よく見ると、感想欄も上のとこに返信って言うものがある。
これ何だろうと思ってたけど、他の人の感想欄を気まぐれに見たら感想に答えを書いてた。
あぁ、返信ってこれか。と思った今日この頃。
これからは新しく知ったこの機能を使って直接お礼が言えそうです。
でわ、第四話いきまーす
この世界で初めての授業です。
教室は石作りで、大学等の講義室のような見た目です。どこの世界も教室の作りはあまり変わらないのですね。
違う所と言えば、色々なモンスターが一緒と言う所ですね。全てここの生徒の使い魔なのだそうです。うん、カモさんとは違って優秀そうです。
そりゃないぜゆえっちー!?なんて幻聴を無視して椅子の下にいるキュルケさんの使い魔であるサラマンダーのフレイムさんを見ます。
見た目は虎ほどもある大きな赤いトカゲです。尻尾が炎で出来ていてなかなか熱そうですが、触ってもほんのりあったかいだけで火傷もしません。
半分精霊なのでしょうね、温度は気分次第という事ですか。
「タバサさんの使い魔は何処に?」
「窓の外」
言われて見てみると、あの青い鱗の魚泥棒が窓からチラチラ見えます。
あの時は空腹のせいで喧嘩を吹っかけてしまいましたから、あとで謝らせてもらいましょう。尻尾は残念ですが、せっかく出来た同志の使い魔を食べる訳にはいかないですしね。
残念ですが!
そうしてキョロキョロ見回して時間を潰していると、皆が急に入口の方を振り向きました。
私も見てみるとピンク色の髪をしたとても綺麗な女性と、青い服を着た黒髪の男性がいました。何処と無く日本人を思い起こさせる風貌をしています。
何故か教室にいる他の生徒達が彼女達を見てクスクス笑っています。一体どうしたんでしょう?
何やらバカにしている感じが嫌ですね。この雰囲気、麻帆良はもとよりアリアドネーにもなかったです。なんとも気分の悪い感じです。
「あの、一体これは?」
「彼女は、昨日の使い魔召喚で平民を呼び出した」
「それが一体?」
「普通は平民を呼び出したりしない。だから皆バカにしてる」
私の質問にタバサさんが簡単に答えてくれましたけど、
確か使い魔の召喚は何を呼び出すかはその時まで分からず、指定も出来なかったはず。
偶然人を呼び出しただけでこうもバカにするのですか。むぅ、やはり何か気分悪いですね。
見ていると男性の方が椅子に座ろうとしましたが、何か言われたのか渋々と言った感じで床に座りました。あ、また立って椅子に座り直しましたね。
何がしたかったのか。よく見れば、先程食堂で床に座っていた人ですね。
床に座るのが好きなのでしょうか。
「皆さん、使い魔召喚の儀お疲れ様でした。大成功のようで良かったです。このシュヴルーズ、春の新学期にこうやって様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのですよ」
紫色のローブに身を包んだ中年の女性が入ってきました。
彼女が今回授業をする教師なのでしょう。
「おやおや、変わった使い魔が出ましたね。ミス・ヴァリエール」
シュヴルーズ先生が先程のピンク髪の女性、ヴァリエールさん?の方を見て声をかけます。
その途端、教室中が笑いに包まれました。
「ゼロのルイズ!召喚出来なかったからって、平民を連れてくるなよ!」
「違うわよ!ちゃんと召喚したわよ!こいつが来ちゃっただけよ!」
ヴァリエールさんが澄んだ綺麗な声で怒鳴ります。
見た目だけじゃなく、声も綺麗ですね。怒鳴り声ですが。
「嘘をつくな!どうせサモン・サーヴァントが出来なかったんだろう!?」
「ミセス・シュヴルーズ!風っぴきのマリコルヌが侮辱しました!」
怒鳴り合い、罵り合いが始まります。明日菜さんといいんちょうの喧嘩も結構激しかったですが、この喧嘩には本気の嫌悪感が混じってます。
「ミス・ヴァリエール、ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論は辞めなさい。
新しく来た留学生が呆れますよ?」
シュヴルーズ先生がそう言って諌めると、他の皆さんも私の方を振り向きます。
「さぁ。ミス、こちらに来て皆さんに自己紹介して下さい。これから貴方と勉強して行く仲間ですよ」
ご指名です。言われた通り、シュブルーズ先生の隣まで行きます。
「はいです。皆さん、これから一緒に勉強する事になりました、ユエ・ファランドールです。どうかよろしくお願いするです」
無難な挨拶をしてお辞儀をします。
殆どの人が興味深げに見てきます。この感じは慣れませんね。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。
では、席に戻ってください。授業を始めましょう」
シュヴルーズ先生は、杖を振り机の上に石ころを幾つか出しながら話を始めます。
「私の二つ名は赤土、赤土のシュヴルーズです。土系統の魔法をこれから一年間講義していきます。さて、ミス・ファランドール。魔法の四大系統はご存知ですか?」
四大系統ですか。四大属性の事でいいですかね。
「火、水、風、土の四つです」
「はい、そうです。それと今は失われた系統魔法である虚無を合わせた五つの系統があります。その中で土はもっとも重要なポジションを占めていると私は考えます。それは私が土系統だから言っている訳ではありませんよ?」
虚無と言う属性は知りませんが、大体は私達の魔法と変わらない様ですね。
「土系統は万物の組成を司る重要な魔法であるのです。
この魔法がなければ重要な金属を作り出す事も出来ないし、加工も出来ません。
石を切り出し建物を建てる事も出来ないですし、農作物の収穫なども今ほど簡単には行かないでしょう。この様に土系統の魔法は皆さんの生活と密接に関わっているのです」
ここでは、魔法技術ばかりで、科学技術などは発達していないようですね。
井戸には桶を上げる為の滑車がありましたし、多少は物理学の知識があるみたいですからこれからなのでしょう。魔法世界の様に、魔法も科学もとなるのは何百年掛かるでしょうか。
「今から皆さんに土系統の基本である、錬金の魔法を覚えて貰います。
1年生の時に覚えた人もいるでしょうが、基本は大事ですから、復習もかねてやって行きましょう」
そう言ってシュヴルーズ先生は机の上の石ころに向かって杖を振りました。
そして短い呪文を唱えると石が光だしました。今の呪文、聞いた事がありませんでした。あれがこの世界の呪文ですか。
ラテン語ではありませんでしたし、これは覚えるのも難しそうですね。
「ゴゴゴ、ゴールドですか!?ミセス・シュヴルーズ!」
光が収まると、光り輝く金属に変わった石ころを見て、キュルケさんが驚き身を乗り出します。
今のは・・・、物質変換ですか?
錬金と言う名前も気になっていたですが、まさか非金属を貴金属に変えると言う錬金術の奥義を呪文一つでやってのけるとは。
この世界の魔法は、想像以上にデタラメですね。まさに魔法です。
土以外の魔法もこれほどの物なのでしょうか。
「違います。これはただの真鍮です。ゴールドを錬金出来るのはスクウェアクラスのメイジだけです。私はただのトライアングルですから」
ゴールド、金も作れるのですか。
スクウェアと言うのは魔法使いの力量レベルの事ですかね。トライアングルにスクウェア。だけ、という言い方とトライアングルを下に言う事からスクウェアと言うクラスが魔法使いの最上位と見て間違いないでしょう。私の知っているトライアングルの意味とその名称が示す物が同じ三角形を意味するならば、そのクラスは3番目という事になるでしょうか?
つまり、まだ前に二つあると考えられるですね。魔法使いの順位が少なくとも4つはあるわけですか。まだ情報が少ないです。もう少し話を聞いて見なければいけないですね。
「ミス・ヴァリエール!授業中に私語は慎みなさい!」
「すみません・・・」
考え事をしていたら先程のヴァリエールさんが注意されてました。
こういう所はどこの学校も変わりませんね。
「お喋りする暇があるのなら貴方にやって貰いましょうか?」
「え?わ、私ですか?」
「そうです。ここにある石を好きな金属に変えてみなさい」
どうやら実践させるつもりのようです。
なにやら戸惑っていますが、これはチャンスです。
えーっと、呼び方は・・・、
「ミセス・シュヴルーズ」
私が手を上げつつシュヴルーズ先生に声を掛けると、少し驚きながら私の方に向き直ります。
「どうしました、ミス・ファランドール?」
「錬金の魔法をもう一度やるのでしたら、近くで見てもいいでしょうか?
これまで私の周囲には土系統が得意なメイジが居ませんでしたので、あまり見たことがないのです」
こちら風の言い方は難しいですね。魔法使いはメイジ。人を呼ぶ時はミス、ミスタ、等を付ける。慣れるまでは大変そうです。
「なるほど、構いませんよ?勉強熱心なのはいいことです。
そうだ。ミス・ファランドールもやってみますか?何事も経験ですよ」
ふむ、確かに実践は何時間もの訓練に勝ると言います。
「しかし、まだ呪文が完璧ではありません」
「大丈夫、私が唱える様に唱えればいいのです。さぁ、こちらへ。
ミス・ヴァリエールは次にやってもらいますよ」
私は杖を取り出しながらシュブルーズ先生の隣まで行きます。皆の前でと言うのは少し緊張するですね。
「では、杖を構えて下さい」
「はいです」
言われるままに杖を構え、魔力を集中させます。
「可愛い杖ですね?」
私の月が先に付いた杖を見て、シュヴルーズ先生がそう呟きます。
「この杖は、私が魔法を習おうという時に親友一人に貰った大切なものでして。
新しい魔法を習う時はこの杖を使うと決めてるです。少し位雑なコントロールでもちゃんと発動するので、練習には丁度いいのです」
初めてアリアドネーに行った時、コレットに貰ったお古ですが、使い込まれてるお陰で凄く馴染むです。
「そうだったのですか、良い友人ですね。
では私の唱える呪文をよく聞いて、一緒に唱えて下さいね」
そう言ってシュヴルーズ先生は杖を振り上げ呪文を唱えます。
やはり聞いたことのない呪文です。あとで図書館に行って基礎本を漁って見ますか。
「さぁ、もう大丈夫ですね? やって見て下さい」
聞いた呪文を頭で反芻して、意識を集中させます。
周囲の魔力を取り込み、杖に流しながら呪文を唱えます。
「[錬金]」
何も起こりません。杖まで魔力が流れたのは感じましたが、呪文にまったく反応しませんでした。呪文を唱えた際に起こる全身に廻る高揚感もなかったです。
つまり完全な失敗。久しく感じなかったこの虚しい感じ、懐かしくも恥ずかしいです。
失敗した私を堪えきれないと言った感じの笑い声が包みます。
「おや、失敗ですか。まぁ、何事も最初から上手く行ったりしませんから、気を落とさない様に」
「はいです」
「では、ミス・ヴァリエール。こちらへ来てやって見て下さい」
声を掛けられたヴァリエールさんは困った様にモジモジしています。
皆の前に出て何かすると言うのは確かに恥ずかしいものですからね。
しかも、今まさに失敗して恥をかくと言う前例を見たばかりです。
「ミス・ヴァリエール、どうしました?さぁ、こちらに来て下さい」
「先生、止めておいた方がいいと思いますけど」
「どうしてです?」
キュルケさん、一体どうしたんでしょう?
「危険なんです。ルイズを教えるのは初めてでしたよね?
だから知らないでしょうけど、本当に危険なんです」
「錬金で金属を作る事のどこが危険なんですか。
ミス・ヴァリエール、さぁ、気にせずやってください。
貴方が努力家なのは他の先生方からも聞いてます。失敗しても気にせず努力すれば大丈夫ですよ。さぁ、こちらへ来て」
「ルイズ、お願い止めて」
キュルケさんが必死に止めようとしてますが、何をそこまで止めたがる事があるんでしょうか。
「やります!」
勢いよく立ち上がり緊張した表情で前にでてきます。
「さぁ、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属をしっかり想い描いて、呪文を唱えるんですよ」
こくっと頷き真剣な表情で石ころを見つめます。
綺麗な人の真剣な表情は芸術品のように見えますね。部屋に飾って置いても全然おかしく・・・・いえ、人を飾って置くとかどんな狂気ですか。
「もう少し近くで見ても大丈夫ですか?」
「えぇ、構いませんよ。しっかり見て参考にして下さいね」
机のすぐ横まで移動して、これから錬金される石を真横から覗き込みます。
「ミス・ヴァリエール。さぁ、いつでもいいですよ」
先生が促しヴァリエールさんが呪文を唱え始めます。
魔力の流れなどを見逃さない様に意識を集中して観察します。なんでも看取り稽古は有効なのです。
人の少ない教室の教壇で目を瞑って呪文を唱えるヴァリエールさんの横に陣取って見ていると、杖を振り下ろした瞬間物凄い魔力が彼女から溢れ出し杖から石に向かって迸りました。先程の先生の時と比べても五倍近い魔力を感じます!?
「ちょ、強すぎでは!?」
「え?」
一瞬で魔力が溢れ机ごと石が吹き飛びました。
その爆風を受け、ヴァリエールさんとシュヴルーズ先生が黒板まで吹き飛び、私も壁際まで吹き飛ばされました。常時展開してある障壁も一瞬で抜かれて顔が煤だらけになってしまいました。
ふらつく頭で教室を見回すと、中にいた使い魔の幻獣達が大暴れしていました。フレイムさんが天井に向けて火を吹き上げ、ライオンの亜種みたいに見えるマンティコアが窓を破りながら飛び出して行き、そこから大蛇が入って来て飛んでいたカラスをパクっと飲み込みました。
そんな感じに阿鼻叫喚の大騒ぎが巻き起こっています。
そんな中からキュルケさんが立ち上がりヴァリエールさんを指差し声を張り上げます。
「だから言ったのに!止めてって!」
だからあんなに必死だったですね。こうなると分かっていたから。
しかしキュルケさん、抜け目なく机の下に隠れてたですね。そう言えば、先程教室が無人に見えたのは、皆が危険だからと隠れていたからなのですね。
「もうヴァリエールを退学にしてくれ!」
「俺のラッキーが食われた!ラッキーがぁーーっ!」
大パニックです。シュヴルーズ先生は倒れたまま動かないですし、幻獣達は上へ下へと飛び回り、生徒達は自分の使い魔を宥めようと必死です。
私と同じく煤だらけになったヴァリエールさんがムクリと起き上がり、大騒ぎの教室を見回しながら頬に付いた煤をハンカチで拭いています。
ブラウスが破けて白い肩が見えてしまってますし、スカートも破け白いショーツが見えてしまっています。
そんな状態でも堂々としています。少しは隠した方がいいですよ。
まぁ、街中で全裸を晒した事もある身ですから、人の事は言いづらいですが。
「ちょっと失敗したみたいね」
いい性格です。
「ちょっとじゃないだろ!ゼロのルイズ!!」
「いつだって成功しない、成功確率ゼロじゃないかよ!」
最初、皆が彼女をバカにした様に笑っていたのは、魔法が使えないからだった訳ですね。あの爆発は相当威力が強かったです、攻撃呪文でさえないのにです。
中級呪文と同等くらいの破壊力を軽く出し、あの魔力量。彼女は相当強力な魔法使いになるでしょう。
めちゃくちゃになった教室を片付け終わったらもうお昼休み前だった。
魔法を使う事を禁止されてしまったけど、私はどうせ使えないから意味のない決まりよね。この平民に手伝わせたからまだ少しマシだったけど、それでも大変だったわ。机拭いてただけだけど。
しかし、この平民。さっきからなんて無礼なのかしら。
こここの私に向かってゼロゼロと。私の周りを回りながらボカーンボカーンと手を振り上げ爆発を表しながらからかってくる。
さらになにやら恭しく頭を下げて歌を歌うと言い出した。
って、こいつはまた・・・・!
「歌ってみなさい?」
ごごごご主人様に向かってダメルイズっですって?しかも自分で言って自分で笑ってる。ななんてダメな奴なのかしら!
こここんの無礼な使い魔にどうお仕置きしてやろうかしら?
私は無礼な平民へのお仕置き方法を考えながら食堂へ移動する。
それと同時に、先程の授業中に自分の魔法を見学すると言って物凄く近くから見ていた新しい留学生の事を思い返していた。
真近で見ていたはずなのに私と同じように煤だらけとは言え無事だったのは驚いたわ。何故か自分は無事で、周りは吹き飛ぶなんてことばかりだったし。
そして、あの爆発する寸前、強すぎると言ってた。
何が強すぎるのか、分からない。
でも、何故か失敗する私の魔法、その何かに気付いたのかも知れない。今まで誰にも分からず、努力が足りないだの、練習不足なのだの言われたから沢山努力してきたけど、一切無駄だった。
でも、あの子は何かに気付いた。そして、咄嗟に注意までしてきた。
あの子と話をしてみたい。何に気付いたのか、何を知っているのか、今まで誰も分からなかった爆発する原因、それが分かるかもしれない、もし知っているなら教えてほしい。
食堂について、料理を爆発させるなとか言っている無礼者のエサを取り上げながらあの留学生を捜すと、あのキュルケと一緒に座っているのが見えた。
何でよりにもよってキュルケなのよ。
他の奴ならまだマシなのに、あんな奴と一緒なんて。
でも、もしちゃんと魔法が使えるようになら、私は・・・。
「ごめん。謝るから俺のエサ返して」
ようやく自分の立場を思い出したのか、バカ使い魔が謝ってくるけど許してやんない。
「ダメ。ぜーーったいダメ!ゼロと言った分だけご飯抜き!!」
お仕置きを言い渡してから食事を始めるけど、味は全然分からない。
私の目は、キュルケと隣の青い髪の子と喋っているあの子から離れない。
ずっと、紫がかった髪のあの子の事ばかり考えて居たら、いつの間にか食事も終わっていた。
ちょっと食べ過ぎた。けぷっ。
はぁ、腹減ったなぁ。
こんなことならあんなにからかうんじゃなかった。
まぁ、怒らせた自分が悪い・・・・、いや、高慢ちきで、威張り散らして、自分を犬扱いするあいつが悪いんだ。あれくらいやってもバチはあたらないよな。
いや、当たったから飯抜きなのか?いや、違うはずっ!
「どうしました?」
腹を抱えて壁にもたれていると、大きなトレイを持った素朴な感じのメイドさんが心配そうに見ていた。
黒髪をカチューシャで纏めた、ソバカスが可愛らしい女の子だ。
「いや、なんでもないよ」
手を振って何でもないとアピールしてみる。
可愛い子に飯抜かれてへこんでる所を見られるのはキツイ。
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になった・・・」
俺の手に刻まれたルーンとやらに気付いたようだ。
「俺の事知ってるの?」
「えぇ、なんでも召喚の魔法で平民を召喚してしまったって、噂になってましたわ」
「君も魔法使いなの?」
こんな可愛い、優しそうな子に犬扱いされたらもう生きていけない。
「いえ、私はあなたと同じ平民ですわ。この学院でご奉仕させて頂いてるシエスタって言います」
平民じゃなくて、地球人なんだけどなぁ。
まぁ、言っても分からないか。
「俺の名前は平賀才人。よろしく」
「変わったお名前ですね。余り聞いた事ない家名ですよね。サイトって」
「いや、才人は名前の方。名字は平賀」
こっちは外国人みたいに名字と名前が逆になるんだな。
あ・・・・
「お腹空いてるんですね」
俺の腹から鳴り響いた音を聞いて困ったように言った。
朝は質素なパンとスープだけだったし、仕方ないんだよ。うぅ・・・。
「こちらにいらして下さいな」
シエスタはそう言って俺を何処かに連れて行こうとするので、素直について行った。
ついて行った先は食堂の裏にある厨房だった。鍋やら何やらが並んでいて、それだけ見ると、地球にあるレストランのキッチンようだ。一切電気機器がないけど。
「ちょっと待ってて下さいね?」
そう言ってシエスタは片隅に置いてあった椅子に俺を座らせると、厨房の奥に小走りで入って行った。
こう言う所に居ると場違いな気がして居心地が悪いな。
こう、邪魔してる感じがして。
「どうぞ。余り物で作ったシチューですけど、良かったら食べてください」
そう言って湯気の上がるシチューの入った皿を持って来てくれた。
滅茶苦茶美味しそう。フランス料理店とかで出て来そうなシチューだ。あるのかは知らんけど。行ったことないし。
「た、食べていいの?」
「えぇ。賄い食ですが、昨日もある人にお出ししたら絶賛してくださいましたから、味の方は保証しますよ?」
うぅ、なんて優しい子だ。ルイズと大違い。
シチューを一口食べてその美味しさに感動した。
うーまーいーぞーーっ!!
「美味しいよ、これ。こんな美味しいシチュー食べた事ない!」
「ふふっ、ありがとうございます。お代わりもありますから、沢山食べて下さいね?」
おいしいよぅ。シチューの温かさと人情の暖かさが身体にしみるよぅ。
こっちに連れて来られてから人扱いして貰えなかったから、余計に嬉しい。
あ、ちょっと泣けて来た。
「ご飯貰えなかったんですか?」
「ゼロゼロってからかってたら、皿を取り上げられた」
「まぁ!勇気がありますのね。貴族にそんな事言ったら、大変な目に遭わされますわ!」
「何が貴族だ。ちょっと魔法が使えるからって威張り散らして!」
「本当に勇気がありますわね。
でも、威張らない貴族も居ますから、皆がそうって思わないで下さいね?」
「そうなの?」
全部ルイズみたいに威張り散らしてるんだと思ってた。あのキュルケとかいうおっぱい星人も俺が人間だったからって大笑いしてたし。
「はい。と言ってもその人も元々平民だったんですけどね」
同じ立場だったから威張らないのか。一度話してみたいな。
ルイズの愚痴を聴いてもらいたい。
「ご馳走様。本当に美味しかったよ、ありがとう」
「どういたしまして。お腹が空いたらまた来て下さい。私達が食べるような物ならいつでもお出ししますから」
にっこりとそう言う、優しげなシエスタの笑顔を見ていたらつい泣けて来た。
「うぅ、ありがとう」
「ど、どうしたんです?」
いきなり泣き始めた俺の背中をさすってくれるけど、その優しさに余計泣けてくる。
「いやぁ、俺、ここに来てから初めて優しくされたもんだから、つい感極まって」
「そんな大げさな」
大げさじゃないよ。人として見てくれて、ちゃんとしたご飯までくれるのが、こんなに嬉しい事だったなんて。母さん、いつもご飯作ってくれてありがとう。
「俺に出来る事があったら言ってくれ。なんでもするよ」
「え?えっと、じゃあ、デザートを運ぶのを手伝ってくれますか?」
「もちろん。お安い御用だ!」
力仕事でもなんでもやるぞ!ルイズのパンツを洗うより、よっぽどやる気になる。まぁ、女の子のパンツを見れるのはそれはそれでいいんだけど、はいてなきゃタダの布だし、それにルイズのだしな。
もっと、性格が可愛かったら喜んで洗うのに。
俺の持つ大きなトレイに、びっしり載せられたケーキをシエスタがなんか挟むやつで一個一個貴族達に配って行く。あ、珍しくお礼を言う貴族がいた。
シエスタも何だか親しげに会話してる。もしかしてこの子がさっき言ってた威張らない貴族なのかな?ちょっと見た目小さいけど、可愛い子だなぁ。
あれ、この子、そういやさっきルイズの魔法に巻き込まれてた子じゃないか。
さっきはうちのゼロがご迷惑お掛けしました。
とりあえずそんな気持ちを込めて会釈しておくと、向こうも会釈を返してくれた。
こんな普通の事が嬉しいとは!この感動は二回目だけど、それでもやっぱり感動した!
「今の子が、さっき言ってた威張らない貴族の人?」
「はい。ユエさんっていうんですが、東方から来そうで、私の事も友人と言ってくれるんです」
「へぇー」
東方ってのが何かに知らないけど、良い子なんだろうな。
どうせ召喚されるなら、あーゆー子が良かったな。犬扱いして、床で寝ろとか言わないだろうし。
そうして自分の不幸を嘆きつつケーキを配っていくと、なんか変なのがいた。
胸元にバラを挿していて、妙に仕草が気障ったらしい。
周りの連中になにやら恋人は誰だとか聞かれているみたいだけど、バラは人を楽しませる為に咲くのだとか言って、また変なポーズを取ってる。
あぁ、アホなんだな。なんであんな奴がモテるんだろう。顔か?所詮顔なのか?
配りながらそんな事を考えていると、そいつのポケットから何かが落ちた。
瓶みたいだけど何の瓶だ、これ?割れなくてよかったな。
関わりたくないやつだけど、教えてやるか。親切が日本人の美徳ですってね。
「何か落としたぞ?」
声をかけたけど、こっちを見もしない。教えてやったのに無視しやがって。
「ほれ、これ落としたぞ」
ちょっとムッとしたが仕方ない。瓶を拾って渡してやろうとしたが、顔をしかめて瓶を押し返してきた。
「僕のじゃない。何を言ってるんだね?」
いや、確かにあんたのポケットから落ちたぞ?あんたこそ何言ってるんだ。
「ほらよ、ここに置いておくぞ?」
瓶を机に置いてやると、周りに集まっていた奴らがその瓶を見て騒ぎ出した。
「お?その香水瓶はモンモランシーのものじゃないか?」
「そうだ!この鮮やかな紫色は、確かモンモランシーが自分の為だけに調合している香水だ!」
あれは香水瓶だったのか。男が何で香水なんて持ってるんだ?
あぁ、確か外国人は男でも香水使う人が多いって聞いた事あるし、そんな事もあるのか?
「そいつがお前のポケットから落ちたって事は、今お前はモンモランシーと付き合っているって事だな?」
「違う!いいか、彼女の名誉の為に言っておくがね・・・」
「ギーシュ様・・・。」
栗色の髪の可愛い女の子が、俯いたまま近付いてきた。
そしてキザ男の前まで来ると、ボロボロと泣き始めた。
うぅ、女の子の泣き顔は苦手だ。
「やっぱり、ミス・モンモランシーと付き合って居たんですね」
「違う。彼等は誤解しているんだ、ケティ。
いいかい、僕の心に住んでいるのは君だけで・・・っ」
そう言い訳っぽい事を言っているキザ男をその子は思いっきりビンタした。
バチン!といい音が鳴ったけど、あれは痛いぞ。もう音からして。
「その香水を貴方が持っていたのが何よりの証拠です!さようなら!」
泣いて怒っているけど、ドスドスとか足音が出ないのは流石だな。
クラスの女子なんて、普通の時でもドッスンドッスンさせるからな。
今度は遠くの席から金髪の巻き髪が見事な女の子がやって来た。
さ、さすがファンタジー世界。お嬢さまヘヤーが実在するとは!
「モンモランシー、誤解なんだ。彼女とは一緒にラ・ロシェールの森まで遠乗りしただけで・・・っ」
おいおい、さっきは君だけが住んでいるとか言ってたのに。
それに遠乗りが何か分からんけど、つまりデートしたって事だよな。言い訳にならないんじゃね?
「やっぱりあの一年生に手を出してたのね?」
「お願いだ、香水のモンモランシー。咲き誇るバラのような顔をそんな風に怒りで歪ませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないかっ!」
つまり、この二人が付き合っていて、さっきの子と浮気してたと。
怒るなとか、自分が悪いんじゃないか、何言ってるんだか。
「うそつき!!」
お嬢さまは、テーブルにあった瓶を掴むと、中身をドバドバとキザ男の頭にかけて出て行った。文句の出ない見事な修羅場だ、ドラマ並みの展開だったな。
「あのレディ達は、バラの意味を理解していないようだね」
ハンカチで顔を拭きながらそんな事をのたまうキザ男。
アホの上にバカだった。付き合いきれん。
「待ちたまえ」
もう仕事に戻ろうと思ったのにキザ男が呼び止めてきた。
無視してやろうとも思ったけど、聞いてやるか。
「君の軽率な行動のせいで、二人のレディの名誉が傷付いた。どうしてくれるんだね?」
いや、傷付けたのは二股かけてたあんたじゃないか。
「二股かけなきゃそんな事にはならなかっただろうが。あんたが悪い、人のせいにするな」
「その通りだ!ギーシュ、お前が悪い!」
周りにいた奴らもそうやって賛同してくれる。
そうだろうそうだろう。モテる奴は敵だ。
「いいかね、給仕君。僕は香水瓶を渡された時、知らないフリをしただろう?
咄嗟に話を合わせるくらいの機転があって当然だろう?」
なんとも身勝手な理論で文句を言ってきやがった。
「どんな当然だ。どっちにしても二股なんてすぐバレるんだよ。
それと、俺は手伝いであって、給仕じゃねーよ」
そう言い返してやったら、バカにするように鼻を鳴らして来た。
「あぁ、君はあのゼロのルイズが呼び出した平民か。
だったら貴族の機転を期待した僕の間違いだな。もう行きたまえ」
「あぁ、そうするよキザ野郎。一生バラでもしゃぶってやがれ」
おっとやたらとムカついたから思わず言い返しちまった。
向こうもどうやらお怒りだ。
「どうやら貴族に対する礼儀を知らないようだね」
「あいにく貴族なんて居ない世界の出身なんでね」
向こうの売り言葉にしっかり答えてやった。ポーズも全く同じにしたから、さぞムカついたろう。
「いいだろう、君に礼儀を教えてやる。いい腹ごなしになる」
「おもしれぇ、相手になってやるよ」
立ち上がってそう言ってくるキザ男に、こっちも睨みつけながら答える。
見た所そんなに強そうには見えないし、楽勝だ。
「ここでやるのか?」
軽く身構えながらそう言って確認する。そうだと言った瞬間殴りかかってやろう。ここに来てから散々バカにされて来た憂さ晴らしだ。
ほとんどはルイズだけどな。あいつはあれでも女の子だし。
「ふん!」
始めると思ったら、鼻を鳴らして後ろを向いたぞ。
「おい、逃げる気か?」
「ふざけるな。貴族の食卓を平民の血で汚せるものか。ヴェストリの広場で待っている。仕事を終えてから来たまえ」
うーむ、最後までキザな奴。いいだろう、ささっと終わらせて殴りに行ってやる。
急いで仕事をと思ってシエスタの方を向いたら、ぶるぶる震えながらこちらを見ていた。あー、女の子には喧嘩の場面は怖かったかな。
「大丈夫、あんなひょろいのに負けやしないから。さっと終わらせよう」
「あ、あなた殺されちゃうわ」
「はぁ?」
青い顔でそんな事を言うシエスタは、ふるふる顔を振りながら後ずさる。
「貴族を本気で怒らせたら大変なのに・・・」
そう言って、厨房の方にだーっと走っていっちまった。
ケーキ一つ落とさない。やるな。
「なんなんだよ、あんなのに負けやしないっての」
「あんた!何やってるのよ!見てたわよ!?」
今度はワガママご主人様が来た。
「よぉ、ルイズ。もう食い終わったのか?」
「何を呑気に!人が悩んでる隙に何勝手に決闘の約束なんかしてるのよ!?」
場所を指定して、待ち合わせの上喧嘩。確かに決闘だ。夕方の川沿いでやらなきゃな。
「謝ってきなさいよ」
「なんでよ?」
いきなり謝れとか言ってきた。
「怪我したくなかったら謝っちゃいなさい。今ならまだ許してくれるかもしれないわ」
「なんで俺が謝らなきゃいけないんだ。向こうからバカにしてきたんだぞ!?」
「いいから!」
「いやだね」
強い口調でルイズは言ってくるけど、謝る気にはならない。もう意地だ。
「分からず屋ね!いい?絶対に勝てないし、怪我するわよ!?
いいえ、怪我で済んだら運がいいわ。下手すれば死ぬんだからねっ!?」
「そんなのやってみなきゃ分からねぇだろうが」
「よく聞いて!平民じゃメイジには絶対勝てないの!」
もういいや。さっさと行って始めちゃおう。
「ヴェストリの広場ってのはどっちだ?」
横に居たキザ男の友人らしい一人に聞いてみる。
「こっちだ平民。ついてきな」
なんだか横柄だけど、案内してくれるらしい。なら、文句言わずについて行くか。
「あーもう!使い魔のくせに勝手なことばかりしてぇ!ほんとにもう!」
後ろからルイズの悪態が聞こえてくるけど、気にしない。
番長じゃないけど、堂々と行くぜ。
と、第四話でしたぁ。
原作そのまま書くわけにもいかないから、どう夕映を放り込んでいくかが難しいですな。
あと、本当は才人を影だけで、一切台詞無しとかにしたかったけど、無理でした。残念。
そんなこんなで、次も頑張りますのでお願いします。