魔法少女ユエ~異世界探険記~   作:遁甲法

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さっそく感想を書いて下さった方、ありがとうございます。
感想貰うのって嬉しいものですね。

ラカン式強さ表でどの辺りになるか、自分の妄想力をフル回転させ、原作を両方読み返して
形にしてみますので、しばらくお待ち下さい。

そんなこんなで第二話です。よろしくお願いします


ゼロの旅2

 ここが何処なのか等はあまり考える必要はないですね。状況証拠で既に答えは出ているです。

魔法世界の地図にも旧世界の地図にもない地形、地名、国名。魔法世界に行った時は事前にある程度調べてましたし、記憶喪失になったおかげで向こうの人間だと思い込んでいたので、まるで違和感を感じませんでした。しかし今回は一切の情報もなしで、広い異世界に放り出されたです。

 知り合いもなく、帰るアテもない。

あるのは魔王に仕込まれた戦闘技術とサバイバル技術。

麻帆良で鍛えたダンジョン踏破技術。・・・おや?これは使いますかね?

 持ち物は全て亜空間倉庫に入っているので問題はなし。着替えから武器、暇潰し用の本、魔法の教本や麻帆良の珍妙ジュース等、しばらくは何不自由なく生活できます。

 そういえば出発の際、のどか達から餞別だと言って渡された荷物をまだ開けてませんでした。

アリアドネーに着き、落ち着いたら開けるように言われてそのままにしてたです。

 何が入っているかは分かりませんが、落ち着いたら開けてみましょう。

中身次第で次の手が変えられるです。

 そうやって、これからどうするか等を考えているとドアがノックされたです。

 

 「はい、どうぞです」

 

 「失礼します。ミスタ・コルベールに頼まれた御夕食をお持ち致しました」

 

 そう言って黒髪のメイドさんが入って来たです。秋葉原の喫茶店で使われているような物とは違い、落ち着いていて無駄な飾りがなく、作業の邪魔をしない本来のメイド服です。

 メイド服自体は茶々丸さんも着て居たですが、あれはエヴァンジェリンさんの趣味のせいか結構可愛いデザインでしたので、本格的なメイド服を見るのは初めてです。

 

 「どうぞ」

 

 「わざわざありがとうございます」

 

 私が忙しいらしいこの時間にわざわざ持って来てくれたメイドさんにお礼を言うと、とても驚いた顔をしたです。

 

 「えっと・・・何をそんなに驚いているです?」

 

 不思議に思ったので聞いてみると、

 

 「ハッ!? す、すいません!これ位で貴族の方にお礼を言われるとは思ってなかったもので、つい。失礼しました!」

 

 そんな事を言いながら頭を下げて来たです。

お礼を言ってそこまで驚かれるとは思いませんでした。

 

 「いえ、構いませんよ。それと私は貴族ではないですから、かしこまる必要はないです」

 

 「え!そ、そうなのですか?」

 

 「えぇ。そもそも何故貴族と間違われたのかと言う方が不思議です」

 

 私は一般家庭の出ですからね。いいんちょや千鶴さんならともかく、普通私を見てそうは思わないでしょう。

 

 「い、いえ、そのぅ、メイジだとミスタ・コルベールが仰っていましたし、お召し物の仕立てがとても立派でしたから。そのようなもの私達平民では手が出せませんので」

 

 メイジ。魔法使いの事ですね。

 それと平民に貴族ですか。そんな身分制度がまだある世界なのですね・・・。

 

 「この服はある学校の制服なんです。学ぶ意識のあるものはたとえ死神であろうと受け入れると言う方針を持った国にある学校でして」

 

 「平民でも・・・ですか?」

 

 「えぇ。と言うか私達の所では平民やら貴族やらと言った身分がないのです。

かなり昔に廃止されました。今はまぁ、居ない訳ではないですし私の友人には王族の方も居ますが、普通にクラスメイトとして接していたですね」

 

 「お、王族のご友人がいらっしゃるんですかっ!?」

 

 王族と言っても明日菜さんですし、きっと彼女が考えている人物像は的外れです。

なんですってーー!?なんて声が聴こえてきそうですが、それは置いておくです

 

 「まぁ、ともかく私は貴族ではありませんから、普通にしててください」

 

 「は、はい。分かりました」

 

 そう言って彼女はニッコリと笑いました。

黒髪におっとりした雰囲気。なんだかのどかを思い出すですね。あ・・・

 

 「そうです、忘れてました。私はユエ。ユエ・ファランドールと言います。どうぞ、よろしくです」

 

 先程は言われるまで忘れてましたが、今度は大丈夫です。

 

 「こちらこそよろしくお願いします!私、シエスタと言いまして、ここトリステイン魔法学院でご奉公させて頂いております」

 

 そう言って上品にお辞儀をするシエスタさん。こういう所は流石にしっかりとした教育がされているですね。お辞儀だけでとても綺麗です。ハルナに連れられて行った秋葉原のメイド喫茶のメイドとは一線を画してるです。

 いえ、本職とウェイトレスを比べるのは間違いですね。

 

 「それでは戴きます」

 

 「どうぞ、お召し上がりください」

 

 持ってきてもらったシチューを一口食べて、その美味しさに驚いたです。

 

 「むっ。これは美味しいですね」

 

 賄いくらいしか出来ないとコルベール先生は言っていましたが、これはもう一流レストランのメインメニューだと言われても違和感がないです。

 

 「お口に合ったようで何よりです」

 

 そう言って、少し誇らしげにするシエスタさん。

自分達が作った自慢の料理が美味しいと言われ嬉しいのでしょう。

 

 「えぇ。これほど美味しいシチューは早々食べられません。

 事故でここにきた時はどうしようかと思いましたが、こんなシチューが食べられたのならむしろ運が良かったですね」

 

 「事故、ですか?」

 

 キョトンとした感じで聞いてくるシエスタさんに私はここに来る事になった経緯を話しました。

 

 「ドラゴンの群れに襲われたのですか・・・

 それは大変でしたねぇ。 しかし、それを追い払うなんてすごいです!

 ミス・ファランドールはとても優秀なメイジなんですね!」

 

 なにやらとても高評価されてるです。私は一般的な魔法使いでしかないのですが。

 

 「追い払うくらいならどうにかなるです。本来ならしっかり船に戻るはずだったですが、失敗したです」

 

 「それでもです!

 でもロバ・アル・カリイエでは平民でも魔法が使えるんですね」

 

 「こちらでは使えないのですか?」

 

 「はい。メイジになれるのは貴族様だけです。なので最初貴族なのだと思ったんです」

 

 魔法は誰でも使えると思って居たのですが、どうやらここでは違うのですね。

世界が違うとこういう所も違ってくるのですね。なかなか興味深いです。

 

 「メイジとは貴族の別名みたいな感じですか?」

 

 「いえ、メイジとは魔法を使える人達の事で、貴族様は皆メイジですが、メイジが皆貴族と言う訳ではありません」

 

 んむ?どう言う事ですかね?

 

 「あまり大きな声では言えないのですが、家を勘当されたり捨てたりした方が身をやつして傭兵になったりするので、貴族ではないメイジもいらっしゃるんです」

 

 貴族として生活するより自由にしていたい人とかも居そうですしね。

あれで身分の高い人というのは大変らしいですし。明日菜さんがボヤいてました。

 お姫様って椅子に座ってボーッとしてるのが仕事だと思ってたら酷く忙しくて嫌になるとか。

 明日菜さんは立場から言って特殊ですから仕方ない気もしますが。

 

 「ご馳走様でした」

 

 シエスタさんからこの世界の触り部分を聞きながら美味しい夕食を平らげます。

これ、レストランで出て来たら幾らぐらいなのでしょうね?千円超えるのではないでしょうか。そう考えるとなんとなく贅沢した気分になるです。

 

 食べ終わり、満足げに「抹茶コーラ」を飲んでいると、

 

 「そうだ。食事が終わりましたら学院長室に案内する様言われてるんです。

 すぐに向かいますか?って・・・・あの、それどこから?」

 

 そういえば、学院長室に行こうとしたらお腹が鳴ったのでした。

先程の恥ずかしさがぶり返してきたです。

 

 「これですか?これは私の亜空間倉庫、えっと、魔法で出し入れ自由な倉庫があるのですが、そこから出したです。

 飲んでみるですか?」

 

 そう言って私は飲んでいた「抹茶コーラ」を手渡します。

ふっふっふっふっ。異世界にも珍妙ジュースを流行らせてやるです。

 

 「え?あ、はい。頂きます。

 魔法ってそんな事も出来るんですね、すごく便利そむぐっ!?」

 

 シエスタさんが一口飲んで吹き出したです。

 

 「ゴホッゴホッ!な、なんですかこれ!?なんか苦くてトロッとしてて口の中に何か刺さりましたよっ!?」

 

 やはり炭酸はまだ無かったですか。石作りの建物から言って中世の文明レベルみたいですし、飲み物も確かもっぱらワインとかだったでしょうか。お酒には詳しくないので解りませんがビールとかが出来るのはもっと後な気がしたです。

 それならコーラはまだ早かったですかね。

 

 「抹茶コーラという私の国の飲み物で、わりと一般的な飲み物なのですが、こちらの人には口に合わないようですね」

 

 「これ、一般的に飲まれてるんですか・・・

 私、東方に行ったらなるべくその土地の物は飲まないようにします」

 

 さらりと混ぜた嘘を信じ彼女は一つ可能性を減らしてしまいました。

 布教失敗です。

 

 「まぁ、普通に水やらワインやらもありますから、もし行ったとしても大丈夫ですよ」

 

 「あ、そうなのですか。よ、よかったです」

 

 ものすごい安堵の表情です。そこまでですか?

 

 「でもお水は高いので、やはり私はワインだけでいいです」

 

 水が高い?

 そう言えば中世のヨーロッパ当たりは衛生面がまだ拙く、水などもそのまま飲むことが出来ないほど汚れていたと聞いた事があるです。

 まき絵さんがエヴァンジェリンさんは中世の生まれだと知っていろいろ聞いてた時、私もそれとなく聞いていたですが、今では考えられないですね。

 

 そう考えると日本は恵まれてるですね。拘らなければ蛇口をひねるだけでいつでも水を飲むことが出来るのですから。

 

 そんな無駄話をしている間にシエスタさんは片付けを完了してました。

流石本職のメイドさん。手際がいいです。

 

 「では、ミス・ファランドール。学院長室までご案内いたします」

 

 「よろしくです」

 

 シエスタさんは片付けた食器を台車に乗せ、ドアから出て行きます。

私もそれに続き、目覚めてから初めてこの部屋の外に出るです。

 

 異世界だと結論付けはしましたが、よく考えるとまだ森とこの保健室しか見てないのですよね。一体どんな所か楽しみです。

 

 「あ、シエスタさん」

 

 「はい?なんでしょう?」

 

 「私の事はユエで結構ですよ?

 ミス・ファランドールとかしこまって言われるとむず痒くなるです」

 

 「そうなのですか?では、これからはユエさんとお呼びしますね」

 

 「えぇ、よろしくです。

 なにせ私の国ではミス・なんちゃらなんて呼び方はしなかったものですから、なれなくて」

 

 日本どころかアリアドネーでもそんな呼ばれ方しませんでしたしね。

しかも、ファランドールはコレットから借りた名前です。

魔法世界での公式な書類は全てファランドールで通してましたので、私のもう一つの名前と言っても間違いではないですが、やはり自分の名前で呼ばれたいです。

 

 むむむ・・・

それはそれとして、

 

 「シエスタさん。」

 

 「は、はい?なんでしょう?」

 

 緊急事態のせいで私から溢れる緊張感にシエスタさんも戸惑い気味に振り返ります。

しかし、そこは気にしてはいられません。何故なら・・・

 

 「シエスタさん、緊急事態です。私の質問に速やかに答えてください」

 

 「え?え?な、なんでしょうか?ユエさん」

 

 顔を強張らせて緊張するシエスタさん。

しかし、かまっていられません。もうすぐ玄関なのです!

 

 「お手洗いはどこですか?」

 

 きっと私の顔はとても真剣な表情をしてるでしょう。

それはそうです。この歳でお漏らしなど!できますか!!

 

 「あ、あぁなんだ。それでしたら次の角を左に曲がった先、右手側にありますよ」

 

 「わかったです!ありがとうございます!」

 

 シエスタさんは何故か微妙に傾きながら、お手洗いの場所を教えてくれました。緊急事態と言ったから何かまずい事が起こったと思ったのでしょうが、お手洗いに行きたいだけと分かって苦笑いしてます。

 いいんです、呆れられても。それでも私は行きたいのです。

 お手洗いにっ!!

 

 「そ、そんなに我慢してたんですか・・・?」

 

 微かに戸惑ったようなシエスタさんの声が聞こえましたが、

私は教えられた場所にダッシュで飛び込みました。

 

 

 

 

 用を済ませて改めて学院長室に連れて行ってもらいます。

ヨーロッパにある古い建物のような石作りの壁や、所々ある細かい細工がなされた燭台など、何かタイムスリップしてきた感じがします。

 

 異世界じゃなく、魔法世界の過去とかだったりするのですかね。

魔法技術ばかり勉強していて、魔法世界の歴史は適当にやっていたのが悔やまれるです。あとで歴史教本を見直してみるとしましょう。

 

 「ここが学院長室ですよ、ユエさん」

 

 そう言って豪奢なドアの前に連れてこられました。

ここもかなり豪華な細工が成されてます。聞けばここは貴族の子女が通う学校で、

教師も全員貴族なのだとか。なので、それ相応にお金がかけられているそうです。

 

 コンコン

 「オールド・オスマン、ミス・ファランドールをお連れ致しました」

 

 「うむ、ご苦労。入りなさい」

 

 低く、威厳のある声で入室の許可が降りたです。今のが学院長ですか。

 

 「失礼します」

 「失礼するです」

 

 私はシエスタさんに続いて部屋に入りました。

高い塔の最上階にあるこの部屋は煌びやかな贅沢さはないものの、知識の乏しい私から見ても上等な代物と分かる調度品が並んでいます。

 

 入って正面の重厚な作りの机に白く長いヒゲを生やした老人が座っています。

 むぅ、見ただけでわかるです。この人は相当強いですね。どことなく麻帆良の学園長を彷彿とさせる雰囲気を漂わせているです。

 さすがにあんなひょうきんな性格はしてないでしょうが。

 

 「わざわざすまんの。私がこのトリステイン魔法学院の学院長をしているオスマンというものじゃ。君が、今日行なわれた使い魔召喚の儀に巻き込まれてこの地に来てしまった東方のメイジじゃな?」

 

 「はいです。ユエ・ファランドールといいます」

 

 「うむ。ミス・ファランドール、だいたいの事はミスタ・コルタールから聞いておる」

 

 「オールド・オスマン、ミスタ・コルベールです」

 

 部屋の隅に置かれた机に座っていた女性がそう訂正しました。

今、ナチュラルに名前を間違えたですね、この老人。

 私も一瞬間違えて覚えたのかと焦ったです。

 

 「おおぅ、そうじゃった。まぁ、それはおいといて、ミス・ファランドールとこれからどうするかを話さなければならない。君、紅茶を用意してくれんかね?

 紅茶でも飲みながらゆっくりと話そう」

 

 シエスタさんが軽くお辞儀をして部屋から出て行きました。

私は手振りで薦められた椅子に座り、何を話すか考えます。

何せ全くの異世界。何の後ろだてもない今の状態では生活するのも大変そうです。

持っている荷物も有限です。そう長くは持ちません、つまりなるべく使わずに生活できるようにしなければならないのです。

 アリアドネーに入っていた時は奨学金という形で生活費が出ていたので問題ありませんでしたが、今回はそうできるはずがないです。つまり、これから生活費を稼ぎつつここで勉強させてもらえるようにしなければならないわけです。

 いえ、この老人が帰り方を知っている可能性もゼロではないですが、あまり現実的ではないです。知っていれば全て解決なのですが。

 

 まずは帰り方。次にここでの生活基盤の交渉。少なくとも、ここの図書館などの調べる事が出来る施設の使用許可を勝ち取らねばなりません。

 

 「さて、ミス・ファランドール。まずは済まなかった、うちの行事に巻き込んでしまって」

 

 そう言っていきなりオスマンさんは頭を下げてきました。

これには面食らったです。ここにいる教師は皆貴族と聞いていたですし、その一番偉い方が簡単に頭を下げるとは。

 もっと尊大な感じでくると思っていたです。

 

 「い、いえ。聞けば召喚者は呼び出す物を選べないと言うですし、完全に事故なのですから謝らないで欲しいです」

 

 「そう言って頂けるとありがたい」

 

 そう言ってオスマンさんは頭を上げ、上品な笑顔を見せたです。

 

 うぅ、なんだかお爺様を思い出させる佇まいです。懐かしくて、少し嬉しくなるです。

 

 「しかし、まずは謝ろうと思っておったのじゃ。何せ君を元いた場所に帰す方法が分からないのだから」

 

 ここの最責任者でもわかりませんか。

予想通りですが、流石にちょっとへこむですね。

 

 「いえ、コルベール先生も言っていました。使い魔を召喚する魔法、サモンサーバントは一方通行で送り返す術はないと」

 

 「うむ。何せ使い魔召喚の儀は神聖な物。やり直しなど出来んし、一度呼び出した物は一生共に過ごすパートナーになるんじゃ。送り返す事などそもそも想定してないのじゃよ」

 

 一度結んだ契約は一生ですか。

 

 「使い魔は何体も召喚できるのですか?」

 

 「まさか!一人一体じゃ。苦楽を共にする大切な家族となるもの、人生でたった一度しか呼び出す事は出来ん」

 

 一人一体ですか。何人ともチュパチュパやってるネギ先生とかこっちの人にとっては信じられないでしょうね。

 

 「つまり気に入らないと言ってやり直すとかは出来ないのですね。

 そして、何が呼び出されるかはやって見るまで分からないと」

 

 「うむ、そのとおりじゃ」

 

 「そう考えると、私は運が良かったですね」

 

 「ほぅ?一体何故そう思うのじゃ?」

 

 何やら不思議そうにしているオスマンさんに、私は何故そう思うのか教えるです。

 

 「私はどことも知れない森の中で彷徨っていたです。

 その召喚の儀がなければ未だに森の中でウロウロしてたでしょう」

 

 「ほっほっほっ!なるほどのぅ、そう言う考えも出来るのぅ!」

 

 破顔して笑うオスマンさんに遠い昔のお爺様が重なります。

優しそうな笑顔、落ち着いた居心地の良い雰囲気。あの頃に戻った気分です。

 

 コンコン

 「失礼します。紅茶をお持ち致しました」

 

 そうして話しているとシエスタさんが紅茶を持って戻って来ました。

 

 「ご苦労様。あとは私がやりますので、あなたはもう下がっていいですよ」

 

 そう言って壁際に座っていた女性が声を掛けました。

 

 「あ、ミス・ロングビル。分かりました、それでは私はこれで失礼します」

 

 シエスタさんは紅茶を入れ終わると私に軽く会釈をして、部屋を出て行きました。

 

 「さ、冷めないうちに飲みなさい」

 

 オスマンさんが薦めてくれ、一口飲んでみます。

 

 「美味しいですね。香りがとてもいいです」

 

 中世の文化レベルという事を考えても高級品であるのがわかるです。

素人の私でも分かるのですから、そうとういい葉なのでしょうね。

 

 「気に入って貰えてなによりじゃ。では、そろそろ本題に入ろうかのぅ」

 

 そう言ってオスマンさんは居住まいを正しました。

私も座り直し、話す体勢を整えます。

 

 「先程言った通り、君を元いた場所に戻す方法はない。もしかしたらあるかもしれんが、私達は知らない事じゃ。とりあえず調べてみるが、余り期待しないで貰いたい」

 

 「いえ、そこはお任せします。とはいえ、任せっきりでは悪いです。

 ここは学校と聞きました。もし、図書館などの施設があるのなら、使用許可を頂ければ自分でも調べてみたいです」

 

 「ふむ、図書館とな。確かにここにはそれなりの蔵書数を誇る図書館がある。

 一部区間、フェニアのライブラリは教師しか閲覧する事が出来ないので、そこ以外でいいのなら許可しよう」

 

 少し迷って居ましたが条件付きで許可を頂きました。

 

 「そのフェニアのライブラリとやらはダメなのですか?」

 

 「うむ。どんなに優秀な生徒でも許可は出しておらんのでな。教師でないものに許可を出す前例を作るわけにはいかんのじゃ」

 

 まぁ、当然ですね。生徒ですらない私に閲覧許可を出す事は出来ないですね。

 

 「まぁ、そこはべルベール君にでも頼んで探してもらうとしよう」

 

 「オールド・オスマン、ミスタ・コルベールですわ」

 

 先程シエスタさんがミス・ロングビルと呼んでいた女性が訂正します。

 

 「名前は置いておいて、帰る方法が見つかるまで君はどうするつもりかね?」

 

 来たですね。

 

 「そうですね。ここの図書館を使わせて貰うのですから、ここの近くに住む必要があるです。この近くに安宿でもありませんか?」

 

 まずはジャブです。いきなり本命を言っても断られる可能性があるです。

 

 「宿はここから馬で3時間ほど行った所にあるトリステインの城下町くらいしかないぞぃ。さすがに毎日通う事は難しいじゃろう」

 

 思いの外遠いですね。まぁ、箒に乗れば3分の1くらいの時間で済みますしそれでもいいですが。

 

 「そ、そうですか。では、ここに生徒として置いては貰えないでしょうか?」

 

 「なぬ?生徒とな?」

 

 「はいです。私は元々留学する為に国を出て来たのです。それが事故により、

 予定していた所に行くことが出来なくなりました。

 しかし、着いた先は異国の魔法学校。自分達の国では学べない事も多いはず。

 それは私が自分の国を出た理由でもあります。自分の国では学べない事を学び、もっと上を目指したい。そう思って留学を決意したのです。

 

 なので、もし全くの異国で学べるならば、それは願ってもないことです。

 何故なら今までとは違う方向から魔法を学べる機会は早々ないからです。

 今までとは違う方向から学べばもっと色々な物事が見えるはず。

 そうすれば私は今よりきっと強くなれる。

 なのでぜひ、ここで学ばせてほしいのです」

 

 私は途中から熱が入り、自分の思いを全て垂れ流します。

ネギ先生達の側にいると自分の平凡さに嫌気が指すです。

 私は一般家庭の出です。そもそも魔法とは無縁でしたのでそれは仕方の無い事です。しかし、それでも私は仲間と、あの人と同じ場所を歩きたいのです。

 エヴァンジェリンさんに無理を言って訓練してもらい、アリアドネーに留学する事を決めたのも全ては、そのためなのですから。

 

 「ふむ・・・」

 

 私の吐露を全て聞き終えたオスマンさんは、ヒゲをしごきながら天井を見上げて何かを考えています。

 

 2分、3分と時間が過ぎますが、私はじっと待ち続けます。

 

 「一つだけ質問じゃ、ミス・ファランドール」

 

 真剣な顔でそう言うオスマンさんに私も真剣に聞きます。

 

 「はい、なんでしょう?」

 

 「何故強くなりたいんじゃ?」

 

 「・・・私は仲間と同じ場所を歩きたいんです。今の私はあの人達と歩く事も出来ないほど弱いです。平々凡々とした私は、歩こうにもただの足手まといでしかありません。ですからせめて、あの人達の隣を歩けるだけの力がほしいのです」

 

 もっと知識を。もっと力を。願わくば、あの人の隣を歩けるだけの強さを。

 

 あの夏、麻帆良に帰って来てからずっと思っていた事を全てぶつけました。

のどかにも言ってない私の心の底からの願いですが、このお爺様を彷彿とさせるオスマンさんにはスラスラと言葉が出て来るです。

 

 私が答えた後、またオスマンさんは上を見上げて考え始めました。

どうかこの偶然をチャンスに変える機会を下さい。

 そう願いながらオスマンさんを見ていると、

 

 「うぅ・・・っ!」

 

 な、泣いてるぅぅーーーーっ!?

 

 「お、オスマンさん!?一体どうしたです!?」

 「お、オールド・オスマン!?」

 

 私と部屋の隅に居たロングビルさんが慌てて近寄ります。

一体どうしたと言うのですか。何故に号泣してるです!?

 

 「オールド・オスマン、一体どうしたのですか!?」

 

 ロングビルさんがオスマンの隣まで来て尋ねるです。

 

 「カーーーーッ!!これが泣かずにいられるか!

 仲間と共に居たい一心で自らに試練を課すとは!最近の子供達にはないこの向上心!このオスマン、心から感動した!」

 

 か、感動の涙だったですか。そんな正面から言われると恥ずかしいのですが。

 

 「ミス・ファランドール!君のトリステイン魔法学院への留学、私が許可する!!存分に勉強したまえ!!!」

 

 「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 「何かまわんよ。君のその決意に教師として応えてやりたいと思ったから許可するんじゃ。君はこの学院で学べるだけ学べばいいんじゃ」

 

 「はい!」

 

 これであとは頑張るだけです。この幸運、絶対にモノにして見せます。

 

 




と言う第二話でした。
ゆえっちってば、魔法世界に行った時も学校に入ったし、きっと入るだろうとか思ったんです。
ちょい無理やりな展開な気がしますが、勢いと妄想力で書かれているので、
大目に見てくださると幸いです。


一部修正しました。報告下さった方ありがとうです

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