸提督はその言葉を聞いて、出来の悪い生徒に教師がするような表情を浮かべた
「だからお前はアホなんじゃ。もしお前が敵側、たとえば深海棲艦側に居たとしてあいつの事をよく知ってるとするな。さて海に一人っきりでぷかぷか浮いてるあいつを見たとしよう。どうするよ?」
「は?そんなのウルトラチャンスじゃないっすか、そっこう魚雷ぶち込んで・・・・・・あ」
そこで若い提督は重大な事に気がつき、片手で顔を覆った
明らかに敵陣から切り捨てられた超有能と重々承知している提督が一人で海の上
「いや、いやいやいやいやいやいやいや、いくらなんでも。それにあいつら知能なんて、っていや待って待って待って。そういやこの前おやっさんニヤニヤしながら、今はまだ秘密だけど独自の文化を持つ国と交渉を開始したとかって言ってたっすよね・・・・・・」
「・・・・・・おう」
若い提督は思い描いた、ついでに一緒の部屋に居た金剛も
あの豚提督に訓練され率いられた、海の底に大量にうごめく一騎当千の深海棲艦潜水艦の群れに挑む自分の姿を
あと暗黒面に落ちた豚が超いい笑顔で コホーコホー と言いながらサムズアップしていた
「・・・・・・っう、うわああああああああああああ!!!ふっざけんんなああああああああああああああああああ!!!」
そして師と同じく提督執務室にかけてあった絵を見事な円盤投げのスタイルで全力で投げた
勢いをつけるため体は二周回転させた(こだわり)
(後ほど時雨がうれしそうに咥えて持ってきた)
「くそがああああああああああああ!!!横須賀も佐世保も舞鶴も呉もぉおおおおおおおおお!!!ドイツもコイツもアホばっかりじゃないっすかあああアアアアアア!!!」
そこには師とまったく同じことを叫ぶ若い提督の姿があった
「おやっさんわかってんならちゃんと殺せよおおおおおおおおおおおお!!!あほぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「あほぉおおおおおおおおおおおおおお!!!殺したら速攻でえええええええ!生き残った潜水艦隊と佐世保と舞鶴と呉が敵になるだるぅおろうがあああぁぁぁああああああああああ!!!」
人生の酸いも甘いも経験した老獪な男がマジ泣きしていた
あきらめる事を知らない熱く燃える若狼もマジ泣きした
歴戦の艦娘を束ねる英国生まれのネームシップ戦艦ですら青い顔でコーヒーを淹れ始めた
誰よりも老獪な思考と、若さ溢れ出る才能を持つ故に、最悪の斜め上を予想ができてしまう大湊陣営はこの日、涙の海に沈んだ
がんばれ大湊、負けるな大湊、老獪さと若い力を合わせて訪れるかもしれない最悪の未来に立ち向かえ
大湊の戦いは始まったばかりだ!
続かない
数年後、とある知らせを聞いた上堂薗提督が
「こんなに悲しいなら愛なんていらないわ・・・・・・」
と修羅になるルートがある(絶対書かない)
Q、実際佐世保にいる潜水艦は何隻?
A、これを見てる提督がオリョクル用に保有してる数×5くらい
※なぜ同じ艦種個体が共存できるかは次の設定話参照
--------------------
どの道、大湊は資源の関係で絶対豚を殺せなかった
烏丸提督も豚の事が超好きだが、感情と行動を分ける事が出来る人間なので、必要なら感情は二の次で動ける(多分
また烏丸提督が最悪の可能性に気がついたのは豚を見送って、自分の鎮守府に戻り、机に座って金剛が入れた紅茶の茶柱を指でつまみ上げた瞬間
ちなみに深海棲艦に知能が有ると知ってるのは、この時点で世界に烏丸提督ただ一人、たぶん、いや、どうだろう?
あと若い提督、ばればれだと思いますが秘書艦は補給艦の『神威』
おそらくメイビー書かないけど多分最後は老衰で死ぬかもしれない烏丸提督の死に際にちゃんと名前を呼ばれて
「・・・・・なんだよ・・・ボーイが付いてないじゃないっすか・・・・・・」
とガン泣きする未来しか見えない
また後年、爆雷をつめた浮く箱を一定間隔で神威やあきつ丸に散布させ
それを後ろから来た水雷戦隊が爆雷を走りながら補給し、ばら撒くという高錬度かつ危険すぎる作戦を立案、実践する
その時の決め台詞は深海棲艦が相手でも
「カーニバルの始まりだ、くたばれ豚野郎!」両手中指立て
だった
豚「控訴も辞さない」
蛇足もいいところですが番外編シリーズもこれで終わりだと思います
設定関係をまとめたものを後日に投稿しますが、後書きは書かない予定なので、これがお別れの挨拶になるかと(おそらくメイビー)
それでは、番外編まで見ていただきありがとうございました
自分の感情を知るために書いた小説だったにも関わらず
感想をもらったり、お気に入りに登録してもらったり、本当に楽しい時間を過ごさせて頂きました
またどこかでお会いできるのを楽しみにしています
(攻略の進んでいない夏イベの画面を見ながら)
おまけ
■ 舞鶴提督の日常(断罪偏) ■
赤城「うめうめ」
加賀「うめうめ」
竜崎提督「働かずに食べる飯はおいしいかい?おかわりもいいよ、しっかり食べるといい」
チビ(ガクブル)