まぁ、遅れた理由はそれだけじゃなくて、上手く文章が作れなかったからですがね。2000文字近くを書いては消し、書いては消しとやってたら一週間も遅れてしまった……
まだ、変な所があるけど、とりあえずごーなのです。
キュルケが大暴れです。
才人さんの部屋から戻って二度寝していたのですが、突如現れたキュルケに起こされた上、今は目の前でタバサがいじり倒されている所を見せ付けられているです。
「んん~~~っ!! タバサ可愛いわっ! もう!もうっ!」
麻帆良の制服を着たタバサを、キュルケが抱き締め頬ずりしたり、頬にキスしたりしながら身体中を撫で回しているです。タバサも杖で応戦するですが、今日のキュルケは一味違うようで、ヒョイヒョイと避けてはタバサを堪能しています。
「んっふっふぅ~~っ! さぁ、タバサ。大人しくしなさい。大丈夫、怖くないわよぉ……」
「た、たすけ……」
杖を躱してタバサを押し倒したキュルケが、そろそろ犯罪者になりそうなので止めに入るとしますか。
「キュルケ、 マテ! マテです!」
「あーっ! ユエ放して! もっとタバサを味わうのっ!」
キュルケを羽交い締めにしてタバサから引き離します。
腕を伸ばして、どうにかタバサを触ろうとするキュルケ。いつもは無表情のタバサが怯えの表情を見せる程、今のキュルケは言動全てが完全なる変態です。
「キュルケ、やり過ぎです。タバサが怯えるなんてどれほどですか」
「だって、こんなに可愛いのよ!? 誰でも我慢出来なくなるわっ!」
話している間にもグイグイとタバサに向かって行こうとするので、抑えるのが大変です。身体強化しないと抑えられないとか、どれだけですか。
「ダメです。お触り禁止です。見るだけです。それ以上は許可しません」
「えー……!? ちょっとだけ! ちょっとだけならいいでしょ!?」
「ダメです。1メイル以上近付いてはいけません」
タバサの前に立ち、手を突き出してキュルケが近付かないようにします。いやぁ、着替えがないからと私のを貸したらこんな事になるとは、想像も出来ませんでした。
「うー……。じゃ、じゃあ、これ位からならいい!?」
ベットの上に避難しているタバサを、ベットの縁から肉食動物のような目で見ているキュルケ。なんだか息も荒いですし、仕草が変質者のソレです。タバサも端まで寄ってプルプルと震えています。彼女の苦手な物に、幽霊に次いでキュルケがノミネートされるのも近いですね。
「それ以上近付いてはいけませんよ? もし近付いたら
「え!? それはやり過ぎじゃないの!?」
「タバサの貞操の為です。仕方ありません」
放って置いたらタバサを凌辱しかねない勢いだったので、この対応は仕方ないのです。
「ちぇー……。だけどほんと可愛いわねぇ。ねぇねぇタバサ? もうちょっとスカート捲ってくれない?」
「やだ」
キュルケは多数の彼氏が居るそうですしノーマルだと思っていたですが、やはりりょうと……
「ユエー? 何か変な事考えてない?」
「とんでもない」
タバサを愛でていたと思ったらグリンとこちらを向いて注意してきたです。なかなか鋭いですね、キュルケ。ベットの端から近寄って来ないのが分かって、ようやくタバサも落ち着いてきたです。チラチラとキュルケの方を見ながらも、いつもの様に本を広げました。落ち着いて読んでいる様に見えますが、キュルケが場所を移動する度にチラッとその位置を確認するほどには警戒しているようです。
「キュルケ、何をウロウロしてるですか? 大人しくしてて下さい」
「いや、こっちからなら下着が見えるかなって……っ!」
スパン!!
この人は本当に女性ですか? いえ、一部分は完璧に女性ですが、もしかしたら魔法で誤魔化しているかもしれません。私が懐疑的な視線でキュルケを見ていると、彼女はずっとタバサの動き目で追っています。本捲る動作や、足を動かした時にズレるスカートなどを食い入る様に見つめているです。
「キュルケ……目付きが犯罪者のようです」
「酷いわねっ!?」
自覚してなかったのか心底驚くキュルケですが、私としては驚いてる事にこそ驚くです。
「あんまりやってるとタバサに嫌われるですよ?」
「うぅ……それはイヤね。仕方が無い。タバサ鑑賞はやめるとするわ」
そう言って立ち上がったキュルケは、逆側にある私が使っているベットに腰掛けました。
「はぁ~……、でも可愛いわねぇ。あれってユエの服なの?」
「えぇ。私が前に通っていた学校の制服です」
「あぁ。この間言っていた異世界の……。んふふっ、いつか行って見たいわね」
「……その時は首輪と鎖がいるですかね」
「酷いわねっ!?」
今さっきのキュルケの行動を麻帆良でやられたら、確実に魔法先生が出張ってくるです。高畑先生の居合拳で吹き飛ばされるキュルケが目に浮かぶですね。
「さって、そろそろお昼を食べに行くわよ2人とも」
「あぁー……、もうそんな時間ですか」
「ほら、タバサも行くわよ? 本は置いて……いや、どうせ放さないか。持ったままでいいから行くわよー?」
手招くキュルケの言葉にタバサもチョコチョコっと寄ってきました。いつもは本以外に余り興味を示さないタバサは、食べる事には貪欲です。いつもどこに入るのかと思う程の量を、私と変わらない小さな体詰め込むです。何故太らないのか不思議です……
「ルイズ達を呼んでくるです」
私達だけで行くのもどうかと思うので呼びに行く事にしたのですが、ルイズは何か考え事をしているのか、こちらの呼びかけにも生返事しか返してきません。キュルケが面白がってスカートを捲りますが、ルイズは一切反応しないのでキュルケもつまらなそうです。
「……キュルケ、それは?」
「ヴァリエールのパンツ。全然気付かないから簡単だったわ」
「変態」
「酷い! 酷いわっ!」
言われても仕方ないです。
ルイズのパンツは部屋のドアノブに引っ掛けておき扉を閉めました。開けようとした時にルイズが気付き驚くと言うドッキリがしたいようですが、なんとも迷惑なドッキリです。
続いて才人さんも呼びに行きますが、彼は未だに寝てました。まぁ、不貞寝ですね。
同室のギーシュさんが、起こそうとしても起きなくて退屈だと泣きついて来たので、彼を伴って一階の酒場で昼食を摂る事になりました。
「んっんっ……ぷはぁ。……しかし才人君はまだ元気がないようだね」
「何よ、ギーシュ。サイトが元気ない理由を知ってるの?」
「彼はどうもルイズに恋をしているみたいだからね。婚約者が居たと知って落ち込んでいるのさ」
「まぁっ! まぁまぁまぁっ! なら、私が慰めてあげないとっ!」
ガタッと立ち上がるキュルケの腕を掴み、もう1度座らせます。今はそれだけで不貞寝してる訳ではないので、今やったら逆効果でしょう。
「今はそっとしておくですよ。単なる不貞寝ですから」
「そうなのかい?」
「えぇ。今朝少しワルドさんに稽古を付けて貰ったようでして。実力の差に落ち込んでいるみたいです」
ギーシュさんとキュルケが目を丸くして驚いてます。魔法衛士隊の隊長に稽古を付けてもらうと言うのは大変な事ですしね。私にすると、
「コテンパンにされて落ち込んでいるって訳か。でも、いくら彼が平民にしては強いと言っても、相手は衛士隊の隊長。負けるなんて当然じゃないか」
「……ははぁーん、分かったわ。その場面をルイズが見てたのね?」
顎に手をやり、キュルケがニヤリと笑いながらズバリ真相を突いて来ました。1度もルイズの事なんて言ってないのに、どうして分かったんでしょう?
「なるほど……。つまり惚れている相手にボロ負けする所を見られたから落ち込んでいるのか。それなら仕方ないな」
「もしかして、サイトったらルイズに本気になっちゃったのかしら? 彼ってやっぱりそうなの? ルイズみたいに叩いてくれる人がいいの?」
キュルケがまた変な事で悩み出したです。まぁ、あの2人は端から見てると叩き叩かれのそう言う関係に見えなくもない……いえ、ほぼその通りですね。趣味かどうかはさておいて、やってる事は完全にそれですし、キュルケの勘違いも仕方がないです。
「………さて、食べたらどうします? 外には出るなって事なので、観光などは出来ませんが」
「お忍びってのは面倒ね。私はまた部屋でタバサを味わうとするわ」
「きゅ、 キュルケにタバサ! 君達はそう言う関係だったのかっ!? 是非僕に見学させてくれ!」
「違う」
見学してどうするつもりですか、あなたは。
さて、キュルケの冗談はおいといて、本当にどうしましょう。
結局外に出られないのなら部屋にいるしかないと言う事で、各々自分の部屋に戻って昼寝するなり、本を読むなりして過ごす事になりました。キュルケも、本を読んでいるタバサを眺める為に私達の部屋までやって来てベットの端に陣取りました。本当にずっと眺めているつもりなんでしょうか?
夜になり、夕食ついでに飲み会が始まりました。明日にはアルビオンに向かうので、少しでも意欲を高めようとキュルケが言い出し、ギーシュさんがさっさとお酒などを注文してしまったので、なし崩し的に始まったです。まぁ、麻帆良での宴会ほど騒がしくなく、いつもより多少羽目を外したくらいの盛り上がりです。お酒もなしにアレほど盛り上がれるのは麻帆良生くらいでしょう。
「んもう……サイトもこればいいのに……」
キュルケが才人さんも呼びに行ったですが断られたそうで膨れています。
「まだ落ち込んでたですか?」
「何か、考え事したいって言って断られたわ」
お昼も食べてないですし、空腹のままで大丈夫ですかね? そうです……
「どこいくの?」
急に私が席を立ったので、キュルケが気になったのかそう聞いてきました。
「今度は私が何か摘める物を持って誘ってきます。来ないにしても、何も食べないのは体に悪いですし」
「そうね……。そのまま変な事を始めちゃダメよ?」
「はっはっはっ。そんな、キュルケじゃあるまいし……」
「どう言う意味よぅっ!」
私はまず厨房に行きコンロを借ります。コンロと言っても全部薪でやるものなので、スイッチを捻るだけで着く様な簡単なものではありません。しかし、そこはエヴァンジェリンさん印のサバイバル訓練をしてきた私です。魔法を使えば炊事も簡単なものなら出来るです。鍋を借りてお湯を沸かし、その上に四葉さんの餞別である肉まん入り蒸籠を乗せ蒸しあげます。
「……未だに負けた事を気にしているのでしょうか?」
たった一回、それも実力差のある相手に負けただけで落ち込みすぎだと思うです。それとも、男の子と言うのはそう言うものなのでしょうか? 今まで私の周りに居た男の子と言うとネギ先生しかいなかったですし、彼は多分特殊な例でしょうし……
蒸かし終わった蒸籠を持って、才人さんの部屋までやって来ました。落とさない様に片手で支えながらノックをしようとすると、
「今は邪魔しない方が良い。彼らはとても大事な話をしてるはずだからね」
いつの間にか現れたワルドさんが、そんな事を言って私が部屋に入るのを邪魔します。
「おや、ワルドさん。大事な話……とは?」
「実は、僕とルイズは結婚する事になってね。今ルイズはその事をサイト君に告げに行ってるのだよ」
「け………」
婚約者とは言ってましたが、まさかもう結婚しようとするとは……。やっぱり小さい子が好きなんですね? ルイズが成長する前に手を出すつもりと。
「君が何を考えているかだいたい分かるが、違うぞ?」
「分かってます。小さければ小さいほど良いと言いたいんですね」
「違う!!」
全力でワルドさんが否定してますが、やってる事はそう言う事です。ルイズは私とほぼ同じ体型ですし、胸の大きさもほぼ同じ……いえ、ルイズの方が少し大きいでしょうか? まぁ、そんな子供体型のルイズと今すぐ結婚しようとする時点でそう言われても仕方ないものです。まぁ、余り人の事をとやかく言える体をしてないので、これ以上は言わないでおきますが。
「しかし、何故今なのですか? 今は戦場を駆け抜ける必要のある危険な任務の最中ですよ?」
「だからだよ。何かあってからでは遅いのさ」
「全て終わらせてからではダメだと?」
「あぁ。今まで誰も彼女に近付かなかったが、今は彼がいる。モタモタしてると奪われてしまいそうだしね」
ルイズが才人さんに惹かれ始めていると気付いて急ぐ事にした、と。
「だから今は邪魔しないで欲しいのさ。彼らの話が終わるまでこっちの部屋で待ってるといい。君と話もしたいしね」
そう言ってワルドさんは私の背を押して隣にある自分が使っている部屋に入るよう促してきました。エスコートするかのように背中に手を当て案内されたワルドさんの部屋は、この宿の中で1番上等な物らしく、調度品から何から全部豪華です。誰の趣味か、ベットに天蓋までついてるです。
部屋に入った私は、引いてくれた椅子に座り、備え付けらしいワインを開けているワルドさんを見やりました。何歳かは知らないですが、精悍な顔に立派な髭を蓄え、鷹の様に鋭い目付きをしています。私としてはそれほど好みではないですが、顔の造形はかなり整っているので、キュルケ達も見惚れてたですね。ワルドさんは私の前にグラスを置き、慣れた手付きでワインを注ぎました。そのグラスを手に取った私は、対面に座ったワルドさんに軽く掲げるように乾杯の仕草をしてからワインを一口飲み、話したいと言う内容を聞く事にしました。
「……それで、何を話すつもりです? 昨日出会ったばかりで碌に話題も無いですが」
「ふむ、そうだな。……まずは君のことでも聞こうか。得意な系統とかな」
「はぁ……」
まぁ、会ってから碌に会話してないですし、暇潰し的な話題としては普通ですかね?
「私は[風]ですね。得意なのは知っての通り[ライトニング]です」
「あの白い[ライトニング]だね。系統は僕と同じだな。僕は風のスクウェアだからな」
「スクウェアですか、流石は魔法衛士隊の隊長ですね。あ、なら[偏在]も使えるですね?」
結局ギトー先生の[偏在]を見る機会が無かったので、1度実物を見てみたいですが、これから戦場に行くのだからと、精神力温存の為、実践するのは断られたです。残念。
その代わり、質問にはいろいろ答えて下さいました。[風は偏在する]が合言葉らしく、答えを聞いてる間に全部で13回も登場しました。そこまで押すほどの事なのですか。もしくはそれくらい意識しないと[偏在]は使えないと言う事でしょうか。ギトー先生に貰った本にはそんな事書いてなかったですが、一応頭の隅にでも覚えておきますか。
「いやはら、中々有意義な講義でした。ありがとうです」
「なんの。優秀な後輩の為ならお安い御用さ」
ワインで喉を潤しながらそれなりに長く喋ってた気がするです。そろそろ才人さんの所に行かないといけないですね。
「さて、そろそろ才人さん達話は終わったでしょうし、2人の所に行くとします」
「……いや、まだだ。君に聞きたい事がある」
席を立とうとしたら、ワルドさんが真剣な表情でそう言い出したです。今まで私の質問に答えてくれましたので別に構わないですが、なんでしょう?
「君はアルビオンに仕える気はないか?」
「アルビオン、ですか?」
アルビオンとは、明日行く戦争中の王国の事ですよね? そこに仕えるとはどう言う事でしょうか。負けそうで戦力が足りない為の勧誘だとしても、それをワルドさんがする理由が分かりません。
「あぁ……。だが、アルビオンの王家に仕えろと言っているのではない。あの王家は直に倒れる。今、アルビオンで起こっている戦いは革命なのさ。無能な王家は潰れ、我々有能な貴族が政を行うのだ」
「……我々ですと?」
アルビオンの革命と、トリステインの貴族であるワルドさんに一体どんな関係が……いえ、我々、と言う事は、ワルドさんはその革命軍の一員と言う事ですね? 無能な王家、と言うのは何もアルビオンの王家と言う意味ではないかもです。アルビオンの王家が潰れたとしても、違う国の貴族である彼には余り意味が無いはずなのにわざわざ革命軍などに入り、『我々』等という言い方をするのは、おそらく彼等革命軍が、アルビオンだけでなくトリステインも標的にしていると言う事でしょう。もしかしたら他の国にも攻め込む予定があるのかもしれないです。
「あぁ。我々はハルケギニアの将来を憂い、国境を越えて繋がった貴族の連盟さ。我々には国境がない。ハルケギニアを我々の手で一つにして、始祖ブリミルの光臨せし『聖地』を取り戻すのが最終目的だ」
始祖ブリミル……革命のお題目にまで出て来るですか。
「しかし、それと打倒王家と何の関係が………いえ、確か過去何百年もさまざまな国が『聖地』を取り戻そうとして失敗してるのでしたね。それで王家は手出しする気が無くなっている。おかげで貴方達がどんなに言っても動かない王家に嫌気が差し、革命に走ったと言う事ですね?」
自分達の要求が通らないので、邪魔な王家を倒し自分達の好きにやろうと思ったのでは無いでしょうか。そして、この予想はだいたい正解だったようです。
「うむ、だいたい正解だ。今まで数多の国が兵を送ったがその度に無残な敗北に終わった。しかし、それは一国ずつだったからだ。ハルケギニア全体で当たれば必ずやエルフ共を聖地より追い出せるはずだ! 君も我々に協力して欲しい。我々は少しでも多くのメイジが必要なのだ。それもなるべく優秀な。君はまだ学生だが、その資格は十分にあると僕は判断した。ガンダールヴの動きに難なく対応し、倒して見せたその実力なら問題ないだろうとな」
宗教がかなりの力を持っているハルケギニアならではの革命理由ですね。しかし、その聖地とやらは一体どんな所なのでしょう? 図書館にはその事について言及している本がまったく無かったです。どんな本にも、ブリミル教に纏わる大事な場所としか書かれていなかったですし、例えば何かの遺跡でもあるとか、コレコレこう言う土地でとか、普通は書くものではないですか。それが一切無いにも関わらずただ聖地として崇められるとは、何だが歪んだ信仰ですね。
「……? そう言えば、ワルドさんは何故ガンダールヴの事を知ってるですか?」
ガンダールヴの事を教えられたのは、私と才人さんだけだったはずです。あの後、面倒事になるだろうから他言無用と言われたですし、才人さんもホイホイ言いふらす事はないはずですが。
「僕はよく始祖ブリミルの事を調べていたんだ。その中には、ブリミルが使役した使い魔達の記述もあった。そこには、『神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる』と記されていた。そして、その本に乗っていたルーンが才人君の手に書かれていたんだ。それで分かったのさ」
なるほど、調べた結果行き着いたのですか。割と勉強家なのですね、衛士隊隊長。
「それで、君の答えはどうなんだい? 我々に協力してくれるのか、それとも……」
「う〜ん………私をそれだけ買ってくれると言うのは嬉しいのですが、生憎私はやることがたくさんあるです。その為、革命に手を貸している暇がないです。それに……私程度が加わったとしても、それほど戦力にはならないでしょう。私などてんで弱いメイジですから」
ネギ先生レベルが入れば、劣勢でも逆転出来るですから勧誘する価値はあるですが、私などどこにでも居る魔法使い。いちいち取り込む価値はないです。
「いや、今は並でもこれから成長すればいいんだ。君にはそれだけの地力があると見た。どうだい? 同じ風のメイジだから、君が満足出来るだけの手助けが出来る。僕と一緒に来ないか?」
物凄く熱心に勧誘してくるですね。そこまで私を買う理由が分かりません。しかし、凄腕の魔法使いに教えて貰えると言うのは確かに魅力的なので、少し迷うです。魔法を勉強すると言う目的にも合致するのが困るですね。ポンと断れないです。
そうやって迷っているとベランダの方から誰かが入って来ました。疑問に思って視線を向ければ、仮面を着けたいかにも怪しい人物が2人、杖を抜いた状態で立ってたです。私は直ぐに杖を出し立ち上がろうとしたら、ガシっと肩を掴まれました。
「ワルドさん、何を!?」
「決めてくれ、ユエ。我々に協力するか……」
トン、と私の背中に杖の先端を当てられました。この2人、どうやらワルドさんの仲間のようですね。そして、発動体を突きつけると言う事は、この後の台詞など簡単に想像出来るです。つまり……
「……ここで死ぬか、ですか?」
「そうだ。我々の事を余り知られる訳にもいかないのでね」
「自分で話しておいて、勝手な人ですね」
「すまないな。それで、君の返事はどうだ? 協力するか、死ぬか……」
背中の杖に魔力が集まりつつあるです。それに意識を向けていると私の杖をワルドさんに盗られてしまいました。杖が無ければ魔法が使えないと言うにがハルケギニアの常識なので、普通ならこれで詰み。従うしかないですが、セットで貰った指輪がある私には、せっかくのどかがプレゼントしてくれた杖に勝手に触らないで欲しいと言う気持ちにしかならないです。
「……女の子を脅さないと迫れないと言うのは、貴族として正しいのですか? 有能な貴族さん?」
「この状態で、そんな口が利けるとはな。殺すのが惜しいくらいだ。是非とも利口な答えが欲しいのだが?」
くいっと手で私のアゴを持ち上げて目線を合わせてくるですが、そんな脅しで勧誘するような人について行く訳がないです。キッと睨み付けてやりますが、ワルドさんは余裕の笑みで返して来ました。
「やはり答えは『否』です。貴方に風を教わるのは魅力的ですが、こんな手に出てくる人について行く気はないですし、革命にも興味ありません」
「くっ……! この小娘が」
アゴに添えられた手に力が入ったのが分かったですが、そのまま何もせず私の杖を持ったまま扉に向かいました。と言うか返せです。
「……ふぅ、もっと利口だと思ったのだがな。では君はここで死ぬといい。あぁ、君の友人達に断末魔を聞かせるのも偲びないので、部屋にはサイレントを掛けておいてやろう。せいぜい泣き叫ぶんだな」
「女の子の泣き声が好きとは変態ですね」
「………いい度胸だ。十分嬲ってから殺してやる」
そう言ってバタンと力強く扉を閉めて出て行きました。殺してやると言いながら出て行くとは何を考えているのでしょう。いえ、後ろの連中の気配が少し分かってきたです。攻撃に移る為に動いた彼らの気配が少し薄い感じがします。楓さんの不完全な分身を前にした時のような。
ブワッっと背中に当てられた杖に魔力が集まってきて、これから攻撃が来ると分かった私は椅子を跳ねあげて今まさに杖を突き立てようとしていた1人にぶつけてから、部屋の隅に飛び退きました。多分扉はもう鍵でも掛けてすぐには出られないようにしてあるでしょう。開けようと一瞬止まった時に、やられる可能性があるです。とりあえず優位な状況に持ち込む為に距離を取って、この2人の出方を見る事にします。
「……もしや、貴方達はワルドさんの[偏在]ですか?」
「………ふっ。良くわかったな。その通りだ」
そう言って、2人の内1人が仮面を取って見せたです。そこにあるのは、先ほど出て行ったはずのワルドさん。仮面を懐にしまって残忍な笑みを浮かべます。
「これから自分の運命を分かっているのか? 手足を落とされて、のたうち回るんだぞ?」
「そう簡単に行くでしょうかね? 私はしぶといですよ」
私も負けじと笑みを浮かべて構えます。私の体術はアリアドネーの軍式格闘術が少しと、エヴァンジェリンさんに仕込まれた柔術が基本です。アリアドネーの格闘術は、時間が余り取れなかったのと、魔法の習得に重きを置いていたので、それほどちゃんと訓練していないので付け焼き刃でしかなかったですが、柔術の方はかなり丁寧に仕込まれました。理論とかはそこそこに、ポンポン投げられて覚えさせるやり方だったので、体がボロボロになる事もしばしばあったです。いいんちょさんに基本を教わりながらエヴァンジェリンさんの特訓を受けたですが、まだまだ合格点には至っていません。しかし、それでも十分いけるはずです。
「脅しに掛からず、風の講義だけで勧誘していたら、私はついて行ったと思うですよ? 実力者に教わるのは、それだけでかなり魅力的ですからね」
「ふむ……そうか。少し間違えたな。今度誰かを勧誘する時はそうするよ」
杖を構えた2人がジリジリと間合いを詰めて来ます。私も彼らの隙を探りながら少しずつ移動していきます。
「私の杖はどうしました? あれは友人からの贈り物なので、丁重に扱って欲しいのですが」
「それはすまないね。そうだ、ルイズにでも君の形見として渡しておくよ」
「ルイズなら大事にしてくれそうですね。頼みますよ?」
チラリとベランダまでの距離と、ワルドさん達の隙を見定めて次の行動を取る準備を開始します。気付かれないように
「さぁ、まずは動けないように足を射抜いてあげよう……」
「わざわざ狙いを教えてくれてありがとうです。ですが、私が椅子に座っている間にやっておかなかった事を後悔するといいです」
彼らの杖に渦巻く風は、レイピアのように鋭い切っ先を作り出しているです。あれでフェンシングのように突いて攻撃する気なのでしょう。
「はぁっ!!」
ヒュっと言う風切り音を響かせて一気に間合いを詰めて、私の肩を突いて来ました。おぉ、足と言いながら肩を狙って来るとは、なかなか汚い。いえ、駆け引きの範囲でしょうか?
私はその突きを捌きながら懐に入り込み、ワルドさんの腕を左手で掴んで下に引っ張りつつ肩を鳩尾付近に押し付け軸にして、クルリと回転させて投げてやります。受身を取らせないようにそのまま手を離して壁に叩きつけるです。
「ぐっ!?」
間髪入れずに突進してきたもう1人は、才人さんにも見せた独特のリズムを刻む連続突きで攻撃してきました。当たらないように体の外に弾きながらタイミングを計り、腕が伸びきった所で掴んで関節を極め、軸足を払って投げ飛ばします。その際ゴキンと言う折れた音がしましたが気にせずベランダの窓を突き破って外に飛び出ました。狭い部屋では剣が出せないですし、大きな魔法も使えない。戦い易い場所に移動したい所ですね。幸い[偏在]のワルドさん達も付いてきたですし、どこか広い所に誘導して迎え撃つです。
「待て! 小娘がっ!!」
「待てと言われて待つバカがいますか。乙女を手篭めにしようとする輩の言う事なら余計に聞けません」
一気に引き離さないように手加減して走ってどこか良い所を探すですが、余り良い所が無いですね。ちょっと広めの屋上でもいいんですがねぇ……
「この『閃光』のワルドから逃げられると思うなっ!」
飛び掛かって来たワルドさんを右に飛ぶ事で避けた時、私が飛び出してきた宿の方からドカンと言う大きな音が聞こえました。
「……今のは!?」
魔力の感じがルイズの物でしたが、まさかルイズにも手を……?
「さすがルイズだ。私の[偏在]が一体消されてしまった」
驚いて足を止めてしまった私を挟むようにワルドさんが立ち道を塞ぎます。いけません、驚いたからと足を止めるなど、エヴァンジェリンさんからきついお叱りがあるミスですよ。今は自分の戦いに集中しましょう。向こうには才人さんも、タバサやキュルケも居るのですから大丈夫なはずです。
「杖なしで、よくこれだけ粘ったものだ。ますます欲しくなった。僕の物になると言うのなら命だけは助けてやるぞ?」
「……あいにく、ヒゲ面の男は好みじゃないです。寝言は寝て言うですね」
僕の物とかふざけた事を言うワルドさんを一蹴して構えを取るです。もうここで倒してしまいましょう。
「では、いくですよ? 末席とはいえ、
2人同時に飛び掛かって来るワルドさんを瞬動で躱し、1人の背中目掛けて剣を出現させます。
ドンっと突き立った剣に驚いているワルドさんを尻目に、柄にあるトリガーを押して剣に込められた魔法を発動させます。
「き、貴様! そんな剣をどこから!?」
「言う必要はないです!」
大剣を振り回しワルドさんをどんどん追い詰めていきます。速さと共に
このまま畳み掛けるです!
「やぁっ!!」
「ぐあっ!!」
ズガン! と建物を壊しつつ全力で振り下ろすと、ワルドさんは受けきれず吹き飛ばされ、下の通りに叩きつけられました。私は動けないで居るうちに剣を投げ付け地面に縫い止めると、ストックしてあった
ポヒュンと気の抜ける音がしてワルドさんの[偏在]が消え、残ったのはまだパリパリ言っている私の剣だけです。杖を取っただけで油断するから私程度に負けるですよ。
「さて、戻りますか」
通りに降りた私は剣を抜いて担ぎ上げ、元来た道を走って戻ります。まだ向こうには本体がいるはずですし、[偏在]があの2体とは限りません。急いで戻ってルイズ達に加勢しなければ。
ボンッ! と言う音と共に明るい炎が見えたので、私は更に速度を上げ跳んでいきます。
皆さん、無事だといいのですが……
ふぅ……ワルドさんに勧誘させるのは前から決めてた事だけど、変な感じになっちゃった。おかしいなぁ。文章が上手く出来てない所があるけど、思い付かなかったんです……オリジナル要素を入れていくって難しいね。
では、次回。またーー……